パワハラで退職したいなら即行動|会社都合退職のための3つの準備
この記事に登場するアドバイザー
パワハラが原因の退職で後悔しないためには正しい理解と早めの行動が大切!
こんにちは。キャリアアドバイザーの今井です。
パワハラを受けているかもと感じている人から、このような相談を受けることがあります。
職場で嫌な思いをして、「これはパワハラになるのだろうか?」と悩んだ経験はないでしょうか。周囲の人に相談できず、一人で抱え込んでしまっているケースもあると思います。
パワハラが原因で退職すること自体は、何も問題ありません。むしろパワハラによって心身を壊す前に、早めに環境を変えるための行動を起こすべきです。
とはいえ、パワハラによって退職するのであれば、事前に知っておきたい注意点がいくつかあります。一刻も早く退職したいという気持ちもあるかもしれませんが、パワハラによる退職で後悔しないためには、正しい理解と事前準備が必要ですよ。
この記事では、パワハラが原因で退職する際の事前準備や注意点などについて、キャリアアドバイザーのアドバイスを交えつつ解説していきます。安心して次の一歩を踏み出すためにも、しっかりと理解を深めておきましょう。
どこからがパワハラ? まずは定義について理解しよう
パワハラを受けているかもと感じている人のなかには、「そもそもどこからがパワハラにあたるのか?」といった疑問があるかもしれません。どこまでが指導でどこからがパワハラになるのかは、なかなか判断がつきづらいですよね。
厚生労働省によると、職場におけるパワハラの定義として以下の3つの要素を挙げ、これらを全て満たす行為がパワハラにあたるとしています。
職場におけるパワハラの3つの要素
そこでまずは、パワハラの決め手となる3つの要素についてそれぞれ見ていきましょう。これらを理解しておくことで、パワハラにあたるかどうかの判断に役立ちますよ。
優越的な関係を背景とした言動であること
優越的な関係を背景とした⾔動とは、職場での地位や優位性を利用した言動のことです。たとえば、上司という立場を利用して、部下に「評価を下げるぞ」といった圧力をかけて無理な要求をする行為は、パワハラの代表例といえます。
パワハラと聞くと、上司から部下、あるいは先輩社員から後輩社員に対しておこなわれるものとイメージしがちですが、その逆もありえます。
たとえば、上司の評価を下げるために、部下がわざと上司から嫌がらせを受けているかのように振る舞う行為は、部下の立場を利用した行為といえるため、パワハラにあたります。
MATSUSHITA KENTO
「自分の地位や立場を利用した行為は、パワハラになる可能性がある」と考えるとイメージしやすいですよ。
業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
社会通念に照らし、業務上明らかに必要性がなかったり、限度を超えていたりする言動はパワハラにあたります。ミスに対する指導や叱責は、業務を進めるうえで必要なものなので、通常はパワハラにはなりません。
しかし、土下座を強要したり、本人が反省しているにもかかわらず、大勢の前で叱責を繰り返したりする行為は、明らかに限度を超えていますよね。そういった行為が、パワハラにあたるのです。
ただし、どこまでが必要かつ相当な範囲かは判断が難しいため、以下の観点から総合的に判断する必要があります。
パワハラと判断される例
- 言動を受けた側の非(指示を無視し続けているなど)がまったくない
- 叱責する側に落ち度(指導不足など)がある
- 言動の頻度が高い・継続性がある(関係のないミスを持ち出すなど)
労働者の就業環境が害されるものであること
身体的や精神的な苦痛を与えるような言動により、労働者の職場環境が不快なものとなり、業務に影響を及ぼす場合にはパワハラにあたります。
たとえば、ミスに対して大声で怒鳴りつける上司がいる職場であると、自分が叱責されているわけではなくても、圧力を感じて仕事に集中しづらいですよね。
このような行為は、たとえ言動を起こした本人に悪意がなかったとしても、周囲が不快に感じればパワハラにあたる可能性があるのです。
パワハラにあたる具体例は? 6つの類型について解説
パワハラにあたるかどうかの判断をするにあたっては、パワハラにあたる具体例についても知っておきたいですよね。
厚生労働省では過去の裁判例などに基づき、職場におけるパワハラを以下の6つの類型に整理しています。
そこでここからは、職場におけるパワハラの6つの類型についてそれぞれ見ていきましょう。具体例を押さえておくことで、よりイメージしやすくなりますよ。
YONEDA YUKI
ただし、ここで紹介する6つの類型はあくまで典型例です。実際にはこれら以外の行為もパワハラになる可能性があるため、その点は覚えておいてくださいね。
①身体的な攻撃
身体的な攻撃に該当する具体例
- 殴る・蹴る・突き飛ばすなどの暴力をふるう
- 物を投げつける
- 座っている椅子を蹴る
身体的な攻撃とは、殴る・蹴るなどの暴力行為全般を指します。また、直接的な暴力だけではなく、物を投げつけたり椅子を蹴ったりして相手を威嚇する行為も含まれます。
今は「いかなる事情があろうとも、暴力をふるうことは許されない」という考え方が浸透しているため、暴力行為や傷害行為全般がパワハラにあたるというのは、イメージしやすいでしょう。
HONDA YURIKA
殴るふりや物をふりまわす行為など、実際に危害を加えていなくても、ケガをさせる可能性がある行為もパワハラになりますよ。
②精神的な攻撃
精神的な攻撃に該当する具体例
- 「役立たず」「使えない」などの相手の人格を否定するような発言をする
- 長時間にわたる厳しい叱責を必要以上に繰り返す
- 他の人も宛先に入れたメールでののしる
精神的な攻撃とは、ひどい暴言や脅迫、侮辱や名誉毀損などの相手を心理的に攻撃する言動を指します。
人によっては、指導にあたって強い言葉を発することもあるため、どこからがパワハラにあたるかの判断は難しいところです。ただ、いくら熱が入ったからとはいえ、相手の人格を否定したり名誉を傷つけたりする内容の暴言をはいた場合には、パワハラにあたります。
また、仮に暴言ではなくても、必要以上に強い叱責を繰り返したり、他の社員の前で見せしめのように叱責したりする場合も、パワハラになる可能性があります。
③人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しに該当する具体例
- 同僚が集団で無視をして職場で孤立させる
- 特に理由もなく他の社員との接触を禁じる
- 仕事から外して長期間にわたり別室に隔離したり、自宅研修をさせたりする
人間関係からの切り離しとは、気に入らない部下や社員に対して、別室に隔離したり無視したりするなどして、意図的に職場で孤立させようとする行為全般を指します。
誰でも職場で孤立してしまっては、つらいですよね。このように、特定の社員を意図的に孤立させるような行為は、された側のダメージが大きく、パワハラにあたるのです。
YONEDA YUKI
人間関係からの切り離しは、特定の社員を退職に追い込むためにおこなわれるケースが多いようです。
④過大な要求
過大な要求に該当する具体例
- とても達成できないような目標やノルマを課す
- 明らかに終わらない量の仕事を押し付ける
- 業務とは関係ない私的な雑務を強制的におこなわせる
過大な要求とは、その人の能力を超えた量やレベルの仕事を強要したり、業務とは関係ないことを強制させたりする行為を指します。
過大な要求によって、社員の長時間労働につながり、肉体的にも精神的にも追い込むことになるため、パワハラにあたります。
自分の能力以上の仕事を任されると、人によっては「期待されている」と感じることもあるかもしれません。しかし明らかに自分の能力を超えた量や質の仕事であれば、パワハラの可能性もあるのです。
⑤過小な要求
過小な要求に該当する具体例
- 管理職の人間に対して誰でもできるような業務のみをおこなわせる
- 嫌がらせのために本来の担当業務をさせない
- 合理的な理由もなく自宅待機を命じる
過小な要求とは、合理的な理由もなく、その人の能力や経験に見合わない簡単な業務をおこなわせたり、仕事を与えなかったりする行為を指します。
能力に見合わない雑務しかさせてもらえなかったり、仕事を一切与えられなかったりすれば、仕事に対するモチベーションも下がってしまいますよね。合理的な理由がある場合は別として、嫌がらせを目的にこのようなことをすれば、パワハラにあたるのです。
HONDA YURIKA
過小な要求は、気に入らない管理職を退職させるためにおこなわれるケースが多いようです。
⑥個の侵害
個の侵害に該当する具体例
- 休日の過ごし方といったプライベートに関する質問をしつこく聞く
- 私物の写真撮影をする
- 勤務時間外での個別連絡を強要する
個の侵害とは、特定の社員のプライベートについて、過度に立ち入る行為全般を指します。
いくら思いやりや気遣いであっても、プライベートに関して必要以上に干渉されたり監視されたりしては、恐怖を感じて業務にも集中しづらいですよね。そうした私的なことに過度に立ち入る行為は、パワハラにあたる可能性があるのです。
Adviser Comment アドバイザーからのコメント
HONDA YURIKA 本田 百合香
これってパワハラ? そう思ったら第三者に相談してみよう
上司がおこなった行動すべてがパワハラに該当するとは言い切れません。明らかな自分のミスに対する指導や、自分のミスにより先方に迷惑をかけてしまった際の注意などは、パワハラとは言い切れないことも多々ありますよ。
一方で、ミスに対して過剰な暴言を吐かれたり、時間的に無理な注文をつけて残業を強要されたりすることはパワハラに該当すると言えます。しかし、その線引きを自分で判断することは非常に難しいことです。判断ができないときは信頼できる先輩や企業内の相談窓口などを利用してみましょう。
パワハラのラインは日々変わっている
正直なところ、ハラスメントの線引きは日々変わってきています。そのため少し前までは該当しなかったことが、今ではハラスメントとなることも多いですよ。しかし、だからといって変わらない部分もあります。
上記であげた業務上必要な注意や、自分自身の故意の悪事、危険な行動によって、ほかの従業員に危険が及ぶ可能性がある場合の処罰や注意は、パワハラとは言えません。もちろんパワハラのない社内環境が一番ですが、不安を感じたときは一人で悩むことだけは避けましょう。
パワハラを受けているかも……そう感じるあなたに知ってほしい2つのこと
パワハラを受けているかもと感じている人に知っておいてほしいこと
パワハラを受けながら仕事を続けるのは、とてもつらいですよね。パワハラを受けているかもと感じているのであれば、何かしらの対策が必要です。
ただ、パワハラの対策を考える前に、最初に知っておいてほしいことが2つあります。まずはこの前提を理解したうえで、今後どのように行動すべきかを一緒に考えていきましょう。
パワハラを受け続けていると心身に重大な悪影響を及ぼす可能性がある
パワハラを受けているかもと感じている人のなかには、「この程度であれば我慢するしかない」と考える人もいるかもしれませんが、その考え方は非常に危険です。というのも、パワハラを受け続けていると、心身に重大な悪影響を及ぼす可能性があるからです。
実際、パワハラが原因のストレスにより、身体や心の不調を起こす人は数多くいます。パワハラのストレス症状としては、たとえば以下のようなものが挙げられます。
パワハラのストレス症状例
- 身体の不調→食欲低下・吐き気・頭痛
- 心の不調→不眠・集中力の低下・意欲の低下
不調が続けば、うつなどの精神疾患につながる可能性も高く、精神疾患は一度患ってしまうと、回復に長い時間がかかります。
YONEDA YUKI
このように、パワハラを受けたまま仕事を続けることは、非常にリスクが高いといえるのです。
自分の将来を守るためにも今すぐ動き出すことが何よりも大切
パワハラを受けていると感じているのであれば、今すぐ動き出すことが何よりも大切です。
パワハラは我慢していても、止まることはありません。黙っているとむしろエスカレートする可能性もあります。パワハラを受けているかもと感じたら、一人で悩まずに、誰かに相談したり環境を変えることを検討したりするなど、状況を改善するための行動を起こしましょう。
パワハラによって心が折れてしまうと、状況を改善するための行動を起こす気力も湧かなくなります。こうなってしまうと、そのまま精神疾患を患う可能性が高くなり、今後の人生にも影響を及ぼしかねません。
MATSUSHITA KENTO
そうならないためにも、パワハラを受けているかもと感じたら、すぐに動き出すようにしてくださいね。
退職だけが選択肢じゃない! パワハラを受けたらまず検討したい3つのこと
パワハラの被害から逃れるためには、退職するのが最も効果的な手段ではありますが、今の仕事自体が好きだったり、やりとげたい目標があったりするなら、できれば退職せずに解決したいですよね。実はパワハラの被害から逃れるには、退職以外にも手段があります。
そこでここからは、パワハラを受けたらまず検討したい3つのことについて解説します。退職を決断する前に、まずはこれらの方法も検討してみてくださいね。
①職場や職場外の相談窓口を活用する
パワハラを受けているかもと感じたら、まずは職場の相談窓口を活用してみましょう。すべての職場には、ハラスメントを防止することが義務付けられています。
そのため、専用の相談窓口が設けられている職場も多く、そうした相談窓口を活用することで、解決のためのアドバイスや支援を受けられる可能性がありますよ。
ただ、職場によってはそもそも相談窓口がなかったり、相談しても対応してくれなかったりすることもあるかもしれません。その場合には、職場外の相談窓口の活用も検討してみましょう。
職場外の相談窓口では専門の相談員が話を聞いてくれるため、具体的な対処法についてアドバイスしてもらえますよ。
職場外の相談窓口としては、たとえば以下のものが挙げられるので、参考にしてみてくださいね。
職場外の相談窓口の例
②部署異動や配置転換を申し出る
パワハラの被害を受けている場合には、部署異動や配置転換を申し出るのも一つの手です。
部署異動や配置転換をすることで、パワハラの加害者と距離を置くことができるため、状況の改善に期待できます。もちろん同じ職場に属している以上、完全に接点をなくすことは難しいかもしれませんが、接する機会は大幅に減るはずです。
特に大企業などの規模の大きい職場であれば、社員数が多い分効果も大きくなりますよ。
YONEDA YUKI
部署異動や配置転換は、最初に直属の上司に相談するのが原則ですが、直属の上司からパワハラを受けているのであれば、人事部に相談してみましょう。
③休職を申し出る
パワハラを受けているのであれば、思い切って休職を申し出るのも一つの手です。特にパワハラによってすでに身体や精神に影響が出始めている場合は、無理に出勤を続けていると症状が悪化する恐れがあります。
また、パワハラが原因で心身ともにダメージを負った状態では、「一刻も早く退職したい」という気持ちになりがちです。その点、休職によって一時的に職場から離れることで心身が回復し、今後について冷静に考えることができるようになりますよ。
現状や将来についていったん冷静になって考えたい場合は、休職を申し出ることも検討してみましょう。
休職中に転職活動をすることの可否については、以下の記事を参考にしてみてくださいね。
休職中の転職活動はあり? 必須準備と企業からのリアルな印象を公開
休職中の給与についてはこちらの記事で詳しく解説しています。休職を考えている人は、あわせて参考にしてみましょう。
休職中に給与をもらえるかは会社次第! 利用できる3つの手当を紹介
Adviser Comment アドバイザーからのコメント
YONEDA YUKI 米田 有希
パワハラが原因で休職をするときはメンタル・生活両軸の安定が重要
パワハラによって休職するとき、ほかの社員に対して負い目を感じる人もいます。また、どうしても周りと比較をしてしまったり、「復帰できるだろうか」といった不安に駆られることも多いでしょう。ただそういった負の感情は、復職や新しい職場への転職という判断を遅らせてしまう原因にもつながります。そのため、難しいかもしれませんがまずはそれらを頭から消す気持ちで過ごしましょう。
生活面では、よほどの体調の不調がない限りはメリハリのある生活を心掛けることが大切です。毎日同じ時間の起床・就寝、バランスの取れた食事、軽い運動などを心掛けましょう。もちろん無理をすることは避けたいですが、これらの行動を心掛けることで健康面の安心を得ることのほかに、復職時の生活リズムの破綻を防ぐ効果もあります。
パワハラで退職するのであれば失業保険が手厚くなる会社都合退職を目指そう!
パワハラの被害を受けていてそれが原因で退職を考えている場合、「すぐにでも退職届を出したい」と考えてしまいますよね。
ただ、退職には以下の2種類があります。
退職の種類
- 自己都合退職:自分から希望して退職するケース
- 会社都合退職:会社の事情で退職を余儀なくされるケース
パワハラが原因で退職をする場合には、パワハラが認定されれば基本的には会社都合退職となります。会社都合退職になれば失業保険が手厚くなるため、辞めた後の生活費の負担が減るというメリットがありますよ。
つらいからすぐにでも退職したい気持ちはよくわかりますが、こういった前提がある以上、パワハラによって退職する場合には、失業保険が手厚くなる会社都合退職で進められるよう準備を進めることが大切です。
HONDA YURIKA
会社都合で退職することの具体的なメリットについては、この後で解説しているので、あわせてチェックしてくださいね。
具体的に何が変わる? 自己都合ではなく会社都合で退職することのメリット3つ
自己都合ではなく会社都合で退職することのメリット
自己都合ではなく会社都合で退職することには、具体的にどのようなメリットがあるのかは気になる部分ですよね。メリットを把握することで、会社都合で退職するための行動も起こしやすくなるはずです。
ここからは、自己都合ではなく会社都合で退職することの3つのメリットについて解説するので、ここでしっかりと押さえておきましょう。
メリット①半年以上の勤務期間があれば失業保険を受給できる
自己都合退職で失業保険を受けるためには、職場を辞めた日以前の2年間に被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)がトータルで「12カ月以上」あることが必要です。それに対し、会社都合退職では、この条件が「6カ月以上」に短縮されます。
つまり、会社都合退職であれば、半年以上の勤務期間があれば失業保険を受給できるのです。
もし勤務期間が半年以上1年未満の人が自己都合退職となった場合には、失業保険が丸々もらえないことになるため、この差はとても大きいですよね。入社して半年以上1年未満の間にパワハラによって退職するのであれば、ぜひとも会社都合で退職すべきといえます。
メリット②失業保険を早く受給できる
通常、失業保険の受給が開始されるのは、ハローワークで手続きをおこなってから7日間の待期期間を経た後からです。
しかし、自己都合退職の場合には、7日間の待期期間後に2カ月の給付制限期間が設けられているため、実際に失業保険を受給できるのは7日+2カ月後となります。
なかには失業保険を受給するために安易な転職を繰り返す人がいるため、それを防ぐために給付制限期間が設けられています。しかし、会社都合退職者は会社側の事情で退職を余儀なくされており、すぐに支援する必要があるため、給付制限が設けられていないのです。
MATSUSHITA KENTO
会社都合退職者は自己都合退職者よりも2カ月早く失業保険を受給できるようになるため、退職後の生活費に不安がある人には大きなメリットといえますね。
メリット③失業保険を長く受け取れる可能性がある
自己都合退職者と会社都合退職者では、失業保険を受給できる期間も異なります。失業保険を受給できる期間は年齢や被保険者期間によって変わってくるものの、自己都合退職者は最大150日であるのに対し、会社都合退職者は最大330日です。
勤務期間が5年以上から給付日数に差が生じてくるため、5年以上働いている人がパワハラが原因で退職するのであれば、会社都合退職を目指すことをおすすめします。
Adviser Comment アドバイザーからのコメント
MATSUSHITA KENTO 松下 建都
失業保険が手厚いことによる様々なメリットを知っておこう
企業に勤めている場合、退職時にハローワークで申請することで失業保険を受給することができます。自己都合と会社都合の場合、失業保険の面だけ見ると会社都合の方がメリットは大きいですよ。
会社都合であれば、自己都合退職と比べて早く・長く失業保険を受け取れるため、心に余裕が生まれやすくなります。退職後に新たな仕事を探す間も、生活にはお金が必要です。蓄えがある場合は良いかもしれませんが、そうでない場合に「生計が立てられない」という不安や焦りから条件にマッチしない仕事に就いてしまい、前職よりもさらに悪い環境に身を置くことになることもありえます。
そういった点からも、手厚い失業保険を受けて金銭的な安心をまずは得ることが大切ですよ。
要チェック! パワハラで会社都合退職するためにやっておくべき3つのこと
パワハラによって会社都合退職するためには、事前準備が必要です。「パワハラがあったので、会社都合で退職させてください」と伝えるだけで、自動的に会社都合退職になるわけではありません。
そこでここからは、パワハラで会社都合退職するためにやっておくべきことを3つ紹介します。会社都合退職を目指すうえではどれも重要なため、ここでしっかりと押さえておきましょう。
①パワハラの証拠はしっかりと残す
パワハラによって会社都合退職するためには、パワハラの証拠はしっかりと残しておきましょう。
パワハラが原因で退職したことを証明するには、パワハラを受けていた証拠が必要です。動画や写真、音声データやメールといった客観的な証拠があれば、職場側もパワハラの事実を否定できなくなります。
また、仮に退職後に職場から勝手に自己都合退職にされていた場合であっても、パワハラの証拠があれば、ハローワークに異議を申し立てることができますよ。
自分の身を守るためにも、パワハラの証拠はしっかりと残しておきましょう。パワハラの証拠になるものの例については、以下を参考にしてみてくださいね。
パワハラの証拠になるもの
- 暴行を受けて負傷した箇所の撮影データ
- 暴言の録音データ
- パワハラにあたる内容のメール
- パワハラを受けたときの状況をまとめたメモや日記
- パワハラが原因で通院した場合の診断書
②就業規則を確認する
パワハラで会社都合退職するためには、就業規則も確認しておきましょう。
パワハラ防止法の施行により、2022年4月からすべての企業にパワハラを防止するための措置をとることが義務化されました。そのため、職場の就業規則を確認することで、職場が適切な措置をとったのかを判断できますよ。
また、就業規則には「退職は〇カ月前までに申し出ること」といったように、退職の申し出のルールについても記載があるため、その点もあわせて確認しておきましょう。
HONDA YURIKA
本来あってはならないことですが、退職の意思を伝えたことで、パワハラがエスカレートするケースもあります。民法上は「退職の2週間前に申し出れば退職できる」と定められているため、状況も見ながら、退職を申し出るタイミングは慎重に判断してくださいね。
③退職届に「一身上の都合」と書かない
パワハラが原因で退職する場合には、退職届に「一身上の都合」と書かないようにしましょう。
一身上の都合は、基本的に自己都合で退職するときに使う理由です。そのため、安易に一身上の都合と書いてしまうと、会社都合退職が認められにくくなる可能性があります。
確かに、一身上の都合と書いておけば説明する手間も省けて面倒は少なくなりますが、会社都合退職するためには、退職届けにパワハラの被害状況について具体的に記載するか、もしくは退職理由は空白にしておきましょう。
もし会社から一方的に自己都合退職にされた場合にはハローワークに相談しよう!
なかにはパワハラがあったにもかかわらず、退職後に一方的に自己都合退職扱いとしてくる会社もあります。
その場合は、すぐにハローワークに相談しましょう。「自己都合退職と会社都合退職のどちらの扱いになるのか?」を最終的に決定するのはハローワークです。
そのため、パワハラを受けた証拠があれば、仮に会社が否定したとしてもハローワークの判断で会社都合に変更になることがあるのです。
もし会社から一方的に自己都合退職にされたら、決して泣き寝入りはせずに、まずはハローワークに相談してみましょう。
パワハラが原因で退職した後はどうする? 準備~転職までの流れを解説
パワハラによって会社都合退職できれば、とりあえずは一安心ですが、その後はどうすればいいのか悩んでしまうこともあるかもしれません。退職してから転職先を探すのであれば、色々と不安も大きいですよね。
そこでここからは、パワハラが原因で退職した後の準備から転職までの流れについて解説していきます。焦りや不安もあるでしょうが、一つずつ進めていきましょう。
①あらためて退職要因は何だったのかを整理して言語化する
転職活動を始めるにあたって、まずはあらためて退職要因は何だったのかを整理して言語化してみましょう。そうすることで、次の職場探しのヒントを得られますよ。
パワハラによって退職している以上、パワハラが最大の退職要因であることは間違いないでしょうが、退職を決断したのには、他にも仕事や職場に対する不満があったのかもしれません。
たとえば、下記のような例が挙げられます。
退職要因の整理例
- 先輩社員とペアになって仕事を進めるのは、やりづらさを感じていた
- 利益最優先の社風が自分には合わないと感じていた
どんな小さなことでも構わないので、退職を決意した要因になりうるものを言語化してみてください。
YONEDA YUKI
なお、退職要因を言語化する際は、実際に紙やパソコンに書き出してみることをおすすめします。可視化することで、より整理しやすくなりますよ。
②次の環境に求めることを退職要因を軸に洗い出す
退職要因の言語化が終わったら、続いて退職要因を軸にして次の環境に求めることを洗い出していきましょう。
退職要因はいわば前の職場に対する不満や、前の職場に足りないものであるため、それを解消できるような環境が次の職場に求めるものとなります。
退職要因の言語化例
- 先輩社員とペアになって仕事を進めるのは、やりづらさを感じていた → 基本的に一人で進められるような仕事がしたい
- 利益最優先の社風が自分には合わないと感じていた → 顧客ファーストを理念にしているような職場で働きたい
上記のように、退職要因を軸に洗い出していけば、徐々に転職の軸が固まっていきますよ。
転職の軸の作り方については、以下の記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてくださいね。
転職の軸60選! 自分だけの軸を見出すカギは不満の言語化にあり
③選考に備えて就職意欲が伝わる転職理由をまとめる
最後に、選考に備えて就職意欲が伝わる転職理由をまとめましょう。
面接において、パワハラが原因で退職したことを伝えるのは問題ありません。ただ、そのまま伝えるだけでは、面接官から「働く意欲は取り戻しているのか?」「自社でもすぐに辞めてしまうのではないか?」といった不安を持たれてしまう可能性があります。そのため、そうした不安を払拭できるような、前向きな表現で伝える工夫が必要です。
就職意欲が伝わる転職理由例
- パワハラのダメージは完全に回復している点
- この会社で働きたいという強い意志
上記を軸に転職理由を組み立てていけば、面接官の不安も払拭でき、効果的なアピールにつながりますよ。
転職時の志望動機の作り方について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
35例文|転職の志望動機は「入社後のミスマッチ」の懸念解消がカギ
Adviser Comment アドバイザーからのコメント
HONDA YURIKA 本田 百合香
仕事を退職しても焦らずにまずは自分を労ろう
退職後は心身共に擦り切れており、正常な判断ができないことも多いでしょう。ただ、周りをついつい見てしまい「早く仕事を探さなければ」「早く社会復帰しなければ」という焦りが出てしまうことは誰でもあることです。
しかし、無理は禁物です。焦ると良い結果につながりにくくなるほか、心身が回復していない状態ではまた同じことを繰り返してしまったり、空回りする可能性があります。
まずは心と身体をゆっくり休めて回復に努め、冷静な判断ができる状態になることを目指しましょう。自分を責めず、焦らず、自分を労ることが大切です。
要注意! パワハラが原因で退職するうえで避けるべき行動
パワハラが原因で退職するうえで避けるべき行動
パワハラの被害を受けていると、すべてを投げ出したくなったり、一刻も早く退職しようと焦ったりすることもあるかもしれません。とはいえ、そのような感情や焦りに任せてしまっては、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。
そこでここからは、パワハラが原因で退職するうえで避けるべき行動について解説していきます。退職してから後悔しないためにも、事前にチェックしておきましょう。
無断で欠勤する
いくらパワハラを受けて心身ともにダメージを負った状態であったとしても、職場を無断で欠勤するのは厳禁です。無断欠勤をすることで職場内の人たちはもちろんのこと、取引先や顧客などの職場外の人たちにも大きな迷惑をかけることになります。
また、無断欠勤を続けていると、懲戒解雇される可能性もあります。懲戒解雇は自己都合退職扱いとなるため、失業保険の受給に制限がかかるだけでなく、あなたの経歴にも傷がついてしまいますよ。
仕事を休む場合には、必ず連絡を入れるのが社会人としての最低限のマナーです。パワハラを受けていたとしても、無断欠勤だけは絶対にやめましょうね。
YONEDA YUKI
直属の上司からパワハラを受けている場合には、先輩社員や同僚に電話で欠勤の連絡を入れたうえで、上司にはメールやSNSで伝えるのも一つの手です。欠勤連絡のルールは職場によって異なりますが、まずは欠勤の事実を伝えることが大切ですよ。
後先考えずに勢いで退職を申し出る
パワハラを受けているのであれば、すぐに行動を起こすことが大切ですが、だからといって後先考えずに勢いで退職を申し出るのはおすすめできません。
確かにパワハラの被害から逃れるためには、退職するのが最も効果的な手段ではありますが、相談窓口の活用や部署異動・休職の検討など、退職以外にも状況を改善できる手段はあります。
また、退職後には次の仕事を探す必要があるため、ある程度のプランを立てたうえで退職を申し出るようにしないと、最悪の場合、退職後に生活が立ち行かなくなる可能性もありますよ。
この先の人生も考えた場合、後先考えずに勢いで退職を申し出るのはリスクがあるため、いったん冷静になって検討するようにしてくださいね。
HONDA YURIKA
とはいえ、パワハラを受けている状態では、正常な判断ができないかもしれません。今後について考えるのであれば、何日か休みを取って、いったん心を落ち着かせてから検討するのが良いでしょう。
Adviser Comment アドバイザーからのコメント
YONEDA YUKI 米田 有希
パワハラが原因で退職するときは自分を不利にする行動を避けよう
パワハラを受けて仕事を退職する場合、判断力が鈍っていて普段なら取らない行動を起こしてしまうこともあるかもしれません。特に上記のような行動以外にも、社内の人間や会社の悪口を言う、いきなり転職活動を始める、現在の仕事を投げやりにするといった行動に注意しましょう。
いくらパワハラを受けているとはいえ、今の仕事を投げやりにすることや最後まで引き継ぎをしないことは、同僚や取引先に迷惑をかけることにつながります。また、パワハラによって体調が悪いときに転職活動を始めると、正常な判断ができないことが多いですよ。
もうかかわることがないと思っていても、転職した先で今の会社とかかわる可能性はゼロではありません。最後まで仕事に責任を持つことは、自分の将来を守ることにもつながりますよ。もちろん無理のない範囲ではありますが、最後まで社会人の責任は果たすようにしましょう。
パワハラで退職したいと考えたら身を守るために迅速に行動を起こそう!
パワハラを受け続けていると、心身に重大な悪影響を及ぼす可能性があるため、そうなる前に迅速に行動することが大切です。
ただし、パワハラで退職するのであれば、失業保険が手厚くなる会社都合退職を目指しましょう。失業保険によって金銭面の不安が軽減されれば、安心して転職活動に専念できるようになりますよ。
パワハラを受けていると、すぐにでも退職したいという気持ちも湧いてくるでしょうが、焦りは禁物です。本記事で解説した内容を参考にしつつ、パワハラに関する理解を深め、身を守るための行動を起こしていきましょう。
- 記事の編集責任者
- 今井 祐大セカンドエージェントG マネージャー