「好き」に素直になれば道は拓けていく|就活こそありのままの自分で飛び込んでいけ

ベーシック 執行役員 CAO コーポレート部門長 角田剛史さん

大学卒業後、ソニーにて法人営業や経営企画を経て、アメリカ現地法人の管理部門責任者に就任し、赤字事業の立て直しを実行。その後、ディー・エヌ・エーに入社し、新規事業責任者として海外向けのWebメディアサービスを立ち上げ、月間1.4億ページビューを超える規模に育てる。スタートアップの創業期メンバーとして、家具のサブスクリプション事業の立ち上げに関わった後、2018年にベーシックに入社。経営企画部を新設し、経営企画機能をゼロから立ち上げ、現在は執行役員CAOとして全コーポレート機能を管掌する

この記事をシェアする

「好き」に素直に「成長」を視野に、新卒の会社を選択

自身のファーストキャリアを選ぶうえで大切にしていたことは、「好きな製品やサービスであること」と「成長できる環境があること」の2つでした

地方の大学出身で、当時は今とは異なりインターネットで知ることができる情報がまだまだ少なく、比較的情報が閉ざされた環境の中で就活をおこなっていました。当然のことながらオンライン面接というものは存在しておらず、面接の度に上京する必要がある、という物理的制限もありました。

そのため、とにかく視野を広げて就活をするようなやり方ではなく、ベースとしてはその当時の自分の「好き」にまずは素直に従って会社選びをすることにしたのです。シンプルに自分が好きな製品やサービスに携わりたいというのはもちろんなのですが、自分が好きな製品やサービスでないと、たとえば仕事で苦境に陥ったときに、やる気やモチベーションを保ちづらいと考えていたことも大きいです。

その観点から、とにかくソニー製品が好きだったので、自然と「ソニーで働きたい」と思うようになっていました。前述のように持っている情報が少なかったからということが多分にありますが、ソニーのように誰もが知る世界的な企業であれば、優秀な人材も自然と多く集まっているだろう、とある意味単純に考えていました。今とは異なり、スタートアップやベンチャー企業という選択肢が一般的な時代でもなかったですしね。

大学時代はスポーツに打ち込んでいたこともあり、“好き”に加え、周りの社員から良い影響や刺激を受けて成長できそうか、という視点も合わせて大切にしていました。

その後は実際にソニーの国内営業部隊にて、法人営業職に就きました。営業という職種についても自分で希望を出したのですが、これについては、「どうしてもしたい」思える職種がない一方で、最終的に何をするにしても、もっとも現場に近い、ある意味泥臭い仕事を最初にすべきだと個人的には考えていたからです

その想像の通り、お客様から対面で厳しい言葉やご指摘を受けることはもちろん、不具合を起こした製品が正常に動作するまで帰らせてもらえなかったり、製品の度重なる不具合で「こんなものはもういらない」と数十キロはある法人向けの機材を投げつけられたりしたこともありました。

そんなとき、もし自社の製品に愛着がなかったら、すぐに嫌になってしまうと思います。しかし、「この製品やサービスを広めるために頑張ろう」「今は大変だけど、もっと魅力を届けるために必要なプロセスだ」といった想いが根底にはあったため、多少の困難があったとしても乗り越えられたと思っています。

アメリカ赴任で環境が激変。新たな環境から「やりがい」を見出した

そうして新卒から法人営業に携わっていく中で、売上のみならず、より事業の全体像が見える立場で会社に関わっていきたいという思いが徐々に強くなり、会社の公募制度に申し込む形で、経営企画の部署に配属されることになりました。

そして、所属していた事業部の採算改善のために、全世界で50以上あった各国の拠点と日々やりとりを重ねるうちに、大きな改善が必要であった国の1つであるアメリカに赴任し、管理部門の責任者として直接赤字事業の立て直しを担当することになりました。

それまで本社の立場でやり取りしていた現地法人で実際に働くことで、与えられるミッションの大きさや裁量、また仕事に対する達成感など、自分を取り巻くすべてが変化しました。

本社では扱う金額は大きいものの、どうしてもその範囲は、分析やレポーティング、そして各拠点への指示出しにとどまることが多いです。また一定整っているからこそ、役割が細分化され、ある意味働くうえでの窮屈さのようなものもどこかで感じていました。

一方で、現地法人での仕事は、会社の規模感が小さく、まだまだ整っていない部分も多いからこそ、自分が会社や事業に与える影響力が大きく、より主体的に取り組む姿勢がおのずと求められるようになりました。言葉が完全には通じない環境においても、自分がどれだけ価値を発揮できるのか、現地のメンバーからも信頼を得られるのか、そういったことに向き合う日々でした。

このアメリカでの経験を通じて、「事業に対する手触り感」、そして「会社や事業への貢献実感」を強く感じられることは、自身にとっての大きなやりがいにつながるのだと再認識しました

そこでの思いがきっかけとなり、ソニーを退職したあとは、当時社員数が2000名程の規模であったディー・エヌ・エー、そしてその後は遥かに小さい10名以下のベンチャー企業で働いていますが、その根底には、赴任時代に感じた「企業サイズが小さくなることによる仕事のおもしろさ」があります。

角田さんのこれまでのキャリアの変化

そして2018年、今働いているベーシックに入社しました。入社の決め手となったのは、「ミッションに共感できたこと」、そして「自分のそれまでの経験を活かせるイメージができたこと」です。

ベーシックは、「問題解決の専門家集団として、情熱を妨げる世の中のあらゆる問題解決をやり抜き、多種多様な企業が強みに集中できる世界を創造する」ということをミッションとしている会社です。私自身も、それまでの会社において、内部・外部双方の問題を解決することで、やりがいや喜びを感じてきたので、この理念にとても共感しました。

そのうえで、社員数が万単位の大企業から一桁のスタートアップまで、さまざまなフェーズや規模感の会社を経験してきたことから、自分であればこれからのベーシックの成長に応じて柔軟に貢献できるイメージが湧きました。前述の経緯から、前職まではとにかく規模が小さい環境を追い求めていたところもありますが、次は、それまでに得た経験を活かして、いかに世の中の問題を解決できるかにフォーカスしてみたくなったのです。

周りの期待に徹底的に応えながら、社会貢献できる存在を目指す

日々の仕事において大切にしているのは、常に「目的思考」でいることです。仕事で意思決定をするときに「過去にこうやっていたから」「◯◯さんがこう言っていたから」などで決めることは絶対にしません。必ず目的に立ち返り、何度も自問自答して、本当にその目的を達成できる方法は何かを突き詰めて選択をするようにしています

大企業であるソニーでは、この視点が欠けている場面に遭遇することも少なくなかったからこそ、今はそうしないことを強く意識するようになっています。

たとえば、ベーシックに入った初年度に経営企画の機能をゼロから立ち上げたのですが、実は元々入社が決定した際には、新規事業の立ち上げを担当することになっていました。

ただ入社してから数ヶ月ほどで会社の状態を理解していく中で、ベーシックの成長のためには、新たに新規事業を追加することではなく、まだまだ整っていない会社の体制や仕組みを整備し、既存事業をより大きく伸ばしていくことが必要であると強く感じました。

そしてそのことを社長とも議論し、当初の役割からあえて変更し、その整備のために経営企画を立ち上げることにしました。会社を成長させることが目的であるならば、その達成のためには自分の役割すら何だっていいと思っているからです。

仕事の一つひとつに対して常に目的思考を忘れないようにしている一方で、自分自身のキャリアについては、具体的に何かを目指す、というのはあえてしないようにしています。

自分の所属する組織や周りとのつながりをとにかく大切にする。そして、その中で自分に与えてくれる期待や機会に対して、自分の持っている知識や経験を総動員し、徹底的に応えていくということを心掛けています。

若干矛盾するように聞こえるかもしれませんが、それこそ過去には前述のように、経営企画を経験したい、海外赴任を経験したいなど、とにかく何かの目標に向かって走っていた時期もありました。

しかし、結果的な課題解決の大きさや仕事の成果の観点では、とにかく与えられた目の前のことに全力投球する働き方が自分には合っているということが分かったのです。山登り型、川下り型というキャリアの考え方がありますが、私の場合は徹底的な川下り型です。

そして、そのように川を下る中で出た成果やノウハウを、今はnoteなどを通じて積極的に外部に発信するようにもしています。これは、私たちの苦労や取り組み方を参考にしてもらうことで、遠回りせず、最短距離でゴールに近付ける企業が、1社でも増えることを望んでいるためです。

このような活動は、いわゆる“車輪の再発明”のような事態を避けることができ、それぞれの会社が本来情熱を注ぐべきところに注げることにもつながります。

間接的かもしれませんが、こうしたことを継続していくことで、日本全体の効率化、生産性の向上につながると信じています。先ほどベーシックのミッションについても触れましたが、自分達のサービスを提供することを通じてはもちろん、このように情報を共有することでも同じくベーシックが掲げるミッションの実現に貢献したいと考えています。(参考:角田さんのnote

角田さんの仕事のポイント

  • 常に目的思考で、日々の選択をする

  • 周りからの期待に対して、徹底的に応える

  • 他社や社会への貢献のために、惜しみなく情報を公開する

就活ではSNSをリサーチと発信の両面で活用すべし

これから就職活動をする方、もしくは既に始めている方も含めて、どのように企業選びをするか悩まれている方は多いと思います。社会人として働き始める最初の企業選びにおいては、自身の軸でもあった「その会社の製品やサービスが好きかどうか」と、「会社が圧倒的に成長しているか」という点を個人的にはやはりお勧めしています

私自身が就活を経験したときとは状況も事情も大きく異なりますが、その後さまざまなフェーズや規模の会社を経験し、また人事の管掌役員として新卒採用にも現在かかわっているからこそ、これは改めて言えることかと思っています。

1社目がどんな企業であるかによって、自分のその後の成長角度、ひいては人生が変わり得ることは多くの人が感じていることでしょうし、だからこそ企業選びに慎重になるかと思います。一方で、どんな会社を選ぼうと、一定期間全力でコミットして働けないと、結局得られるものは極めて限られてしまいます。極端な言い方をすれば、仮に半年で会社を辞めるなどしたら、最初の会社がどこであろうとほぼ変わりはないでしょう。

自分の人生設計からの逆算で、ある程度打算的な企業選定の観点はあるかと思いますが、そのうえでも、製品やサービスが好きでないと、結局どこかで頑張れなくなったり、諦める気持ちが出てしまうものです。いろいろ考えすぎるよりも、まずは「好き」という気持ちに素直になり、自分が全力でコミットできる会社を選ぶのが良いと思います。

そして社会人としての成長に目を向ければ、「会社が圧倒的に伸びているか」という要素も非常に重要です。事業が成長しているほど挑戦する機会が与えられますし、新たなポジションも次々と生まれていくからです。

これも私自身がこれまでの転職を通じて、成熟事業、成長事業、双方に身を置いて実感したことです。いくら好きなサービスでも、完全に成熟産業であり、事業としての成長が限られている状態では、どうしても経験やそれに伴う個人としての成長は相対的には限られてしまいます。

では、どのようにして、そのような「好き」や「成長している会社」を見つけるのか。OB・OGなどの直接のツテがある人はもちろんそれを最大限活用すれば良いかと思いますが、どうしてもそれでは数や範囲に限りがあるでしょう。だからこそ、個人的にはやはり「SNS」を活用することをおすすめしています。

特にTwitterはここ数年でビジネスに関する発信が急激に増えており、以前からあったような会社公式アカウントからの発信に加え、その会社に属する社員の個人アカウントによる発信が昨今増えています。かくいう我々ベーシックも、そのような会社の1つです。Webサイトや説明会などよりもリアルな情報や雰囲気を知ることができるので、具体的に気になる会社があれば、ぜひチェックしてみるといいでしょう。(参考:角田さんのTwitter

まだそこまで具体的に会社がしぼれていないという場合でも、著名な投資家や経営者を中心に、業界情報や企業分析を発信している人が多数いますので、そのような人たちから客観的な情報を収集することも非常に意義のあることだと思っています。

このような客観的な意見をいくらでも見れるのは、昔では考えられないことであり、活用しない手はないと思っています。

このような情報収集に加え、情報発信もおこなえるとSNSとしての有用性はより増すでしょう。元来情報というものは、自ら発信することで、より有益な情報が集まりやすくなる構造ということもありますし、発信を通じて自分の思考の整理もできます。さらにいえば、発信自体が自分をよりよく知ってもらったり自己PRをおこなうことにもつながります。

情報発信については字数が限られているTwitterに限らず、noteなどより多くの文章がかけるプラットフォームの活用も大変有効だと思います。そのような就活生からの情報発信が、面接や入社のきっかけとなった例は、実際にベーシックでもあります。

就活におけるSNS活用法

企業選びの決め手は「人」。ありのままの自分を見せていこう

仮に上述の「好き」「成長」の観点で複数の企業が横並びになったとしたら、最終的には、やはり「人」で企業を選ぶのが良いと思っています。その人たちと一緒に働きながら切磋琢磨しあい成長していけそうか、壁にぶつかってくじけそうなときも共に励ましあい乗り越えていけそうか、などですね。

結局のところ多くの仕事は1人では完結しない以上、「誰と働くか」は合わせて非常に重要な要素だと思います。

企業の体制やフェーズにもよるので、すべての企業で実現可能とは限りませんが、志望企業で働いている人がどんな人なのかを見極めるためには、本音でカジュアルに語り合える場の設定を企業側にお願いしてみるのも手だと思います。

実際に我々ベーシックでは、就活生の意向や思考に応じて、面接官ではなく、現場社員との面談を実施することも少なくありません。

角田さんからのアドバイス

最後に就活生の方に伝えたいのは「自分を取り繕う必要はない」ということ。受かろうとして自分を取り繕い、仮に内定が出て入社できたとしても、本当の自分を評価してもらったわけではないので、その後の良い結果にはつながりません。就活中に新たな経験を積み上げるのは難しいですし、結局は今まで自分がやってきたことがすべて。自分を信じて、ありのままで挑戦しましょう。

そのためにも、就職活動におけるゴールを「入社」ではなく「入社後の活躍」に置くのは、考え方として非常に重要だと思っています。ゴールを「入社」のように手前に置くほど、なんとかテクニカルにでも合格を勝ち取ろうという思考につながりがちだからです。

そうではなく、あくまで入社後自分がいかに成長できるか、成果を出していけるかを見据えていると、自分ができることややりたいことを率直に企業に伝えたうえで、それが実現し得る環境なのかを見極める方向にマインドが向くのではないでしょうか。

就活は必ずしも試練やテストのようなものではなく、いろいろな社会人と一気にたくさん話せる「チャンス」でもあります。学生時代は出会えない立場の人や、情報収集を進める中で尊敬できる人との出会いもあるでしょう。そういう楽しさも感じながら、前向きに取り組めると良いですね。

皆さんが本来の自分を適切に評価してくれる会社や、心から好きだと思える製品やサービスを提供する会社に出会えることを願っています。

角田さんのキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

この記事をシェアする