“凡人”ならではのワクワクするキャリアの描き方|他者の誘いに耳を傾け予想外のキャリアを楽しもう

グッピーズ 取締役事業本部長 木村 仁士さん
Hitoshi Kimura・2005年に東京都立大学理学部を卒業し、新卒でニッポン放送に入社。3年にわたりラジオ制作を担当する。その後営業に異動となるがモノづくりの面白さを忘れられず、知人からの誘いでCELL(セル)に転職。日本最大級のライブ配信サービス『ニコニコ生放送』の制作に携わる。2019年、グッピーズに入社し、現職
キャリアは自然と作られるもの。流れに身をまかせることも必要
私の経歴を振り返ると、機会が巡ってくるままに進んできたように感じます。
高校生の頃は宇宙物理学者を目指していたので、東京都立大学の理学部に入学し、物理学を専攻しました。しかし、入学してすぐにその夢の実現が難しいと感じ、早々に諦めることになりました(笑)。
就職活動の時期になり、卒業後の進路を考えたときに「昔から音楽やエンタメが好きだな」と思い、テレビ局に応募しましたが、エントリーシートや一次面接で不合格となりました。
車の部品メーカーやオーディオメーカーの選考も受けましたが、工学部で専門に研究していた人たちと比較され、内定をもらうことはできませんでした。「自分には何もないのかもしれない」「こんなにもうまくいかないのか」と焦りを感じましたが、とにかく就職しなければならないと思い、就活を続けました。
その時、ふとラジオ局のことが頭に浮かびました。学生時代から『オールナイトニッポン(ニッポン放送をキーステーションとする深夜番組)』という深夜番組を聴いていたので、制作にかかわれたら面白そうだなと思ったのです。
ただ、ラジオ局も入りにくいイメージがあり、さらに新卒採用をおこなっているのかどうかも疑問でした。 しかし、ホームページを見てみると採用情報が掲載されていたので、応募してみたところ幸運にも内定をいただくことができ、就職することができました。

自分にとって面白い仕事なら、困難も困難と思わず乗り越えられる
ラジオ局に入社してからは、番組制作に没頭していきました。特に面白かったのは、どれだけ構成を緻密に作り上げても、生放送が始まると必ず思い通りには進まないということです。これは生放送ならではの特性なのですが、予想だにしなかった出来事がつぎつぎと起こるんですよ。用意していたものがないこともあれば、予定していた人が来ないこともありましたね(笑)。
予定通りに進まないことを嫌う人もいるかもしれませんが、私はそういったハプニングや予期せぬ展開こそが生放送の醍醐味だと感じ、どう対処するかを含めて楽しんでいました。
ちなみに、仕事の休みの日はよくレコード屋さんに足を運んでいました。カッコいい音楽を見つけると、「これは番組で使えるかもしれない」と制作のことを考えていて、遊びなのか仕事なのかわからなくなるほどでした(笑)。そんなふうに番組制作にハマったからこそ、大変な日々も乗り越えることができたと思います。

人からの誘いに乗ることで新しい自分を発見できた

その後、周りの人たちの導きによって、私のキャリアはどんどん進展していきました。
制作の仕事に約3年取り組んだ後、営業部に異動しましたが、全く活躍できない状況に直面しました。そんな時、偶然知り合いから「うちの仕事はどう? 」と誘われ、『ニコニコ生放送』の制作の仕事を紹介してもらいました。当時はまだ新しいプラットフォームであり、詳細はよくわかりませんでしたが、「また制作の仕事ができて面白そうだな」と感じ、転職することにしました。
再び制作の楽しさを実感しながら仕事に打ち込んでいましたが、30代後半に差し掛かると、「このままで良いのだろうか」と将来に対して漠然とした不安や疑問が生じてきました。
そしてまたタイミング良く、以前から知り合いだったグッピーズの社長と仕事の話をする機会があり、その流れで「一緒に働こう」と誘われました。業界や職種は私にとって未経験のものでしたが、話を聞くうちに「面白そうだな」と感じ、入社を決意しました。

これまでのキャリアを振り返ると、私は他の人からの誘いに対して前向きに検討してきました。自分だけで全てを決めてしまうと、自分の限界を超えるのは難しいと思っているからです。
もし私が天才だったなら、自分自身で誰からも邪魔されずに道を切り拓いて進んでいった方が良いと思います。
しかし、私は天才ではないと自覚しているので、他の人からの誘いや影響を受けることで、自分の能力や可能性を超えた道を歩むことができると考えています。 他の人からの誘いや影響は、自分自身の幅を広げるための貴重なチャンスだと思っています。
就活はゲーム感覚で楽しもう! いろいろな人の話を聞いて“自分”を再定義する
やりたいことが既にある人は、それを実現するために就活に取り組めば良いと思います。しかし、まだ具体的な目標が見つかっていない人にとっては、就活をゲーム感覚で楽しむのも1つのアプローチです。
自己分析や面接など、就活ならではの課題に取り組むことは、面倒に感じることもあるかもしれません。しかし、少し俯瞰して考えてみましょう。「なぜこのようなことをする必要があるのだろう? 」というように関心を持つことで、面白さを見つけることができるかもしれません。
また、就活生としての立場を活かせば、さまざまな人に出会うチャンスを作ることができます。興味のある人がいたら、SNSなどを駆使すれば実際に会えるかもしれません。今しかできないことは何かを考え、その実現に向けて楽しみながら進んでみてくださいね。
私のように「自分は何者でもない」と思う人は、就活においては、多くの人と話をすることをおすすめします。そうすることで刺激を受けたり、共感したり、逆に自分の意見と異なることに気づいたりすることができます。自分の感情や意見が少しずつはっきりしていきますよ。
1人で考え込んでもなかなか答えが見つからない場合は、周囲の情報に刺激を受けながら、自分が本当にやりたいことは何なのかに向き合ってみてください。

仕事=人生ではない。仕事やキャリアの固定概念にとらわれすぎないことが重要
就活でも、社会人になってからも同じですが、最初からあらゆることを決めすぎる必要はありません。例えば、「〇〇というキャリアを築く」と1つの道を選んでも、実際にはその通りにならないことも多々ありますし、自分自身が将来本当にそのキャリアに興味を持てるのかも分かりません。
そして、仕事は人生のすべてではありません。仕事は人生の一部であり、最優先すべきものでもありません。必ずしもバリバリ働かなければならないわけでも、やりがいを感じなければならないわけでもありません。世間で言われる仕事の価値観や考え方に縛られずに、自分自身の基準で物事を考えてみてほしいです。
何事も過度に決め込まずに、「面白い」とか「楽しい」といった基準に従って自分のキャリアを歩んでいくと、ワクワク感を味わえるのではないでしょうか。自分自身が本当に興味や喜びを感じる道を選び、自分らしく成長していってください。

取材・執筆:志摩若奈