広い視野でチャンスを呼び込め|一発逆転ホームランではなく小さな積み重ねで信頼を得よう

アドバンスト・メディア 執行役員 人事総務部長 佐藤伸寿さん

Nobuhisa Sato・1999年に大学卒業後、大手小売業グループ子会社に就職。2002年飲食業界のコンサルティングと人材サービスを手掛ける企業に転職。2009年アドバンスト・メディアに転職。総務企画グループ長、人事総務部長を経て2021年より現職

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学生時代とは違う人間関係に感じた新鮮さ

これまで2回転職していますが、最初の就職では自分の中に仕事に対する明確な軸がありませんでした。しかし、1回目の転職で人材育成にかかわる仕事の面白さに目覚め、管理部門を経験することで視野も広がりました。2回目の転職では仕事観の軸に基づく企業選びができたからこそ、いま納得のいくキャリアを歩むことができています。

大学を卒業した1999年は、いわゆる就職氷河期と呼ばれた時期でしたが、大手小売業グループの食品スーパーに就職することができました。深い考えがあって就職活動をしていたわけではなく、たまたまご縁のあった企業に就職したという感覚でした。

中学・高校・大学と陸上の長距離種目に没頭し、大学時代は箱根駅伝の予選会にも出場しました。社会に出てみて、体育会の厳しい上下関係とは違う人間関係の幅の広さに新鮮さを感じました。

最初は食品スーパーの鮮魚売り場を担当し、自分の母親より年上な女性のパートさんと一緒に仕事をしたり、年齢も経験も多彩な方々との仕事には学ぶところが多くありました。

ここでは自分なりに頑張り成果も上げてきたつもりでした。しかし値付けも販売量も陳列方法も本部からの指示で動く大手小売業の末端に位置する現場での仕事を、次第にもどかしく感じるようになりました。

企業研修を請け負う立場で人を育てる喜びを知る

もっと自分の裁量で工夫を凝らして結果を出し、仕事を通じて自分の価値を高められる仕事への憧れが強まったのです。それで転職雑誌で見付けた飲食関係のコンサルティング企業に移ることにしました。

ここでの経験が、その後の人材教育や人事分野でのキャリアにつながる大きなターニングポイントだったと思います。また人材教育や研修のノウハウや知識はこの時の上司に教わったことも多く、私の恩人と言える存在です。今でもときどきお酒を酌み交わす関係が続いています。

仕事の内容は、飲食系フランチャイズ・チェーンの新規出店を支援するため、アルバイト店員の教育や店長育成を手伝うというもの。チェーンオペレーションを徹底的に勉強したうえで、上司と共に研修プログラムも立案しました。新人やアルバイトが研修を経て短期間に成長していく姿は刺激的でやりがいも感じられました。二十代半ばにして、店長研修の講師を務めるまで自分を高めることもできました。

現場経験を買われて異動した本社で新たな目覚め

現場を知る強みを活かすため本社の人事総務部への異動を命じられました。本社での4年間は私の中では人事総務業務全般の土台作りをした時間になりました。人事担当として新卒採用、新人研修、中途採用に携わり、上場企業の総務部として株主総会も担当し、多くの経験ができると同時に管理部門の重みとやりがいにも目覚めました。

佐藤さんがキャリアを絞った過程

仕事内容には満足していましたが次第に会社の業績が伸び悩むようになり、社員数を絞るため採用の仕事も減ってきました。そこで2度目の転職を決意しました。

2度目の転職では自分の仕事観、キャリア観の軸が出来上がっていたので、企業選びには明確な基準を設けました。業種・業界は問わない代わりに社員数が100~200人の企業を探しました。それまでの経験から、そのくらいが管理部門としての人事総務の仕事をするうえで一番面白くやりがいがある規模だと考えたからです。

また株主総会など株式周りの仕事も続けたかったので上場企業であることも条件としました。最後に、明確な特徴を持っていること。自分が人事総務部で採用の仕事を担当する事を想定した場合、特徴ある企業の方が自信を持って自社の成長性を説明できるからです。

結果的に従業員が当時80人ほどだったアドバンスト・メディアに職を得ました。業績が向上するとともに採用も拡大。中途採用だけでなく新卒採用も開始したので、上司と共に採用の仕組みを最初から作り上げるなど会社の成長と共に多くの経験を積むことができました。現在の社員数は約200人。かつての2倍以上です。事業の拡大と企業の成長に立ち会い、人事総務の仕事を通じて会社に貢献できた喜びを感じています。

佐藤さんの仕事観の変遷とキャリアアップ

転職3年後にグループ長となり、さらに5年後には人事総務部長を務め、今年から執行役員の肩書が加わりました。役職は変化し、自分が一歩引くことで部下を育てたり、全体状況を踏まえたうえで判断するなど、単なるプレーヤーとして使う頭の筋肉とは違った筋肉を使う日々ですが、いざプレーヤーとして打席に立ったときには、しっかりバットを振って手本を見せられる準備は怠らないつもりです。

10の力を12に見せるより、10の力を出し続けろ

自分のキャリアを振り返ると、最初の転職先でも現在の会社でも上司に恵まれました。私自身は大きなホームランを打って一発で信頼を得るというより、コツコツと実績を積み重ねて信頼を獲得するタイプです。それを理解し正しく評価してくれる上司がいて、可愛がってもらえたことは幸運でした。

会社組織にいると10の力を12に見せるアピール上手な社員もいるし、それはそれで一つの能力だと思います。ですが最終的な企業への貢献度という観点からより重要な資質だと思うのは10の力を出し続ける能力です。もちろん会社によって求める人材は違うので、それぞれが自分に合った会社を選んで能力を発揮することが大切です。

10の力を12にに見せると10の力を出し続けるの図

数値データから見極められる企業の“本当”

佐藤さんのインタビュー写真

企業選びについてアドバイスをするなら、現在知名度の高い有名企業よりは、伸びしろのある成長企業、あるいは成長する業界、市場を探せと助言します。そういう環境に身を置くことで自らも成長できるからです。

また具体的な選び方については、まず企業が公表している売上高や利益率、社員の平均年齢や給料、離職率等といった基礎データをしっかり調べてください。その上で会社のアピールとデータが示す実態に違和感を持ったら考え直すことを勧めます。たとえば、職場の雰囲気がアットホームで仕事仲間の関係性も良いという企業なのに、離職率が高いのは違和感があります。

働く環境を考えるうえで人事制度や評価制度は重要ですが、どのような制度があるかよりも、制度をどう生かし効果的に運用できているかの方がはるかに重要です。それを外部から見極めるのは難しい面があります。

しかし一つの判断基準として、たとえば評価制度を10年間も更新していないような企業はいかがなものでしょう。どんな制度も100%ではなく、常に見直して改善する姿勢こそが重要で、それを怠る企業には疑問符が付きます。評価制度の直近の更新がいつだったか尋ねてみても良いかと思います。

視野を広く世の中を見渡そう。重要なのは予測困難な変化に対応できる柔軟性

自分のキャリアについて軸となる志向や考えを持つことはもちろん重要ですが、それに縛られすぎて柔軟さを失わないよう注意すべきです。

就活生には視野を広く持っていただきたい。自分が望む業種・業界を目指すことも大切ですが、こだわりすぎれば視野は狭くなります。狭くなりすぎれば自分に対する自信を失ったり、人をうらやむ気持ちが強くなったりします。視野を広くすれば新たな発見があり、意外なチャンスに巡り合うこともできます。

世の中の変化は加速しており、これから20年先、50年先の日本や世界がどうなっているか誰も予測できません。その意味でも視野を広く持ち変化に対して柔軟に対応できる心構えが不可欠です。これから求められる人材も、自分の軸を持ちつつも社会の変化に柔軟に合わせられる人。そういう人材が、社会が変化しようとも、いつの時代にも必要とされるのだと思います。

目の前だけを見ていては判断を誤ります。常に世の中の動きや社会の動向に敏感になり先見の明を養うべきです。

私が音声認識の製品・サービスを提供する現在の会社に移った2009年は、まだスマホが普及し始めたばかりの時期でした。もちろん音声認識技術やAI技術がこれほど急速に進化しモバイル環境がここまで整うとは考えてもいませんでした。それでも音声認識の進化の先には、より便利な生活を思い描くことができましたし、さまざまな社会課題を解決することが想像でき、会社の発展を予感できました。その予感に従った転職は正解でした。

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取材・執筆:高岸洋行

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