WILL/ CAN /MUSTの交点を最大化せよ|自分の働く姿を想像してワクワクできる環境を選ぼう

ツクルバ 代表取締役CEO 村上浩輝さん

Hiroki Murakami ・1985年生まれ。大学卒業後、不動産デベロッパーにて法人アセットマネジメント、インターネット企業で不動産関連SaaSプロダクトの企画開発・マーケティングなどに従事。その後、東日本大震災をきっかけに「自分たちの世代が立ち上がらなければ」との思いに衝き動かされて起業を決意。2011年8月にデベロッパー時代の同僚だった中村真広氏とツクルバを共同創業、代表取締役CEOに就任。2019年東証マザーズ上場

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ターニングポイントにつながった3つの節目

人生を振り返ってみると、3回の節目があり、それぞれの節目で受けた刺激がまとまって「起業」という1つのターニングポイントになりました。1つ目の節目はインターネットが一般的でなかった90年代、私が小学生のころに、家にパソコンが来て、インターネットの使用が可能になったことです。

ニュースではビル・ゲイツ氏と孫正義氏の記者会見が取り上げられており、Windows95の発売が大々的に報じられていました。子供心にすごいことが起きているんだと感じるとともに、「世界は神様が創ったのではなく、誰かの力で世界が創られていて、自分が使っている技術も誰かが創り上げたものだ」と妙な納得をし、自分もそうした「創造する側」になりたいと強く思った記憶があります。 

2つ目は高校3年生の頃です。当時は何かに打ち込むこともなくなんとなく毎日を過ごしていました。ところが他の高校の友人が野球の甲子園大会に出場したのを目にし、無気力だった自分の日常が恥ずかしくなり、せっかくの人生を「全力で生き切りたい」と目が覚めた思いでした。 

高校時代の後悔もあってサークル活動に打ち込んだ大学時代が3つ目の節目になりました。ダンスの舞台作りに精力を注ぎ込み知ったのが、チームで一つの舞台を作り上げる喜びです。そして、それまでの「創る側に回りたい」「全力で生き切りたい」という気持ちに加えて「チームで可能性を追求したい」という3つが重なり、起業への思いに集約されていきました。

村上さんのターニングポイント

 年齢に関係なく仕事を面白がれる会社を選ぶ

学生時代に起業の真似事みたいなことをしていました。お金はある程度稼げはしたのですが、スケールするイメージができない。そもそも社会のことも分かっていないことは理解していましたから、大学卒業後にどこかの企業で多くを学びたいと考えました。では、どのように企業を選んだら良いのか。 

就職活動で一番意識したのは、とにかく面白い人がいる会社で働きたいということでした。仕事も人生も面白がれる人と働いてこそ、自分が刺激を受けて多くを学べると感じていたからです。それで業種や企業規模、待遇などは関係なく、「面白い人がいるか」だけを考えて就職先を選びました。実は不動産デベロッパーの仕事自体には全く興味がありませんでしたが、 就職したリクルートグループのデベロッパーには面白い人が揃っていたからこそ選びました。

大学時代の授業にリクルートのOBが講演に来て、仕事のことをとても楽しそうに話してくれたのです。社員の目標意識が高く男女関係なくバリバリ活躍できるし学歴も関係なくのびのびと働けると。辞めた人間がこれほど褒める会社には何があるのかと興味が湧くのも当然でしょう。 

採用試験は5次面接くらいまでありましたが、そこで対面した面接官も面白い人ばかりでしたし、役員と話をしてみたら、とにかく面白かった。その方が新卒入社して最初に任された仕事は株主総会の際の駐車場の誘導係だったそうです。そんな取るに足らない役割と考えがちな仕事の思い出さえも、全力を注いだ仕事の思い出として笑顔で語ってくれる。

そういう姿を見て「この人、この会社は何なんだ」と心動かされました。 50代の言わば自分から見ると随分年上のおじさんが、こんなに楽しそうに仕事のことを話す会社で働いてみたい。自然にそう考えました。ちなみに、その方には現在、当社の監査役を務めていただいています。

村上さんが出会った「面白い」人の特徴

重要なのは当事者意識と目的意識 

私にとって面白い人とは、話や冗談が面白い人ではなく、当事者意識と高い目的意識を持った人、自分の人生を生き生きと歩んでいる人です。そして会社のことを自分事として話せる人です。他人事のように「社長が○○○○と言ってるんだよね」ではなく、自分が会社を代表するような視点と気持ちを持って、「うちの会社は○○○○なんだ」と話せる人です。 

自分が目立ちたい、自分がモテたいなど、「自分」ばかりの人と一緒にいても楽しくない。仕事も同じです。自分の成績、自分の評価など、ベクトルが自分にばかり向いている人には「そもそも何のために僕たちはこの会社に集まっていたんだっけ」という疑問を感じざるを得ません。

自分ばかりにベクトルが向いている場合

震災に衝き動かされ「何かしたい」と起業を決意

インタビュー写真

「面白い人がいる会社」を基準に臨んだ就職先選びは正解でした。周りの同僚や上司も魅力的で仕事に打ち込んでいましたが、2011年3月の東日本大震災が転機をもたらしました。世の中は混沌とし、自分も変わらなければ、何かやらなければと強く思ったからです。また身内が被災したこともあって、自分がいつどうなるかも分からないという現実に直面し起業に踏み切りました。 

この年の8月には、空間デザインの受託やプロデュース事業、コワーキングスペースの運営を行う会社を立ち上げました。受注仕事ということもあって会社は黒字経営を続けることができましたが、「日本中、世界中の人々が使うサービスを作りたい」との思いが募る一方で、「今の仕事の延長線上にその可能性はない」との限界も感じるようになりました。それで会社設立4年目に会社を生まれ変わらせる決断を下し、スタートアップに方向転換したのが現在のツクルバの出発点です。 

スタートアップとしてのツクルバは順調に成長し2019年には東証マザーズへの上場を果たしました。上場後も成長が加速する中で、2021年は創業10周年という会社としてのターニングポイントを迎え、経営者としても節目を迎えることになりました。2021年8月には、創業者2名による共同代表体制から、私1名が代表取締役となり、よりスピーディに意思決定をしていける体制をつくりました。また、その前には企業としてのミッション、ビジョン、バリューも刷新し、「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」をミッションに掲げ、やがて文化になる事業をつくり続けるリーディングカンパニーを目指しています。

起業家としての村上さんの歩み

時代が求めるのはアンラーニングの力 

優れた人材の条件は、基礎能力が高く、その上でアンラーニングできることです。基礎能力とは個別の知識や技術の意味ではなく、仕事に当たって当事者意識と目的意識を高く保てる能力です。これがないと自分の能力をあるべき方向へ発揮できないと考えるからです。 

アンラーニングとは、成功体験に依存せず自分を更新し続けられる能力のこと。企業は常に新規事業を開拓したり業態変革するなど、流動性の高さと柔軟性を維持しなければ生き残れない時代です。個人も同様で、積極的にアンラーニングしていく力がより重要になっています。 

自分で意識するだけでは、なかなかアンラーニングは難しい。ある経済評論家が「人を変える方法は3つしかない」として、時間の使い方を変えるか、付き合う人間を変えるか、住む場所を変えるかだと指摘していました。さらに「最も無意味なのは決心を新たにすること」と話していましたが同感です。 

アンラーニング力を高めるための心得

常に同じ人と付き合い交流し、”イツメン”と心地良い時間に身を置く。私自身も一生を共にしたい友人はもちろんいますが、その環境にどっぷり浸かりそこから出ないということでは、アンラーニングはできません。暮らしの時間配分を改め、付き合う人や住む場所を変えるのは心地良くはないかもしれませんが、自分にストレスをかけることがアンラーニングにおいては重要なのだろうと感じます。

人生をWILL/ CAN /MUSTで充実させる 

私がビジネス人生において常に心がけてきたのはWILL、CAN、MUSTの交点を広げ、それを最大化することに努めること。つまり「したいこと」「できること」「すべきこと」を常に自分自身に問いかけ、その答えに向けて全力で前進し続ける姿勢を忘れないことです。これは個人的にも事業的にも同じですし人生に対する基本姿勢です。 

WILL/MUST/CANの意味

WILLは自分の意志を意味し、何をしたいかを見つめること。CANは自らのスキルを磨いて何ができるかを突き詰めること。MUSTは何をすべきかを理解することで、企業であれば市場の中で求められる役割を追求すること、個人であれば会社やコミュニティの中にあって構成員の一人、チームの一員として何をすべきかを見極めることです。 

MUSTは環境の変化に伴いどんどん変わります。WILLをアップデートしながらCANを広げていき、3要素の交点の面積を広げていく。そうやってキャリアも人生も築いてきましたし、今後もそうしていくつもりです。

会社選びの軸は「働く自分の姿を想像してワクワクできるか」 

ファーストキャリアの選び方をアドバイスするなら、他人視点で会社選びをしないことです。その会社に就職すれば自慢できるとか、カッコイイからといった他人視点の評価軸では決めないこと。あくまでも自分軸で、その会社で働く自分の姿を想像してみて、ワクワクできるかどうか。その1点で決めてほしいですね。 

私自身「面白い人と仕事をしたい」という基準で、もともと興味がなかった業種に就職しましたが躊躇も迷いもありませんでした。この選択のおかげでWILL(自分のやりたいこと)をどんどん強くしていけましたし、自分がワクワクできる会社を選んだため、ハードワークも辛いとは感じず前向きに仕事に励めました。

結果的にすべてが自分に返って来る手応えもありました。CAN(自分ができること)がどんどん強化され、MUST(自分がすべきこと)を理解し始めたわけです。 

社会において自分を認めてもらうには結局のところ、どのような役割や仕事にも全力で向き合うことです。任された仕事には120%の力で取り組み続ける。そうすることで「コイツはいいな」と信頼を得れば道は拓けます。面白い仕事も回って来るし、面白いし楽しいから仕事で結果も出せる。その結果がさらに新たな面白い仕事を呼び込む好循環が生まれていくのです。 

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取材・執筆:高岸洋行

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