目標は環境によって変わるもの。成功と反省を踏まえて常にキャリアの軌道修正ができる意識を持とう

イデアル 代表取締役社長 濱 恵介さん

Keisuke Hama・大学卒業後、2002年、コナカに入社。同期入社で販売売上トップの成績を残すも1年半で退職。不動産のベンチャー企業に転職し、営業として売上トップクラスに近い実績を残す。2007年10月から、新たな不動産会社となるイデアルの創業メンバーとして参画。営業の第一線で同社の屋台骨を作り上げることに貢献。2020年より、現職

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3つの条件を絞り就職活動を実施。 新卒入社のスーツ販売で同期No.1に!

学生時代は、将来に向けたビジョンはまったくなく、深く考えることもありませんでした。自分が30歳、40歳になったときにどうなっていたいかというイメージも全く描けていなかったというのが正直なところです。

いざ就職活動を前にしたとき、当時の価値観から何となく考えたのが、営業販売公務員です。私立大学の文系学部だったので、その3つから選ぶのが妥当だろうと、深く考えずに絞り込みました。

3つの中で公務員だけはイメージがわかないし、興味も持てない。営業か販売の仕事のどちらかにしよう。自分からガンガンいく営業職よりも、お客様の方から来てくれる販売職の方が良いだろう、と安易に考え、販売職を選びました。

次に考えたのは、大手かベンチャーのどちらが良いかです。大手の方が絶対に安心、安定志向でいこう。これまた単純な発想で、大手企業に絞りました。

もう一つの条件は、できればアルバイトからそのまま正社員として入社する採用ルートがない会社がいいなということ。

「販売職×大手企業」が条件。できればアルバイトから正社員として入社する採用ルートがない会社がいいなと思ったので、「販売職×大手企業×アルバイト採用をしていない会社」という3つの条件に絞って就職活動をスタートさせました。

業種は絞らず回っていましたが、飲食などは興味がなかったため、最終的に自分の中で条件に合致した会社であるコナカに入社を決めました。

コナカの同期入社は、総勢120人。その中で、入社早々の4月から翌年3月の1年間、ずっと売上成績トップを維持しました。

ところが現実は、給与や昇給面で何のアドバンテージもありませんでした。どれだけ好調をキープしても店長になれるのは30代半ばというのが既定路線でした。

自分がもとめるキャリアの成長スピードとは異なるかもしれない

思い描いているキャリアの成長イメージと現状のギャップが自分の中ではっきりしました。そのような経緯もあり、迷うことなく退職することを決めました。

8カ月売り上げゼロ! キャリアアップを考えた転職先での挫折とキャリアの転機

転職先として選んだのは、ベンチャーの不動産営業です。厳しいと思われることの多い不動産業界ですが、どこでも結果を出せると思っていましたし、横並びの待遇の会社ではなく、実力主義の会社で働きたいと思いました。ところが、そこで、人生初の挫折を味わうこととなったのです

1年間売上トップを収めていたことから、少し天狗になっていたのは事実です。業界が変わろうとも自分ならできると大きな自信をもって挑んだのですが、なんと8カ月間売上を1円たりとも上げることができませんでした

私にとってのターニングポイントは、今振り返ると、この8カ月間に辛い辛い売れない時期を経験したことだと思います。

結果が出るまでやり続けるしかない。足で稼ぐしかない。実にシビアな世界だったので、立ち止まって考える暇もなく、とにかく生き残りをかけて、ただ必死に営業に回り続ける毎日でした。

売れない8カ月間を抜け出してからは、100人規模の部門で売上2位の座にまで駆け上がりました。結果を出し続けるようになった頃、「新たに不動産会社を立ち上げるので、創業メンバーとして一緒にきてくれないか」という誘いをいただくこととなったのです。

私自身の中に「近い将来、自分の手で起業したい」という意識が芽生えたのはこのときです。それまで一度も起業を考えたことなどなかったのに、です。「ゼロから会社をつくる」という話が目の前に降ってきたことで、はじめて「自分でやってみたい」という気持ちが明確になりました。

5年以内に辞めて自分で独立する」というビジョンをクリアーにした上で、創業メンバーとして参加することを決めました。28歳のときでした。

「起業」にこだわらず、経営者として会社を大きくするという選択

起業したい」と考えていたころの自分を思い出すと、何がやりたいというより社長になりたかった。当時の自分自身に「なぜ起業したいのか? 」と問うたとしたら、「かっこよさそうだから」という答えが返ってくるだろうと思います。「社長」という肩書きに憧れていたわけです。

創業者と共にイデアルを立ち上げ、ちょうど5年というタイミングで役員になりました。ずっと「社長」にこだわっていましたが、役員になると、見える世界も変わってきます

自分の手で一から起業したい」というビジョンを掲げてそれを目標にやってきましたが、今より規模が小さくなりこじんまりとした仕事をスタートするよりも、この会社の規模を拡大してスケールの大きな仕事関わる方が面白いと感じるようになりました。「自分なら起業できる」という自信はありました。しかし、立場が変わったことで考えが変わってきたのです。

その後もイデアルで働き続け、2020年、代表取締役に就任することとなりました。当初描いていた道とは違いますが、進むべき場所に自然と辿り着いたと感じています

新卒のときに入社したコナカは、「販売職×大手企業」という視点から選びました。成果を出し続けても報われない環境であったことから、次はこの選択方法を軌道修正させ、「営業職×ベンチャー」という視点でベンチャーの不動産会社に転職しました。

その後、新たな不動産会社を立ち上げることとなり、「自ら起業すること」を目標に設定しましたが、「創業者」ではなく「経営者」としてすでにある会社を大きくすることに魅力を感じ、目標を変更して今に至ります。

そのときそのときで自分なりに考えてキャリアを選択しつつ、これは違うという反省を生かして次に進む、常に軌道修正しながらキャリアを築いてきました

就職活動では自分に「合う」「合わない」という視点はもたず、さまざまな会社・仕事を見てみよう

就職活動を目前にしているみなさんは、自分に合う業界って何業界だろう? 自分にはどんな仕事が合っているのだろう? と日々考えているかもしれませんが、自分に「合う」「合わない」という判断軸をもたないでほしい、とまずは伝えたいです。

販売職を経験した後ずっと不動産営業の仕事に携わっている私ですが、自分にとって営業は合っているのか、不動産は合っているのかと聞かれても、正直わからないです。

自分に合っているから今があるのか、実は合っていないからこの程度なのか。判断することなんてできないと思っています。一つ言えるのは、今現在とても充実しているということ。だから、合っていないということはないのだろうな。まさにそういうレベルです。

自分に「合う」のか「合わない」のか考えること自体は悪いことではないとは思います。しかし、経験していないことを考え続けていても意味はありません。そもそもやってみないとわからないのです。私のように長年やっていてもわからないのですから、「合う」「合わない」という視点は思い切って捨ててしまいましょう

考えすぎて行動が止まってしまうくらいなら、考えずにまずは行動した方が絶対に効率的です。まずは動いてみることです。

気になるところは全部見てまわるぞ! くらいに思って、とにかく行動することをおすすめします。色々な人に話を聞きに行く、たくさんの会社を見て回る、実際に聞いて見てみることです。その中で、「面白そうだなあ」と感じる会社を選んでいってほしいと思います。

入社する会社を選ぶ際に1つ、ポイントとなる視点は、経営陣が家庭を持っているかということ。これは、働きやすさに直結する大事な視点だと考えています。将来家庭をもったとき、経営陣に家族を優先する姿勢があるかどうかは大きなポイントとなるので、ぜひチェックしておきましょう。

就職活動における濱さんからのアドバイス

  • 「合う」「合わない」の視点を捨てる

  • 考えすぎず、行動してみる

  • 色々な人に話を聞きに行き、たくさんの会社を見て回る

  • 「経営陣に家族を優先する姿勢があるか」という視点をもつ

私自身、子どもの行事にはなるべく出るようにしていますし、社員に対しては有給休暇はすべて消化するようにと常々言っています。プライベートがうまくいかないと仕事はうまくいきません。よく言われることですが、本当にそれを実感しているからです。

30歳になった時の自分のキャリアをイメージしよう

30歳の時の自分のキャリアをイメージしてほしい。これは、私自身の反省も込めたメッセージです。

30歳にこういうキャリアを築いていたい」「30歳にこういう人になっていたい」「30歳にこういう生活をしていたい」というビジョンを明確にもっている人は強いし、明確になっていればいるほど周りより頑張れます。実現度も上がっていくものだと感じています。

逆に、これをやらず、安易に就職先を決めてしまった私は、何度も軌道修正しながら進むべきキャリアを模索することとなりました

就職して3年目くらいまでは、何をやってもしんどい時期です。25歳をイメージしてもキャリアに大きな変化は見られないと思うので、少し先を見越した30歳くらいの自分を思い描いてみてください。そして、どういう人生を送っていたいかできるだけ具体的にイメージしてほしいと思います。

おすすめは、やはり本を読むことです。できればたくさんの人と会ってほしいと思いますが、学生時代には会える人も限られています。読書なら誰でもすぐに始めることができます。ぜひ色々な人の生き方、考え方に触れてください

もとめられるのは「可愛がられる人」! 社会人スタートの4月1日を良い状態で迎えてほしい

人間がやるべきことの多くを、今後はテクノロジーの力でできるようになる時代です。それでも、これからの時代に変わらずもとめられるのは「可愛がられる人」だと思っています。「可愛がられる人」とは、突き詰めて考えると、本当の意味で「真面目な人」です。

私自身一番大切にしていることは、当たり前のことを当たり前にやる、という基本です。この基本ができる人が、実は意外と少ないのです。

もちろん、みんなやっているのです。しかし、100%できる人は少数で、80%くらいできる人が大多数。そこで100%できる人材というのは、自分の人生をしっかり生きているし成果にもこだわります。当たり前のことを100%当たり前にできる人が「真面目な人」だと思いますし、どんな業界でももとめられ、周囲から常に可愛がられる人材です。

営業の仕事を長くしていることから、面接等で「売れている営業マンの共通点は何ですか? 」と聞かれることがよくあります。私が思うには、この答えも「真面目な人」だと思っています。売れない状態をそのままにしておけない人です。

「真面目な人」は、自分自身の状態に対して絶対に何とかしようとします。いつも何とかするので、必ず成果も出すし出世していくのです。

真面目な社会人としてスタートを切るために、ぜひ学生時代に遊び尽くしておくことをおすすめします。入社する4月1日をどのような状態で迎えるかで、その後の仕事に対する姿勢が大きく変わってくると感じています。

社会人になると誰しも、休みの日が待ち遠しくなるでしょう。これ自体は、普通のことです。問題なのは、「休日だけが楽しみだ」という心の状態でいること。そういう状態で4月1日を迎えないようにしてほしいのです。

ちなみに、私自身は、小学校から高校までサッカーに熱中し、大学時代は、高校時代に興味を持ち始めたバンド活動にはまりました。そのバンドもこれでもかというくらいやったので、社会人になった瞬間にきっぱり辞めた経験があります。

新卒ブランドを無駄にしないで、後悔しない就職活動をしてほしい

新卒入社の就職活動中の皆さんに知ってほしいのは、思うように進まないことも多々あるはずですが、新卒はやはり一度しか使えない大きなブランド、そこは大事にしてほしいということです

死に物狂いで勉強したり調べるなどして、できる限りたくさんの企業を見て回ってほしい。後悔のない選択をするために、とにかく動いてほしい。これが私からのメッセージです。

就職活動はとにかく頑張ってみましょう。無事就職先が決まったら、やりたいことをやり尽くして入社の日を迎えてください。応援しています。

取材・執筆:小内三奈

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