仕事は「見つかる」ではなく「選んだ」で捉えろ|時代が求めるスペシャリストを目指して絶えず努力しよう

ワークスタイルテック 代表取締役CEO GUSTAVO DORE(グスタボ・ドレ)さん

Gustavo Dore・ ブラジルの大学にてマスコミを専攻の後、母国にて新聞記者として働く。23歳で奨学金制度を利用して来日し、慶應大学大学院・メディアコミュニケーション学部にてインタラクティブデザインを学ぶ。同院終了後、ソニーにてVAIO(バイオ)の企画を担当、リクルートにてUI/UXデザイナーとしてWebディレクション業務に従事。リクルート勤務中から「日本の働き方をもっと良くしていきたい」という想いが強くなり、退社を決意。2016年、ワークスタイルテックの前身であるHRテック企業のモティファイを設立。2017年に同社商品「MotifyHR(モティファイエイチアール)」がHRテックアワードを受賞。2019年に事業譲渡を行い、同年7月よりワークスタイルテックとして再スタートし現在に至る

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「本当に自分がやりたいことは何なのか」を問い続け、日本留学という道を選択

ブラジルで生まれ育ち、新聞記者というキャリアを捨ててはじめて日本にやって来たのは23歳のときでした。慶應大学大学院の奨学金制度を活用し、メディアコミュニケーション学部にてインタラクションデザインを学びました。

ブラジルでは、アメリカやドイツなどを留学先に選ぶのが一般的です。そんな中、あえてアジアの国である日本を選んだのは、日本を知る貴重なブラジル人という武器を手に入れて帰国後に活躍できるのではないかと考えたからです

当時は日本で働くことなど想像もしていなかったにもかかわらず、その後ソニー、リクルートの2社で働き、日本人と結婚して子どもも授かり、日本で起業まで果たし今に至ります。

当初思い描いていたキャリアとはまったく別の道を歩んでいることとなりますが、過去を振り返ると、自分の将来について迷い続けた日々でした。

たくさん回り道をして、その場その場で迷いに迷い、決断し、違ったと思えばまた別の道と繰り返してきました

将来について悩み始めた時期は、高校時代に遡ります。好きなことはたくさんありましたが、その一方で何をやりたいのかさっぱりわかりませんでした。

最も身近な両親に相談したところ、「弁護士になれば間違いなく仕事がたくさんあるから弁護士になれ」と言われ、一度は法学部の大学を目指して勉強することに。

ところが、大学入学前になって「やはり何か違う」と感じたことから、もう一度考え直そうと浪人することを決めました。そこから1年間は、「本当にやりたいことは何なのか?」と自分自身に問い続ける毎日でした。

考えても考えてもなかなか見つからず、試してみたのが心理テストを活用した適職検査です。検査を受けて私に合っていると判定されたのは、音楽とマスコミ関係でした。

それほど裕福な家庭ではなかったので、家を出て大学に出るのは難しいと思っていました。

たまたま地元ブラジルで最も優秀なマスコミ関連の大学があったことから、「マスコミを目指そう!」と、その地元の大学への進学を決めました。

一口にマスコミといっても色々な仕事がありますが、大学に入ってみてわかったのは、ほとんどの人が考えるキャリアパスが新聞記者前提だということです。

私自身もその波に乗り、大学入学後は、朝から夕方まで新聞社でアシスタントとして働きながら夜間に大学に通って勉強しました。

記者の仕事のもっともよいところは、色々な人と話す機会に恵まれていることです。ファーストキャリアとして今振り返るととても良かったと思うのはこの点です。

さまざまな職業の人に触れ、仕事について見聞きする中で、大学入学当初に描いた新聞記者という道ではなく「ものを作り出すプロデューサー的な仕事」に就きたいと考えるようになりました。

ものづくり」に関わる仕事に大きな魅力を感じるようになったのです。

ただ、私が勉強してきたマスコミとはまったく学ぶ領域が異なります。今から専門性を身に付けるには、大学に入り直すより修士課程に進んで専門分野を変える方が得策だと考えて、大学院への進学を考え始めました。

家計に負担をかけないために、奨学金制度があることが大条件でした。奨学金×修士課程で学べる環境を探し回った結果出会ったのが、慶應大学の大学院だったのです。

ドレさんの歩んできたこれまでのキャリアの画像

ソニーとの共同プロジェクトをきっかけに「日本での就職」を決意

慶應大学院でインタラクションデザインを学び、来日後2年目で論文の提出に目途がたったころには、そのまま博士課程に進むことを考えていました。

そもそも、日本で就職することはまったく考えていなかったのです。ブラジル人である私の立場から見ると、採用される自信はまったくありませんでしたし、日本で就職活動をするのはかなり難しいイメージがありました。

ところが、思いもよらない誘いを受けることになったのです。在学中に大学院とソニーの共同プロジェクトにかかわっていて、そのときに2,3回会ったことのあるソニーの社員の方から教授に連絡があり、「ドリーに来てほしい」と言っているというのです。

しかも採用を急いでいて、翌日面接に行ってそのまま採用されることとなりました。

周囲からは「他の会社も検討した方がいいよ」「色々見て回った方がいいよ」とさまざまなアドバイスと共にプレッシャーをかけられましたが、逆に心の中で「ソニーとのご縁を大切に、ソニーを自分にとってのベストの会社にすればいい」と前向きに考えるようにしていました

ソニーではVAIOの企画を3年間担当し、転職先のリクルートではUI/UXデザイナーとして2年働きました。

リクルートではすべてゼロから立ち上げるプロジェクトにかかわり、立ち上げに成功したらまた次のプロジェクトという具合に10件近いプロジェクトの立ち上げを経験しました。

起業をはっきりと意識したのは、リクルートに入ってからです。

それまで考えたことがなかったわけではありませんが、リクルート入社後に周りで次々に起業する人を見てからは「自分も起業したい」と明確な目標をもつようになりました。

「後悔しない人生を送る」ために、社会課題を解決しようと起業を決意

起業に向けて動き出すきっかけとなったのは、リクルートの上司への不満でした。

プロジェクトをゼロから立ち上げることが私のミッションであったので、立ち上げが成功するたびに担当するプロジェクトが次々と変わり、当然そのたびにマネージャーが変わっていました。

何と、転職してからの1年の内に、8人のマネージャーがいたことになります。

仕事のレビューをおこなうたびにいつも、どんなマネージャーでも「私のマネージャーではない」という感覚をもっていました。

部下である私を育てようとする意識がまったくといっていいほど感じられず、常にそれを不満に感じていたのです

その不満を妻に話していたある日、突然フラッシュバックのようなものが起こって、子どもの頃、私の父が事あるごとに上司の文句を言っていた姿が思い出されました。

父はいつも、「若いとき、ああしておけばよかった」「こうしてよけばよかった」と後悔の言葉ばかり口にしている人でした。

ずっと「父のように後悔ばかりの人生は送りたくない」と心に決めていたのに、自分自身が父と同じようになっていることにハッとした瞬間でした

私のキャリアにとって今の状態はよくない、このままリクルートにいても自分のキャリアアップにはつながらない、とはっきり感じたのがこのときです。私にとって大きな転機となる出来事でした。

ドレさんにとってのターニングポイントの画像

リクルートを辞めようとすぐに部長に伝えると、「辞めて何をやるかのプランはあるのか?」と聞かれました。

さすが、起業文化が浸透しているリクルートです。「何かしっかりとした事業プランがあるのであれば辞めればいい。しかし、適当に辞めるのはよくないよ」と諭されました。

この言葉をきっかけに、起業に向けたスイッチが入りました。上司の助言通り、事業プランを作るために本気で動き始めました。

環境問題から貧困問題に至るまで、考えられるだけの社会課題をどんどん書き出し、どんな課題を解決することができるかと模索しました

その過程で見えてきたのは、まさに自分自身の体験を軸とした「仕事で不幸せだと感じている人をより良く働けるようにする」というミッションへの挑戦です。

今でこそ、若手社員やマネージャーの育成を目的とした働き方サーベイの導入が進んでいますが、当時はほとんどなかった時代です。

とくに若手社員の成長のためには、1年に1回のサーベイではなく、1カ月に1回などもっと短いサイクルでPDCAを回していく仕組みがあればより良い働き方が実現できるのではないか。

そう考えて、30歳のとき、HRテックの領域で起業に踏み切ることとなりました。

就職活動では「見つかる」ではなく「選んだ」という言葉を使ってみよう

自分にはどんな仕事があっているのか、どんな会社が良い会社なのかと迷っている人は多いと思います。私自身、過去に同じような経験をしてきました。

まず伝えたいのは、良い仕事、良い会社が「見つかる」という言葉ではなく、この仕事、この会社を「選んだ」という言葉を使うように意識してほしいということです

仕事・会社を選択することを、どう捉えるべきかについて解説する画像

「見つかる」という言葉を使っていると、完璧に見つからないとずっとモヤモヤした気持ちが続きます。

一方、「見つかる」を「選んだ」という言葉に変えて捉えてみると、数ある選択肢の中から一つの会社、仕事を自分自身が選択したという感覚になります。

見つけるのではなく、とりあえず一つを選べばよいのです。違うと思ったら、また別の選択をすればいい。ぜひ「選んだ」という言葉を使って前向きな選択をしていってほしいと思います。

ライフスタイルを起点にキャリアを描いてみるのがおすすめ

どのようにキャリアを築いていけばよいのかわからない、まったくイメージがわかないという人もいるかと思います。おすすめのアプローチは、自分の価値観を文字にしてみることです

私は何を大事にしているか?」「将来どうなりたいと思うか?」「どんなライフスタイルを送りたいか?」などを自分に質問して、考えを書き出します。

この中でもっともおすすめは、「どんなライフスタイルを送りたいか?」を軸に考えてみることです。

私自身はずっと、ライフスタイルをイメージしながらキャリアを描いてきました。

「海の近くに住んでいて、遠いブラジルの家族に定期的に会いに行くために、ある程度自由がきく仕事、どこにいてもできる仕事をしていること」。これが実際に私自身が書き出した希望のライフスタイルです。

ライフスタイルのイメージが湧いてきたら、ではどんな会社、どんな場所であればそのライフスタイルを実現できるかを考えていきます

私の場合は、毎年ブラジルの家族に会いに行くには往復するだけで4日もかかることから、かなりフレキシブルに働ける環境が必要でした。

ところが、そんな希望のライフスタイルを実現できる会社はそうそうない。であれば、自分で会社を作ろうと考えたのが、実は起業した一つの理由でもあります。

ただし、価値観は変わっていきます。結婚したり子どもができたとなると家族としてどうするかの視点も出てきます。

ですから、何度も自分に質問しては文字にしてみましょう。今でも私は、1年に1度必ず「どんなライフスタイルを送りたいか?」を考え直す時間をもっています

これからは「長く座って難しい仕事ができる人」がもとめられる時代

経営者となり人を採用する側の立場になって強く思うのは、ジェネラリストではなくスペシャリストがもとめられているということです。

色々な話題を広く知っていることも強みですが、それとは別に一つ専門的な分野をもっておかなくてはいけない時代になっていると思います。さらに、専門分野を深めるために勉強し続けることも欠かせません。

たとえば、フォトショップというAdobe社が提供している画像ソフトがありますが、昔は専門的に勉強したデザイナーでなければ使いこなせないソフトでした。

ところが今では、誰でも簡単に使いこなせるようになっています。Webデザイナーとして活躍し続けるのであれば、当然もっと深いところまでできるように進化しなければなりません。

将来的にもとめられるのは、「長く座って難しい仕事ができる人」だと私は考えています。

深く進化させるには、隙間時間でできるような仕事ではないからです。これからは、集中して長時間かけて、場合によっては1日中座って長く難しい仕事ができる人が評価される時代がくると思います

たとえば営業の仕事でも、テレアポを100件かけ続けられる人は活躍できます。どんな仕事でも同じだと思っています。

これからを生きる皆さんには、ジェネラリストよりスペシャリストになる道を選んでほしいですし、そのために人が見えないところでずっと勉強を続けていく努力をしてほしいと思います。

スペシャリストとして進化を続けるには、魔法的な方法なんてないんですよね。地道な努力となりますが、私自身は、年間100冊本を読んでいます。

子どもを夜9時ごろに寝かしつけて、朝は5時ごろに起きる生活ですが、オーディオブックを活用することでこれが実現できています。耳から入れることで、その間家事など別のことができるのでとてもおすすめです。

ネット上の情報やテレビから得られる情報と違って、本の素晴らしいところは厳選された知識が詰まっているところ

何か月もかけてまとめられ、しっかりと編集者の手も加わっているという意味で、本は情報の精度信頼度が違います。

1カ月に1、2冊程度を目標にしてぜひ本を読んでみてください。対面で行われる勉強会、研修会等に積極的に参加して、色々な人とディスカッションするのもよいと思います。

スペシャリストとして進化し続けられる人になるためにすべきこと

  • 1カ月に1、2冊程度を目標に本を読む

  • 勉強会、研修会等に積極的に参加する

20代から勉強することを意識してスタートダッシュしてほしい

あまり実感がないかもしれませんが、世界を見渡したとき、日本ほど仕事がある国はありません。私の祖国・ブラジルの失業率は14%程度、アメリカの失業率も10%を超えている一方で、日本の失業率はわずか2.5%程度。

この2.5%という数字は、仕事を辞めて次の仕事を探している人の割合に相当するレベルとのことなので、日本は誰でも仕事に就ける国であり、むしろ労働力不足が問題視される時代にきています。

十分に仕事がある恵まれた国に生まれ育った、という視点をもってほしいと思います。

誰でも仕事に就けるうえに、頑張らなくても十分な給料がもらえる仕事もあることから、実際には頑張らない人もたくさんいます。

20代を適当に過ごしてしまって、後々後悔する人がたくさんいることも今からよく知っておいてほしいです

20代で頑張らない人はずっと頑張ることができません。20代で頑張った人は35歳くらいから重要な仕事を任されさらに成長していきます。後々頑張ろうと思っても難しい。前を走っている人にはなかなか追いつけません。

ぜひ、20代は人より努力してください。周りから見えないところで勉強を続けることです。月に1冊本を買って読む、月に1回勉強会に参加する。

そういう地道な努力を生活の中にうまく取り入れて後悔のないキャリア、後悔のない人生を送ってほしいと心から願っています

厳しいことを伝えたかもしれませんが、私自身はずっと「仕事の幸せ」を追求して今に至ります。

その「仕事の幸せ」は、楽な仕事をして感じる幸せではなく、困難な仕事に向かって仲間と同じ目的に向かってチャレンジする幸せです。ワンピース理論ですね。

仕事は一人で完結できるものではないので、ぜひ仲間とアドベンチャーへ向かう「仕事の幸せ」を感じられるような働き方をしてほしいなと思っています。応援しています!

ドレさんが贈るキャリア指針の画像

取材・執筆:小内三奈

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