「大変なこと」は自分の栄養になる|輝かしい過去はどんどんリセットして成長しよう

ダイレクトマーケティングミックス 執行役/人事戦略本部長 田中 良晃さん

Yoshiaki Tanaka・大学卒業後、1999年に某通信会社に入社し、2003年より大手人材業界へ。人材派遣の会社を2社経験後、2010年にカスタマーリレーションテレマーケティングに入社。2015年にグループの母体であるダイレクトマーケティングミックス(旧:CRTMホールディングス)に移り、2020年より現職

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就職に意欲的になれなかった学生時代。1社目で人生が変わった

周囲が就職活動を始めた大学3年生の頃、私は友人が内定をもらったと聞いても「本当にその仕事を一生するのか?」と思うばかりで、焦りも羨ましさも感じませんでした

今思えば斜に構えていただけなのですが、当時は転職が一般的ではない時代でしたし、「一生の仕事」と考えることや、自分が何をしたいのかを考えることに対して、とても腰が重く感じていました。

とはいえ、大学4年生の秋頃になるとさすがに将来が差し迫ってきて、営業職のくくりで会社を探してみることに。興味を持てる商材がなかなか見つからなかったのですが、「人」を商材とする人材業界だけは「面白そうだ。自分にはこの業界だ」と思い、その時期でも募集をしていた企業をひととおり受けてみることにしました。

しかし、結果は全滅。何の準備もしていなかったので、当然といえば当然の結果です。そうして卒業直前、とりあえずの就職先として募集条件を見て飛び込んだのが、私のキャリアの1社目でした

「上場している安定した営業会社」のつもりで入ったのですが、蓋を開けてみれば、当時は世の中でも群を抜いた営業会社で、評価は成績がすべて。楽して稼げるほど、社会は甘くありませんでした。

先輩について行けるように必死でやっていたので、出だしの成績は悪くなかったのですが、GW明けにいきなり会社から「チームを任せる」というお達しが。そして入社1年目の5月から、いきなりチーム13名の責任を持つ立場になりました

初めてのマネジメントで何をしていいかわからず、当然チームの数字も上がらない状態。限界を感じ、1ヶ月後には「会社と同じ方向を向けないので、辞めていいですか」と上司のところへ相談に行きました。

すると、「そんなことはない。お前は同じ方向を向いているよ」と説得をされ、引き止められました。新人だったこともあり、「社会人はそんなに簡単に会社を辞められないのだな」と素直に解釈しました(笑)。

「よく考えればまだ2ヶ月しか経っていない。大変でもまずは1年間頑張ってみよう」と決意。そして結果的に4年間、この会社で過ごしました。キャリアの中でも一番大変であり、辛かった4年間でしたが、おかげで多少のことではめげない忍耐力が付きました。あの経験があったから「今」がある、ということは確かです。

過去をリセットできる人ほど、謙虚に成長を続けていける

2社目に転職をしたのは、「多少力が付いたのではないか」「そろそろ違うこともやってみたい」と思い始めたからです。そこで思い出したのが、新卒のときに興味を持った人材業界です。

数社ほど受けてみたところ、全社からオファーをいただける結果に。「なるほど。思いもよらずスパルタジムのような1社目を経験したので、いつの間にか想像以上に鍛えられていたのか」と納得しました。

転職後は打って変わって、心にも時間にもゆとりのある日々が始まりました。ひたすら走り回っていた4年間を経て、ここでは「考えて仕事をする」というフェーズに入った感覚がありました

人材業界で2社経験しましたが、面白い反面、難しい業界であることも知りました。商品の営業では「人とモノ」をつなぎますが、人材業界の営業は「人と人」をつなぎます。

双方が満足する結果になれば2倍の喜びがありますが、一方で、人材というのは個別の取扱説明書がなく、完璧にはコントロールしきれない商材です。自分がどんなに頑張っても、クライアントからの信用が得られない結果に終わることもありました。

また人材業界時代には、大きな気づきもありました。大赤字になってしまった営業代行案件があり、そのときに私が「そもそもの契約内容が悪いし、メンバーが悪い」と発言したところ、上司に「お前はそういう節がある」と厳しく指摘されたのです。

当時は納得できませんでしたし、腹も立ちました。しかし次の会社に移ってから、他の人にも近しいことを言われ、「自分は人のせいや環境のせいにする傾向がある」とようやく自分を省みることができました。過去を振り返ってみると、小中学校時代に在籍していた野球部でも、最終的に監督のせいにして辞めてしまったことを思い出しました。

他人のせいにしていると状況は変わっていかないけれど、「自分に責任がある」と思うことができれば、それを反省する事で次に向けて行動し、成長することができる。そんな結論に至り、以降は「他人のアドバイスは一回受け止めてみよう」という意識を心がけるようになりました。

他人に何か指摘されたら、すぐに拒むのではなく、まずは指摘内容を受けとめる。指摘された内容を一度自分の中で咀嚼することで、「なるほど!」と気付くことも多くあると思います。

また人材業界時代の上司には、上記と併せて「過去のどんな実績があっても調子に乗っていては駄目。新しい場所に来たら、一から謙虚に積み上げていくこと」「人生はいかにリセットができるかが重要。過去の実績をリセットできる者ほど成長する」等々のアドバイスもいただき、今でも胸に留めています。

耳の痛い言葉に素直に耳を傾けるのは、想像以上に難しいことです。ともすれば自己否定になりますし、いろいろな邪念を取り払い、意識して聞くようにしなければ、なかなかできない事です。

しかし、そこには自分の成長につながる大きなヒントが隠れている可能性がある。皆さんも誰かから厳しい指摘をされたときには、斜に構えずまずは正面から受け止めて、少しでも行動や考えを変えてみることをお勧めします

チャンスも“前向きに受け止めてみた”結果、初めて愛社精神を持てる会社に出会えた

田中さんインタビュー風景

次なる転職のきっかけは、「」との出会いでした。たまたま営業でカスタマーリレーションテレマーケティングに訪問したところ、偶然にも自身の1社目の出身者たちで作った会社だったのです。

小林 祐樹さん(現:ダイレクトマーケティングミックス代表執行役CEO/カスタマーリレーションテレマーケティング取締役)とは当時から接点もあり、訪問をしたことをきっかけに何度か食事にも連れていっていただけました。

そのなかで「新しく人材系のグループ会社を立ち上げるつもりだから、うちへ来て、そこの社長をやらないか」とお誘いを受けたのです。

私は生まれてこのかた「社長になりたい」と思ったことも、口にしたこともない人間だったので、最初は正直、戸惑いましたが、熟考した結果「そう言ってくれる人がいるなら、このチャンスを前向きに受け止めてみよう」と決意しました

引き受ける返事をした3ヶ月後に東日本大震災が発生し、その会社を立ち上げる話は一旦リセットになった結果、代わりに任せてもらったのが人事の仕事です。

人事の仕事は、ものすごく適任だと感じています。人事は営業と管理をつなぐ役割だと思っているのですが、経験上、営業の気持ちは良くわかるつもりです。両者の潤滑油として動き、同じ会社の一員として同じ方向を向くことができるような働きかけを心がけています

現在は労務関係や新卒採用も含め、グループ全社の人事統括をやらせてもらっていますが、自分の成長だけでなく、会社の成長やメンバーの成長に充実感を得られるようになったことは、当社に来てからの大きな変化です。「後輩が昇進した」「過去最高の売上が出た」なんて一報を聞くと、じんわりと心に沁みるような喜びがあります。

「会社のために頑張りたい」という愛社精神が芽生えたのは、当社に熱く誘ってもらえたことが一番の理由だと思います。

昔の私を覚えていてくださり、小林から「田中はどんな時でも嘘をつかなかったし、逃げなかった。人となりがいい、いつか仕事をしたいと思っていた」などと言っていただき、非常に嬉しかったのを覚えています。「この人たちのために頑張りたい」という思いもありますね。

今後は、若手のキャリアを支援することで皆の成長に寄与し、グループの成長の原動力になっていくことが、私のビジョンです。自分のチームがあるから実現できる、他の人事にはなかなかできない、というような付加価値を発揮していきたいです。

人生は「大変」と「やりがい」の繰り返し。逃げグセをつけないことが肝心

これからファーストキャリアに臨む皆さんに何かアドバイスするとすれば、「やりたい仕事や職種に就けなくても、肩の力を抜いてほしい」ということ。最初の会社で必ずしも一生働く必要はないと思います

私自身も学生の頃は「一生の仕事」と思い込んでいましたが、蓋を開けてみればもう4社目。希望していた業界にも2社目で行くことができましたので、「たった1回のチャレンジで諦めなくていい」ということも、自信を持って言えます。社会人になってから、リカバリーはいくらでも可能です。

また「大変なことを乗り越えれば、必ず自分の栄養になる」ということも経験上、お伝えしたいです。

どんな会社に入っても、仕事をしていれば必ず大変なことに直面すると思いますが、「大変」の先に「やりがい」が待っています。そういった経験を繰り返すことで自身の成長へと繋がり、仕事や人生を楽しく、豊かにしていきます。

大変だった1社目でなぜ4年間も頑張れたのかを考えてみると、「自己成長の実感」「数字達成とそれが報酬に反映される快感」、そして「それを上司や先輩が喜んでくれる状況」があったことが理由だと思います。

当時は 「大変な出来事を栄養にしよう」などと考える余裕はありませんでしたが、大変な状況から逃げなかったので、結果的に栄養になっていた、という感じです。

無論、つらい状況から“絶対に”逃げてはいけない、とは言いません。環境を変えて頑張れるならば、それもいいと思います。ただ二度、三度と繰り返し逃げ出してしまう人の場合は、「逃げグセがついているのではないか?」という点を一度、自問自答してみることをお勧めします

若い頃は「周りにどう思われるか」と周りの目を気にする事も多いと思いますが、人はどんどん忘れていく生き物なので、深刻になって気にする必要はありません。

そうした邪念はうまく切り分けて、「いま目の前で起きていることは、自分の選択の結果なのだ」と謙虚に受け止めてみる。そうすると「自分が次にすべきこと」が見えてくる。その繰り返しと積み重ねで、キャリアは拓けていくと思います。

「何を経験したか」より「自分が何者か」を掘り下げてみよう

ファーストキャリアを検討する際には、「自分の棚卸し」から始めてみるといいと思います。たとえば私の場合は、かなり「人」が好きなタイプでした。

社会人になって分かったことですが、目上の方にも物怖じせず接して、可愛がってもらえるような関係になれることが多いです。「こういう自分の資質や特性に学生時点で気付いておけたら、志望先を絞りやすかっただろうな」と感じています

具体的には「自分はこんなときに嬉しいと感じる」「こんなときに嫌な気持ちがする」「昔からこういうことが好きだったよな」等々、自分が何者かを細かく掘り下げた上で、それに合う会社を探してみるといいと思います。採用を通じて多くの若手を見てきましたが、自分自身をよく分かっている人は、入社後にも活躍しているケースが多いです。

一方で、必ずしも入社時点の評価が高い子が伸びていくとは限らない、ということも実感していますので、ファーストキャリアの時点では、素直さと前向きな気持ちがあれば十分だと思います

中途入社の場合は「どのくらい社会で揉まれて鍛えられているか」を重視されますが、新卒の場合は入社してから次第。学生時代の経験値なども、気にしなくていいと思います。

私自身もたまたま受かった大学に入り、誇れるような話は何もない大学生でした。親からは「公務員になりなさい」と言われていて、「のんびり働けそうだし、それも悪くないな」と思っていたほどです。

しかし、たまたま飛び込んだ1社目の環境に揉まれて以降、自分の成長を目指して頑張ることができ、現在に至ります。「自分を成長させたいと思うかどうか」でキャリアの選択肢は大きく変わってくるので、まずは自分自身をしっかり理解する事から早めに始めておくと良いと思います

取材・執筆:外山ゆひら

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