キャリア≒戦友の数|スキルが永久資産にならない時代を楽しむために

free web hope(フリー ウェブ ホープ) 代表取締役社長 相原 祐樹さん

Aihara Yuki・1985年生まれ、神奈川県出身。就活をせずにフリーターから25歳で広告代理店に就職。入社2カ月でトップセールスを記録する。2011年、free web hope(フリー ウェブ ホープ)を設立し、現職

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飽き性だからこそ選んだ起業という選択

起業までの人生を振り返れば、飽き性だったからこそ起業の道を歩んだのだと思います。

もともと就活をせず、25歳まではフリーターとして職を転々としていました。職を変えてはすぐに飽き、次の職に付く、そしてまた飽きるの繰り返し。特にやりたいことがなかったので、生きるためにアルバイトで食いつなぐという生活でした。

最後のアルバイトとなった居酒屋で「年下から仕事を教えられるのはさすがにしんどいな」と限界を感じ、25歳で初めて正社員に。知り合いのつてを頼って広告代理店に就職しました。

そこでは営業職としてテレアポをおこない、運もありましたが、驚くほど大きな成果を残せました。3カ月で年間数億円の売上げを立て、営業成績はダントツ1位に。人生初めての正社員でしたが、「仕事ってこんなもんか」と思ったのが正直なところで、結局10カ月ほどで退職しました

どちらかというと、なんでも器用にこなせる器用貧乏タイプ。なんでもすぐに飽きてしまいます。そんな中で、このままやりがいもなく、仕事を転々とすることはいいのだろうか。「次こそ終わりがない仕事がしたい」と考えるようになりました。

それを叶えるためのベストな選択は、起業をすること。つまり「自分が主導権を握ってビジネスをすることで、一生辞めない仕事になる」。そう考えたのです。

相原さんのキャリア

自分からヒト軸への転換がキャリアの分岐点

キャリアにおいて自分が大切にしていて、また当社(free web hope)のバリューにもしている言葉があります。

それは「戦友を増やす」という言葉です。

戦友の定義は、社内の仲間にとどまりません。クライアントや仕事を取り巻くすべての人、仕事の付き合いのレベルを超えて「10年後も酒席を交わせるほどの苦楽をともにしたい」。そう思えるほど濃い本気の関係性の輪を広げることが非常に重要だと考えています。

社会人の価値をスキルそのものと考える人は多いでしょう。スキルを磨くことこそが成長につながり、市場価値を上げることにつながると。もちろん、それは事実の一つの側面です。

しかしこれだけ変化の早い時代で、そのスキルが10年後も必要とされる保証はありません

必死で身につけたスキルが数年後に陳腐化するような流れの早い時代です。スキルアップは日々の業務には不可欠な要素ですが、それだけで渡っていけるほど、社会は甘くありません。

戦友を増やすことが価値であるとの思いを持つようになったのは、創業から3期目のある出来事がきっかけです。会社の手元資金がつきかけ、会社がなくなる直前の状態に追い込まれたときです。

ギリギリの状態に追い込まれて、迷いに迷いようやく従業員とクライアントに「会社がやばい」と正直に話しました。

逃げだせばいいものをそれでも奮起してついてくれるメンバーがいました。なけなしの経費を注ぎ込んで発注してくれたクライアントもいました。

相原さんのキャリア

自分軸からヒト軸へ――。「自分が楽しいか」「お金を稼げるのか」といった自分軸から、周囲のためへの「ヒト軸」へと価値基準が変わった瞬間です。困難な状況でも自分を信じてついてきてくれる仲間や助けてくれるクライアント。自分を取り巻く人に報いたい、自分や会社を信じてくれる人々に還元したいという気持ちが、キャリアの意義になりました

起業11期を迎え、この思いはいまでも大切にしています。戦友を一人でも多く得たいと思いながら、日々の経営や採用を進めています。

「頼れる人」の数こそ資産

「頼られる人になりたい」と多くの人がいいますが、仕事をやればやるほど、自分が頼れる人が何人いるかの方が大事なことがわかってきます。熱量を持って物事に取り組む人が自然と頼れる人間になって、それが資産になる。だから、頼れる人になれるように人格面を磨いてほしいと思います。

「今すぐ電話して100万円貸してくれる人は何人いる?」。創業して間もないころ、ある経営者にこう問いかけられました。

ドキっとしました。ああ、自分にはいま何人100万円を貸してくれる人がいるだろうかと。ビジネス的な意味ではなく、どれだけ全人格的な信頼を周囲から得られているかの問いです。

先ほどの戦友の話にもつながりますが、スキルの陳腐化が加速する時代において、本当に重要なのは、ヒトベースの価値観です。人のために、人の役に立つ、そうした価値基準こそが充実した人生の条件の一つだと考えています。

いま100万円貸してくれる人はどれくらいいるかと思うと、いまだとすぐに20人くらいの顔が思い浮かびます(笑)。起業当時は2〜3人くらいだったので、深い信頼を結べる戦友を少しだけ増やすことができたんじゃないかと思っています。

頼られる人より頼れる人になろう

やる気や根性こそがより重要な時代に

ビジネスパーソンになるみなさんへ、これからの時代を生き抜くためにメッセージとして伝えたいのは、気合や根性の重要性がより増していくということ。「結局精神論か」と単純な印象を受けるかもしれませんが、実はとても重要なんじゃないかと思います。

当たり前といえば当たり前ですが、会社に成果が完璧に理解され、正確に評価されることなどありえません。webマーケティングでいうと、インプレッション(ユーザーへの表示回数)がなければそもそもコンバージョン(成約)しないよねという話です。

「俺の背中を見て学べ」の反対バージョンで「俺の背中を見て評価しろ」というのはなかなか傲慢ともいえます。「俺は努力しているんだから気づけ」ではなく、「手を挙げること」「アピールすること」といったインプレッション数を上げるということも、広い意味での仕事への真摯な取り組み方ではないかとも思います。

そうした傾向はより加速していくと考えています。必要な情報以外はシャットダウンできるミュート化の時代になりました。高度経済成長期のように貪欲に働く人は相対的に少なくなりました。だからこそ、そうした方が目立ちやすくなっている。結局そういう人には多くの打席が与えられて、成功確率は高くなります。

成果を出すことはもちろん大切ですが、まずは打席に立つ回数を増やすことが重要です。チャンスを増やせば自分がやりたい仕事にも近づけて、より仕事を楽しめます。逆に失敗回数も増やせるのでかなりお得です。人と関わることで初めてわかることもあるし、若手であれば先輩と関わって教えてもらったり、チャンスをもらったりしないことには、成長ができません。

評価される仕事のサイクル

引っ込み思案の人はどうすればいいのか。その性格を変えずに正当に評価されたいと望むなら「どうしようもない」というのがぶっちゃけたところです。正直諦めるしかありません。

いや、一つだけ方法がありますね。成果がハッキリしているものに対してとことん向き合うことです。例えば野球やサッカーのようなスポーツであれば成果がはっきりしていて、自分の評価もハッキリさせやすいですよね。やる気がなくても成績がよければ評価されます。

会社という変数の多い枠組みの中で「営業成績が一番である」とか、「CVRの改善率が一番である」とか、定量ではっきりさせることができて、それが評価される仕組みのある会社に行くことです。例えばこれがデザイナーであるとか、エンジニアである場合も同じくです。もし仕組みがなければ、自分で評価に値する成果をはっきりと定義して直談判し、それが聞き入れてもらえる会社が合っているでしょう。

仕事につまずいたりうまくいかないとき、成果を出していても評価をしてくれないと思うときがあるかもしれない。まずはアピールしてみたら良いと思います。また、アピールだけではなく、自分が出していると思っている成果が会社にとっても成果であるのか? この部分の擦り合わせも必要です。

それでもだめなら部署を変えてもらったり転職という手もありますし、死ぬことはありません(笑)。仕事では壁に直面することや、つまらないことも多くあります。そうしたときに主体的に仕事は楽しいと思えるといいですね。結局楽しんでる人には勝てません楽しんでる人はどんどん先に行き、いじけた人は置いていかれる、そういうものだと思います。是非楽しむ努力をしたり、楽しみ方を模索してみて、自分なりの充実したキャリアを歩んでほしいと思います。

相原さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:鈴木満優子

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