「好き」を仕事に変える|自分の枠を飛び出して更なる可能性につなげよう

イード 執行役員/メディア事業本部本部長 土本 学さん

Manabu Tsuchimoto・山口県出身。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイトが人気を博す。大学卒業時に同サイトをイードに売却し、自身も2007年に新卒入社。ゲームメディア「インサイド」編集長などを経て入社10年後に社長室へ異動。翌18年にメディア事業本部本部長に就任。現在、同社執行役員も務める

「やりたいことしか、やりたくない」を叶えるために

私の根っこの部分には「やりたいことしか、やりたくない」と言う自分がいます。ただし、やりたいことをやるためにはきちんとお金を稼がねばならないし、興味があることを仕事にするためにはビジネスとして成立させなければならないことも理解しています。

ですから、そのバランスを図る中間地点をうまく見つければ良い。そう考えてこれまで仕事をしてきました。

私が責任者を務めるメディア事業本部では、ゲーム好きやアニメ好き、車好きなど、自分の「好き」にこだわる者が集まり、それぞれのメディアを作って情報発信しています。

とはいえこれは遊びではありませんから、好きというだけでなく、きちんとビジネスとして回るようにしなければなりません。

逆に言うと、やりたいことをやるためにメディアのビジネスとして成立する仕組みを作らなければならないわけです。それが「やりたいことしか、やりたくない」という自分の根本的な想いに対する答えになっています。

土本さんが考える「やりたいことをやる」ためのポイント

高校時代に作った情報サイトをベンチャーに売却

自分を現在の仕事に導いてくれたのは、高校時代に趣味として始めたゲームの情報サイトです。現在イードが運営するメディアの一つのゲーム関連ニュースサイトの「インサイド」の前身になったのが当時私が作ったサイトです。

高校時代はちょうど「2ちゃんねる」が登場するなどインターネットを個人が楽しむようになり始めた頃でしたが、「インサイド」は人気を博し月間100万ページビューの閲覧回数がありました。

このサイトを大学卒業時に売却すると共に、自分もその売却先のベンチャー企業だったIRI-CT(イードの前身企業)に新卒入社し現在に至っています。 

サイトの売却に当たっては紆余曲折もありましたが、会社の代表者である宮川が東京からわざわざ山口まで2回も訪ねて説明してくれたこともあって売却先を決めました。

しかし金融系の仕事に関心があったこともあり、サイトを売ってしまい就職先は内定をもらっていた銀行にしようかとも考えました。

その迷いがなくなったのは、宮川から「サイト運営のため君も会社に入ってほしい」と誘われたことです。自分が手掛けてきたサイトですから、運営を続けたい気持ちもあったので、結局は自分も入社することになりました。

のめり込む性格が人生の原動力に

コンピューターやゲームに興味を持ったきっかけは、小学生になったばかりの頃に父親が会社で要らなくなったパソコンを家に持ち帰ったことです。言わば不用品だったので子供にも自由に触らせてくれました。

パソコンで遊んでいるうちにコンピューターの仕組みにも興味を持ち、本でプログラミングを独学。自分でゲームやアプリを作れるようになると、思い通りにパソコン画面が動くのが楽しくて熱中していきました。

それが次第にインターネット上のウェブサイト作りへの関心と結びつき、高校生のときに自分の好きなゲーム分野の話題を発信する情報サイトを立ち上げました。ゲーム好きが高じてサイトを立ち上げたわけですが、その関心は次第にゲームそのものだけでなくゲーム業界の研究やゲーム制作の裏側にも及び、そうした情報を伝えるメディアという存在への関心もどんどん広がっていきました。

振り返ってみると、興味や関心がある事柄について深く掘り下げて知りたい思いが募り、のめり込んで熱中する性格が、人生を動かす原動力になってきたようです。

「好き」をビジネスに。領域が広がればさらなる意欲につながる

それまでのような趣味としてでなく、仕事としてサイトの運営を始めるに当たっては、もちろん不安がありました。サイトの人気はありましたが、それまではサイトで1円も稼いではいないのですから。

代表からは好きなようにやれと言われましたが、仕事である以上、メディアごとの収支が明確になります。「何とかしないと大変なことになるぞ」という危機感は常にありました。

「思い切って本気でやろう。それで駄目なら仕方がない」と腹を括ってもいました。それでも先輩の営業社員に助けられ、他メディアの成功事例も参考にしつつ、何とか2年ほどでサイトの収益化を果たせました。 

それまでのサイト運営も、多士済々な仲間が集まって知恵やアイデアを出し合っておこなってきましたが、とはいえ遊び仲間のチームであり、組織立って動いていたわけではありません。

それを仕事としてチームで戦うようになり、組織戦の面白さにも目覚めました。とくに自分が得意でない営業分野の能力に長けた優秀な仲間に出会えたのは幸運でした。

仕事上のターニングポイントは入社から9年ほどたった頃でした。手掛ける事業の伸びが頭打ちになり、学生時代から関わってきたメディア分野の仕事も十分やり尽くしたという想いで行き詰まり、違う仕事をしようかと悩んでいました。

ちょうどそのタイミングで代表から社長室への異動を命じられました。 

入社10年目にして初めて経験するメディア以外の仕事は、メディアの仕事だけしてきた自分には刺激的でした。

社長室の担当としてM&Aや他社との協業を手掛け、VRなどの新規事業にも関わることで仕事の新たな面白さを味わえたわけです。もともと金融の仕事に興味があったためM&Aやファイナンスの仕事にはとくに刺激を受けました。 

それまではメディアを伸ばせば会社も成長するという視点だけで物事を見ていましたが、一歩引いた視点でビジネスを見ることができるようになり、会社の資産をどこにどう使えば最大の成長を引き出せるか、ビジネスの作り方を学びました。

事業部では売り上げや利益拡大に取り組んできましたが、それだけでなく資産や資金をどう使うのが会社にとって最適解なのかを考えることを学んだわけです。 

異動から1年後には代表からメディア事業全体を任せたいと打診されました。社長室でメディアを外側から見たことで、もう少しやりようがあると気付き再び意欲が湧いてきたこともあって、打診を受けました。 

いったん自分の枠を飛び出したことで多くの気付きを得ることができ、おかげで好きで得意ではあったものの行き詰っていたメディアの仕事に、新たな可能性を見つけられたわけです。時には枠を飛び出す勇気が大切だと学びました。

 過去の経験を挙げて野心や目的意識を示せ

これから必要とされる人材像について我々の会社の立場で説明すると、何かを実現したい野心を持つ人材を必要としています。

社員がやりたいことを実現できる会社であろうというのが経営理念であり、会社が一方的に事業の方向性を決めるのではなく、社員自身が野心と目的をもって決めていく。そういう会社を実現するための人材を欲しいと考えています。

その人物が野心や目的を持っているか否かは、過去に自分主導で何かに取り組んだ経験があるかないかを見れば分かります。少なくともメディアに関して言えば、今の世の中はメディアを始めようと思えばすぐに始められます。

まずトライしてみればいい。メディアに限らず、何か自分主導で取り組んだ経験があるとないとでは違いが生まれるはずです。 

求められるのは技術や知識ではなく、その仕事の背景を含めた分野全体に興味、関心を持っていることです。たとえばインターネット・メディアを運営する当社であれば、インターネットの仕組みにも関心を持っている人材であってほしい。

コンテンツの見せ方をより良く変えようとした場合、インターネットの仕組みを知らなければアイデアがあっても生かせずパターンを変えられないからです。

新しいものを抵抗なく受け入れ自分で触れながら新たな発想につなげてチャレンジできる気持ちを保ち続けることも、技術や知識より重要だと思います。

土本さんが考える今後求められる人物像

伸びる産業を選び追い風の中で仕事をしよう

ファーストキャリア選びに関しては、今後伸びていく市場、成長分野を意識すべきです。私はインターネット産業という右肩上がりの世界で仕事に就けたことは大変幸運だったと感じています。

同じ能力の人間が仕事をするならば、右肩下がりの産業の向かい風の中で仕事をするよりも、右肩上がりの産業で伸び行く市場の追い風のもとで仕事をする方が良い結果を得られるはずです。

もうひとつは若いうちに精一杯頑張ることです。現在37歳の自分自身、もう若い頃ほど頑張れないと感じる場面も少なくありません。若いうちに一生懸命に頑張って仕事のベースを作っておくのは大切なことだと、いまになって改めて感じています。

ビジネスの基礎能力は、自分が提供できることと、それを必要としてくれる人を見つけてつなげる能力です。必要としてくれる人は必ずどこかにいます。それを工夫しながら見つけていく。その能力が求められるのはメディアの仕事でも営業の仕事でも、あらゆる仕事の世界で共通すると思います。

土本さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:高岸洋行