「企業に成長させてもらう」意識は危険を招く|掲げるビジョンへの向き合い方を面接で見抜け

大吉不動産 代表取締役 山本 高昌さん

takamasa yamamoto・1982年、大阪府出身。新卒で大手建物管理会社に入社後、不動産会社へ転職。不動産業の中でも収益物件や住宅の仲介からリノベーションなどさまざまな業種を経験する。2018年に「少しでも不動投資で失敗する人を減らしたい」と思い、大吉投資不動産を創業。2022年に大吉不動産に社名を変更

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逆境で成果を出すことが自信につながった

新卒で従業員約1,300人の管理会社に入社したのですが、仕事の頑張りが評価されにくい年功序列型の組織が肌に合いませんでした。そこで実力次第で頑張れば評価される業界を探して、不動産業界へ転職したんです。

1社目と2社目の不動産会社では良い成果を出せていましたが、次に転職した不動産投資業界ではまったく成果が出ませんでした。

もともと3カ月結果が出なければクビだと言われて入社しました。でも、半年間売れなかった。社長に目をかけてもらってたことででなんとか首の皮一枚つながっている状態ですね。

ただ、その頃から積極的に営業をかけた成約につなげるプッシュ営業から興味が多少ある方へ営業をする反響営業に切り替えました。半年間かけて不動産投資営業の基礎ができ上がっていたこともあり、急に成果が上がり始めました。

数字がついたことは営業職として自信になりました。自分の言葉に自信を持って話せるだけでも成約率がかなり変わります。この苦しい状況を打開したことで、自分ならどこでも成果を出せるという確信が持てた。これは営業時代のターニングポイントと言えますね。

その後は実力主義の会社なら給料のことを気にせず、転職に踏み切れました。ただ、2人目の子どもが生まれたばかりで給料が3分の1になるのはさすがにキツかった(笑)

また、不動産投資営業時代、部長になったことで部下と一緒に商談に同行する場面が増えました。部下が取ってくれたアポイントなので、「良い提案をしないといけない」「絶対に失敗できない」というプレッシャーが出てきました。自分だけで成果を出すより、リーダーとして成果を出せたことも自信になりましたね

不動産投資で失敗する人を少しでも減らしたい思いで起業

不動産投資営業時代に「かぼちゃの馬車問題」が起きたことが起業するきっかけになりました。

かぼちゃの馬車問題とは、不動産会社が投資家に「かぼちゃの馬車」というシェアハウスを巡る不動産業界の馬車問題です。

ある不動産会社が多くのシェアハウスをつくり、不動産投資家に長期の家賃を保証して売っていましたが、無理な賃料設定もあったせいで、保証できなくなり、不動産会社の破綻をきっかけに、賃料の振込もなくなったせいで自己破産した方もいました。

実際にその手の物件を買ってしまったお客さんから相談を受けた際に「相談してもらえる環境を作って、失敗するお客さんを減らしたい」という思いが出てきました。それが独立のきっかけです。

お客さんに対して誠実でありたいと考えるようになったのは、2つ目のターニングポイントである経営塾への入塾が関係しています。尊敬している経営者の方に紹介していただいた塾なのですが、大企業の創業者が若い経営者に経営哲学を教えたことが始まりの塾です。2019年末の閉塾時には、世界中で約15,000人もの塾生がいました。

ここで考え方が180度変わりました。特に「自分がどうかではなく、人としてどうなのかという判断基準を持ちなさい」というマインドに共感しています

経営者個人としては利益が出る方に向いてしまいがちです。ただ、「本当にお客さんにメリットがあるのか」「自分たちが利益を出したいだけなのではないか」といった疑問を持ち、人として正しい判断をしようと心掛けています

たとえば、不動産業では自社の利益を優先して儲けている企業があります。でも、儲ければいいという仕事では、一時的に利益が出ても長くは続きません。会社の評判やお客さんとの関係性などを長期的な目線で見て、会社として人として誠実にきちんとした価値を提供していくことが大切だと感じています

面接では掲げている理念に本気で向かっているかを確かめる

ファーストキャリアを選ぶ際は「企業理念やビジョンを見てほしい」です。それに共感する企業の面接に行き、ビジョンを実現するために本当に向かっている会社かどうかを確認すべきだと思います

実際、理念やビジョンを掲げるだけ掲げて、全然違うことをやっている会社は多いです。たとえば、不動産業界では「顧客のために〜」というビジョンを掲げていても、悪いことをしている会社もたくさんあります。

労働条件ももちろん大切ですが、給与や年間休日、福利厚生などは就活時の会社の状態でしかありません。入社後は仕事の都合で休みが取りにくくなったり、結果が出ず想像通りの給与がもらえない場合もあります。

ただ、目先の給与等の待遇だけではなく、会社がどういうところを目指していて、そこに一緒に向かいたいかが重要です。ビジョンに共感していれば、入社後のギャップも少ないはずですので、掲げているビジョンに向かっているかをチェックした方がいいと思っています

成長させてもらいたいという考えは他責思考を招く

研修制度が充実しているかなど「成長させてもらいたい」という思考で企業を選ぶのはおすすめできません。最初から会社にもとめる思考でいると、何かあった時に「会社は助けてくれない」「お客さんや会社の上司が悪い」といった他責思考になっていくと思うんです

成長させてくれる企業を選ぶのではなく、その環境で力を発揮できるかどうかで入社する企業を見定めてみてください。

また、入ったからには一人前になるまで本気で続けることも大切です。SNSで新入社員が数日で会社を辞めてしまったという投稿を目にします。確かに業務内容にギャップを感じる場合は多く、それが退職の原因になるかもしれません。


たとえば、テレアポが嫌だから不動産業界を避ける学生もいます。ただ、IT業界でも1日中電話をかけている企業もあり、正直入ってみないと分からないことが多いです。でも、そこで一生懸命やった先に見えてくることもあると思います。

すぐに転職をしても自分の狭まった視点しかありません。転職しても同じような結果になってしまう可能性が高いです。まずはやるべきことを「やり切る」経験をしてみましょう。そうすれば、仕事への見方が変わったり、コツをつかむことよってその後のキャリアに役立ちますので、とにかく「やり切る」経験をしてみてください。

逃げずに向き合うことが成長につながる

自分が求められた結果に対して、きちんと向き合えるかが成長の肝になります

たとえば、営業職なら「今月は早い段階で駄目だったと諦めてしまう人」と「最後まで売上達成のために頑張る人」とでは大きな差が出てくる傾向があります。来月は頑張ろうと逃げてしまう前者は成果が出ない場合が多いです。



昨今は働き方改革で労働時間が厳しくなっていますが、それによって、「仕事は定時に帰れればいい」という時間で仕事をする考えが蔓延しているように思います。周りがそういう意識で仕事をしている時代だからこそ、自分から新しい仕事を見つけられる視点がある人は重宝されるでしょう

任された最低限の仕事だけこなせばいいという意識では、新しい仕事を見つけられません。周りの社員が何をしているか、会社はどういう状況なのかということを気にする視点を持つことが必要だと思います。自分と取り巻く環境に目を向けられるようになると、「この事業にはこうアプローチすべきかも」と案が出てくるようになるんです。

どの職種でも言えることですが、その時に目の前にある仕事で100点を出そうと向き合うと、アプローチ方法を変えてみようなど工夫点を絞り出すようになります。

成長できるかどうかは自分の仕事への向き合い方にかかってくるため、瞬間瞬間の仕事に全力を尽くしてみてください

取材・執筆:丹治健太

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