一歩を踏み出し続けられるスペシャリストを目指せ|社会と自分の「接点」にヒントがある

ODKソリューションズ 代表取締役社長 勝根 秀和さん

Katsune Hidekazu・1987年大阪電子計算(ODKソリューションズ)に入社。教育部門を中心に、SEから営業企画までを幅広く手がける。学研ホールディングスなどとの業務・資本提携にも尽力。2020年より代表取締役に就任し、「データに、物語を。」を掲げて、データビジネスを推進している

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厳しい修行の日々から始まったキャリア

私が大阪電子計算(現ODKソリューションズ)に入社したのは、1987年。まだ世の中にはPCもインターネットも普及しておらず、コンピューターといえば、大型の汎用機が企業で使われ始めた頃でした。

それでも、「コンピューターはこれから生活全般で活用されるようになるだろう」と考えていて、それに技術者として腕を磨きたいという思いもあったことから、入社を決めました。

ODKは証券金融企業のグループ会社で、グループ会社のシステム運用がメインの事業でした。ただ、ある日社外のシステム開発の案件が舞い込んできたことがあって、「これからはソフトウェア開発の時代が来る」と感じ、自ら手を挙げて担当することになりました

初めて体験した社外の開発環境は、非常に厳しいものでした。大手コンピューターメーカーと健診システムの開発をしたのですが、最先端の技術はスリリングで、とにかく精度が高く厳しい。スケジュールも多忙を極めました。

そういった過酷な環境ではありましたが、技術者としての基本をそこで学ぶことができました。厳しい毎日の中で自分の会社に戻れば、守ってもらえる環境やアットホームな雰囲気に癒されたことは今でも覚えています。

私もそうだったように、誰にでも修行時代はあると思います。そのときはつらくとも、無我夢中で身につけたものは一生を支える礎になります

自身のキャリアを振り返ると、温かな会社と厳しい外の環境に支えられ、技術を磨けたのは本当に幸運なことでした。

言葉の力を知り、社員全員と語り合った

2013年、親会社が統合合併されることに伴って、当社始まって以来の大きな選択が迫られることとなりました。

親会社から受託する仕事がなくなったら、会社は売上が激減し、存亡の危機を迎えます。つまり、独立独歩か、どこか他社と合併するのか、大転換が必要とされていました。

水面下で独立独歩の道を歩むことにした当社では、なんとか自立できるような会社づくりを始めました。とは言うものの、多くの社員にはまだ詳しい事情を知らせることができず、一方で早急な変革が必要となる大変な船出でした。

他社との資本業務提携などを通じて再構築を始め、それから基本方針を変え、会社の戦略を見直し、社内外へ会社の変化を浸透させていきました。まさに、会社のコンセプト全体から作り直す作業でした。

ただ、この大転換ともいうべきリブランディングについては、トップダウンではなく、さまざまな部署から知恵を集めながら自分たちのブランドを再構築していったんです

すると変化は如実に現れ、まずは社外から「ODKさん、変わりましたね」という言葉をもらうことが多くなりました。さらに社内の雰囲気もどんどん変わり、独立独歩で事業を切り開いていこうという気概も感じられるようになりました。

「象徴となる言葉を変えることで、意識や行動も変わっていくんだ」とこのとき強く感じました

だからこそ、自身が社長に就任したときにも、言葉を大切に伝えたい、受け取りたいと考えました。そこで社員全員と面談をしたんです。どこか遠くにいる社長ではなく、自分の生の言葉で語りたい、そして社員の言葉も届けてほしいと思いました。

言葉は重要で、力のあるものです。使い方によっては大きなパワーを引き出すことができます。自らモチベーションを高める、相手を鼓舞する、全体をまとめ引っ張る……。そんな場面でこそ、「言葉の力」はぜひ意識してほしいですね。

困難こそチャンス。学び続け、スペシャリストを目指せ

親会社の合併とグループの崩壊は、会社にとっても自分のキャリアにとっても大きな苦難ではありましたが、振り返ってみるとそのおかげで今のODKが出来上がったとも言えます。困難は必ずステップになるし、学びのチャンスでもあるのです

壁に突き当たったときは、少しでも新しい視点・行動を意識してほしいですね。人間はこれまでの経験知識からしか判断できません。行動の原理も、自分の経験に基づいています。

それまでの経験で解決できない課題に出会ったなら、それは新しい経験が必要なタイミングなのです。恐れず一歩踏み出しましょう。これまでやっていないことを少しずつ始めれば、景色が変わり、違う正解が見えてきますよ。

新しい経験は学びにもつながりますよね。リスキリングという言葉が取り上げられる昨今ですが、学びは常に必要です。知らないことを見つめ、それを身につける。その重要性を知っていてほしいです。

自ら学ぶ姿勢があると、自分を見つめ直すことも容易になります。自分はどうありたいのか、自分の軸は何なのかを問いながら学び続けることが、課題解決や成長につながります

では、学びの先にどんな人材が求められているのか。社会で活躍できる人材像は、コロナ禍を経て大きく変わったと思います。パンデミック下の社会で、働くことの価値観や生活の様式は多様化しました。平均という概念が陳腐化して、あまり意味を持たなくなったように思います。

出る杭は打たれない、伸びる社会に変化していくからこそ、平均を目指すのではなく「他人と違うスペシャリスト」を目指すべきです。具体的には、自分らしさをもち、変化に柔軟で主体性があること、そしてそれを自分から発信していけること。これがこれからのスペシャリストの理想ではないでしょうか。

会社を掛け持って復業していくことも今ほど珍しくなくなるでしょうし、海外の仕事を手がけたり、逆に海外で日本の仕事をすることもやりやすくなると思います。

働き方、暮らし方、生き方が多様化する中で、柔軟に形を変えながら何かを極めるというのが、新しいキャリアアップの形だと思います。

体験を積み上げて「自分」と「社会」を知ろう

自分らしさを生かしたスペシャリストになるには、自分を知ること、そして社会を知ることの2つが必要です

就職活動に向けて、簡単な自己分析をして短期間のインターンをする程度では、自分が大切にしている価値観に気づくことは難しいと思います。企業側も、応募者を書類や面接だけで見極めるのは難しい。

だからこそ、大学1〜2年生のときから積極的に社会とかかわってほしいですね。色々な体験が、価値として自分に蓄積されます。アルバイトでも、ボランティアでも、海外経験でも、体験の中で自分や社会を発見することができるでしょう。

すると、これまで当たり前だと思っていたことが変わり、自分の価値観も変化するかもしれません。私はこうした体験自体を1つの価値として可視化したいと考えています。

「経験の価値化」は、会社として取り組む大きなテーマにもなっています。

当社の若手社員を見ていても、その優秀さ、多彩さ、真面目さに驚かされます。だからこそ、もっと社会に触れてその能力を生かし切ってほしいと切に願います。

多様な社会で、多様な人材が多様な働き方を叶えるためにも、まずは社会に触れる経験をしてみてくださいね。

社会と自分との「接点」から、ワクワクを見出して

私自身の目標は、会社を存続させ、社会の発展に貢献すること。ITの老舗として100年続く企業が作れたら良いなと思います。移り変わりの激しいデジタル産業ですが、老舗であることの強みもあると思っています。

当社が携わるのは、教育や金融、医療といった間違いが許されない分野。それだけに、インシデント対応などのこれまでの長年の実績が信頼につながっています。

特に教育分野については今後も注力していきたいと思っていて、個人の学び、努力、経験が反映され価値に結びつくような、そんな教育システムの構築を目指していきたいと考えています。

ぜひ皆さんもそうやって、自身の思う「未来の世界」を思い描いてみてください。自分が入ったら、この業界・この会社で何ができるのか、何をしたいのか。自分と会社を結びつけ、その未来図を思い描くことで、価値観を見つめ直すきっかけにもなります

「有名な会社だから」「私はこれがやりたいから」という個別の想像ではなく、社会との接点を意識すると、見える世界が変わってくるはずです。ワクワクするような将来が見えてくるなら、きっとその選択は正しいんです

経験、学びの先にある社会と自分の最初の接点を、期待を持って選び、迷いなく進んでほしいですね。

取材・執筆:鈴木満優子

 

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