好きなことをどんどん広げて仕事を楽しみ切る働き方|予習・復習を徹底して着実に成長しよう

ストライプインターナショナル 執行役員 営業統括本部長兼アメリカンホリック カンパニーヘッド 浅見 幸宏さん

ストライプインターナショナル 執行役員 営業統括本部長兼アメリカンホリック カンパニーヘッド 浅見 幸宏さん

Yukihiro Asami・高校時代にジーンズショップでアルバイトを経験し、そのままアパレル業界へ。全国に50店舗を展開するハートマーケットで20年ほど勤務し、企画からマーチャンダイジング、店舗開発などを経て、執行役員となる。2015年ストライプインターナショナルに入社。「AMERICAN HOLIC(アメリカンホリック)」を立ち上げる。2020年より現職

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好きなことに夢中になって、どんな仕事でも楽しみ切ろう

振り返ってみると、アパレル一筋のキャリアを歩んできました。田舎の高校生だった私は元々服に興味があって、当時群馬県で営業をされていた「ポイント」というショップに足繫く通っていました。洋服好きが集まるような場所だったこのショップは、実は今や多数のブランドを抱えるアダストリアの2号店だったんです。

そのショップの店長がファッションに関していろいろなことを教えてくれるのですっかり夢中になり、アルバイトさせてほしいと願い出ました。「アルバイトは雇ってない」と一度は断られてしまったのですが、その際にジーンズショップでのアルバイトを紹介してもらいました。

ここから自身のアパレル一筋のキャリアがスタートした形になります。当時私は定時制高校に通っていたので、昼間はジーンズショップで働き、夜間は学校へという生活でした。

卒業後はそのままそのお店に就職したのですが、お店が大きくなっていく中で、接客、企画、経営などにも携わるのはとても楽しかったのを覚えています。

思えばストライプインターナショナルに転職したときにも、思い描くブランドイメージを打ち出して共有し、形にしていく楽しさがありました。近年では自分の仕事の中で、事業経営にかかわる部分が大きくなっていたのですが、この秋から数年ぶりにAMERICAN HOLICの企画にも携わっています。洋服を作る現場は、いつでもワクワクしますね。

洋服が好きな気持ちは今も変わりませんが、そこから接客や企画、店舗の運営やマーケティング、経営に至るまで、ずっと楽しく取り組めています。好きなことを楽しみきるマインドがあれば、楽しさはさらに違う分野にも広がっていくものです。こんな風に好きだという気持ちに正直に、自分の興味関心を広げていけば、きっと楽しいキャリアを築けると思いますよ。

好きなことを軸に広げていったキャリア

人生の師匠の背中を追いかけたファーストキャリア

高校卒業後に働き始めたジーンズショップでの話に戻ると、その頃は店長から社長へと大きくなっていく師匠の背中をひたすら追い続けていました。本当に懐の深い人で、自分を弟のようにかわいがってくれたことを覚えています。家族ぐるみでも大切にしてくれて、人一倍愛情が深い人でした。

そもそも30年以上前の群馬県で、レディースのジーンズだけを置く専門店をやっているなんてびっくりしませんか。社長は、こだわりと誇りと、それをビジネスとして成立させる手腕が桁違いでした。目標を次々に立てては矢継ぎ早にクリアしていくのもすごかったです。

社長の人間的な懐の広さと会社の成長を感じながら、自分も少しでも役に立とう、追いつこうとした日々でした。右腕として経営にもかかわらせてもらったのも得難い経験でしたね。

自分のキャリアに一番影響を与えたのは間違いなく彼ですし、人生の師匠でもあります。圧倒的な能力と才能を持った人の隣で学べたこと、そしてそんな人から愛情を注いで育ててもらったことは大きな幸運でした。自分の師となる人を見つけられるか否かで、キャリアの道筋は変わるんだと実感した経験でしたね

浅見さんからのメッセージ

人の縁を大切にすることでキャリアの選択肢は広がる

会社の規模がだいぶ大きくなってくると、私と社長の間で方向性にズレが生まれ、私は会社を去ることになりました。すると、ストライプインターナショナルの店舗開発の担当者から声がかかったんです。

ストライプインターナショナルは競合でしたが、何度か会合などで顔を合わせたことがあり、担当者とは旧知の中でした。ちょっと話を聞くつもりで足を運んだ先には、なぜか当時の社長が待っていて、自分が思い描くブランドイメージをプレゼンすることになりました。

実はその時点で、やってみたいブランドのイメージはすでにあったんですよ。だから前の会社を辞めたときすぐに、某大手アパレルのCEOに直に手紙を送ってやりたいことを伝えていました。無謀なおこないで、当然お返事もいただけなかったんですが、やろうとしていることに迷いはなかったですね。

普遍的で10年後にも袖を通したくなる、生活に寄り添った服――。それが思い描くブランドのコンセプトでした。面接では、雑誌20冊をスクラップして、マップを描いて伝えました。

そこからはありがたいことにトントン拍子に転職が決まって、今の会社に合流することになりました。入社後も、当時の社長は変わった経歴の私をよくかばってくれました。会議でボコボコにされている私を、「彼にはビジョンがあるから」と言って、鼓舞してくれたのを思い出します。

振り返ると、人生の転機は人の縁に支えられてきたと思います。店舗開発の担当者と知り合って言葉を交わしたことがなかったら自分は当社にいなかっただろうし、前社長に目をかけてもらえなかったら今のブランドもないでしょう。

逆に有名CEOに送った手紙に返事がなかったのは、縁がなかったから。どこでどんな形に花開くか分からない縁は、とても不思議で大切なものだと感じます。

個性を活かしきるチームを作る

ストライプインターナショナル 執行役員 営業統括本部長兼アメリカンホリック カンパニーヘッド 浅見 幸宏さん

私が8年前に面接で伝えたブランドは、AMERICAN HOLIC(以下 アメホリ)として形になりました。厳しいことを言われたり、困難な状況に追い込まれたり、ブランドは常に順風満帆だったわけではありません。それでもブランドをここまで大きく、素敵なものにできたのは、“アメホリチーム”のおかげだと思っています。

自分がアメホリチームと呼ぶのは、当社の社員だけではありません。社外の担当者、工場、物流、ブランドにかかわっているすべての人をチームだと思っています。チームのメンバーは皆、当事者意識を持って、ブランドを応援し動かしてくれていると感じます。だって売上目標を達成したら、工場の担当者も大喜びしてくれるんですよ。こんなブランドないよな、と自負しています。

どうしたらチームのメンバーが、自分ごとにして関わってくれるのか。それはチームの中に常に「どうしたらできるか」というスタンスがあるからです。できないことや難しいことがあったときに、あきらめたり人のせいにしたりするのではなく、「どうにかやる方法を探る」文化があります。相手を変えようとするのではなく、自分が変われば周りも変わるというマインドもありますね。

さらに、私は個性を尊重するチームづくりを意識しています。古い漫画ですが、石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』をご存知ですか。個性を尊重するどころか、個性が炸裂しているようなチームだからこそ、サイボーグ009は最強なのだと思います。

アメホリにもさまざまな個性を持ったメンバーがたくさんいます。デニムが得意、ニットに精通している……それぞれの良さをしっかりと見極めて、磨きをかけてあげたいんですよね。自分ごとにするメンタリティと個性の炸裂。このふたつが良いチームづくりを後押ししてくれていると思います。

浅見さんが考える、良いチームの作り方

自分を社長だと思って動ける人になろう

自分ごとの究極は、自分を社長だと思うこと。自分がもし社長ならどうするのか、どんなことをどうやって進めるのか、どんな環境を作るのか。その観点から自分の行動を考え直してみれば、自ずと正解が見えてきます。

当社のある管理職と話してみると、悩みの原因を外にもとめていることがよくありました。環境のせい、上司のせい、部下のせい……。気持ちはよくわかりますが、周りを責めたところで状況は変わりません。自分が最終決定をする社長だったらどうするのか、自分が働きたいと思う社長、上司、環境はどんなものか、その理想を作るために一歩ずつ動くのみです

新入社員であっても、若手であっても、経験が浅くても、自分は社長だと思って考えるようにしてみましょう。自分も周りの人も、願いを叶えて楽しく働ける場にするには、一人ひとりの取り組み方や気持ちが大きく影響すると思います。“心は社長”という一人ひとりのメンバーが、みんなで良い環境を作り上げていくのがベストだと思うんですよ。

浅見さんからのメッセージ

「洋服」という好きなものを仕事にした立場で思うのは、学びの大切さです。好きな気持ちだけでなく、徹底的に学び続ける姿勢がここまで導いてくれたと思います

定時制高校に通っていたとき、自分が欠席した際にノートをとってくれた友人がいました。毎回丁寧にノートをくれたその友人は、京都大学に合格しました。真面目ないい人で仲良くしていたのですが、突然すごい結果を出したことにびっくりして、「そんなに頭よかったの? なんで頭良くなったの? 」と純粋な疑問として聞いたんです(笑)。すると彼は、家庭教師も塾も使ったことがない、やっていたのは予習と復習だと。いつから? と聞いたら「小学1年生から毎日」と。

「これは敵わない、京都大学はもう手遅れだ」と思ったのと同時に、「もし自分が真剣になれるものを見つけたら、絶対に毎日予習と復習をしよう」と誓いました。そして洋服の仕事を始めてから今まで、この誓いを守っています。接客を始めた当初は、毎日接客の勉強をして事前に準備し、終わったらしっかり反省や見直しをする。企画・店舗運営・経営・マーケティングなど、すべて予習して挑み、必ず復習もしました。

大人になると宿題は出ません。勉強をしなくても、日々は進んでいきます。でも大人こそ、毎日予習して復習した方がいいんです。リスキリングや社会人の学習の重要性がよく言われますが、シンプルに「予習・復習」が良いと思いますよ。

明日や来週必要なことをしっかりと予習し、終わった後も復習する。この繰り返しの中で、好きなことがもっと楽しくなっていきます。知っていると思っていたことにも、新たに発見があったりもしますね。もっとやりたい、良くしたいという気持ちにもつながるのでおすすめですよ。

学生が徹底的に会社を選び抜こう

これから社会に出る皆さんには、自分が人生を選ぶ延長線上に、会社や職業があることを意識してほしいですね。選ぶのは自分、会社に選ばれるのではありません。あなたが会社や業界についてとことん知って、そのうえで選び抜いてほしいんです。

だから私は採用面接の際に、競合他社を受けたか必ず聞くんですよ。競合も見て、比べて、選んで、当社に来てほしい。そう思っています。そして社会人としてどんなこともエンジョイしてほしいですね。

浅見さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:鈴木満優子

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