キャリアプランがなくても大丈夫! 「やり切った」と思えるまでやり尽くせば、自ずと進むべき道は見えてくる

シンカ 取締役CFO 石川 祐介さん

シンカ 取締役CFO 石川 祐介さん

Yusuke Ishikawa・ 東京大学経済学部卒業後、公認会計士試験に合格し、2004年12月あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に入社。IPO関連業務を経験した後、本部品質管理部での監査品質管理業務や、KPMG Singaporeでの現地企業の監査業務など、監査に関連した幅広い業務に従事。2013年7月、ソフトバンク(現:ソフトバンクグループ)に転職し、同社が買収した米国のSprint Corporation(スプリント)やBrightstar Corp.(ブライトスター)、英国のARM Holdings plc.(アーム)などの内部監査部門のPMIを現場責任者として主導するとともに、海外子会社に対する内部監査を実施。退職後、バイオベンチャーの取締役CFOを経て、2018年9月、執行役員CFOとしてシンカに入社。2020年3月より現職

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自分の「武器」を身に付けたい! 就職を選ばず資格取得を目指すことを決意

大学3年になって就職活動を考え始めたときに私が考えたことは、就職氷河期時代だったこともあり、何かしら資格を取得しようということでした。ちょうど高校から大学に入る頃に、複数の大手金融機関が破綻するというショッキングな出来事が続いたことから、「大きな会社に入っても安泰ではない、将来どうなるかなんてわからない」と誰もが不安を感じた時期でもあります。

実際に、メガバンクに入社した先輩に話を聞きに行っても大変だという話が多く、何とか内定を勝ち取って就職できたとしても、その先にはかなり過酷な状況が待っていることが何となくイメージできました。

小さい頃から親に常々「自分の力で食べていけるようになれ」と言われ続け育ったことも大きかったと思います。それもあって「何かしら自分の武器がないとこの先食べていくのは大変だろう」と人一倍強く感じました。

「武器」をもつために、まずは資格を取得しよう

そう考えた私が候補として考えたのが、司法試験と公認会計士です。かなり悩みましたが、最終的に公認会計士を選んだのは、公認会計士の方が弁護士よりも幅広い知識を得られると考えたからです。

携わることができる業務範囲を詳しく調べていくと、大企業の大型投資案件等から小規模事業者の監査まで幅広く担当できることがわかり、大学3年の終わりから公認会計士の勉強をスタートしました。

大学時代の石川さんのキャリア選択

周囲はちょうど、就職活動を本格的にスタートし始める頃でした。自分で決めて選択したことなので、就職の道を選ばず独自の道に進むことに迷いはなく、それが私にとってベストな道であると信じて勉強に集中しました。

自分で決断、選択したことは、納得できるまでやり尽くすのみ、というのが私の考え方です。1年、2年と自分の中で期限を決めるのもおすすめです。とことんやり切る経験はとても大切なこと。皆さんも、一度やると決めたのであれば何事もやり尽くしてほしいと思っています。

今いる場所にこだわらない。3度の転職はすべて「やり切った」と思ったから

公認会計士資格に無事合格したあとには、いわゆる就職活動が待っていました。当時は買い手市場で、監査法人への就職が大変な時期でした。そうしたなか私自身は運よく4大監査法人の1つであるあずさ監査法人への入社が決まり、そこに約9年間勤務しました。同じメンバーファームであるKPMG Singaporeでの勤務や本部での品質管理業務に従事するなど、さまざまな仕事に携わることができました。

入社の決め手は、面接官との相性だったと思います。面接で話したときの雰囲気や、面接官から伝わってくる人柄のような部分に魅力を感じ、「ここに決めよう」と思ったのを覚えています。変にこちらに寄り添うところがなく、自分たちがおこっている監査業務とはどういうものかについて、厳しくもはっきりと伝えてくれたところに魅力を感じました。

約9年勤務したあとはソフトバンクグループに転職し、その後現在まで合計で3回の転職を経験しています。どの転職のときにも毎回、「やり切った」と感じるタイミングで次のステージへと移ってきました

「もうこの会社でやり切った」と心から思えたときに、「次に進む道を探そう」と転職を考えるようになり、そうすると不思議なご縁で「ここぞ」という会社を紹介いただき、次のキャリアにつながっていきました。

シンカ 取締役CFO 石川 祐介さん

実は私は、これまで自分自身で明確なキャリアを描いた経験は一度もありません。それは今でも同じで、今現在も「3年後にこうなっていたい」「10年後にこうなっていたい」といったキャリアのビジョンは一切ないです。

今の会社にいるかもしれないし、ほかの会社に移っているかもしれない。何がしたいというのは現時点で本当に明確にはないですが、おそらく今の場所で全力を尽くしたら、その結果次の働くべき場所が見えてくるのではないかと。そして、これが私流のキャリアの築き方なんだと思っています。

目標のようなものを立ててそこに向かって頑張るというよりも、とにかく今を充実させること、今できることをきちんとやり尽くすことを一番に考えています

一方で、変化が好きなので今いる場所にも強くこだわりすぎず「やり切った」先には必ず、もっといい働き方、環境があるだろうという風にも考えています。

働いていたら大変なこと、苦しいことも当然あるでしょう。でも辛いから辞める、逃げるではなく、乗り越えて学び切る姿勢は常にもっておいてほしいですね。

そうすれば、私自身がこれまでそうだったように、やり切った先には自ずと次にやりたいこと、進むべき道が見えてくるものだと思っています。

石川さんのキャリアの考え方

「強みを手放す」ことができればチャレンジできる

これまでの3度の転職について、「やっぱり辞めなければよかった」と後悔したことはこれまでに一度もありません。ただし、新卒で入社して約9年間働いたあずさ監査法人を辞めるときには、わずかに迷いがあったことを覚えています。安定している社会的ステータスを失って本当に大丈夫か? と考えた瞬間がありました。

それでもやはり、新たな領域の仕事にチャレンジしたい、もっと自分の幅を広げたいとの想いが強くあったので、迷わず退職を決めました

大きな決断となりましたが、今振り返ると、あのときに監査法人を辞めたことでその後のキャリアの幅がより大きく広がっていったので、1回目の転職が私にとって大きなターニングポイントだったと思っています。

転職を繰り返してきたなかで、常に意識してきたことが1つあります。それは、「強みを手放すこと」です。

強みは手放すべきではないと考えてしまいがちですよね。しかし、自分の強みにこだわり過ぎると、ついつい今持っているものだけにこだわってしまうことになります。今すでに持っているものにこだわっていると、残念ながらそこから成長はありません

成長していくためには、当然、変化を恐れず新しいことにもチャレンジしていく必要があります。そのためには、「強みを手放していく」「こだわりすぎない」ことが大事な場合もあるということを皆さんにも知ってほしいなと思います。

石川さんからのメッセージ

働くことに興味を持ち、世の中のビジネスの全体像を把握しよう

就職活動に向けての私のアドバイスは、早い段階から働くことに興味をもっておきましょうということです。

いざ就職活動を始めようとなったとき、皆さんの多くは就職情報誌等を見ると思います。たしかに、就職向けの資料を見ればどんな仕事があるかは網羅されていますが、それを見ているだけでは「こんな仕事やってみたい」とイメージできないのではないでしょうか。

仕事をイメージするために本当に大事なのは、志望業界や企業選びをするもっと前の段階から、世の中にはどのようなビジネスや仕事があるかを知っておくことだと私は思っています。

おすすめしたいのは、いわゆる就活とは別で、身近にいる大人にどんな仕事をしているのか具体的に聞いてみること。両親や親戚の話を聞いてみたり、これまでに経験のないアルバイトをやってみる、長く連絡をとっていない先輩や旧友と話す機会をつくるなど、世の中にどういう仕事があるのかということについて、できるだけ自分の世界を広げておくこともおすすめです。

そのうえで、「こういう仕事なら頑張れそうだ」と思える業界や会社を選ぶのが良いと考えます。

そして最後にやってほしいことは、どんな仕事をするにせよ「これを選んだのは自分だ」としっかりと腹落ちさせておくことです。そのためには就活の段階で「なぜこの会社に魅かれたのか、どの部分に魅かれたのか」はもちろんのこと、「なぜ、こっちの会社には魅かれなかったのか」を自分自身の中ではっきりとさせておくことが大事になります。

少しでも気になる点が残っているのであれば、質問したり調べるなどして疑問点はすべて潰しておきましょう。面接で話すプレゼン用の志望動機だけではなく、自分自身が納得するための「その会社を選んだ理由」をしっかりと持っておいてほしいと思っています

どの会社に入っても、社会人となって仕事を始めると大変なこと、辛いことも出てきます。しかし、よいことだけでなく大変な部分も含めて自分の経験、キャリアとなっていくということもぜひ頭に入れておいてほしいです。一番大事なのは、入社した後にどう頑張るかです。

ぜひ皆さんが、「この会社なら頑張れる」という会社と出会い、「自分自身が選んだんだ」という気持ちを大事にもって就職へと進んでほしいと願っています。

「自分の頭で理解する」を意識すれば自ずとスキルアップにつながる!

これからは自信をもてるスキルを何かしら持って、変化をこわがらずにチャレンジできる人がもとめられると考えています。

スキルといっても、資格のようなスキルと考える必要はないです。仕事で触れるさまざまな情報を、1つずつしっかりと自分のものとして身に付けていくだけでも十分にスキルは蓄積されていきます。

大切なのは、さまざまな情報を「自分の頭で整理する」ことを習慣にすることです

わからないことは調べて、その際に小さな疑問を疎かにしないこと。調べてもわからないことがあったら、さらに調べる。すべて理解できるまで調べる、その積み重ねができれば、いずれ体系立って理解できるようになり、自ずとあなただけの特別なスキルとなっていきます。

スキルの磨き方のポイント

  • 日々の細かい「?」を逃さず、必ず調べる

  • 調べる際は「自分の頭で理解」できるまでおこなう

「よくわからないからあの人に聞けばいいや」、「とりあえず、この資料をコピペしておこう」と頭を使って調べない人は、いつまでたってもスキルを身に付けることはできません。

ほんの僅かな時間の差です。日々の細かい「?」を逃さず、その場その場で数分を使って調べることで、スキルは1個1個積み重なっていきます。結果的に、それが一番手っ取り早い方法だと私は考えています。

毎日できる範囲でいいと思います。まずは1分調べる、それでわからなければさらに5分程度で調べて「自分の頭で理解」する習慣をつけてみてください。やり続ければあなた独自のスキルとなります。ぜひ日々の生活の中で実践してみてほしいと思います。

自分で自分を充実させることが大事、よく遊びよく学んでほしい

大学時代は、高校までと大きく違って一気に管理される機会が少なくなります。私自身はそこで全然勉強しなくなり、遊んでばかりだったことをいまだに後悔しています。

まだ学生生活が残っている皆さんに伝えたいのは、学生生活を1日1日どう充実させるかを真剣に考えてほしいということです。しっかりと勉強しながらも、一生懸命遊んでさまざまな経験を深めてほしいです。日々を充実させることが自分を磨くことになりますし、結果として就職活動にもつながっていくはずです。

就職活動は大変だと思います。くじけそうになることもあると思いますが、ぜひ踏ん張って丁寧に頑張ってほしいです。

そして、就職先が決まればそこからまたスタート。どんな会社に入っても、そこからどう粘って頑張っていくかがすべてで、その頑張りがその後のキャリアにもつながっていきます。ですから、社会人になってからは、自分をどのように伸ばしていこうか、楽しんでいこうか、充実させようかという風に考え方をシフトしてほしいです。ぜひ前向きに仕事に向き合っていってください。応援しています!

石川さんが贈るキャリアの指針

                       取材・執筆 小内三奈

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