働く意味がわかると仕事は楽しい! 自分としっかり向き合って仕事に意味づけをしよう

Alba Link(アルバリンク)代表取締役社長 河田 憲二さん

Alba Link(アルバリンク)代表取締役社長 河田 憲二さん

Kenji Kawata・ 国士舘大学在学中にWebマーケティングの事業を創業。その後グリーンライトを設立。法律メディアを運営したのち不動産賃貸業を展開し、多様な物件を手掛ける。不動産に携わるなかで、同事業に全力を投じる必要があると考え、法律メディアを事業売却。ルームセレクト(現AlbaLink)を買収し不動産業に専念、現在に至る

この記事をシェアする

「就職に意味はない」と感じたから「自分でやるしかない」と決意した

「将来どんな仕事をして生きていこうか」とはじめて考えたのは、高校に入ったときだったような気がします。

高校までずっと野球をやってきて、「目標は甲子園出場、その先にはプロ野球選手になりたい」と当たり前のように思っていたので、それ以外の選択肢を考えることはあまりありませんでした。しかし、高校に進学して本当にレベルの高い人間を目の当たりにしたときに「プロを目指すのは無理そうだ、将来どうしようか」と現実的に考えはじめたのです。

当時からぼんやりとイメージしていたのは「最終的には独立して自分の力でやっていこう」ということ。父が複数の個人事業をやっていたこともあって、頭のどこかで「起業」をイメージしていたところはあったと思います

大学は推薦で進学し、正直1、2年生は遊んで暮らしていましたね(笑)。将来については考えていましたが「大学は4年間あるし、その間に答えを見つければいいかな」と気楽に思っていました。

ところが、大学3年になったら突然周囲が就職活動に向けて動き始めるように。会社員になることはあまり考えていなかったですし、そもそも身近に会社員がいなかったので、会社が楽しいところなのかつまらないところなのかも想像がまったくつきませんでした。であるならば「周囲と同じように自分も会社の面接を受けてみよう」と考えました。

業界や職種などは置いておいて、家から近いこと、社長と距離の近いベンチャー企業という2つを条件に探して、実際に2社の面接を受けました。

人事担当者や事業部長、社長などと面接をさせてもらってわかったのは、自分にとっては会社に入ることは意味がなさそうということ。「自分にとって必要なものはここにはないな」とはっきり感じたことで、会社に入らず、自分の力でお金を稼ごうと決意し、わずか2社目にして私の就職活動は終了となりました。

河田さんが「自分の力でお金を稼ごう」と決意するまで

正直に付け加えておくと、結果は2社とも不採用だったんです。今思えば、当時はだいぶ勘違いした学生だったはずです。どちらからも「入社してほしい」とも言われていないのに、「いや、そもそも私も入りたくないし」って強気に思っていましたね(笑)。

自分の行動次第で、学生の立場でも多くの社会人と出会える

就職活動戦線から早々に撤退した私が始めたのは、GoogleやYahoo! に「お金の稼ぎ方」とか「起業方法」などの検索キーワードを入れまくってひたすら情報収集することです。

たどり着いたのが、当時流行っていたアフィリエイトやオークションでの転売でした。当時は今のようにSNSなどなかったので、連絡先が掲載されている人に直接メールしてアポイントをとり、多くの人に話を聞きに行きましたね。

ぜひ皆さんに知っておいてもらいたいのは、意外に思うかもしれませんが、学生の立場で社会人の方に連絡しても、会ってくれる人は結構いるということ。自分が動けば手を差し出してくる人はいますし、情報も惜しみなく教えてくれる人がいることを知っておいてほしいと思います

たくさんの人に話を聞く中で、まずはインターネットのマーケティングを軸に仕事を始めれば稼げそうと確信し、この分野を起点に私の社会人としてのキャリアがスタートしました。

「なんのために働くのか?」の答えが見つかれば一気にモチベーションがわいてくる

インターネットマーケティングの仕事でお金は稼げるようにはなりましたが、実家暮らしでしたし、最初の3年間くらいは最低限のお金を稼いでいただけです。そもそも貪欲さがなかったので、たくさんお金を稼いでも別にやることもない。仕事に対するモチベーションや上昇志向のようなものが全然ありませんでした

企業への就職の道を選んだ友人たちから見ると、当初の私は「やばい人」に映っていたでしょう。

その原因を突き詰めると、ただ一つのことに行き着きました。「何のために仕事をしているのか」という根本的な問いに対する答えがわからないままやっていたからです

高校に入ったころから、人にどう思われようが何を言われようがずっと「自分の力でお金を稼いで生きていく」という信念だけはもっていました。しかし働くことの意味を自分の中で見つけられずにいたのです。

そんな時、転機が訪れました。結婚です。新たな家族ができて子どもも生まれることを想像したとき、「お父さんはこんな仕事をしている」と胸を張っていえる仕事をしていたいと強く思い、スイッチが入りましたね

何のために働くのか。その答えは、子ども達世代、さらにその子ども達の世代のためにどういう世界を作っていくべきなのか、自分が死ぬまでに何ができるかを考えることでした。未来のためにできることを一生懸命やらなくてはいけない。もっと真剣に人生と向き合わなくてはいけない、とはじめて考えはじめるようになったのです。

仕事のモチベーションを上げるには?

壮大な夢をもつ必要などありません。自分事として、働いてどうなりたいのか、社会をどう変えていきたいのか。働くことに意味づけができると一気にモチベーションが生まれてくると今でははっきりとわかります。

「なんのために働くのか? 」はステージに応じて変わってくる

それからは、法律メディアの立ち上げに加えて、不動産賃貸事業も手掛けながらしっかりと売上を確保する体制をつくり、家族を守るだけの十分な収入を確保することに注力しました。法律メディアの売却を決めたあとは、これまで自分がお世話になった領域に還元できる仕事がしたい、という想いが強くなっていきました

学生時代に打ち込んできた野球などのスポーツ業界、生まれ育った江戸川区の西葛西などのキーワードが真っ先に頭に浮かびました。結果的に選んだのは、不動産事業です。すでに不動産の賃貸事業をやっていたので、その中で感じていた課題の解決を目指して、もう一人の共同創業者とともに現在のAlba Linkを立ち上げました。

それまで一人で事業をやってきた私にとって、共同創業者が「一緒に会社をつくろう」と言ってくれたことがまた大きなターニングポイントとなりました。メンバーの人生を預かるという経営者の立場に変わったことで、自分にとって働く意味もより大きな時間軸と概念で考えるように変化していきました。

河田さんの「何のために働くのか? 」の変遷

「何のために働くのか?」は、ステージが変わることによって変わっていくものだと思います。変化していくのも当然であって、ただそのときどきの仕事に意味づけができているかどうかが大切なことであると感じています。

壁は壁だと思わない。スピード感をもって気楽に対処していくことが成長の秘訣

仕事をしていると、次から次に壁にぶつかるものです。でも私は壁が来たなと思ったことはこれまでほぼないんです。壁というより、「次の課題がきたな」くらいに思っています。

ぜひ、困難が多ければ多いほど成長スピードは早まると捉えてみましょう。一生懸命乗り越えようと考えているとしんどくなるので、最初から困難や壁と考えず、「次なる課題がやってきた! 」と気楽に考えて対処していくのがよいのではないでしょうか

最終的にもとめるべきことは自分の幸せですから、しんどすぎるのであれば逃げてもいい。どうしても難しければ、逃げるという選択もありだと思います。

また、私がこれまでのキャリアで一貫して大切にしてきたことは、スピード感です。これはぜひ皆さんにも意識してほしいと思います。

交渉の駆け引きとしてわざと時間を置くこともあるかもしれませんが、仕事をするうえでスピードが遅くて得をすることはほぼゼロです

日々のやり取りはもちろん、業務スピードも速ければ速いほど良いですし、意思決定にもスピードがもとめられます。全体のスピードが上がればPDCAを回すスピードも上がっていくので、人より早く成長できます。スピードにこだわるのは良いことだらけですよ! 

自分は何者? 客観的に見て言語化できるレベルを目指そう

Alba Link(アルバリンク)代表取締役社長 河田 憲二さん

就職活動のスタートは、自分を客観的に見ることだと考えます。何が好きで、どういう生き方をしたいのか、逆に絶対にやりたくないことは何なのか、譲れないものは何か。これらを優先順位をつけてしっかりと整理して、言語化できるまでになりましょう。

おすすめは、誰かに話し相手になってもらう方法です。壁打ち相手がいた方がアウトプットが出てきやすいので、恥ずかしいと思うかもしれませんが誰かと対話しながら整理していくのが一番だと思います。それができない場合でも、頭の中だけで考えず実際に紙に書いてアウトプットしていってください。

自分とは何ぞや? 」が明確になっている人って意外に少ないんですよ。でも、これこそが大事な最初の一歩だと思います。

自分自身の棚卸がしっかりとできていれば、ある程度見えてくると思うんです。大手の方がいいのか、ベンチャーの方が自分のやりたいことができるのか、どういう成長フェーズの会社がいいのか、稼げる会社がいいのかスキルを身に付けたいのかなど、選択のポイントがわかってくるはずです。

そのうえで「自分」に見合った会社はどこだろう? と会社を探していくのが良いのではないでしょうか。

意識してほしいのは、先入観を捨てること。学生時代にイメージしている会社の姿はあくまでも一部分に過ぎず、全体像は見えていないと自覚しておいた方がいいです。先入観を一切捨てて、社長が語っていることをしっかり聞いてください

大きな会社でも小さな会社でも、その会社が何を目指しているのか、何を大切にしているのかは社長から伝わってくるものだと思います。社長が変われば文化は雰囲気もガラリと変わりますから、どんな人でどんな熱意で話をするのかをしっかり見て感じてほしいですね。

会社を選ぶ基準は、年齢とともに変わっていくものだとも思っています。22歳で見ている世界と、25歳、30歳で見えてくる世界は違って当たり前です。その年齢で選択した道が自分自身で納得できるものであればそれでいい。ただ、後悔がないようにしてほしいと思っています。

新卒で入る会社だから、とあまり意気込まないで大丈夫。最後は、直感的に「ここかな」と思う会社を選べばいいと思いますよ

親がどうとか世間体がとか、そういうものから一旦離れて、「本当に行きたい会社はどこだ? 」と自分に問うてみて、その答えに正直に進んでいってほしいです。

一段階高い視座で仕事をする。AI時代に活躍するのは「マネジメントスキル」をもった人

皆さんも感じていることと思いますが、これからはAIやロボットがさらに進化して、人間がやらなくてもいい仕事がどんどん増えていきます。レストランに行ってもロボットが料理を持ってきますし、コンビニも無人に近づいていますよね。

これからは人にしかできない仕事をやっていかないと活躍できないのは間違いありません。今後どの業界においても共通してもとめられる、人にしかできない仕事とは「マネジメントスキル」だと考えています。

「一段階高い視座で先のことを考えられる力」をいかに早く身に付けるかが勝負となると心してください。具体的には、戦略を練る、目標を設定する、フィードバックをする、コーチングをおこなうなどの人と向き合って進めていく部分の仕事です。

そういう管理職としてのスキルを早い段階で習得すると、それぞれの業種、職種によって、たとえば不動産×マネジメント、デジタルマーケティング×マネジメント、経理×マネジメントというように掛け算ができるようになる。そこまでいけば、仕事がなくなるということにはならない、十分競争力のあるポジションを得られるはずですよ。

入社したら、ぜひ一つ上の階級にいる上司が何を見て何をもとめて仕事をしているのかをよく観察して汲み取っていってください。自分の仕事はまず最速で片づける。そのうえで「何か困っていることないですか? 」と聞いてみる。上司の仕事を奪い取ってやろう、というくらいの意気込みでやっていくことをおすすめします。

河田さんからのメッセージ

  • マネジメントスキルを早い段階で習得できれば競争優位に立てる

  • 自分の仕事は最速で片づける、そのうえで上司の仕事を奪い取ってスキルを磨こう

学生時代には自分で意思決定する訓練をたくさんしておこう

学生時代は、いろいろな経験をして思う存分遊んでおくのが一番だと思います。学級委員やキャプテンをしていればマネジメントっぽいスキルが身に付くと思われがちですが、仕事とならない限り数字の責任が伴わないので、私は仕事上でのマネジメントスキルとはやはり違うと考えています。

やっておいた方がいいのは、「自分自身で意思決定する練習」でしょうか。自ら考え、自ら仮説を立てて意思決定をする癖をつけていないと、一生言われた仕事をこなすだけになってしまうリスクがあると思います。

部活や遊びの中でも、自分で意思決定する訓練をぜひ意識的にやってみてほしいです。

「何のための仕事をしているのか」の答えが見つからず、仕事へのモチベーションもわかず、ただ生活するためのお金を稼いでいた時期を経て、現在はありがたいことに本当に毎日楽しく仕事をしています。

自分がやるべきだと思える仕事に出会うことができれば、仕事って本当に楽しいものですよ。仕事をする意味がはっきりすると仕事への意欲がどんどんわいてきます。

まずは、自分自身とよく向き合って、自分が何をしたいのか、何がしたくないのかをはっきりさせたうえで、ぜひ真剣に就職活動に取り組んでください。心から楽しいと思える仕事と出会えるよう、皆さんのことを全力で応援しています。

河田さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆 小内三奈

この記事をシェアする