どんなキャリアを選んでもいい! 「好奇心」と「行動力」をもって自分の“好き”を追求しよう
アルサーガパートナーズ 代表取締役社長CEO/CTO 小俣 泰明さん
Taimei Omata・専門学校卒業後、業務委託のプログラマーとしてキャリアをスタート。その後、伊勢丹データセンターの正社員となり、インフラ領域の運用・保守を担当。NTTコミュニケーションズを経て、複数のITベンチャー企業を経験。取締役兼CTOに就任し、大規模なWebサービスの開発などに従事。2012年にITベンチャー企業を共同創業し、2015年に辞任。2016年にアルサーガパートナーズを設立し、現職
夢は漫画家! 常に自分がしたいことを追い続けてきた
「自分を表現したい。」その思いからプログラミング、漫画、音楽などさまざまなことに興味をもって取り組んできました。
プログラミングに興味をもったきっかけは、小学生のときに父親からポケットコンピュータという携帯用の小型コンピュータをもらったことです。当時まだパソコンはなかったのですが、それを使ってスロットゲームなどを作っていました。
高校生になってパソコンが普及しはじめると、Windowsのアプリを作るように。自分の考えが形になることが面白かったですね。
一方で漫画家になりたいという思いも根強くありました。どんなキャリアにしていこうか迷いましたが、大学には行かず、漫画の専門学校に進学。2年間はずっと漫画を書いていました。
卒業後も漫画活動をメインにしたかったので、正社員ではなく業務委託として働くことに。コンパック(現在はヒューレット・パッカードに吸収合併)というコンピュータに関する外資系企業を見つけ、カスタマーサポートを担当し、夜勤でシステム障害の緊急対応をおこないました。
そこには優秀なエンジニアがたくさん集まっていて、手取り足取りいろいろと教えてもらいました。それまではプログラミングだけをやっていましたが、インフラというシステムの基盤についても学び、このときの経験でエンジニアとして大きく成長できましたね。
次に伊勢丹データセンターの正社員になり、インフラの領域を担当したあと、大手ITベンダーに転職し、システム運用やネットワーク構築などを経験しました。
当時はキャリアにおいて、肩書きが重視されていましたが、周りに流されずに自分なりにキャリアを歩んできました。皆さんに伝えたいのは、本来はどんな選択をしても良いということ。大学ではなく専門学校でも、就職でも構いません。
私の場合、最初は業務委託からスタートしましたが、その後は正社員として就職。経験を積めるなら正社員ではなく、業務委託やアルバイトでも良いのです。世の中の風当たりが強かったとしても、自分のやりたいことや、どんな経験ができるのかを重視して仕事を選びましょう。
自分の道は自分で決める。常識や年齢にとらわれずキャリアを描こう
当時の夢だった「大手企業に入社する」というのは叶えられたのですが、大手企業は決められたことをやるという性質が強く、あまり肌に合わなかったため、先輩に誘われてベンチャー企業に転職することに。でも、ベンチャーだからといってなんでも挑戦できる環境ではなく、どうすることもできない状況で、かなりもどかしい日々を過ごしました。
いろいろなことに挑戦できる環境をもとめ、面白法人カヤックに転職。未経験でWebディレクターになり、周りのメンバーも優秀で、ベンチャーならではの面白い経験をさせてもらいました。その後、成長期のITベンチャーからヘッドハンティングされ、取締役兼CTOに就任。採用やマネジメントなど幅広い業務に携わりました。
その後はさらなるキャリアアップを目指して起業を決意し、2012年にIT企業を共同創業。3年間で180名規模の組織に成長させることができましたが、独立する流れになり、2016年に当社を設立しました。
今までを振り返ると、自らの意志でキャリアを切り拓いてきたように思います。
漫画の専門学校を卒業後、業務委託からスタートし、大手企業を経てベンチャーへ。何度も転職を繰り返し、8社を経験しています。30歳で初めてスマホアプリを作り、30代後半で起業の道へ。皆さんも常識や年齢にとらわれず、自由にキャリアを歩んでいってくださいね。
「使う」側ではなく「作る」側へ。自分の手でキャリアを切り開けるようになろう
もし強いこだわりがないのであれば、将来性があるIT業界はおすすめです。特にITを使う側ではなく、作る側の経験ができると良いですね。Webマーケティングやメディア構築よりも、ITツールやシステム自体を作るイメージです。そのほうがどんな企業にも依存せず、自らの手で本当に新しいものを生み出していけるからです。
就活の選考では、「自分で決断して行動してきたこと」を目に見える形で伝えましょう。たとえばエンジニア志望であれば、誰かに言われてやったことではなく、自分が作りたいと思ったサービスのコードを2万行くらい書いた。営業やマーケティング志望であれば、企業で人材を集めるための施策を考え、50ページくらい資料を作った、などです。
さらに、どれくらいの時間が掛かったのかも大切です。企業からすると、多少ミスがあったとしても、スピーディーに仕事ができる人のほうが、圧倒的に価値のある人材になります。
最近話題のチャットGPTを使えば、自分の書いた文章やプログラミングは、すぐに正確に修正してもらえます。成果物のクオリティはAIが担保してくれるようになり、どんどん品質の差がなくなっていくので、仕事のスピードをアピールしたほうが良いと思いますよ。
考える前にすぐ行動! 社会で活躍するには“自分事”として考えること
社会人になってから、スピード感をもって仕事をするコツは、頭で考える前に動くこと。これはすごく革新的な話で、人間の脳は考えすぎると意識して動けなくなりますし、想定内の結果しか生み出せないので、理解できなくてもまずは動いてみましょう。
たとえば、優秀な上司から「とても重要だからこの作業をやってほしい」と、自分では無意味に感じるような作業を任されたとします。「なんでこれをやるんだろう」と考えてしまうと思いますが、それでは行動に移せなくなってしまうので、あれこれ考える前にまず行動してみてください。
もちろんこれは優秀な上司であることが条件なのですが、優秀な人は一つひとつの動きに必ず意味があるのです。だからこそ、理解する前に行動する、これが成果につながる秘訣だと思いますね。
また、あらゆる仕事では発想力がもとめられます。そこで参考にしてほしいのは、まったく新しいものを生み出さなくても良いということ。そして、ユーザーのニーズを満たすアイデアが認められやすいということです。
過去にタスク管理アプリを作り、それが日経トレンディに掲載されたことがあります。タスク管理アプリなんて世の中にいくつもあるのに、なぜ評価されたのか? それはユーザーのニーズを捉えたアプリだったからです。
通常のタスク管理アプリは、タスクが膨大になってしまい煩雑になるという課題があったため、もっとシンプルに「今日のタスクのみ」表示される仕様にして削除や再表示の動作をスムーズにしたんです。自分が実際に使う立場で考えて、「どうしたら使いやすいか」を工夫することで、ありきたりなものを特別なものにするんですよ。
普段から気になったアプリやサービスは積極的に使い、自分の感想や周りの声をニーズとして捉え、アイデアのヒントにしてみてくださいね。
「好奇心」と「行動」がカギ! AIの時代にもとめられることとは
これからもとめられるのは、好奇心旺盛な人です。AIはどんどん発達しており、膨大な知識や情報をもっていますが、どこまでいっても好奇心が生まれることはありません。
好奇心というのは、あらゆる行動のきっかけになります。「この人は何を考えているんだろう」と思うから自らコミュニケーションを取りますし、「この仕事面白そうだな」と思うから仕事を頑張れますよね。
緊急性の高いことはすぐに動くことができますが、今の生活にある程度満足していたら、好奇心なしでは行動のきっかけはなかなか生まれません。この「好奇心から生まれる自発的な行動」こそ、人間にしかできない重要なことなのです。
好奇心を育むために、自分の気持ちを書き留めるようにしましょう。「将来こんなことがしてみたい」「こういう生活を送りたい」などと書き出して、まずは自分の好奇心を認識し、普段から意識できるようにしてくださいね。
また、組織で成果を出すためには、周りの人よりも一歩だけで良いので、先にいる状態を意識することが大切です。
自分にとっての完璧を目指すと終わりがないので、周りの人を基準にして、たとえば10分だけ長く仕事をするとか、10行だけプログラミングを長く書くとか、少しの差を作るように意識をするやり方がおすすめです。モチベーションにもつながりますし、周りからも評価されやすくなるでしょう。
時代の波を捉えながらも、世間の常識には縛られず、自分流のキャリアを築いていってくださいね!
取材・執筆:志摩若奈