不変的な安定はもとめない|何も起こらない“平和”よりエキサイトできる環境を楽しもう

ファイバーゲート 専務取締役 経営企画本部長 濱渦 隆文さん

ファイバーゲート 専務取締役 経営企画本部長 濱渦 隆文さん

Takafumi Hamauzu・会計士資格へのチャレンジを続け、大学を卒業後の2000年に事業用不動産賃貸を扱う企業に入社。同年12月にコンサルティング会社に入社し、ベンチャー企業の経営コンサルティングに従事。2007年4月に投資会社(ベンチャーキャピタル)に入社。2011年2月、通信サービス事業を手掛けるファイバーゲートにジョイン。経営企画室長、経営管理本部長、財務経理部長、経営企画部長などを歴任し、2022年9月より現職

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経営にかかわりたい。憧れから会計士の資格取得を目指した学生時代

キャリアについて最初に考えたのは、大学1年生のときでした。先のことは考えずに進学をしましたが、将来を考えたとき、まったく仕事のイメージが浮かばず、「自分は何がしたいのだろうか」と急に悩み始めてしまったのです。

その時期に読み漁ったのが、ピーター・ドラッカーやジム・コリンズ、稲盛和夫、『孫氏の兵法』の解説書など、経営をテーマにした書籍です。成功した経営者たちがどのように新分野や市場を開拓したのか、リスクを乗り越える方法とは、組織マネジメントの手法とは――。ダイナミックかつ繊細な戦略、論理、思考に興味を覚え、経営への未来志向をもったことが、キャリアにおける最初のターニングポイントと言えるかもしれません。

「経営や経営者に近いところで仕事をする」という目標が生まれたうえで、学生時代の4年間をどう使うべきかを検討しました。何かスキルを身に付けなければ、経営の近くにはいけないと思ったときに、着目したのが公認会計士の資格です。監査法人の仕事自体には特に興味がなかったのですが(笑)、「経営には絶対に会計の知識が必要になるはず」と見込みを付け、資格取得のためのダブルスクールに通い始めました。

とはいえ、公認会計士は難関国家資格の1つ。在学中、卒業後とチャレンジしましたが、残念ながら合格ならず。その結果を受け「すでに会計の知識は身についた。さらに資格浪人するよりも、社会に出て勉強したことを試してみたい」と決意し、事業用不動産のベンチャー企業に入社したのです。

「ベンチャー企業を応援する仕事がしたい」。2社目で見つけた志とは

1社目の仕事は想像以上にハードでしたが、設立から半年しか経っていない会社で、事業のプラットフォームをつくる時期だと考えれば、必要なハードさだったのだろうと思います。「事業を立ち上げるときには、あのくらいがむしゃらにやらなければならないのだな」と身をもって学ぶことができましたし、営業としての度胸もかなり磨かれました。

2社目に選んだのは、ベンチャー企業の支援を行うコンサルティング会社会社です。 当時の同社は上場後で、非常に勢いがある時期でした。銀行と一緒に動くことが多い部署に配属となり、毎日のように銀行の支店長と会い、さまざまな知見を得られましたね。また、コンサルティングとして多くのベンチャー企業にかかわることで、経営者の方々の悩みや課題感もたくさん聞くことができました。

金融機関とともにベンチャー企業の支援をおこなうなかで、改めて感じたのが、ファイナンスの力です。お金がなければ事業は始まらない、企業を生かすも殺すもお金次第という状況をたくさん見るなかで、次第に「自分も資金を出す側に行って、ベンチャー企業を元気にしたい」と思うように。

ファイナンスの立場からベンチャー企業を応援する仕事がしたい」という志が芽生えたことは、キャリアにおける一番大きなターニングポイントと言えるかと思います。現在に至るまで、ずっとこれをテーマにしながら仕事をしています。

濱渦さんのキャリアにおけるターニングポイント

ベンチャー企業を応援するためには銀行より、リスクマネーを扱えるベンチャーキャピタル(VC)の会社が良いのではないか。そんな考えに至っていた頃、ちょうど元同僚の誘いがあり、ベンチャー・キャピタル事業をおこなっていた投資会社に移ることにしました。

しかし入社から1年半後、リーマンショックが発生。新興企業にリスクマネーを出せる状況ではなくなり、社の方針として、しばらく既存の取引先の育成事業に専念することが決まりました。

ベンチャー企業を元気にしたい」という自分の志を形にできなくなり、存在意義を感じられなくなっていた頃、出資先のひとつだった当社ファイバーゲートの猪又に「うちに来ないか」と声をかけていただきました。やり方は色々とあったのかもしれませんが、当時外の立場であるベンチャーキャピタルの仕事へのもどかしさを感じてもいたので、当社に移り今度は中からベンチャー企業に携わらせていただくことにしました。

「サザエさん症候群」にはなりたくない。変化を楽しめる人間でいたい

それまではずっと会社の外からベンチャー企業を応援する立場でしたが、当社に来てからは、ベンチャー企業の中に入って事業を動かす立場になりました。関連会社の役員などもやらせていただきながら、入社12年目を迎えています。

上場を1つの大きな目標としていたので、このハードルを越えられたときの充実感や達成感は、言葉にならないほど感慨深いものでした。約3年かけて準備をおこない、2018年にはマザーズに上場、その1年後には東証一部(現:東証プライム市場)への上場を果たすことができました。

このときに感じたのは、チームとしての力です。私は個人として特別スキルフルな人間ではない自覚がありますが、「ひとりではできないことも、仲間が集まれば成し遂げることができる」と改めて実感するきっかけとなりました

その過程ではいろいろとトラブルもありましたが、チャレンジにトラブルは付き物です。

長いキャリアを振り返ってみると、油断しているときほど問題が起きやすい実感もあります。「最近何も起こらなくて平和だな」と思い始めると必ず何かが起きるので、次第に「絶対に安定をもとめてはいけない」「ラクになったらヤバい」くらいに思うようになりました(笑)。

世の中は常に動いていますし、正解とされることもどんどん変わっていく時代なので、「変わらないでいるほうが怖い」くらいの危機感は持つようにしていますね。いい意味で“安定しない”ためにも、常に自分をエキサイトできる状態に置くことを意識しています。

サザエさん症候群」(日曜の夕方になると憂うつになること)になったら自分は終わりだな、仕事に行きたくないと思うような人間にはなりたくない……なんてことも常々思っています。

そうならないためには、受け身で仕事をしないこと、そして能動的にワクワクしながら仕事をする姿勢を心掛けることが肝心だと思います。人からやらされる仕事はどうしても受け身になりがちで、なかなか前向きに許容できない時もあるかもしれませんが、自分から飛び込んでいった仕事ならば、どんなに大変でも高い確率で受け入れられるからです。「どうせなら楽しんでやろう、次はどんなエキサイティングなことが起きるかな? 」といった心構えで仕事をすることを大事にしています。

就職活動にも応用できるスタンスだと思うので、よければ参考にしてみてください。

濱渦さんからのメッセージ

本当に強いのは「ヒーロー」がいる会社ではない。「チーム」として強い会社を見つけよう

ファイバーゲート 専務取締役 経営企画本部長 濱渦 隆文さん

これまでのキャリアで得た一番の財産は、人とのつながりです。むしろその財産が私のすべてではないか、というくらいに思っています。内定辞退をしたときも、短期間で会社を辞めて転職をしたときも、一度かかわった会社やその会社の人たちとは、ご縁を切らさず、できるだけ関係性が続くよう意識して動いています

細くても人との縁を維持していれば、辞めた後も相談相手になってくれたり、困ったときに助けてもらえたり、新しい仕事が広がったりと、自分のキャリアにとっての武器になります。実際に、前にいた会社の同僚のツテでビジネスを広げられたこともありました。個のスキルを尖らせる生き方もありますが、私のようなやり方でもキャリアを切り開いていけることは、ぜひ知っておいてほしいですね。

企業選びの際には、その会社が「チームとしての強さを持っているかどうか」を見てみることをおすすめします。企業も結局は人の集まり。どんなに優秀な社長がいても、ヒーローがひとりしかいない組織はうまくいきません。これまで多くのベンチャー企業を見てきましたが、会社がうまくいかなくなるときはトップ以外の要因であることがほとんどです。

チームとしての強さや優秀さは、会社の中に入ってみないとなかなか見えてこない部分なので、インターンシップも含め、できるだけ先輩社員との接点を持ってみると良いと思います。

優れたチームの共通点だと思うのは、情報伝達や情報共有がしっかり為されていること。仕事のトラブルは、コミュニケーションミスが原因であることが多く、対話が不十分なとき、報連相が為されてないときに問題は起きます。

私自身も、100%は無理だとしても「伝える」という意識は常に持っておくようにしていますね。話さないとわからないことは意外と多いですし、言った気で伝わっていないなんてこことも。お互いに情報の伝達意識を持っておかないと、高い確率で齟齬が起こってしまいます。

新人研修で報連相の大切さを説く会社は多いですが、上記のような背景からだと思います。トラブルを未然に防いだり最小限に抑えたりするためにも重要なポイントなので、社会に出るにあたっては、ぜひ意識してみてください。

濱渦さんからのメッセージ

「自分の目指すキャリア」と「会社の成長ストーリー」。企業選びは方向性のマッチ度がカギ

自分に合ったファーストキャリアを選ぶためには、自分と会社が見ている方向性を確認することが大事だと思います。

その会社が理念やビジョンに基づいてどのような成長ストーリーを描いているのか、実際にその成長可能性がありそうかをできるだけ見極めてみる。そのうえで、自分が身につけたいスキルや目標を、その会社の成長ストーリーに重ねられるかどうかを確かめてみてください

会社の見ている方向性と自分が成し遂げたいことの共通点が少なく、あまりにも自己実現に結びつかないところを選んでしまうと、仕事をしていても手応えややりがいを感じづらく、後々つらくなってくる気がします。

濱渦さんが考える採用活動の仕組み

当社でも毎年10名前後の新卒採用をしています。いろいろな社員のストーリーの受け皿となるような会社づくりに貢献したい、というのが私の今現在のビジョンです。大きな会社ではありませんが、職種はかなり多いので、いろいろな人のやりたいことを実現できるフィールドがある会社だと自負しています。

採用面接においても、いろいろな学生のストーリーを聞くようにしています。「どうしてこの仕事がしたいと思ったのか」はもちろん、「長い人生において、どのように仕事をしていこうと考えているのか、仕事をどういうものとして位置付けているのか」といったことまで深く聞いてみたいですね。

その人がそれまで生きてきたストーリーが見えると、ここから先のストーリーも想像しやすくなりますし、その人のキャリアの道筋上に当社があるかな? ということを考えながら、マッチ度を図っています。潜在能力や人間性などは、一度や二度の面接で見極められるものではないと思っているので、そこで判断することは滅多にないですね。

私のような面接官ばかりではないでしょうが、志望する企業から不採用と言われたとしても、能力うんぬんの話ではない可能性があることは、ぜひ知っておいてください。会社との相性、あるいは希望するキャリアと事業のマッチ具合を見たうえでの判断だったと解釈し、自分を小さく見積もる必要はまったくありません。

もし就職活動において悩んだり、行き詰まりを感じたときは一旦手を止めて、体を動かしに出かけてみましょう。私も行き詰まると散歩します。外の景色を見ているだけでも気分が変わりますし、体を動かしていると、自然に頭のなかがすっきりと整理されてくると思いますよ。

濱渦さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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