「仕事が楽しい!」と言える社会人になる方法とは|ブランクがあっても自分次第でキャリアは拓ける

HanamiWEB 代表取締役 松浦 みささん

Misa Matsuura・大学卒業後、日立電子サービス(現:日立システムズ)にシステムエンジニアとして入社。1年弱で退社し、その後10年間は専業主婦として3人の子どもを育てながら、独学でWeb制作を勉強。2019年にWeb制作を請け負うフリーランスとして事業を開始。2022年にHanamiWEBを設立後、現職

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10年のブランクを経て起業。母となった後のキャリアの描き方とは 

キャリアにおける最初のターニングポイントは、社会人1年目にWeb言語を学んだことです。 

大学時代は情報科学部に所属し、学生全員が自分のパソコンを持って歩いているようなキャンパスで過ごしました。今では当たり前ですが、当時としては割と珍しい環境だったように思います。1年生の頃から画像処理の研究室に入り、C言語(プログラミング言語)をひと通り勉強しました。

キャリアについては、 当時は「卒業すれば就職するのが当たり前だから」くらいの感覚で、何も考えていなかったのが正直なところです。よくわからないままエントリーして「とにかく内定をもらうことがゴール」というスタンスだったので、最初に内定をいただいた会社に、システムエンジニアとしての入社を決めました。

入社後はカスタマーサポート部門に配属され、社内システムをカスタマイズする仕事を任されました。そこで初めてWeb言語を学んだのですが、C言語に比べれば簡単だったので、比較的、馴染みやすかったことを覚えています。そして、この経験が将来につながる勉強を始めるきっかけとなりました。 

ただ当時から「早く結婚してお母さんになりたい」という願望が強かったので、結婚を機に1年ほどで退職。大学の同級生たちには「一番バリキャリになると思っていたのに! 」と、かなり驚かれましたね(笑)。

とはいえ、仕事を辞めて1〜2カ月経つと手持ち無沙汰になってきて、ぼんやりと「Web制作なら将来、在宅でもできるかもしれない」と思うように。書籍を買ってきて、あくまで趣味の範囲ですが、Web言語の勉強を独学で始めました。

その後、出産や育児するうちに、あっという間に10年が経ち、改めて自分のキャリアについて考えたのは、3人目の子どもが幼稚園に上がった年です。「昼間にひとりの時間ができる。何をしよう? 」と思い立ったときに、Web制作で個人事業主になる、という選択肢が目の前に現れてきたのです。

「専業主婦として10年間のんびり生きていたけれど、第2ステージに進もう」と決意し、収入ゼロだった状態から大きな一歩を踏み出しました。2019年、個人事業主として起業したことは、キャリアにおける最大のターニングポイントです。

松浦さんのキャリアにおけるターニングポイント

起業時は、申請関係の煩雑さに驚いたことを記憶しています。夫の会社に対して扶養から外れるための手続きなどもする必要があり、自分ひとりの問題ではないのだな、と痛感しました。

私の場合は、幸いにも夫に反対されることはなかったですが、ブランクを乗り越えて働きたいと思っても、自分の意思だけで決められない立場の女性がいることを知りました。

家事を担っていた人間が働き始めることで気が引けたり、「それでも働くべきなのか」と葛藤したりする気持ちもよく理解でき、その後、同じ境遇の女性たちと仕事をしていくうえでは、この経験も非常に役に立ったように思います。

「自分で稼ぐ」楽しさを実感。教えた相手が成長していく姿を見ることもやりがいに

事業については、思った以上に早く軌道に乗せることができました。理由としては、10年間、自分なりに勉強を続けていたことが大きかったと思います。気になることは調べ上げる性分で、楽しんで勉強していましたし、趣味半分ですが、知り合いのWebサイトを何件か作る経験もしていたので、スムーズに仕事を立ち上げることができました。

4年間ほどは、基本的に個人で請け負い、収入ゼロだったところから「自分で稼ぐ」という楽しさを満喫していました。自分自身が楽しんで仕事ができていること、好きな仕事でお金をいただける幸せを感じられることが、キャリアの充実感につながっていましたね

しかし並行して「必要としている人にスキルを届ける」という仕事が舞い込むように。「Web制作のノウハウを教えてほしい」というニーズが思っていた以上にあることが分かり、初心者向けにホームページに関するサポートや内製化支援、育成講座、オンラインスクールのほか、ホームページに関するお悩みをサポートする無料Web相談などもスタートさせました。

企業からの依頼も増えてくるなかで、2年ほど法人化を悩んでいたのですが、2022年にようやく決意ができ、現在の当社の形になっています。この決心をしたことも、ターニングポイントと言えるかと思います。

以降は「作る仕事」と「教える仕事」が半々の割合になり、自分が教えてスキルアップした人たちと一緒に制作を請け負う、という案件も増えてきました。最近は、自分以外の人が楽しく仕事をしていることや、スキルアップして実績を積んでいることを見ることにも、充実感があります。

お客様の声を聞きながらやっているうちに今の形になっていたので、皆に今の状況を作ってもらった、という感覚も強いです。誰かの役に立ち「ありがとうございます」と感謝の言葉をいただくことが明日につながっていくのだな、と思えています

好きな仕事でチャレンジを続けているから楽しい。成長のためには自己投資も必要!

自分が成長するためなら投資をしよう」という気持ちが芽生えたことも、法人化以降の大きな変化です。

「将来の成長につながるかどうか」を考えながら事業の判断をするようになりましたし、以前はあまりお金をかけずに独学で勉強してきましたが、「必要なことはお金を払って学ぼう」というスタンスに変わりました。

特に「自分が知らない領域を学んで、できることを増やそう」という気持ちが強く、現在は相談をいただく機会が多いSNSマークやWeb解析について勉強をしています。

そしてもうひとつ、力を入れているのが英会話学習です。私が専門としているWordPress(ワードプレス)は英語圏発祥のツールなので、日本語で検索すると十分な情報が取れず、長らく歯がゆさを感じていました。

英語では多くの指南や情報が出ているので、英語圏のサイトから情報を持ってきていたのですが、英語はあまり得意ではなく、課題となっていました。 書いたり読んだりは多少できたとしても、話すことには特に苦手意識がありましたね。

しかし、ここ数年「いつか海外の人と仕事がしてみたい」という思いが芽生えてきて、そのときが来てから勉強を始めるのでは遅いよな、と考えるように。「やってもいないのにできない、と決めつけるのはおかしい」と奮起し、ビジネス英会話のレッスンをスタート。平日の朝30分、オンラインレッスンをしてから仕事を始めています。

新たな挑戦を通じて「好きな仕事ならどんな環境でも頑張れる! 」と、身をもって強く実感することができました

私は新入社員だった頃、「仕事が楽しい」と思えたことは一度もありませんでした。できるだけ名前のある企業に就職して、会社に行って、座って何かの仕事をしていればお給料をもらえて、楽しいことはオフタイムにする……そんなスタンスでした。

しかし今は本当に好きなことをやれているので、仕事をしているときが一番楽しいです。「毎日ワクワクしながら仕事をしている大人がいる」ということは、学生時代には知らなかったことでした。

楽しく仕事をしたいなら、「自分が好きな領域の仕事を選ぶ」ということはやはり重要だと思います。私は父がパソコン関係の仕事をしていたこともあり、幼少期からパソコンに親しんできました。大学でもずっとパソコンを使って勉強をして、帰宅してからも、飽きずに夜中までパソコンを触っていたことを覚えています。そのように、朝から晩まで一日中やっていても苦ではないことがあるならば、そうした仕事を選ぶことが、幸せなキャリアにつながっていく気がします。

また、仕事がずっと楽しいと感じられているのは「チャレンジし続けていること」も大きい気がします。教える仕事をスタートしたり、英語を学んだり、といったチャレンジをしているからこその充実感で、Web制作だけを続けていたら、ここまで楽しくはなかった気がします。

松浦さんからのメッセージ

キャリアは人との出会いで変わる。社員のチャレンジを応援してくれる企業を見つけよう

ファーストキャリアを選ぶ際には「その企業でやってみたい仕事があるか」という自分の気持ちを大切にしつつ、かつ「社員のチャレンジを応援してくれる姿勢がある会社」を選ぶのがおすすめです。若手でもチャレンジできる環境があるのか、成長意欲をサポートしてくれる人がいるのか、その仕組みがあるのか、といったポイントにも注目してみると良いと思います。

そして、企業情報をきちんと調べることも意外と大切です。事業内容はもちろん「支社はどこにあるのか」といったことまで確認をしてみてください。私は企業情報をほとんど調べずに入ったので、新入社員の期間は横浜で働くことを知らず、片道2時間、通勤ラッシュに揺られる毎日を過ごしました。

本社の場所だけを見て「通える」と判断してしまい、非常に苦労をした……という反省からのアドバイスです(笑)。

自分の働くイメージとできるだけマッチしている企業にエントリーをしないと、入社後のギャップが大きくなります。当たり前のことですが、気になる情報はすべて集め、情報が足りなければちゃんと質問して、疑問を解消してから入社を決めることが大切かと思います。

ファーストキャリアの選択で見るべき観点

またキャリアは、人との出会いで大きく変わります。学生時代は、社長と接点を持てる環境など想像すらしていなかったのですが、今周囲にいるのは起業をしている人ばかり。法人化してからは特にそうした人の話を聞く機会が増えており、「いろいろなビジネスのやり方があるのだな」と多くの刺激や影響を受けています。

就職活動中もできるだけ多くの人に会い、いろいろな方の意見に耳を傾けてみてください。就活系のイベントやインターンシップなどにも積極的に参加してみるのがおすすめですね。実際に働いている人を見るだけでも有意義ですし、いろいろな人の話を聞くなかで、自分のなかに新しい考え方が生まれてくることも期待できます。

人との出会いによって、自分ひとりではできないことをチームでかなえるチャンスが得られることもあります。一例ですが、私は最近「地方の農家さんを救おう」というプロジェクトに参加しており、Web制作の業務を担う予定です。皆でできることを出し合う形で、社会課題の解決にもつながる仕事ができるのだな、ということは新しい発見でした。

松浦さんからのメッセージ

これからの時代に活躍すると思うのは、「これをやりたい」というものを自分で持っている人。そして、やる前から「できない」と言わず「まずはやってみる」を大切にできる人ですね。なんでも楽しみながらチャレンジできる人、とも言い換えられるかと思います。

この考え方は、子育てでも大切にしています。たとえば、子どもが「運動会が楽しくない」と言っていたら、「どうせ参加するなら楽しいほうが良くない? チャレンジしてみようと思う競技はない? 」なんて声をかけますね。

ポジティブシンキングができることも、重要な要素ですね。一見ネガティブな出来事も、ポジティブ視点に変えて受け止める思考を身に付けられると、思いどおりにいかないことがあっても「次につなげるための勉強だ」と前向きに受け止めることができるからです。

クヨクヨとしていると自分で自分を追い込んでしまうだけ。私は家でひとりのとき、よく声に出しながら「できる! 大丈夫! 」などと自分で自分を鼓舞しています。ボードゲームで全財産没収のカードを引いても「手持ちのお金が少ないときでラッキー」と口にするくらいにはポジティブで、皆に「前向きすぎる」と驚かれたこともありました(笑)。

笑顔や元気を心がけているほど、周りにも良いものが寄ってきてくれる実感があるので、就職活動中もぜひ意識的に、ポジティブシンキングを心掛けてみてください。 

積み重ねたことがキャリアになる。自分がかかわりたい領域を早めに考えて準備をしておこう

楽しい楽しいと連発してきましたが、20代の頃には悩むこともありました。周りが飲み会や旅行を楽しんでいるなかで主婦業や子育てをしていたので、「なぜ自分だけこんな状態なのか」と思った日がなかったわけではありません。

ですが、30代で起業をして、今はとても自由に働けています。まだ人生の半分も生きていない年齢で、満足できるキャリアの状態を作り出せたことが嬉しく、「すてきな人生を歩けているな」という充実感を得られるようになりました。

子育てをしながら学んだことも、仕事に活かせています。3人の子どもの個性が大きく違うので「相手の個性を認めながら接する」という姿勢が身に付き、Web制作を教える際にも「この方は、こう考えるのだな」と生徒さんの価値観に寄り添えるようになりました。

母親が働くことは、子どもたちにも良い影響を与えられていると感じます。家で仕事をしていると、子どもたちも近くで宿題を黙々としていますし、勉強をしなさいと言わなくても「お母さんも勉強をしている」という背中を見せるほうが、伝わるものがあるように感じますね。

英会話については娘と同じタイミングでレッスンをスタートしたので、「どこまで進んだ? 」などと同級生みたいな会話をすることもあり、娘にとって良い刺激になっているようです。「洗濯物は外に干さず乾燥機を使う」「夕食は週末にまとめて仕込んで冷凍しておく」など家事ルールを徹底することで、日々の仕事時間も十分に確保できています。

いずれ子どもたちの手が離れたら、親の介護が始まる前に「海外を旅しながら仕事をしてみたい」といった夢も描いています。人脈を広げ、日本国内にとどまらず、多くの人と交流してみたいです。仕事と育児との両立を考えている学生の人もいると思いますが、私のようなキャリアの歩き方もあるので、一例として参考にしてもらえたら幸いです。

コツコツと積み重ねたことが、キャリアを支える力になる

今改めて思うのは、キャリアとは積み重ねである、ということ。いろいろやっていますが、私の最大の強みは「Web制作を15年やっています」ということで、それまでやってきたことが未来につながっている実感があります。

年月は取り返しがつかないものなので、後からではなかなか挽回しきれません。もし「将来、在宅やフリーで仕事ができたら」と考えている人がいるならば、「自分が仕事にするなら、多分この領域かな? 」といったことを漠然とイメージしつつ、「そのためには何を学んだらいいか」という目線を意識しながら、社会に出ていくのがおすすめです。

何かひとつでいいので、ぜひ長く続けてみてください。続けた年月が、きっとご自身の力になっていくと思います。

松浦さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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