自分が何を望むのか、本音をぶつけることが最重要|「選ばれる」のではなく「選ぶ」就活を

ラキール 取締役 コンサルティングサービス事業部 事業部長 雄谷 淳さん

ラキール 取締役 コンサルティングサービス事業部 事業部長 雄谷 淳さん

Jun Ooya・1977年生まれ。大学卒業後、2000年に独立系SI企業に入社。翌年、大手メーカーのグループ企業に転職するも担当するはずだったプロジェクトが頓挫したため再び転職を決意し、2002年イーシー・ワンに入社。2007年に創業後半年のレジェンド・アプリケーションズ(現:ラキール)に入社し、2018年に執行役員に就任。2021年3月取締役コンサルティング管掌。同年4月上席執行役員に就任し、2023年1月より現職

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勤務地へのこだわりを吹っ切ったことで、一気に広がった世界

学生時代は、働くことにネガティブな考えしかありませんでした。できれば大学を卒業しても就職せずに、好きなことだけして生きていきたいと考えていたほどです。

しかし、働かないわけにもいかなかったので、とりあえず就活をしなきゃ……としぶしぶスタートをするような学生でした。

仕事に対してはそんな姿勢でしたから、就職先にもとめたものも「生まれ育った大阪を離れたくないから、大阪で勤務できる会社が良いな」くらいの感じでした

当時の就職環境は比較的恵まれていて、私が専攻していた電気工学科には、有名な企業の求人が多数あり、就職自体は難しくありませんでしたが、有名企業の求人ではあっても大部分は地方の工場勤務。大阪を離れたくなかった当時の自分にとっては、向いているとは思えませんでした。

就活当時はちょうど2000年代のはじめ頃。インターネットが普及しつつあり、ソフトウエアの世界に注目が集まり始めていた時代でした。最初は大学の専攻も考慮してハードウエア系の企業に絞っていたのですが、このような時代背景と大阪での就職を優先し、ソフトウエア系の企業にも目を向けて選択肢を増やすことにしました。

業種範囲を広げて就活に取り組んだ結果、希望通りに大阪で勤務できるITの会社に就職することができました。

大阪支店での勤務が約束されて入社した会社でしたが、半年もすると職場内の空気が少し暗くなっていることに気付きました。新人研修の際にそのことを本社の幹部にぶつけると、見どころがあると評価されたのか、東京本社への転勤を持ちかけられました。

それがきっかけで、こだわっていた大阪の地を離れる決心がついたのですが、結果的に東京へ転勤して広い世界を知ったことは大正解でした

しかし、その後同社がM&Aにより売却され、投資ファンドの傘下に入り、経営陣の顔ぶれも仕事内容も変化し、まるで別の企業のようになってしまいました。このことがきっかけとなり転職を決意しました。

次の転職先は安定をもとめて大手メーカーの子会社を選びましたが、新しいプログラミング言語を使ったプロジェクト要員として入社したにもかかわらず、結局そのプロジェクト自体がなくなってしまったので、再び転職に踏み切りました。

雄谷さんが仕事選びで大切にしていたこと

上司との出会いが人生や仕事において重要なことを教えてくれる

2度目の転職では、その企業の製品と事業内容に共鳴して、国内きっての先進的なJava開発実績を誇るSIer企業に入りました。そこでの上司との出会いが、私にとってのキャリアのターニングポイントです。その上司には、給料をもらって仕事をするということ、お金の対価として働くということなど、ビジネスパーソンに必要なプロフェッショナリズムを叩きこまれました

毎日、会社に寝泊まりするような生活でしたが、大きなプロジェクトを無事にやり遂げたことで自分が成長した手応えがあり、その後の仕事観を形作ったのがこの時の体験です。また、このときの元上司が3度目の転職先となるレジェンド・アプリケーションズ(現ラキール)の創業メンバーで、引き続き一緒に働きたいと思い、転職を決意しました。

3度目の転職先となったレジェンド・アプリケーションズでは、私の仕事観を鍛えてくれた上司に出会うことができました。彼からは、目標を達成し結果を出すことこそがプロだということを教わりました。

ある時、この上司が顧客企業とのミーティングで居眠りを始めたのですが、相手企業の担当者はそれを咎めるどころか「○○さんは今日はお疲れでしょうから、寝たままでいてもらいましょう」と、おっしゃったので驚きました。

結局、顧客企業にとって私の上司は、ミーティングで居眠りしようが何をしようが、顧客の期待に対して仕事で十分な結果を提供してくれる信頼すべきパートナーだと認識されていたわけです。これも優れたプロの姿なのだと認識をあらためました。

面接では自分が企業を選ぶ意識で本音の質問を

ラキール 取締役 コンサルティングサービス事業部 事業部長 雄谷 淳さん

ファーストキャリアから現在のポジションまで、すべてがどこかでつながった先に「今」の自分がいるという意味では、ファーストキャリアの踏み出し方が完全な間違いだったとは言えません。ただ、やはり私にとって新卒時の就活は成功とはいえない内容でした。

一番の反省点は、会社に対して自分の本音をぶつけなかったことです。面接ではありきたりな質問に終始し、本当に自分が知りたい内容を尋ねることはできませんでした。

企業に選んでもらうことばかりが先行し、面接官に気に入られるために就活をしていました。それが失敗でしたし、自分が本当に知りたいことを避けていたのは間違いだったと思います。

就活生は自分自身が採用される側だと意識した場合、こんなことを質問したら評価が下がるのではないか、などと考えて本当に知りたいことを尋ねないまま面接を終えてしまうことがよくあると思います。

しかしそうではなく、自分が企業を選ぶ側だという視点に立つことが重要です。そうすれば自分が知りたいことを率直に尋ねられますし、本当に知りたいことを知ることができます。

実は企業側もそれを願っているのです。なぜなら入社してから「想像していたのと違った」と言って辞められるのが一番避けたいことですから。企業側も就活生には本音でぶつかってきてくれることを望んでいるので、印象が悪くなるのではと心配せずに本心を打ち明けてみてほしいです。

就活をする際のスタンスの違い

企業側がもとめているものも就活生の本音

就活にあたっては、とにかく自分が何をやりたいのかを思い描いてください。具体的にやりたいことが明確な人は起業すれば良いので、明確ではなく漠然とした内容でも構いません。

私が大学生の頃に考えていたのは、「とにかく働きたくない」ということでした。ただし現実としてそれは不可能なこと。ならばできるだけ働く期間を短くしたいと思い、「40歳までに仕事をリタイアしたい」という目標を立てました。それが当時の本音です。

ただし、そんな本音を企業にぶつける発想も勇気もないままに就活をして、就職してしまった当時を振り返り、「それでは就職がうまくいくはずがなかったよな」と後悔する自分がいます。

今だから言えますが、就活にあたって「自分は40歳でリタイアしたいのだけれど、あなたの会社で実現できますか」と率直に本音で質問してみれば良かったと思います。もちろん、あっさり門前払いにする会社もあるでしょうが、そもそもその会社に入ったところで本当の目的が達成できないなら、採用されなくたって構わないはずです。

それにもっと前向きな反応を返してくれる会社もあったはずです。「40歳でリタイアするには、それまでに3億円は稼がないとね。逆算すると入社5年後には年収1500万円くらい必要だから、当社では無理かな」とか、「5年後までにこういう成果を上げて、こういうポジションまで上がれば可能だよ」といったやり取りができたかもしれません。

そういう本音をぶつけることが就活では何より大切です。かくいう私も、面接でそのような質問をぶつけたわけではありませんが、本音を自覚しておくことは重要だと思いますよ。

本音をぶつけて就活した場合

先ほども説明しましたが、2度目、3度目の転職先では文字通り死ぬほど働きました。しかし少しも苦にはなりませんでした。

なぜなら「40歳までにリタイア」するため懸命に働くのは自分の目標と合致していたから。会社を成長させるために一生懸命になることは、自分の目標達成に向けて全力を尽くすことと重なっていたからです。

現在は取締役として経営の一角を担う立場となり、慕ってくれる部下もいますから、リタイアへの思いはなくなってきています。現在はラキールを成長させることが自分の生き方と一致すると思えるので、仕事に打ち込むことができています。

「死ぬほど仕事をする」という働き方は、時代も異なりますし、自分にも社員にももとめていませんが、自分が本当にしたいことと仕事の方向性が一致したときに、大きな力を発揮できることは事実。それは時代に関係なく、仕事の本質を考えるうえでとても大切なことだと意識し続けています。

自分が何をしたいのか5年後、10年後の自分を思い描け

就活生に望みたいことは、自分が何をしたいのか明確な意識を持つことです。それも本当にしたいことを考えてみてください。

採用面接をしていると「自分のアイデアを生かした製品作りがしたい」と言う就活生は多くいますが、入社後にそれを実現するために動いているのか追跡してみると、一歩踏み出すことができない人が多いのが現実です。

何をしたいのかを考えるときには、5年後、10年後を思い描いてほしいですね。その目標に到達するための「今」という考え方ができれば、仕事への取り組み方も変わってきますし、将来に活かせる時間を過ごすことができるようになります。

たとえば、入社してから半年間、テスト作業ばかりの新人が「自分はプログラムがやりたい」と不満を漏らすこともあります。ただし5年後、10年後のエンジニアとしてのキャリアを考えたときに、半年間のテスト作業は無駄にはなりません。次の半年間にプログラムをやれば同じことでしょう。結局は携わる順番の違いでしかありません。

早くプログラムを学び、製品作りに携われるようになりたいという気持ちは理解できますが、プログラムだけでは製品は作れません。テスト作業もそうですが、そもそも顧客が何をもとめているのかキャッチしなければ製品を作りようがない。製品作りには多くの要素が必要で、もとめられる能力もさまざまです。

だからこそ、将来のための「今」を考えて、どのような行動をすべきか考える必要があるのです。

5年後、10年後を思い描く大切さ

  • いま携わっている仕事に対する疑問を解消できる

  • 5年後、10年後から逆算して現在地を判断できる

  • 長い目で見れば携わる順番の違いに過ぎないと理解できる

成長企業を見つけるなら経営トップの成長意欲を見極めろ

ファーストキャリア選びを成功させるためには、成長している企業を選ぶことを意識しましょう。成長している企業は圧倒的にチャンスが多く、自分の成長スピードも速くなります。成長すれば次にステップアップする力も得られます。

ではどうやって成長企業を見分けるのか。就活生が企業を見分ける際に、はっきりと正確に結論を出せる方法はありませんが、私の経験から言えるのは、企業の成長はやはり経営トップの影響が大きいということ。トップの成長意欲の高さが大きな要素であることは間違いありません。

もちろんトップの成長意欲を測ることも簡単ではないのですが、その発言や株式の動きなどから、トップがどういう考えを持っているかを自分なりに研究して予想してみることは、やってみる価値があると思います。

逆に現在の企業にもとめられるのはどういった人材なのか。答えは自分で動ける人です。

どう動くべきか、人が指示を与えてくれるとは思わないでほしい。とくに企業のDX支援をテーマとする当社のような会社は、いわば正解のない中で企業にアプローチし、企業自身も気づいていない課題の解決策やアイデアを提案しなくてはならない立場です。誰かから何かを指示されるのを待っていたら仕事にはなりません。

もっと基本的なことを挙げれば、学生から社会人へ変わるタイミングで意識を入れ替える必要があります。分かりやすい例で言えば、学生時代と違い「気分が乗らないので明日は休む」とは簡単に言えないのが社会人。そう切り替えるためにも、まずは学生時代にやれることをやり切る。そして思い残すことなく社会人の世界へ飛び込むことです。

学生の方々から、「入社までに何をやっておくべきですか」と問われることがありますが、私は「気持ちの切り替えだけ」と答えます。新しい世界へ飛び込むという意識だけは、覚悟として自分のなかに持ったうえで社会人になってほしいと思います。

雄谷さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:高岸洋行

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