20代の過ごし方が充実した「今」につながる|成功願望をしっかりと自覚しよう
INE(アイエヌイー) 代表取締役社長 岡本 崇章さん
Takaaki Okamoto・2004年に大手通信会社へ入社し、あらゆる種類の営業・マーケティング手法を経験。2014年に退社し、同年4月にINE(アイエヌイー)の設立に参画。設立メンバーのひとりとして、人事採用や予算管理、営業企画、パートナー営業部門などを広く担当。2018年から取締役を務め、2023年7月より代表取締役に就任。以降現職
付き合う相手を厳選することで未来が拓ける
私の人生における一番のターニングポイントは、後にINEを創業する伊藤圭二に出会い、設立メンバーとしてその立ち上げにジョインしたことです。前職でつながりができ、直接の部下だったこともあり、創業の数年前から「いずれ新しい会社をやろう」と声をかけてもらっていました。
そして月日が流れ、伊藤が独立すると決めたときに本当に誘っていただけました。数年前から付いていこうと思っていたので、その場で「はい!」と即答してから約8年、現在に至るまで非常に充実感ある仕事ができています。
「人との巡り合わせが良かったからこそ、今の自分がある」と感じているので、これから社会人になる皆さんに何かアドバイスできるとすれば、「付き合う相手を見極めること」を勧めたいですね。私は社会人になってからは特に、自分が「いいな」「かかわりたい」と思えた人と仲良くしてきました。
彼らに共通しているのは、「強欲ではない」「他人のことを考えられる」「人間味がある」という点でしょうか。伊藤もそのひとりです。尊敬の念を持てていますし、ビジネスセンスの良さや発想力、行動力のスピードなど、今でも勉強になっています。
「この人になら付いていける」と思ったからこそ、会社を辞めて一緒に当社を立ち上げる決断ができました。
逆に、上の立場になるほど自己保身に走る人、部下に対して理不尽な人、私利私欲にまみれているような人とは、個人的な付き合いを避けていました。「どんなトップがいる会社を選ぶべきか」の指針は人それぞれ違うと思いますが、私の意見では、外車やブランド品、夜遊びなどに散財しているような人は避けたほうがいいと思います。
実際にそういう人たちの多くは刹那的で業界に残っていない印象がありますし、私の場合は「堅実な人のもとで働きたい」という思いが強かったので、近しい考えの方がいれば参考にしてみてください。
「自分で考えられる仕事」を率先して担うことで得た武器
ファーストキャリアで入った会社には、10年間在籍していました。大学を3年次に中退し、深く考えずに飛び込んだアウトバウンド営業一色の会社だったので、入ってからがとにかく大変でしたね。
電話をかけまくるタイプの営業をしていたのですが、かなり厳しく追い込まれる環境だったため、周囲が次々と離脱していき、振り返れば「同期が数人しかいない」という状況になっていました(笑)。
私が離脱せずに済んだのは、最初から順調だったからというわけではありません。初受注までに半年ほどかかり、同期のなかではむしろ一番遅かったです。それでもその期間をしのげたのは、「他に選択肢がなかった」ということと、学生時代に陸上部で真剣に長距離走をやっていたので、「標準以上の忍耐力が備わっていた」ことが理由だと思います。
1年目の後半になってからは少しずつアポイントメントが取れるようになり、先輩と同行営業に行くうちに受注のヒントが見えてきました。電話だけでは想像が付かなかった先方の様子や状況が理解でき、電話でも相手のニーズや社内のイメージを思い浮かべながらの営業トークができるように。そのあたりから、お客様目線での的確な提案ができ始めた実感があります。
その後は携帯電話、光回線、プロバイダ、モバイル端末など様々な商材の販売をおこないながら、営業ひと筋に取り組みました。法人相手、個人相手、対面や非対面、パートナー営業などもひととおり経験しました。
結果を出すと周りに褒められたり頼られたりする場面が増え、「自分の部下に責任を持ちたい」とも思うようになるなかで、気づけば10年が経っていた感覚です。
前職では新規事業に携わることも多く、7〜8くらいの部署は回ったでしょうか。事業は立ち上げてから軌道に乗せるまでの時期が一番大変ですが、その分、自分たちであれこれと考えるので、思考の幅は広がった気がします。工夫して結果を出す過程が楽しくて、いろんな事業に繰り返しチャレンジすることになっていました。少し飽き性なので結果的には良かったです(笑)。
あれこれ経験したからこそ見えたものはたくさんあり、それが今の自分の武器になっていると感じます。複数の部署を動いていると、その分だけいろいろな上司の下に付くので幅広い視点を養うことができました。
前職は厳しい会社でしたが、何もない自分を大きく成長させてくれて感謝しています。20代の過ごし方で将来は決まるといっても過言ではないので、1社目はちょっとしんどくても、早期キャリアアップができて、いろいろな経験を積める会社を選択したほうがいいと感じます。
成長のマインドセットがある人、譲れない人生設計がある人は折れにくい
とはいえ、サラリーマン時代はどこか「やらされている」感覚もあり、今ほどは本気になれていなかった気がします。マネージャー職に就いていましたが、会社から命令されて動く側であることに変わりはないですから。今の会社に来てからは「すべきことを決める側」になり、より仕事が楽しく、面白くなっています。
今の立場に来て改めて感じているのは、会社は人ありきである、ということ。特に採用は「その企業の命運を握っている」と言っても過言ではなく、いかに良いメンバーに入社してもらうかについては、私自身もかなり試行錯誤してきました。
長年、採用やマネジメントをしてきてわかってきたのは、入社時点で成長しようというマインドセットがある人でなければ、どんなに教育をしてもなかなか育たない、という点です。20年近く培ってきた思考パターンはそうそう変わらないし、マインドセットはどこまでいっても本人のもので、誰かに言われて身に付くものではないんですよね。
マインドセットを確かめるためにも、採用の際には必ず「過去に何かを頑張って、かつ結果を出した経験があるか」を聞くようにしています。成長に対するマインドセットがある人に入ってもらって、その人たちに教える時間を割きたいと考えているので、「うちには合わないかも」と思えば、お互いのためにはっきり伝えるようにしています。
また採用の際、過去の話と併せて必ず聞いているのが、「これからどうなりたいか」という将来の話です。当社は経営幹部候補募集のため、目標を持っていないと早々にくじけてしまうケースが多いんですよね。
その点、自分のなかに譲れない目標や人生設計を持っている人や、その芯が簡単にぶれない人は強いです。上に上がっていくに従って目標が変わってくることはあるでしょうが、入社時点での目指す将来像は、あらかじめ作っておくことをおすすめしたいです。
「20代でこのくらいの役職に就きたい」「いつまでにどのくらい稼ぎたい」等々、できるだけ具体的な目標値を設定しておくといいと思います。
その目標をかなえてもらうためにも、当社では3カ月に一度の短いスパンで査定をする評価制度を敷いています。昇級・昇格だけでなく降級・降格もあるので、個々人が常にモチベーション高く取り組んでくれている印象です。
“いいところ取り”ではなく、ちょっとした厳しさもあるなかで、自分が出した成果はしっかり評価してもらえる。この環境を気に入ってくれる方に加わってもらえたら嬉しいですね。
思い入れや愛着を持てる会社だからこその、充実感がある
また当社では2016年頃、それまでにやっていたアウトバウンドの営業スタイルを180度転換しました。これは私のなかでの、2つ目のターニングポイントと言えるかもしれません。
法規制が年々厳しくなるなかで、時代に即した営業手法に変えていこう、という決断を当時の社長を筆頭にした形です。
以降はWebマーケティングをベースに、問い合わせがきたユーザーに対して営業をおこなうインバウンド営業のスタイルに変えました。これによって、営業効率と社員の定着率を大幅に上げることができ、ここ数年の社の飛躍につながっていると感じています。
また以前は通信系の案件をメインにしていましたが、自由化を機に電気やガスなどのライフライン系サービスも手がけるようになりました。電力削減の需要や環境保全意識の高まりもあって順調な推移を続けており、創業から7年間で売上900%以上もの成長ができました。
今後のキャリアにおける目標は、色々な部門を見ながら、その時々で「会社の弱い部分」をどんどん強くしていくこと。今は会社の業績が上がったときに、一番の充実感があります。会社の業績が上がれば、結果的に自分の報酬も上がりますから、会社の業績のほうがはるかに気になります。
この感覚も、サラリーマン時代とは圧倒的に異なる部分かもしれません。立ち上げからかかわってきた会社である分、思い入れや愛着を持てているからだと思います。
「成功したくない人」はいないはず。ポジティブになり、成功者を真似してみよう
子どもが産まれてからは、人生観も変わってきました。ここ数年の休日はすべて家族に捧げています。若い人たちには「20代の身軽なうちに色々とチャレンジしたり、がむしゃらに頑張ったほうがいいよ」ということは伝えたいです。
子どもを持ったことで起きた良い変化もあり、一番実感しているのは責任感が強くなったことでしょうか。就活生には良い人生を歩んでほしいと親心が芽生え、「ミスマッチなく採用しないとな」という気持ちがより大きくなった気がします。
もし「やりたいことがわからない」という人がいたら、できるかどうかは一旦脇に置いておいて、自問自答してみるといいと思います。いろいろな考えの方がいるとは思いますが、できるものなら稼げたほうがいいし、仕事が楽しいほうがいいし、結果を出して評価されたほうがいいですよね。
突き詰めれば、大半の人にとっての目標は「成功したい」一択だと思うのです。胸を張ってそう言えないのは「自分には無理だから」と諦めているだけではないのか。この点はぜひ、本音ベースで考えてみてほしいです。
もし「成功したい」としっかり自覚できたときは、身近な成功者の真似から始めてみるといいと思います。私も当時の社長である伊藤の考え方に近づけるようにしてきました。またいろいろな分野の成功者の考えも学ぶと共通点があります。
私が思う成功者の共通点は、「明確な目標を持っていて」「ポジティブシンキングで」そして「諦めが悪い」こと。ネガティブなことを考えて愚痴っていても何も変わらないですし、すぐに諦めていたら何事も成せないからだと思います。
サラリーマン時代の結果が出ない頃は愚痴っていた日もありましたが、成果が出てきた20代中盤からはめっきり愚痴らなくなった自覚がありますね(笑)。
成功者の真似をするために手っ取り早いのは、成功者たちの本を読んでみることです。彼らの本にはネガティブなことが一切書かれていないので、物事のポジティブな捉え方がわかってくると思います。
成功している人たちの指南にもそれぞれ個性がありますが、私は「いずれも正しい」と考えています。そのやり方で、成功者はちゃんと結果を出しているのですから。
取材・執筆:外山ゆひら