時間への意識を再定義しよう|やりたいことを実現するための志の高さとタフさ

HOUSEI(ホウセイ)代表取締役社長 管 祥紅

HOUSEI(ホウセイ)代表取締役社長 管 祥紅さん

Shoko Kan・中国湖北省出身。北京大学卒業後、来日しITエンジニアとしてキャリアをスタート。住友金属工業を経て、1996年に方正(現:HOUSEI)を設立。代表取締役社長に就任、現職

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「中学生からは大人」。すべて自分次第だからこそ形成された意思決定の軸

故郷の中国から来日を決意したのは、新卒で就職するタイミングでした。これが人生における最初のターニングポイントです。

来日を決めた際は、特に悩んだ覚えはありません。誰かから依頼されたのではなく、自分の意思で、自分で判断して決めたからです。

自分で判断して行動することは昔からやってきたことでした。自分の家庭では「中学生からは大人」として扱う文化があり、私が中学に上がったときに父親から「今日から大人だから何も言わない。自分のことは自分で判断しなさい。」と言われたことをはっきり覚えています。

そのような環境で育ってきたからこそ、新しい環境に飛び込むことに対してまったく迷わず、むしろ「喜んでいろいろなところに行ってみよう! 」と考えていました

日本の企業に就職したきっかけは、日本と中国の企業・組織による合同事業に応募したことです。そのときのご縁で、1つの日本の企業から内定をいただくことができました。当時日本はバブル絶頂期。成長している環境で働きたいと思っていたので、期待を胸にファーストキャリアから日本の企業で働くことを決断したのです。

しかし1社目はいわゆるソフトハウス(受託開発をメインにする企業)で、大手メーカーから受注を受けてコーディングしていく作業がメインでした。成長をもとめて来日したからこそ、次第に「もっと面白いことをしたい」とか「オリジナルのモノを作ってみたい」と思うようになっていったんですよね

学生のころからやりたいことができるように自分で判断をしてきたので、この会社で実現できないなら環境を変えるのも選択肢の1つだと考えるようになりました。そして結局、より成長できる環境をもとめて転職をすることにしたのです。

壁にぶつかっても自分で道を切り開く。起業を後押しした“志の高さ”とは

2社目に選んだのは住友金属工業で、担当業務はアメリカの企業と共同でメディアシステムを作ることでした。当時から「ITといえばアメリカ」というイメージが強かったので、成長できる環境で働ける点にとても魅力を感じましたね。

菅さんのキャリアにおけるターニングポイント

アメリカで一緒に働いた人は優秀な人ばかりで、人生の中で一番学びが大きかった時間ともいえます。

当時Mac(マック)を使って作業をしていたのですが、そのころのMacは今とは大違いで、バグだらけですぐにダウンするんですよ(笑)。しかも起動してから10分しないと立ち上がらないというほどのスペックでした。

普通の人だったら文句を言って終わりだと思うのですが、同僚は自分たちでシステムの悪いところを見つけて、仕事が終わったあとにシステムの一部の機能を修正していたんです。その志の高さにはとても驚きましたね。日中働いて疲れているのに、夜になっても自分が興味のあるものに取り込もうとする姿はとても刺激的でした

成長もできて刺激ももらえる環境だったのでとても楽しく働いていたのですが、ある1つのプロジェクトから起業への道に進むことになります。

それは住友金属工業と北京大学の共同プロジェクトです。これは、たまたまどちらも同じメディアシステムの開発をしていたことに気が付いて、自ら共同研究を提案したものでした。もう少しで実現するというところまで持っていったのですが、不況の影響を受けて白紙になってしまったのです。

いつか自分で事業をやってみたいと思ってはいたので、「それなら自分でやろう」と決断しました。そして北京大学に支援してもらって、方正(現:HOUSEI)を立ち上げることになりました。

完成には「未完成」が不可欠。完成に向かえる「タフさ」を持とう

HOUSEI(ホウセイ)代表取締役社長 管 祥紅

今までの人生を振り返ると、常に自分がやりたいことを叶えるために行動してきたように思います。ときには自分の理想通りにいかないこともありましたが、その環境を嘆くのではなく、自らの意思でキャリアを切り開いてきました。

日本の学生を見ていると、優秀で優しい人が多い一方で、質問や提案をしない学生も多いように思います。日本では若い人が何か発言する際に間違いを恐れる風潮があり、それが消極的な態度に関係しているのかもしれません。

そういった日本の「完璧主義」という考え方はとても素敵で美しいものですが、「完成」はすべて「未完成」からはじまるというのが私の考えです

今でこそ完成されているものも、もとは未完成なものからはじまったはず。まずは問題をどんどん出していって、最終的に完璧にしていくというプロセスでやってきたのに、最初から完璧をもとめる傾向が強いように思いますね。

だからこそ、最初は未熟でもいい、間違っていてもいい。まずは積極的に質問をして、どんどん意見を言っていきましょう。提案しない学生を見ていると、「すごくもったいないな」と感じます。私は常に時間と競争している感覚でいますし、一度きりの人生なのにやりたいことをやらないなんてもったいないですよ。

菅さんからのメッセージ

未完成から完成に近づくには、「タフ」な人間になる必要もあります。周りから何を言われてもめげない、上司に相手にされなくても諦めない、そういったタフさこそが完璧を作るのです。

何事も発言してみないと、それが正しいかどうかわからないですよね。間違ってるかもしれないし、もしかしたらあってるかもしれない。わからないことをどんどんぶつけていくことの繰り返しで、何があっていて何が間違っているのかが見えてきます。若いうちからこの壁打ちの習慣を身に着けることが完璧に近づく方法だと思いますね。

また、情報を得るには人とコミュニケーションを取るのが一番有効だと考えています。たとえば、YouTubeも情報収集に役立ちますが、膨大な情報量なのですべての内容を理解するのはなかなか難しいですよね。一方、その道に詳しい人に質問をしたら、一言二言で簡潔にわかりやすく教えてくれるかもしれません。

今は部屋に引きこもっていても情報収集することができる時代ですが、やはり一番効率的なのは人とコミュニケーションをとることだと思います。損することは何もないので、わからないことがあればすぐに聞きましょう。素直に「自分は何もわからないので簡単に教えてください! 」と伝えて質問をするのも良いかもしれないですね(笑)。

菅さんがおすすめする情報収集の仕方

過去を肯定しすぎず、常に未来に目を向けて学び続けよう

これからもとめられるのは、常に未来に目を向けて学び続けることができる人です。過去を美化しすぎるあまり、変化を嫌う人もいるかもしれません。でも、社会は常に変化しているので、現状維持だけでは時代遅れになってしまうでしょう

なかには「今まで積み上げてきたものをなぜ否定するんだ」ということを言ってくる人もいるかもしれません。確かに過去の上に今があるので、その功績は素晴らしいことですが、今もゆくゆくは過去になっていくもの。変わりゆく社会を受け入れて、日々学び、アップデートしていくことが今後はもとめられるのではないでしょうか。

また、学び続けられる人材になるためには、変化を受け入れる会社を選ぶことも重要です。イメージとして社歴の浅い会社の方が変化に順応していて、歴史のある会社は伝統を守っていると考える人も多いかもしれませんが、大切なのは企業の創立年数ではなく、“精神”を見ることです

たとえば、創立50年ほどの有名企業であるマイクロソフトですが、昨今話題のChatGPTを使って新しい技術を生み出してますよね。歴史はあっても新しい技術を積極的に取り入れ、今でもスタートアップのような「新しいモノを生み出す想い」がある企業といえるでしょう。

このように、新しい技術にアンテナを張り、向上心をもって常に新しいものを取り入れようとする企業をぜひ選んでくださいね。

管さん流 企業選びのポイント

アイデンティティがなければ個性は出ない。ディスカッションを通じて“自分”を知ろう

私は今まで自分のやりたいことに向かってキャリアを選択してきましたが、そもそも「やりたいことがわからない」という学生もいるかもしれません。その場合は、まずアイデンティティ、つまり自己を明確にしていくことが重要です。

自分自身を確立しないことには、個々の価値を生み出すのは難しいと思うんですよね。だからこそ、友人や周囲の人と積極的に議論をして、一体自分は何をしたいのか、この世の中をどうしたいのか、どういうところだったら自分のアドバンテージを活かせるのか……そういったことを話すなかで自己を知って、自分のアイデンティティについて理解を深めてみてください。

ただ、自分が何をしたいのかは30歳、40歳になってやっと見つかるなんてこともあります。すぐには見つからないかもしれませんが、まずは1つ結論を出して、そこに向かって走っていくのもいいんじゃないかと思います。間違っていたり想いが変わったりしたら、少しずつ修正しながらやっていけば良いんです。常になにか目標をもってひたすら走るというのが大事だと思いますね。

またやりたいことを見つけるためには、インターンに積極的に参加してみるのも良いですね。日本ではアルバイトをしている学生が多いですが、個人的にはインターンのほうがおすすめです。

中国のインターンは給料がもらえるものが多かったので、その点で日本とはシステムが違うのかもしれませんが、自分に合った会社を見極めるためにもインターンに時間を使ってほしいと思います。実際に経験してみることで得られる発見があるので、興味があったらまずインターンで体験してみてください。

そして最後に就活生に向けて伝えたいのは、これからは若い人の時代だということです

今は古いものの価値が薄れていき、どんどん新しい技術や価値がでてくる時代。常に新しいものを生み出す発想力がもとめられるので、そういった意味でも、柔軟な発想ができる若手の人が力を発揮しやすくなってきています。

何かを発言する前から萎縮するのではなく、自信と勇気をもって、思っていることをどんどんぶつけていってくださいね。

菅さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:乾花穂子

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