誰よりも楽しみ、没頭できる仕事を選ぼう|「やりたいこと」を探し続けて拓けたキャリア

グランパスコンサルティング 代表取締役 大平 祐輔さん

Yusuke Ohira・大学卒業後、2008年に新卒で住商情報システム(現:SCSK(エスシーエスケイ))に入社。商社・製造業を中心にアプリケーション領域からインフラ領域まで、幅広いプロジェクトを経験。2020年にグランパスコンサルティングを設立後、現職。SAP専門のITコンサルティング事業を軸に、高校・大学受験向け学習塾を運営する教育事業や結婚相談所事業なども手掛ける

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挫折を繰り返した学生時代。幸運にも相性の良い1社目に出会えた

キャリアにおける最初のターニングポイントは、中学生で不登校になったことです。

2年弱学校に行かなかったこともあり、進学したいと思ったときの高校の選択肢が2校しかありませんでした。それでもギリギリ滑り込みで入学できたのが、ITと会計の2領域を学べる情報系の学校だったのです。

当時はPCの電源の入れ方から教わるくらいの初心者で、特別興味があったわけではありませんでした。一旦は公認会計士になる道を考えましたが、縁があり大学でもIT分野を学ぶことに。高校時代に比べるとインターネット上にはいろいろなサービスが登場してきていたので、ITの力や可能性を実感。この時初めて心からの興味を持ったのです。キャリアの軸となるものが定まったタイミングだったかと思います。

就職活動でもIT業界に絞り、序盤は外資系のITコンサル企業を中心に検討しました。しかし思ったような結果が出ず、2カ月ほどは活動自体を休止。覚悟を決めて再開した頃には多くの企業の採用活動はすでに終わっており、まだ採用をしていた国内のSler企業を中心に「とりあえず内定をもらったところに入ろう」と決めて活動しました。

そうして入ったのが、ファーストキャリアとなるSCSK(エスシーエスケイ)です。とりあえず入った会社でしたが、とてもラッキーなことに企業風土仕事内容が私にとても合っており、12年間在籍。ここで起業につながる多くの経験ができたことが、キャリアにおける2つ目のターニングポイントと言えるかと思います。

大路らさんのキャリアにおけるターニングポイント

人生の選択はどう作用するかわからない。最初から決めつけすぎず広く企業を見ていこう

大学時代は目を惹くような特技もなく、普通に学校の勉強をしているだけの凡庸な学生でした。自分が企業の人事担当者なら、昔の自分を採用しなかっただろうと思うくらいです(笑)。中学での経験や就職活動での挫折など、人間はそれ以上落ちるところがない状況までいくと、「このままではまずい」という危機感が芽生えてきて、なんとか頑張れるものだなと実感しています。

就職活動ではいろいろと苦労があるかもしれませんが、「夜明け前の空が一番暗い」という言葉をぜひ胸に留めておいてください。大変な時期でも静かにコツコツと動き続けていれば、夜明けは必ず来るということは、人生の先輩として伝えられるメッセージかと思います。

ちなみに就活中に第一志望だった会社は数年後に倒産。他社に吸収合併され、結果、私が入社したSCSKが誕生したという経緯を知り、大変驚きました。この経験からも「人生の選択は、その後にどう作用するか意外とわからないよ」ということもお伝えできるかと思います。

また、開発を手掛ける企業に入社して気づいたのは、「自分は開発の仕事に案外向いているのだな」ということです。お客さんと話しながらシステムを作っていくのがとても楽しく、物理的に忙しい状況になっても疲れや大変さを感じませんでした。

思えば、就職活動中に志望していたコンサルの職種は憧れやイメージだけで選んでいましたね。

こんなふうに、就職活動のときに思っていたことと、入社後に感じることが違うケースはたくさんあると思います。仕事のことを良く知らないからこその思い込みもあるはずなので、学生時代は社会をよく知らない状態であることを心得て、「まずはいろいろな経験に触れてみよう」という姿勢で、最初からあまり絞りすぎない目線を持っておくことが大切かと思います

大平さんからのメッセージ

会社の実態は、Webの情報や会計上の数字だけでは見えてこない部分が必ずあるので、できる限り、会社訪問や店舗訪問をして中の雰囲気を感じ取ってみてください。社員たちがイキイキと働いている会社ならば、将来的に成長する企業である可能性はあると思います。

また、業界選びに関しては、特定のこだわりがなければ、右肩上がりの市況があり、スピードの速い業界に身を置くことをおすすめします。マーケットの広がりとともに一緒に成長することができますし、常に新しい知識や技術をキャッチアップしなければ付いていけないので、普通に働いているだけでも、必要に迫られて新しいスキルが身に付きやすいです。IT業界などはその代表例だと言えますね。

苦労なくのめり込めれば成長は付いてくる。「楽しめそうな仕事」を選ぼう

1社目に入ってからは、いろいろな種類の案件に挑戦させてもらいました。「やってみたら違ったな」ということを繰り返すなかで、最終的に好きな領域を見つけることができ、自然体で頑張ってくることができた実感があります。人生で初めて「モノづくりの喜び」を知りましたが、本当に自分がやりたい領域を見つけるまではそれなりに時間もかかり、12年間の下積みをして、ようやく花開いた感覚ですね。

キャリアにおける意思決定では、「自分が楽しんで取り組めるか」そして「自分が成長できるか」という2軸だけを意識しています。仮にこの2軸が相反するときは「楽しめるほう」を重視します。楽しそうな仕事には苦労なくのめり込めるので、結果的に成長実感が得られることも多いです。

もちろん仕事の中には、義務的で楽しくない業務もあるでしょうが、それを楽しくする工夫をするのも自分次第です。当社では「〇〇を1分でゴールできた人は勝ち」などとゲーム形式を取り入れながら、定例業務も楽しんでやれるようにしています。

私はたまたま当たりを引くことができましたが、1社目からやりがいを感じられる良い会社に就職できる確率はそう高くないと思います。「つらい」と感じながら好きでもない仕事を長く続けるのは相当難しいので、合わないと思えば転職なども選択肢に入れながら、ぜひキャリアの中で好きなことを見つけていってほしいですね。

何かを好きになれることも才能のひとつです。好きなことであれば無理なく成長できますし、モチベーションも勝手に上がります。私が楽しく働くことを重視している人間だからということもありますが、「つらい、つらい」と言いながら社会で活躍している人は見たことがありません。自分の仕事を心から楽しめていなければ、キャリアのどこかで足が止まってしまう気がします。

性格にもよると思いますが、好きなことに没頭できるタイプの人は、就職活動で迷ったとき、あまり難しく考えずに直感で自分が楽しめそうな会社のほうを選んだほうが、良いキャリアにつながっていくのではないでしょうか。

面接においては、自分の将来に対する思い熱意をアピールしてみることをおすすめします。私もよく面接に立ち合いますが、やはりきれいな受け答えができる人より、言葉がつたなくても想いが伝わってくる人の言葉に心が揺さぶられることが多いですね。

大平さんからのメッセージ

若いうちは不安も焦りもあって当然。試行錯誤を止めず、やりたいことを探し続けよう

当社は学習塾の事業も手掛けているので、社内にたくさんの学生アルバイト・インターンがいますが、話を聞いていると、振れ幅が昔よりも大きくなっている印象を受けます。

インターネットを活用して自分の腕でガンガン稼いでいる人もいれば、昔の私のように学校の勉強だけをしているような人もいて、 周りと比べて焦りやすい状況があるように映ります。情報があふれている時代だからこそ、迷いや不安も生じやすいのではないでしょうか。

もし何か学生時代のうちに有意義な経験をしておきたいと思うならば、興味があることにはとりあえず飛び込んでみて、いろいろな世界を見聞きしておくこと。そして、自分やモノを売り込むスキル=営業力を身に付ける意識を持っておくのがおすすめです。営業力はどんな業種に就いても活かせますし、面接でも自分を売り込むうえで役立つはずです。

昔の私と同様、就職活動中にやりたいことが具体的に見つからない人も少なくないことでしょう。大学生のうちは不安があって当然ですし、人生のなかで「もがく時代」はあって良いと思います。

ただし、その気持ちのまま何も行動しないでいると、変化はなかなか起こせません。あっちこっちを覗いて彷徨って、自分の核となるものを探す試行錯誤を続けていれば、いつかきっと好きなこと・やりたいことが明確に見つかってくると思います

試行錯誤を続けて、自分の核となるものを探そう

最近は「コスパ」なんて言葉もよく聞きますが、キャリアを振り返ってみれば、無駄な経験はひとつもなかったと感じています。中学時代に不登校になっていなければ、高校時代にITを学ぶことができず、今のキャリアはなかったことでしょう。就職活動にも一度挫折したからこそ、開発を手掛ける会社に入ることになり、楽しく取り組める好きな仕事を見つけて、起業まで果たすことができました。

局面局面で追い詰められていたからこそ、「やるしかない」という思い切りの良さを発揮できた気もしますね。実らないことがあっても「ダメならまた次! 」と切り替えれば良く、素直に挑戦する姿勢こそが、未来につながっていくように感じています。そのときは「時間を無駄にしたな」と思っても、10年後にひょっこりその経験が役立った……なんてこともあるものです。

やりたいことが40代、50代になって見つかったとしても、それまでの試行錯誤があったからこそ見つけられたわけで、そこから楽しく励めばいいだけです。最短距離で、コスパ良くキャリアのゴールを目指そうと考えず、若いうちは無駄を恐れずに、ぜひたくさんのチャレンジと経験をしてみてください。

楽しく働くためには「やりたいことをやり続けられる環境であるか」が重要になる

キャリアにおける3つ目のターニングポイントは、12年間勤めた会社を辞めようと決め、当社グランパスコンサルティングを起業したことです。

1社目の会社は入社当時から上場企業ではあったものの、今のように大きな会社ではありませんでした。名のある大手企業へと成長していくにつれて企業体質も大企業らしくなっていき、変わらず良い会社ではあったのですが「自分には企業風土が合わなくなってきた」と感じるように。

「昔のように自由にいろいろと動きたい」。そう思い始めた頃に、会社を辞めてフリーランスになった人の話を聞き「自分もフリーになってみるか」と思い立って退社を決意しました。

自分でやれる自信が付いていたからこそできた決断だとは思いますが、「細かいことは辞めてから考えればいい」くらいの勢いでしたね。独立後はすぐに法人化しましたが、ひとりでやるつもりだったので、自分の苗字(大平)をもじった社名「Grande(大きい)+ Paz(平和)=グランパス」と付けてしまったくらいです(笑)。

仲間を増やそうと思ったのは、創業後しばらくして、あれをやりたい、これをやりたいという興味のある分野が出てきてから。今でもSAPの導入を検討されているお客様へのITコンサルティングサービスを主事業としていますが、Webマーケティング領域を通じた事業展開に挑戦するために、メンバーを迎えて会社を大きくさせていく方針に切り替えました。今は新しいチャレンジがとにかく楽しく、表面的な数字だけでは見えてこない部分で大いに充実感や成長を感じられています。

会社員時代は気付けなかったことですが、「自由にやりたいようにやれる環境がある」ということは当たり前のことではなく、かつ、楽しんで働くためにはもっとも重要なことだと感じています

この会社は私を含めたメンバー全員がやりたいこと、働きたい形を実現するための「器」だと考えているので、いろいろなメンバーと出会い、共感しながら楽しく働ける会社を作っていきたいです。社員がやりたいことがあれば、それに乗っかって一緒に楽しませてほしいという気持ちもありますね。

社員たち皆がのびのび働くことができ、興味の向くままにチャレンジできる環境を作っていくことが今後のキャリアにおける目標です。先々のことはあまり決めておらず、その瞬間その瞬間で楽しく仕事に取り組んでいれば、良い未来が生まれていくだろうと考えています。

大平さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

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