「働く人を正当に評価できる会社を作りたい」|自分のタイプと興味を見極めよう
JPMC(ジェーピーエムシー)代表取締役 社長執行役員 武藤 英明さん
Muto Hideaki・1988年法政大学卒業後、飲食チェーン、半導体商社などを経て、1997年ネクスト(現LIFULL)を設立。アパマンショップホールディングス、原弘産を経て、2001年不動産ビジネス研究所、2002年JPMC日本管理センター(現JPMC)を設立し、現職
若いころの経験が起業家としての土台となった
私が就職活動をおこなっていたバブル真っ只中は、メーカー不況で金融業界が人気でしたね。ところが、私が就職したのは、当時新興の飲食チェーン。今では大企業ですが、当時はまだまだ店舗も少なかった時代。大学1年からアルバイトしており、内定をいただいてた金融機関ではなく、その飲食チェーンへ入社しました。
入社した飲食チェーンでは心身ともに鍛えられました。なんと入社から3日目に、ある店舗のオープニングマネージャーをいきなり任されたんです。
もちろん、バイト時代の経験を見込んでのことではありますが、社会人の経験もない若者にオープニング店舗の運営を任せるという、スパルタ教育でした。しかも、店舗の建物もまだできてなかったんですよ(苦笑)。
しかし、その経験が後の起業家経験で活きています。くじけない心、タフなマインド、疲れた中でも最大限頭を使う力など。この経験があったからこそ今の自分があるといっても過言でない、それほど得難い力を身に付けることができました。
ちゃんと働く人を評価できる会社を作りたい。理不尽な経験からの学び
飲食チェーンを経験したのち、半導体の商社にて人事としてのキャリアを積み、その後、外資系の企業に転職。そこで、オランダのロッテルダムに駐在するチャンスをもらいました。オランダのロッテルダムでは、当時まだ出始めだったインターネットに出会い、のちに起業する際の貴重な財産となりました。
起業を決意した出来事は、当時29歳、外資系企業でのリストラマネージャーの経験でした。
今までは積極的に採用をおこなっていたのですが、会社の方針変換により、手のひらを返したように社員の首を切るように方針が変わり、私はリストラマネージャーだったためその役割を担うこととなりました。
この経験から感じたことは、「企業は採用した責任と継続した労働環境を提供する使命がある」ということでした。
このつらい経験を経て、会社に命じられて雇用をカットする側でなく、雇用を創生する側に回ろうと決意。ちゃんと働く人に、ちゃんと報いる会社。シンプルですが、そんな環境を自分で構築したいと思いました。
そのような背景もあり、オランダで培ったインターネットの私の知見と不動産に詳しい友人で手を組み、何かできないかとスタートしたのが、起業家としての始まりでした。もちろん、起業のその先に目指していたのは、「理想の会社を作ること」でした。
自身を取り巻く環境に疑問を抱き、退職・起業を決意し、行動に移したことが現在のキャリアにつながっています。
何をするかより、どうやるか(プロセス)に注目しよう
何をやるかに注目する人は多いですが、特に重要なのは「誰がどうやってやるのか」だと思います。
ラーメン屋を例にあげるとすると、商品は同じラーメンなのに行列できるの人気店から、あまり人の入らない店までさまざまですよね。この違いは、単に商品の質だけではなく、「売り方」や「手段」が違うことが要因として考えられると思います。
私自身、過去にはさまざまな質の良い商品・サービスを見てきて、関心したこともありました。しかし、どんなにいいサービス・商品でも売れないこともあるのです。やはり、「どのように商品を売るか」などのビジネスの「やり方」が重要であり、アイデアだけが優れていても成功は難しいでしょう。
この視点は就職において企業を選ぶ際、重要になるのではないでしょうか。
志望する企業では、誰がどのようなスタンスで、どんな手段を用いてやっているのかを、よく見てほしいです。その企業が今後10年、どのように成長していくか。過去を紐解いていくと見えてくる部分があるでしょう。
たとえば成長曲線が緩やかになっているのか、今後も伸びていくか。判断するためには、 IR情報などを参考に類推できる数字から企業研究をすることが重要となります。
会社経営をしていて困難は様々ありました。失敗に対する反省は必要ですが、時間を戻すことはできない。やることは決まっているからこそ、落ち込んでも時間の無駄だと考えることで、前を向くことができました。
理想の会社を目指して起業し、さまざまな困難も乗り越え、ここまで進んできましたが、思い返すと全て楽しかったです。
それは目標を設定し、試行錯誤しながら努力する過程と目標を達成する充実感を楽しめたからこそだと感じています。
2002年に創業し、2003年に初めて人を雇用したのですが、雇用した彼に向かって「2014年に東証一部に上場するから」と宣言をしました。目標を立て、そこからの逆算し、小さな目標を積み重ね、計画を立てました。うまくいかない事、修正点もたくさんありましたが、前向きにトライアンドエラーを繰り返して目標を実現させることができました。
ただ上場も通過点で、当社のゴールは「プレハブメーカーに代わる業界のゲームチェンジャーになること」です。社会の要請・実態にあった持続可能なビジネスをより作り上げていくことが使命だと思っています。
まず目標を設定しそこから逆算して考えるというのは、ぜひやってほしいですね。どんなレベル、フェーズにあっても、目標は自由に立てられるはずです。段々と目標に近づいているという実感こそが、成長だと信じています。
自己分析が重要! 己を知ってスペシャリストを目指そう
これから世の中に出るのであれば、まずは自分のことをよく知って、戦い方を考えるのが良いのではないでしょうか。
己を知り、敵を知る。この順番の方が、無理がない気がします。自分の好きなことややりたいことが見えているなら良いのですが、そうでなければ、自分のタイプを分析しても良いかもしれません。
たとえば、早熟でいち早くチャンスをつかみたいタイプだと感じるなら、ベンチャー企業へ、大器晩成で下積みが長くても将来多くな仕事がしたい思うなら大企業。自分のこれまでの成長を振り返って、その成長を後押ししてくれる環境を見極めましょう。
ベンチャーなら早いうちから経験を積んだり、新しいことを次々手がけたりする機会も多いはず。一方大企業なら、じっくりと仕事に取り組める環境があります。
これからの時代は、若年の労働力が圧倒的に不足するので、ある一定のレベルであれば、しばらくの間は職に困る可能性は高くないでしょう。しかし、その職の質は時代とともに大きく変わっていきます。
AI(人工知能)やRPA(ソフトウェアロボット)で作業的な業務は代替されることで、人間ではないとできない高度な仕事しかもとめられなくなります。高度知的人材であることが、前提の市場になるのです。
全てのことに高度である必要はありません。見定めた分野で誰にも負けない能力を磨けば良いのです。これならできる、という分野を掘り下げましょう。
では、今まで重宝されていたゼネラリストはどうなるのか。これは難しい問題ですが、人並外れたマネジメント力がある場合のみ、生き残れるのではないでしょうか。マネジメントが高度な能力の一端になり得るかもしれませんね。
ぜひ、まずは自己分析を徹底的におこない、自分に向いている企業や職種、伸ばせる能力を見極めてから、就活に臨んでみてください。応援しています。
取材・執筆:鈴木満優子