「何がしたいのか? 」自分の欲求と向き合おう| 20代で出会えた「メンター」の存在がキャリアを支えた

金剛 執行役員 倉野尾 祐司さん

Yuuji Kuranoo・熊本県出身、工業高校卒業後、地元・熊本県内の企業に就職。その後、金剛に転職し、長く情報システム部にて社内システムの開発に従事する。2021年より執行役員となり、現職は執行役員管理本部本部長を務める

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原点は趣味の「機械いじり」! 好きを大切にキャリアを設定

小学生のころから、隣近所から壊れた家電製品をもらってきては分解して遊ぶのが大好きで、好きなように分解して元に戻したりという遊びをとにかく楽しんでいました。そうやって遊んでいるうちに、不思議とうまく修復できるようになり、そんなことにも喜びを感じるようになっていったように思います。

機械をいじることがとにかく好き。その点は自分自身でも自覚していたので、中学3年で進路を考えた際には、機械関係の仕事に就くことを前提に工業高校への進学を決めました。

高校3年で就職先を決めるときに決断を迫られたのが、県外に出るか地元に残るかの選択です。一度は県外に出ようと考えましたが、家庭の事情もあり県内で就職することを決め、電力系監視装置を受託生産する会社へ入社しました。

その後2年ほどで、転職活動を経験。もっと成長できる場に移りたいという気持ちが強くなり、機械関連の会社であることと、今度は「より成長できる環境がある会社」という視点で探して出会ったのが、現在も勤める金剛という移動棚や収蔵庫設備のメーカーです。

倉野尾さんのキャリアの変遷

「より成長できる会社だ」と感じた最大の理由は、1社目の会社と比べて従業員規模は少し大きい程度なのですが、バラエティに富む仕事があったこと。実際入ってからも、会社の中にいろいろな職種があって専門性をもって働いている先輩が多くて刺激的だったことを覚えています。

相手は必ず真摯に応えてくれる。「積極的に聞く」姿勢を大事にしよう

たくさんの職種がある中で、私は情報システム部に配属され、会計システムの担当になりました。その後、社内の生産管理システムを作るというミッションを与えられ、入社2年目にして、なんと生産管理システムをゼロから立ち上げるという仕事にチャレンジすることとなったのです。

知識ゼロの状態ですから、もちろん勉強しなくてはいけません。ところが、勉強といっても何からどのように勉強すればよいかさえわからない。

そこで、まずは「生産管理とはなんぞや? 」「生産管理はどうあるべきなのか? 」について教えてくださいと上司に依頼。周りを見渡して、詳しい人を探しては声をかけて質問をしました。専門書も読みあさり、覚えたことはすぐに試してみる。うまくいかないところは修正、また再び修正……と、とにかくがむしゃらに勉強しましたね

今振り返って思うことは、間違いなく、この経験があったからこそ今の私があるということです。私の長いキャリアの中でターニングポイントを1つ挙げるなら、それはまさに20代前半にこの大きなミッションを与えてもらったこと。「ゼロから社内システムを作り上げる」という仕事を通じた経験こそが、今の私を支えています。

どんな相手でも自分から話しかけて教えてもらって、その後自分の中で整理できた段階でもう一度「これで合っていますか? 」と確認しに行き、「ここが違うよ」と指摘されたらまた修正して確認に行く。この繰り返しで、システム設計の仕様書をどんどん改善し形にしていきました。

わからないことだらけからのスタートでしたが、納得いくまで調べ尽くすこと、何回でも食らいついて先輩に教えてもらう姿勢だけは、今思い返しても誰にも負けなかった自信があります

社内システムをゼロから立ち上げた仕事のサイクル

私の場合、とにかく嫌でも聞きに行かなければ何も始まらない状態だったのですが、皆さんもぜひ「自分から声をかけること」を意識して欲しいと思います。

苦手な人も多いと思いますが、勇気を出して積極的に質問に行くと、意外とどんな大先輩でも真摯に対応してくれるものですよ。何度も食らいついてくる後輩は、むしろ可愛がられたりします。「積極的に聞く」姿勢をぜひ大事にしてください。

一生付き合える「メンター」の存在がキャリアの支えに!

金剛 記事中写真

これまで、キャリアの大半は情報システムの仕事に携わり、現在は執行役員の立場で働いています。「早く上のポジションに行きたい」「昇進したい」などと考えたことはなく、それよりも「どうすれば目の前のことがうまくいくか」にこだわって仕事をしてきました。

さらに、情報システム部門は社長はじめ役員がいるフロアにあったことから、経営層が身近にいたことで漠然とではありますが「どういう会社にしたいか」「そのために自分は何ができるか」ということは考えていたように思います。

そのような環境の中でずっと大事にしてきたのは、仕事でもプライベートでも「もとめられれば、期待に最大限応えること」でした。できるだけ相手の役に立ちたいという気持ちはいつも考えて、自分にできることを最大限やる。この繰り返しこそ、どんな仕事においても一番大事だと思います。

倉野尾さんのキャリアの描き方

また、何でも相談できる「メンター」の存在も私にとっては大きかったです。相談できる人が見つかると、仕事はぐっと楽になりますし、気が合う先輩・気軽に話せる先輩が見つかると、話をするだけで気分転換になるものです

私の「メンター」との出会いのきっかけは、入社当時同じフロアで働いていたことでした。

機械いじりや車が好きという共通の趣味があることがわかったことで一気に距離が縮まり、車の競技レースに一緒に出るほどに親しくなりました。その先輩は3年ほどで会社を辞めてしまったので職場はバラバラになりましたが、その後も現在に至るまでずっとお付き合いは続いています。

すべてのはじまりは、自分から話しかけてみたこと。そのおかげで、20代で生涯の支えとなる「メンター」と出会え、これまで何度も助けられてきました。ぜひ皆さんも積極的に色々な人と話をして、共通の趣味がある先輩、波長の合う先輩、何でも話ができる先輩など、一生付き合える「メンター」と出会ってほしいと願っています。

自分のキャリアは「自分で決めること」にこだわってほしい

どんな仕事に就くのか、どの企業に就職するのか、最後に決めるのは自分です。当たり前のことですが、そうなっていない人も多いのが現実。「周りに勧められたから」「親がいいと言ったから」という理由で決めている人も少なくありません。

しかし、自分のキャリアは自分自身のもの。だからこそ、「自分で決めること」にこだわって就職活動を進めることを何よりも大切にしてほしいです。

入社後は、楽しいことばかりではなく、苦しいこと、つらいこともあります。そんなときでも、「自分で決めて入った会社なんだから」という根底部分がしっかりとしていれば、いざというときに踏ん張りがきくものです。

どんな会社を選ぶにしても、最後は「自分で決める」こと。これが後々自分のためになることをよく理解しておいてもらいたいです。

就職活動では「経営者」「人事担当者」にパワーがあるかに着目しよう

一方で、就職活動においては、「人」に注目すべきだと私は考えます。企業はやはり「人」で決まります。元気のある企業は働いている人も元気いっぱいです。

まずは、就職活動で接する機会が最も多い人事担当者に熱意やパワーがあるかどうかをよく観察してみましょう。そして、経営者と出会う貴重な機会にも、元気がある経営者どうかをよく見てください。

それ以外の視点で企業を正しく判断することは、正直難しいだろうと私は思っています。はじめて社会人スタートを切ろうという皆さんですから、わからないのは当たり前。「良い会社を選ばなくては」とあまり気負わず、「自分で決めたんだ」というその気持ちこそを一番大切にして欲しいと思っています。

企業を見る際に着目すべきポイント

  • 人事担当者に熱意やパワーがあるか

  • 経営者に元気があるか

自分の興味や好みの領域を超えた”コミュニティ”に参加してみよう

今は、SNSを通じて、自分の興味のある分野と簡単にかかわることができる時代です。でも逆に、スマホの画面上には自分の趣味嗜好に合ったものばかり出てくるので、自然と慣れ親しんだ環境に身を置くことになりがちですよね。

「自分に合った仕事は何だろう? 」「自分は何に向いているのだろう? 」を探すには、そこから飛び出して新たなコミュニティに参加してみるのが一番ではないでしょうか。

自分があまり得意でない領域、詳しくない領域に身を置くことで、それまでとは違った視点を得ることができます。想像もしなかったようなことに興味をもつようになったり、違ったタイプの人と出会うことでこれまでとは違った新しい発想が生まれることもあるでしょう。

もちろん最初は勇気がいりますが、勇気を出して飛び込んでみてください。好き・嫌いなど、普段見えないものが見えるチャンスが必ずあると思っています。

クリエイターが活躍できる時代だからこそ「尊敬できるメンター」を見つけてほしい

これからの時代の仕事においては、クリエイターと呼ばれる人、オペレーターと呼ばれる人の2つに分かれていくはずです。

オペレーターは、基本的に会社のルールに沿って黙々と処理をしていく仕事。今後はどんどんAIに置き換わっていく分野ですから、オペレータの仕事で必要とされる人数は確実に減少していきます。

一方のクリエイターは、ルールを作る側の仕事。物事を多角的に捉えて、最適な方法となるようルールを生み出す仕事ですから、ここでもAIを活用するにせよ、クリエイターの仕事は今後も必要とされ続けます。

つまり、若い皆さんはクリエイター側に回らなくてはいけない、ということを知っておかなくてはいけません。少なくとも、この先クリエイター的な発想ができるように準備しておきましょう。

倉野尾さんからのメッセージ

そのためにできることは、まずコミュニケーションスキルを上げること、たくさんの人と話をすることです。就職してからも、社内の人だけでなく社外の人にも話を聞く機会をどんどん作りましょう。

色々な仕事をやっている人、さまざまな考え方の人と出会い、そして自分の中に落とし込んでいく。そういう経験を積む努力をしてほしいと思います。

社内外問わず“人”とかかわろう! 「自分は何をしたいのか」を常に考え続けてほしい

皆さんに最後に伝えたいのは、自分が何をしたいかを大切にし続けて欲しいということです。自分の未来は自分でしか作れません。未来のためにできることは、自分はどうしたいのか、そのために何をしていくのかを自分で決めることです。

今後、就職した会社が合わないと感じることもあるかもしれません。離れるという選択もありますが、一方で、合わなくても社内の仕組み自体を変えて自分のやりたいことを実現するという方法もあるかもしれないですよね。つまり、すべては「自分はどうしたいのか」です。

また、「どうしたいか」という考えは、その場その場でどんどん変わっていくものです。なので、「今どうしたいのか? 」を常に考え続けることを心がけてください

考えるだけでなく、時には人と話をしてアドバイスをもらったり、新たな考え方に触れることが重要。できればメンターと思える人を探し出し、その先輩から多くの体験談を聞いて、疑似体験をしながら自分のものとして吸収していってくださいね。

私は働くうえで、オンとオフをうまく切り替えるスキルも大事になってくると考えています。

20代は毎日勉強で覚えることだらけで、夜遅くまで仕事をしていましたが、不思議とつらいと感じることはありませんでした。その理由の一つは、遅くなってもそこから遊びに行って仕事モードから解放される時間を作っていたから。

オンとオフの切り替えをして、うまく気分転換しながら「自分はどうしたいか」という軸でキャリアを築いていってほしいと願っています。

倉野尾さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:小内三奈

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