「今」が過去の選択を正解に変える|仕事に謙虚に向きあってチャンスを掴もう
うるる 代表取締役社長 星知也さん
Tomoya Hoshi・1976年生まれ。北海道出身。高校卒業後、通信機器の会社に入社。その後、ワーキングホリデーでオーストラリアに1年間滞在。帰国後に入社した企業で2003年に「うるる」を社内創業。2006年にMBOにて独立し、2017年に東証マザーズ上場
企業詳細:コーポレートサイト
何の準備もなく社会へ飛び出した18歳
自分の仕事歴を振り返ると、これまで明確な志望も目標もなく仕事を選んできたと感じます。ただし小学生時代から、とにかく他人任せでなく何でも自分でやってみたい好奇心の強い子供でしたから、早く社会に出て自分で稼ぎ自立し、何事も自分で選択し決断するこれまでの生き方は性格に合っていましたし、自分なりに納得していました。
高校を卒業する時点で、とくに何もやりたいことはありませんでした。周りはみな大学進学を予定していましたが、皆が行くからという理由で大学に行きたいとは思えませんでしたし、なりたい自分や就きたい職業、将来の夢があるわけでもなく、中途半端な気持ちで受けた大学受験も全滅でした。
勉強が好きではなかったので浪人する気もなく、就職活動もしていなかったので結局はアルバイト雑誌で見つけ、時給の良さに惹かれたビルの窓拭き清掃のアルバイトを始めました。
そのうち、単なる外見の問題なのですが、スーツを着て働く仕事がしたくなり、転職雑誌で仕事を探すと営業職が見つかりました。営業をしたかったわけではなく、スーツ姿の仲間が集まり楽しそうに談笑している掲載写真に惹かれて応募したら営業の仕事だったというだけです(笑)。
好奇心に駆り立てられ突然の渡豪を決意
3年ほどして千葉で所長を任されるようになった頃、会社に金髪でロン毛のサーファーが入社してきました。話を聞くとオーストラリアでワーキングホリデーをしてきたとのこと。こんなに自由な生き方があったのか、オーストラリアは何と楽しそうな所だろうと衝撃を受け、自分もワーホリをしない手はないと思いすぐに辞表を提出。すぐにオーストラリアへ旅立ちました。
そもそも失うものはないし、将来設計という発想もなかったので「ジャスト好奇心」で行動しました。オーストラリア滞在は1年間でしたが、何事も自分でしたくて早々と社会に出た私が、今度は生まれた国すら離れて生活したわけで、より自立心が刺激され自信も付きました。
周囲が大学生活を送っている中、若い多感な時期に社会人として働いたり、海外での生活を経験できたことは良い刺激になったと感じています。
ただし行き当たりばったりの生き方は帰国後も変わらず、求人雑誌を頼りに仕事を探しました。この時も会社や職種にこだわりはなし。敢えて言えば前の会社が若い会社で企業の成長と共に自分も成長できた実感があったので、今度も設立間もない会社を選ぼうと考えました。
「分かれ道では困難な方を選べ」の言葉に導かれ独立
就職した会社では新規事業のブライダル事業を立ち上げました。ようやく黒字が出る頃になって、業績が悪化した別部署のテコ入れを会社に命じられました。それまでは、どんな仕事も即答で受けてきましたが、手塩にかけた事業がさあこれからという時に離れるのは抵抗があり初めて1日考えさせてもらいました。それでも結局は声をかけてもらえたありがたみを優先して異動を受け入れました。
ところが会社全体の業績が振るわず、引き受けたデータ入力の事業も終了することになりました。それで考えた末にMBO(自社買収)で事業ごと買い取ることにして独立を決めました。それが現在の会社の原点です。
MBOするときはいくつか選択肢がありました。事業を引き受け独立する。別の部署に移って会社の仕事を続ける。まったく新規で事業を立ち上げる。会社を辞めてアメリカへ渡るという4つでした。
ここで判断基準として参考にしたのが、岡本太郎さんの言葉でした。「私は分かれ道があったときには困難な方を選んできた」といった内容でした。カッコイイなと、それが印象に残っていたので、同じ発想で選択しました。
引き受けた部署は当時、データ入力の事業しかしていなかったので「赤字事業で、しかも何の将来設計もないデータ入力の仕事を買収してどうするんだ」と自問自答しましたが、だからこそ「より困難な方」として買収・独立を決断しました。まだ27〜28歳で、何かを失う恐れも不安も全く感じませんでした。
経営者としてすべてを背負って会社を運営する中で多くの困難や壁にもぶち当たりましたが、仲間にも恵まれ独立から10年ほどで会社を東証マザーズに上場できました。結果論になってしまいますが、あえて言い訳ができない環境に身を置くことで、自分の新しい可能性が引き出され成長できる面もあります。
企業を「家に近い方」で選んでもいい。大事なのは目の前の仕事を一所懸命やること
いまでも仕事やキャリアについて特別な思いはありません。そもそもキャリアプランなんて言葉を知ったのも最近です(笑)。
独立を目標にしていたわけではありませんし、会社に属した方がいいかどうかは自分の考え方次第です。たとえばアナウンサーの仕事をしたいとか、テレビの仕事に携わりたい人は会社に入った方が夢に近づけます。私のように何でも自分で判断して動きたい人間は独立向きです。
後者だった私は会社に属していた頃より、独立後の方が楽になりました。会社組織では目標や方法は会社や上司が決定し、それに納得できなかった場合も従わざるを得ません。私にとってはそれが大きなフラストレーションでした。
責任が伴う選択を自分が納得して判断し、誰のせいにもできない環境の方が私にとっては快適です。ですから私の会社では企業スピリットの一つに「当事者意識を持って、納得して働く」を掲げています。
本当に行き当たりばったりで歩んできた人生ですから、誰かの参考にはならないでしょう。
そんな私に言わせれば、就職先はどこでもいい。どこであっても目の前の仕事を一所懸命にやることが大切です。仕事を選ばないから、やったことがないことへの挑戦ばかりでしたが、それを積み重ねていくことで、自分のできることが増えていくのが嬉しかったし楽しかったのです。
就職先に迷うくらいだったら「家に近い方」を選んだっていいと思います。どこに就職したっていい。まずは社会に出てみること。その方がよほど重要だと思います。憧れの職種があるとか、どうしても入りたい会社があるならそれを否定はしませんが、選択の間口を狭めすぎない方がいいと助言したいですね。
これからの時代に求められる人材像については、スキルや能力の切り口もありますが、それより私はマインド的な部分が大きいと考えます。具体的には選り好みをせず、謙虚に仕事に取り組む人です。結局そういう人材は周りに可愛がられますし、チャンスも多く与えられます。
与えられたチャンスをつかむには嗅覚が必要ですが、その種の嗅覚を高めるのは好奇心の存在です。職場に現れた金髪ロン毛のサーファーに好奇心を持って話しかけなければ、「なんだコイツ」で終わっていれば、今の私はなかったはずです。
「今の成功」が過去の選択を正解に変える
社会に出る前に企業を選ばなければならない就活だと、何が正解なのか悩みますよね。どんな選択が正解だったかは、後々の自分の成功によって見方は変えられます。私は現在、上場企業の社長ですから「やはり上場企業の社長になるような人はワーキングホリデーに行くことも即決できるんですね」と言われることがありますし、大学にも行かず一流企業でのキャリアがあるわけでもない点まで、むしろプラスに評価されます。
ところが、もしも現在の私の立場が違うものだったら、「やっぱり大学はで出ておいた方がいい」とか「やっぱり就職先が大切」などと言われかねません。つまり何をどう選択して何をやって来たかという過去に対する評価は、後から変えることができるのです。
それでも会社選びのアドバイスをするなら、企業理念やビジョンと自分の考えが一致している会社を選べと言いたいですね。会社がうたう理念やビジョンが言葉だけのきれいごとかどうかは、その会社の事業を見ればわかります。この理念だったらこういう事業をするはずだ。こういうビジョンの会社がこんなビジネスをしているのはおかしいと見極められるからです。
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取材・執筆:高岸洋行