「なぜ」の深掘りで自分流のキャリアを描く! 「高次元の自由」で遊ぶように働こう

マツリカ 代表取締役CEO 黒佐英司さん

マツリカ 代表取締役CEO 黒佐英司さん

Eiji Kurosa・ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業後、新卒で積水ハウスに入社。個人向けの企画提案や法人・資産家向けの資産活用提案、海外事業開発での企画営業を担当。2011年にユーザーベースに入社し、営業開発チームの立ち上げや営業部門、マーケティング部門及び顧客サポート部門の統括責任者を歴任。2015年に「世界を祭り化する」をミッションにマツリカを共同設立し、現職

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物心ついた時から根底にある、「幸せ」への使命感

1人でも多くの人を幸せにしなければいけない」。物心ついたときから、このような使命感がありました。

小学生のときはその使命感を胸に、将来は発明家になったり癌の特効薬をつくろうと思っていました。まだ仕事や世の中についての知識が少なかったので、これなら多くの人を幸せにできると思っていたんですよね(笑)。

しかし中学生になり、自分1人でできることは限られているなと思うようになりました。多くの人を幸せにするには、仲間と一緒に何かをする必要があると考えるようになったのです

とはいえ「自分がやることは自分の意思で決めていきたい」と思っていたので、会社員よりは起業のほうがしっくりきましたね。また、人々を幸せにしたいという強い想いはありましたが、何をもって幸せとするかは人それぞれ違うので、「どんな手段で人を幸せにしたいのか」も自分で考えて決めたいと思うようになりました。

食わず嫌いはもったいない。若いうちはとことん「Why」を深掘ろう

マツリカ 代表取締役CEO 黒佐英司さん

高校に進学する時期になって、選んだのは家から一番近い学校でした。とにかく勉強が嫌いだったので、高校は距離だけで決めましたね(笑)。たまたまそこが進学校だったので、「きっと勉強が好きな人ばかりで自分とは合わないんだろうな」とはじめはまったく期待していませんでした。

公立の中学校では同じ地域に住んでいるというだけの理由で人が集まるので、異なる学力やバックグラウンドを持った人たちと接することができます。一方、高校は受験を通じて一定の学力、同じような考えを持っている人が集まるので、つまらないだろうなと思っていたんです。

ところがその考えは良い意味で裏切られました。高校には予想以上にいろいろなタイプの人がいて、人間として面白いと思う人がたくさんいたのです

昔からやりたくないことはやらないに越したことはないし、やらなくて良いと思っているのですが、「何がやりたくないことなのか」を情報の少ないなかで判断するのは難しいですよね。だからこそ情報の少ない若いうちは、とことん「Why? (なぜ)」を深掘りするのがおすすめです。

やりたくない理由を深掘りした先に、“事実”があれば本当にやりたくないことだと言えると思いますが、“仮説”があるようであればそれはただの思い込みかもしれません。

実際に私が高校に期待していなかったときの気持ちを振り返ると、「高校にいきたくない→進学校は勉強が好きな人ばかりで面白くなさそうだから→勉強が好きな人はみんな同じ考えだから」と深掘りできるのですが、「勉強が好きな人はみんな同じ考えだから」というのはただの仮説。だからこそ期待していなかった高校生活は、良い意味で裏切られることになったのです。

この経験を通して情報が少ないうちから、食わず嫌いするのはもったいないと思っています。どうしても嫌なら、まずはとことん「Why」を深掘りしてみることをおすすめしますよ。

黒佐さんからのメッセージ

進学校だったこともあり、高校2年生にもなると周囲は一気に大学受験モードになりました。自分としては大学生への偏見から、18~22歳という若くて大事な時間を大学生活には使いたくないと考えていましたが、親に進学をしないことを伝えたら反対されてしまいました。両親は今まで自分の意見を尊重してくれていたので、「これは何かありそうだ」と考え直し、大学へ進学することに。

どうせ進学するのなら「自分の世界を広げたい」「今までにない経験をしたい」という思いもあったので、国内ではなくニューヨークの大学を選びました

「海外の大学は卒業するのが難しい」とよく言われますが、本当にその通りで、人生で一番勉強しましたね。日本の大学に進学していたらこんなに多くのことを学ぶことはできなかったんじゃないかなと思うので、良い選択だったと思っています。

ファーストキャリアは圧倒的にCAN軸で

就職する時期になって、就職先に選んだのはアメリカではなく日本。自分の強みを活かせる選択肢を考えた結果でした。

アメリカの大学にいたので英語は話せましたが、アメリカで就職するとなると、ただ母国語を話せるだけなので、特にアピールポイントにはなりません。この語学力を活かすためにも、「英語も話せるし海外の文化を理解できる人」という付加価値が生まれる日本で就職したほうが、圧倒的にアドバンテージが大きいと思ったんです。

よく「やりたいこと(WILL)」と「できること(CAN)」のどちらを選ぶべきか迷っている人がいますが、ファーストキャリアは圧倒的にCAN軸で選ぶべきだと思っています。特に規模が大きく配属先の多い企業であれば、どこに配属されるかわからないし、どんな上司と働くかもわからないですよね。やりたいことへの不確定要素が多いなら、自分ができそうなこと、自分が勝てることで企業を選んだ方がいいと思うんです。

一方スタートアップのような規模の小さな企業であれば、どんな仕事をして、どんな人と働くかを面接の段階で把握することができます。「この人が好きかどうか」「一緒に働きたいかどうか」で企業を決めることができるので、確実性が高いことを重視するならスタートアップのほうがおすすめだと思います。

黒佐さん流 企業選びのコツ

結局、1社目に選んだのは積水ハウスです。将来的に起業したいという思いは引き続きありましたが、どんな事業をやりたいというアイディアはまだなかったので、社会人としての経験を積むために就職を選びました。

その中でも積水ハウスを選んだのは、営業が厳しい世界で営業力を磨きたかったから。結局どんな仕事も営業力なくしてはできないと思います。直接的な営業だけではなく、人を採用するのも営業だし、資金を調達するのも営業。自分が将来何をすることになっても営業力は欠かせないと思ったので、あえてハードな道を選んでみようと思いました

最初は2、3年でやめるつもりだったのですが、結局6年ほど在籍していました。人間って慣れてくるとぬるま湯に浸かり続けたいって思うようになっちゃうんですよね(笑)。30代が目前に迫ってきてさすがにまずいなと思い、社長の想いや組織の形に強く共感したユーザベースに転職しました。

ユーザベースでは、営業開発チームの立ち上げや部門責任者などさまざまなことを任せてもらい、自分としても大きく成長できたと思います。ただ組織が大きくなったり上場の準備をしていくなかで、大きなチャレンジができなくなってしまったので独立を本格的に考えるようになりました

同じころ、高校の同級生と「そろそろ起業するか」と話していたので、日本1周などをしながらアイディアを考えました。その後前職の同僚とも意気投合して、2015年に当社マツリカを創立しました。

楽しんだもん勝ち! 遊ぶように働くことで創造性が引き出される

当社は「創造性高く遊ぶように働ける環境を創る」をビジョンに掲げているのですが、これは組織運営でも大事にしている考えです。

たとえば子供が遊ぶときって何か言われたから遊ぶとか、何かの目的のために遊ぶのではなく、目の前のことを楽しみたいから遊びますよね。この状態が一番創造性が発揮されやすい状態だと考えているので、仕事でも同じような状態を生み出すことが重要だと思っています。

だからこそ組織の中でも「自由」は重要視しています。ただし、企業は営利団体なので利益を上げることも必要ですよね。そのため当社では責任を取れる自由という意味で「高次元の自由」を大事にしています。

もちろん責任を取ることは簡単なことではありません。でも、責任を取りたくないからといって自由も放棄して、ただ言われたことをやるだけでは何も生まれませんし何も得られません。だったら責任も伴うけど、裁量権のある環境で自分が思うようにやった方が人間として大きく成長でき、アイディアも生まれやすいと思います。

黒佐さんが思う高次元の自由とは

AI技術がどんどん伸びてきて、より発想力がもとめられる時代には、仕事を楽しんだ人が活躍するでしょう。結局は創造性高く遊ぶように働けた人が勝ちなんじゃないかと思います。

遊ぶように働けたらモチベーション高くポジティブに働くことができますし、そうすることでパフォーマンスも上がっていきます。やらされている状態だと全然楽しくないですし、そんな状態では成長することもできないですよね

自分が納得感をもって楽しんで仕事をするためには、客観的に自分自身を突き詰めること、つまりとことん「Why」を深掘りする必要があります。この業界にいるから楽しい、とかではなく、自分が誰といて、何をしてて、どういう状態のときにモチベーションが上がるのかを分析してみてください。たとえば、「人と接するのが楽しい→なぜなら感謝されるのが嬉しいから→なぜ感謝されるのが嬉しいのか……」と1つずつかみ砕いていくと自分自身が見えてくるはずです。

また、常にチャレンジする姿勢も忘れないでほしいですね。人間は達成欲がある生き物なので、チャレンジしている状態はすごく楽しいと思いますし、成長にもつながります。自分にとって就職がチャレンジではないなと思うのであれば、思い切って起業しても良いと思いますよ(笑)。

業界や職種といった表面的なことではなく、自分の本来の欲求を理解して、自分が楽しく働ける環境を見つけてくださいね

黒佐さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:乾花穂子

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