「成果をきちんと評価してくれる会社」に注目を|チャンスに前向きでいると、思いがけないキャリアとも出会う!

ボッシュ シャシーシステムコントロール事業部 事業管理部門長 執行役員 磯部 貴子さん

Takako Isobe・大学卒業後、1995年にボッシュの前身であるゼクセルに入社。経理部にて専門職を目指すも、入社5年目にかかわったSAP導入のプロジェクトを機にキャリアの方向性を転換。他部門と幅広く仕事をしながら経営にかかわることができる事業管理部へ、自己申告で異動する。2015年より現職。事業管理のほか人事部門、事業部のコマーシャル関係の業務も担当。2019年からはボッシュ健康保険組合の理事長も務めている

この記事をシェアする

企業は「一緒に働ける仲間」を探している。カルチャーマッチは最重要!

ファーストキャリアは、いろいろな意味で特別だと思います。一番違うのは、経験値ありきの即戦力として採用されるのではないということ。経験がなくても入ることができ、また社会人としてのベースを作るトレーニングまでさせてもらえるのは、1社目くらいだと思います。

年齢的にもたくさん知識を吸収できる時期なので、就職活動では間口を狭めずにいろいろな企業に目を向けて、「この仕事をやってみたいな」「ここなら働くイメージが湧くな」と思える企業を見つけてほしいですね。

私の場合はいわゆる就職氷河期だったので、止むに止まれずたくさんの企業を見ることになりました。ただそのおかげで気づきがあり、就職活動中に志望業界が変わる経験をしています。

当時は大卒女性の選択肢がまだまだ少ない時代だったので、「門戸を開いてくれているところは、片っ端から受けてみよう」と決め、相当数のエントリーシートを書きました。そのおかげで業界だけでなく、会社のカラーもそれぞれ大きく違うことを知り、驚いたことを覚えています。

経済学部だったので、最初の頃は金融業界や公的機関が良さそうだと思っていましたが、たくさんのリクルーターの方とお会いするなかで、次第に「もしかしたら自分には製造業(メーカー)が合うのかも」という感覚的な相性が見えてきたのです。数年ごとに支店異動をしてキャリアを積むような仕事より、腰を据えて取り組める仕事のほうが良いのではとも思いました。

「長く働ける場所を見つけたい」という希望もあったので、関東圏に拠点があってカルチャーが合う会社なら長続きするだろうと考え、1社目となるゼクセルへの入社を決めました。会社が途中から外資系に変わるという経験はしていますが、最初に選んだ会社にずっと勤め続けることができており、幸せなことだと感じています。

採用活動は、長期間一緒に働く仲間を探しておこなっている企業が大半だと思います。転職が当たり前の時代になったとはいえ、短期間働いてもらう人を募集しているアルバイトとは違う前提があることは、心得ておくと良いかもしれません。そのうえで「一緒に働いたら、自分はこんな貢献ができると思います」というスタンスで面接に臨み、その内容を具体的に説明できると、良いコミュニケーションができるのではないかと思います。

磯部さんからのアドバイス

個人差はあれ、たくさんの会社を見て、どんな仕事がしたいかをじっくり考えられるのは人生でもこの時期くらいだと思います。面接で合否をつけられるなどと考える必要はなく、自分にも選択肢があるわけですし、社会勉強の一環と考えて柔軟に、かつ楽しみながら就職活動に取り組んでほしいですね。「楽しんでやろう」という気持ちを持っていると、面接で企業側に与える印象も違ってくると思います

それに企業側も、学生の能力ばかりを見ているわけではありません、「この人が当社に入ったらどうなるかな? 」と想像しながらフィーリングを確かめているので、無理なくカルチャーマッチするところを探してみてください。

仕事はひとりで抱え込まず、多くの人を巻き込みながら成し遂げていけばいい

1社目に入って数年間は、専門職を極めるキャリアパスを描いていました。大学で会計学を専攻していたこともあり、経理部を希望。無事に配属が決まり、その道で専門性を磨いていこうと考えていたのです。

しかし社会人5年目のタイミングで、「エキスパートよりもゼネラリストを目指そう」と大きく方向転換をすることに。ここがキャリアにおける最初のターニングポイントです。

きっかけは、ITソリューションとしてSAPを導入するプロジェクトに参画したことです。ちょうど会社が外資系企業であるボッシュとの合併に向けて動き出した時期で、全社横断的に1つのシステムを入れるための大々的なプロジェクトでした。

私は会計周りのシステム導入や全社統合的な部分を担っていたのですが、それまでとはまったく違う仕事をするなかで、自分の視野の狭さに気付かされることに。そして「もっと広い世界が見たい、面白い仕事を経験したい」と考えるようになり、社内のFA制度(社員自ら人事異動を希望できる制度)を利用して自ら手を挙げ、経営にかかわることのできる事業管理部へ人生初の部署異動をすることになりました。

このプロジェクトは、人間的にも大きく変わるきっかけになりました。当時は「失敗できない」というプレッシャーが大きく、思うようにうまくいかないことが続くと挫折感に苛まれていました。システム稼働後にエラーが起こって徹夜で復旧作業をしたこともあり、体力的にも自分を追い込んでいましたね。

しかしこのとき、思った以上にいろいろな人が手を差し伸べてくれ、「仕事はいろいろな人を巻き込んで協力してもらいながら成し遂げていけばいいのだな」と気づけたのです。

それまでは割とひとりで抱え込むタイプだったのですが、以降はできるだけ自分で抱え込まないよう、そしてできるだけ周りを巻き込んで仕事をする姿勢を心掛けるようになりました。

就職活動においても、自分ひとりで息詰まることがあれば、身近なところから相談してみることをおすすめします。本当に行き詰まっているときは、意外と周りも助けてくれるものですよ。

磯部さんのキャリアにおけるターニングポイント

チームや組織でなら想像以上の成果も出せる! 相手に伝える力を磨こう

次なるターニングポイントは、30代前半の頃、初めてマネジメントのポジションに就いたことです。それまで特にキャリアアップを目指してはいなかったのですが、チームで仕事をする醍醐味を知り、「自分でチームをマネジメントしながらプロジェクトを進めたい」という自発的な動機が生まれてきました。

いろいろな人のいろいろな考え方を取り入れ、より良いアイデアを生み出し、想定外の方向に持っていくことができるのが、チームや組織で仕事をする良さだと思います。一人でできることは限られていますが、チームでやれば成果そのものが変わってきますし、誰かの小さな失敗があっても、カバーしあってやり遂げることができる点もチームの良さだと感じています。

一方で、チームで仕事をする際には「メンバーに動いてもらう」ということが必要ですが、それは簡単なことではありません。

最初にマネジメントを担当したのは6名のチームでしたが、一人ひとり性格も得意なことも違うなかで、どう導いていくのが最善かをひたすら考えました。個別対応はしますが、基本的には指示を与えすぎないことが重要なのかなという結論に至っています。

自分がやりたい方向に向いてもらえるには、何はともあれ「きちんと伝えること」が最重要だと感じ、伝達力を磨くことも意識するようになりました

今も試行錯誤を続けていますが、都度「マネジメントは本当に奥深いな」と感じていますし、このポジションを担うことになってから、人間的にも一段階成長できた気がしています。

マネジメントのポジションにも自分で手を挙げて異動しましたが、「やってみたいと思うことやそのチャンスがあれば、積極的に引き受ける」という姿勢は、キャリアのなかでずっと大切にしてきたことでした。キャリアの可能性を広げたければ、率先してチャレンジングな仕事に飛び込んでみることをおすすめしますよ。

当社には国内やグローバルの空きポジションを自分で見て応募ができるような公募制度があり、そういう会社で良かったという思いも強いです。就職活動の時点から、社員の自主性を尊重してくれるか、キャリアパスの選択肢が広い会社かどうかといった点も見ておくと、満足のいくキャリア形成がしやすくなるかと思います。

キャリア選択で最も重要なのは「自分の中身や成果を評価してくれる環境」であるかどうか

当社は1992年から2000年頃にかけて段階的にボッシュと合併を進めていきましたが、外資系企業に変わったことも、キャリアの中では大きなターニングポイントになったと感じています。

大きく変わったのは、評価制度です。欧米では中長期的にキャリアを考える思考が根付いているので、若いうちからディスカッションを重ね、「このポジションになるにはこれが必要」という明確なキャリアパスのもとで人材を育てていきます。加えて「何年働いた」ではなく「何ができる」という中身で評価をしてくれますし、「これができたら、じゃあ次はこれができるようになるといいのだな」といった成長ステップも意識しやすいです。

外資系ならではのフラットな評価システムに変わったことで、スピード感あるキャリアアップを果たせた実感があります。外資系になっていなかったら、今でも経理の平社員だったかもしれず、今とはまったく違うキャリアになっていたと思います。

やったことをちゃんと評価してもらえる環境があることは、キャリアを考えるうえで一番大事なことかもしれません。

一方で、外資系に変わってしばらくは苦労もありました。一番戸惑ったのは、欧米的な思考やコミュニケーション方法の違いです。プロセスと理由を述べてから結論を伝える日本式の説明のしかたでは、「何を言っているのかわからない」と言われてしまうのです(笑)。慣れるまでは大変でしたが、いろいろな国の人と仕事をするなかで、少しずつ日本の良いところと欧米の良いところをバランス良く使い分けられるようになっていきました。

磯部さんからのメッセージ

私が一番仕事の手応えを感じるのは、「会社に対して影響を与えるような仕事ができた」と思えるとき。些細な仕事でも、自分から働きかけることで事業部としての結果が良くなれば嬉しいですし、その充実感が仕事のモチベーションになります。そのほか、仕事を通じて自分のスキルや人間性における成長を実感できたとき、やりたかったことが実現できたときにも充実感を覚えますね。

国内のフィールドで、かつ現在のキャリアをベースにしながら成長できる分野で経験値をさらに広げていくことが、今後の目標です。お客様やサプライヤーともコミュニケーションを取りながら、ビジネスを最前線で一緒に引っ張っていきたいですし、人事領域の仕事も含め、ボッシュの日本における存在感の強化に貢献していきたいです。

多くの人と話し、そして考える。「自分の意見が言える人」になろう

これからの時代、社会で活躍するために必要だと思うのは、自分で考えて行動する力です。変化が激しい時代だからこそ、「会社や上の人がなんとかしてくれる」と考えるのは危険です。上の人が世の中の変化を正しく察知できないことだってありうるわけです。

柔軟性機敏性(アジリティ)をもって自分で考えた提案ができる人は、どこに行っても通用すると思います。そのためにもまずは、言われたことだけをやる人間にならず、自分の意見をちゃんと言える人間になることを目指すのがおすすめです。

自分の意見が言える人になるのは、簡単そうで意外と難しいもの。普段からアンテナを高く持ち、いろいろな人と話して、かつ自分の頭で考えていなければできないことだからです。

私もできるだけ人のネットワークを広げられるよう、普段から意識して動いています。プラス、殴り書きのアイデアをA4の用紙1枚にまとめ上げることも習慣化させていますね。これをやっていると「何を言うか」がまとまって意見を言いやすくなるので、よければ参考にしてみてください。

「自分の意見が言える人」になるには?

また、ソフトやデジタルスキルを使いこなせることも、今後はより大切になってくるでしょう。「使える」というだけでなく、デジタルツールを活用して得た内容をきちんと分析し、課題を見つけ出して次につなげていける人や、その内容をチームに展開して周囲に影響を与えていける人も、組織ではかなり重宝されると思います。

そうした発信をするためにも、普段から積極的に周りとコミュニケーションを図っておくことがおすすめです。是非今のうちに身に付けられるよう、意識してみてくださいね。

磯部さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:外山ゆひら

この記事をシェアする