成長のためには失敗も覚悟する|意志を持った行動を重ねてキャリアを築こう
スタイル・エッジ 取締役 花咲 圭祐さん
Keisuke Hanasaki・1985年生まれ、大阪府出身。日大理工学部卒業後、2007年にITベンチャーに入社し、営業職として従事した。2011年にスタイル・エッジに入社。弁護士や司法書士などの士業に対するWebマーケティング支援やコンサルティングをはじめ、新規事業の立ち上げなどをおこなう。その後、人事として採用・育成・人事制度管理などタレントマネジメントに一貫して携わり、現在は人事をはじめ、全社の広報、コーポレートブランディング、サスティナビリティ推進を統括している
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世間知らずを思い知らされて就活のスイッチが入った
大学時代は「普通」だったと思います。朝起きて大学にいって、なんとなく楽しく過ごす。時にはサボってしまうような大学生でした。
世間ではベンチャーブームが起きていて、友人の中には起業する「意識が高い」といわれるような人たちがいました。サイバーエージェントの藤田晋さんや実業家の堀江貴文さんがメディアに大きく取り上げられているような時代でした。
大学2年生になったとき、知人からある事業に誘われました。結局断りましたが、ふたを開けてみると実態のない事業への投資でした。「このまま過ごしていたら世間を知らないままだ。やばい」と危機感を抱き、徐々に行動するようになりました。
まず着手したのはアルバイトです。自分に足りないと思っていたPCスキルや対人折衝力を身につけようと、パソコンの販売や新聞の飛び込み営業などに挑戦。その経験をもとに、就活も営業職で探すことにしました。
入社する会社の条件は、①従業員30人以下、②新規営業、③営業先は経営者、④ベンチャー企業。そのような条件にしたのはアルバイトの経験もふまえ、最前線で働きたいという考えがあったからです。「社会で生きていける力をつけよう」という軸で就活をしました。
新卒で入社したIT業界のベンチャー企業では、仕事内容の変化が大きく、試行錯誤しながら働きました。そして社会人5年目、上司のあとを追ってスタイル・エッジに転職しました。
課せられた高いハードル。成果をあげる道程はすべて自分次第だと気付いた
キャリアでのターニングポイントといえるのは、スタイル・エッジの創業者と一緒に働いたことでした。これまでの自分にとっての常識を覆される出来事が多くありましたね。
たとえば、未経験の業界での新規事業を手がけていたころ。「明日までに契約書を作ってきて」と指示がありました。この契約書を作るには、業界の専門知識が必要です。私はまったくの素人でしたが、この重要な書類の作成を依頼されたのです。
専門性の高い書類を一日で作るため、さまざまな文献を読み込み、必死に作成しました。翌日提出すると、創業者からは「な、できただろ? 」とあっさりとした一言が(笑)。あまりのハードルの高さに驚いたことを覚えています。ただ、自分でも「意外とどうにかなる」という手ごたえも感じていたのが不思議でした。
創業者との仕事を通して学んだことは2つあると考えています。
1つ目は成果を上げるためのプロセスはすべて自分次第だということです。会社員をしていると、どうしても前例や上司の考えなどの「答え」をもとめにいってしまうと思います。しかし、成果に対して、どのような方法で仕事を進めていくかは自分次第なんです。達成して成果を出せるか否か。成果を出すために自分自身の頭で柔軟に方法を考え、実践していくということを学びました。
そして、高いハードルに挑み続けたことで、成果を上げる方法を自ら考えていくような、主体性を持つ大切さを痛感しました。ビジネスパーソンとしての視座を上げてもらえた貴重な経験でした。
2つ目は経営者の視点です。創業者と一緒に仕事をする中で、経営者は常に経験のないことに対峙していることがわかりました。彼らが絶対的な正解を持っているわけではない。その瞬間ごとに、どのようにしたら成果があがるのかを考え、選択し、行動していくということを繰り返していました。経営者だけではなく当時の私のような従業員もその視点を持つことで、新しい事業でも次々に成果を上げていくことができる組織ができていくと感じました。
ファーストキャリアは共感を重視してほしい
企業選びでは「共感」を重視してほしいと考えています。企業理念やミッションなどに強く共感できるかはとても大切です。
新卒で入社する人は22~23歳くらいの方が多いかと思いますが、それまでに培われてきた性格はそう簡単には変わりません。理念などに共感できるということは、その会社の方針が、自身の性格にあっているということです。自分に合った会社で違和感なく働けるということは、仕事の意義を見つけやすく、成長につながると考えています。
極端な例ですが、入社した会社で思っていた事業と違ったことをやることになるかもしれません。ただ、企業理念に共感していれば、目の前の仕事に意義を見出すことができると思います。会社内で新しい挑戦があったとしても、理念に即して何をするかということをつかみやすいといったメリットもあります。
自分らしく働ける会社であれば、それまでは興味のなかった仕事だったとしても、仕事を通じて本質が見えてくるかもしれない。本質を捉え夢中で働けることで、仕事で得るものが大きくなると思います。
失敗こそが成長の糧になる
私は、多くの仕事を担っていくことも大切だと考えています。もちろん、働きすぎることを推奨しているわけではありません。多くの仕事に携わっていくと、その分多くの失敗を重ねることができます。失敗することで、成長につながる気づきを得ることができるのです。失敗してみて、考え、次の行動にいかす。成長をするためには失敗は避けて通れないということですね。
就職活動についても同じことが言えます。失敗してつまずきそうになったり、息が詰まりそうになっても、行動を重ねてほしい。失敗を成功の糧と捉え、動き続けることでしか成果は得られません。行動をするか、しないかで成長の度合いは大きく分かれるので、自発的に取り組むしかないと考えています。
「できる」「やりたい」「やるべき」でキャリアを整理
私は自分が創造力に富んでいるタイプだとは思っていません。だからこそ、本質的な部分を見抜いて、仕事をしていくことを強く意識しています。
このように自覚できるようになったのは3つの視点で自分の仕事を振り返るようになったからです。3つの視点とは、「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」です。私は毎年の年始にこの3つの視点で自分の仕事を整理するようにしています。そのうえで、3つの要素が重なる部分を大切に、バランスを取りながら仕事をしていくことがキャリアを築くうえで重要だと考えています。
学生のころから「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」を整理して考えるのは難しい。私も大学時代は何も考えていなかったというか、普通だったという自覚があるので気持ちがわかります。
就活においてまず大切にしてほしいのは、この中の1つでもいいから軸を定め、意志を持つことです。「やりたいこと」でも「できること」でもなんでもいいと思っています。究極的なところ、やりたいことが「お金をたくさん稼ぐ」といったことでも問題ありません。意志を持って就活を始めると質問したいことや就職するうえで大切にしたい条件が見えてくると思います。そうやって就活を進めていくことが重要だと考えています。
そして覚えておいて欲しいのは、持っている意志が変わってもいいということ。働いている中で定期的に見直しながら、徐々に「できること」「やりたいこと」「やるべきこと」の重なる部分を見つめていくようにしていくことをおすすめします。
仕事を「こなす」だけではダメ! 多くの成果を上げる方法を試行錯誤する
新卒で入社した会社では、仕事を「こなす」ことはしないでください。言われたことをやっているだけでは限界がきます。今は求人数も多く、学生の数より仕事が多い状態です。就職して受け身のまま仕事をすることもできますが、それはきっと成長にはつながりません。
働き始めたら必ず「何のためにやっているのか」といった自分の意志を持ち、主体的に取り組んでいきましょう。その姿勢を貫いた先にキャリアが築かれていくと考えています。
取材・執筆:加藤栄