リスクを怖がり過ぎず行動してみよう! 挑戦し続ける姿勢が明るい未来を切り開く

エルテス 代表取締役 菅原 貴弘さん

Takahiro Sugawara・岩手県出身、1979年生まれ。東京大学在学中の2004年、エルテスを創業。インターネット掲示板、ブログ、SNSなど新しいテクノロジーが生まれるたびに、その反動で発生するトラブルに着目し、デジタルリスク事業に取り組む。2016年11月、東証マザーズ上場。2017年には従来型の人的警備にデジタル技術を融合したAIセキュリティ事業を手がける戦略子会社を設立し、2020年には企業や地方自治体のデジタルトランスフォーメーションを推進する新事業を開始するなど、健全なデジタル社会の実現を目指し、事業領域を拡大させている

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将来に迷っているならどんどん相談してみよう、わずかな行動力が大きな差になる

これから就職を目指す皆さんにまず伝えたいのは、自分の視野の狭さを理解すべき、ということです。今見えている世界は限られているので、どんどん先輩に相談したり、信頼できる人に会いに行って、話を聞いてみましょう。

私自身、起業家を目指す人向けの講演会で話す機会がよくあるのですが、毎回必ず「いつでも相談に乗りますよ」と伝えています。 

何となく連絡しづらい、恥ずかしい、言いにくいなどの気持ちがあるかもしれません。しかし、それでも「いつでも相談しに来ていいよ」といってくれる人がいるなら、どんどん会いに行きましょう。会いに行って話しをすることで、必ず道は開けます。

身近に連絡できる人がいなくても、今はSNSを使って知らない人にでも気軽にコンタクトできる時代です。FaceBook(フェイスブック)で友達申請をして「相談に乗ってほしい」と依頼すれば、すべての人が返信をくれるわけではないかもしれませんが、親身になってくれる人はたくさんいます。

チャンスはすぐそこにあるのに、そのチャンスを逃している人が多くて、本当にもったいないと思います。こうした小さな行動力が大きな差となって自分に返ってきます。ぜひ勇気を出してみてください。

リスクを怖がり過ぎない、周囲の声に惑わされずチャレンジする

リスクを目の前にチャレンジを踏みとどまっている方には、「一般的に噂されるリスク」と「実際のリスク」には乖離があることもある、ということをお伝えしたいです。実際に社会に出てこの学びを得たため、まずは私の経歴からお話しします。

岩手で生まれ育ち、中学時代から毎日16時間勉強して東大に進んだ私は、東大にさえ合格すればプラチナチケットを手に入れたも同然だと思っていました。

しかし、実際に東大に入ってみてわかったのは、自分より頭のいい人はたくさんいるし、東大生の肩書きにものすごい特権があってすぐに何か大きなことが始められるわけでもないということです。

入学早々、プラチナチケットを手に入れたわけではないと悟った私は、何をすればスピーディーに成長していけるかと考えるようになりました。「自分で何かをつくり出さなければいけない」。そう思い至った私の頭に浮かんできたのは、ベンチャー企業を立ち上げることでした。

そこでまず、成長スピードの早いIT企業をターゲットにインターン先を探し、2社で経験を積みました。Webサイトの制作やプログラミングなどの実務を経験してみたところ、自分自身にIT分野は合っており、得意だと感じました。さらに、インターン先での仕事を通して、様々な人との出会いから、相談に乗っていただける方にも出会えることができました。

目標としていた起業を果たしたのは、在学中の2004年のことです。複数のITサービスを手掛けるエルテスを立ち上げました。

起業という実体験を通してわかったことは、一般論や噂されるリスクには事実と異なることがあるということです

たとえば「自分の手で起業してみたい」と考えている人は多くいるでしょうが、周囲から得た情報から起業のリスクを考え、怖くて一歩踏み出せない人も少なくないと思います。それは「就職した方が安定」などの、周囲の声から「リスクの恐怖」を感じるからでしょう。

しかし、それらの情報(リスク)は誰かのバイアスがかかっている可能性があります

事実とは違うかもしれないリスクに怯えて、チャレンジを止めてしまうのはもったいないです。もし自分自身が「今、やるべきだ」と思うことがあるなら、必要以上にリスクを恐れすぎず、挑戦してほしいと思います。

世の中を疑う目をもちながら、見聞を広げてみよう

もう一つ伝えたいのは、世の中を疑う目をもってみようということです。

私の場合は「東大のように良い大学に入れば、良い企業に就職でき、将来安泰になる」という一般論に何も疑問を持たず、入学後に自分が勘違いしていたことに気づかされました。東大に入るために必死に勉強しましたが、それではまだまだ見識が狭かったのです。

私も大学受験の際、まだまだ自分自身が世の中を知らないことをしっかりと自覚しました。

経営者となった現在強く思うのは、「何か違うんじゃないか? 」と考え続けなければ世の中は進歩しないということです。すべての物事に対して、当たり前だと納得せずに良い意味で批判的な視点で疑問を持つように意識してください。

自分の価値観、人から聞いた情報は、一度疑うことが大切です。皆さんも世の中の常識、世の中で正しいとされていることを鵜呑みにせず、ぜひ批判的な目で捉え直す習慣をつけてほしいと思います。

あえて0か100かのリスクを取る。安住の道を選ばず、後戻りできない状況に追い込むことで前に進める!

これまでを振り返ってみて、大きなターニングポイントとなったと思う出来事が2つあります。

1つは、東大を中退したことです。当時の私にとって、東大卒のブランドをもって進路を選択できる道を捨てることは、「もう安住の道には後戻りできない」という危機感を改めて実感した瞬間でした。

もう1つは、起業後、システム開発の受託事業を辞める決断をしたことです

下請け業務とはいえ売上の根底を支えていたオフショアの受託開発を辞めるのは、リスクをともなう一か八かの大きな決断でした。普通であれば、新たなサービスが軌道に乗ってから手放すべきですよね。ところが私が選んだのは、スピード感をもって事業を進めるために、辞めてから新たなサービスを考える道でした。

私の信条は、どんなに成果が出ていてもそこに安住せずに次に進むこと。東大に入っても、起業しても、上場しても、そこで満足せずチャレンジを続けること。

安全、安定をもとめて生きていくのは私にとってはおもしろくないですし、チャレンジし続けてこその人生だと思っています。今があるのも、まさに安定を捨て、0か100かのリスクをとって前に進んだ結果だと感じています

まずは就職してみる。そこから好き・嫌い、向き・不向きを考えてキャリアを築こう

自分が何が好きで何が嫌いかがわかっている人は、おそらく一定の軸をもって就職活動を進められるでしょう。しかし、全員がそうとは限りません。

自分の軸がわからず困っている皆さんには、就職してから好きか嫌いかを判断していくのでも遅くはない、とアドバイスしたいです。

ただし、就職した会社では、とにかく一生懸命頑張って何かをやり切ることが重要です。そうすれば、好き・嫌い、向き・不向きがはっきりと見えてくるはずです。逆に、ある程度頑張る経験をしなければ、自分の限界や性質は見えてこないものです。まずは、入社した会社で目の前のことにとことん取り組んでみましょう。

また、企業選びの際は需要はあるが供給が少ない業界にいくことをおすすめします

当然、人気の業界には人が集まり、場合によっては供給が需要を超えることもあります。しかし、あえて「こんな仕事あったんだ」と思うような、あまり人が選ばない、人がいかないところを狙うことで、業界自体の供給が少ないため自分自身の需要を上げることができる、というわけです。

需要が高く供給が少ない会社を探す一番早い方法は、四季報を見て知らない会社をピックアップすることです。「こんな会社聞いたことない」「何をやっているかよくわからないな」という会社こそ選んでみましょう。そこで、働いてみて、その後のキャリアを描いてみてください。

「やりたいこと」「好きなこと」が見つからない人に贈る 業界・企業選びのポイント

  • 供給が少ない業界をターゲットにする(人が集まる人気業界はあえて避ける)

  • 四季報を見て「こんな会社聞いたことない」「何をやっているかよくわからない」会社を探し出す

将来的に起業をイメージしているような人であれば、やはりベンチャー企業へ就職してほしいと強く思います。選んでほしいのは、5年程度で事業責任者になれた実績がある会社です。面接などで「入社何年目くらいの人が役員になっていますか? 」と、素直に聞いてみてください。該当する会社であれば、ぜひチャレンジしてほしいです。

ネットワーキングを活用して、若いうちから人脈を広げる努力を

会社で一生懸命働く以外にも、若いからこそ取り組んでほしいことがもう1つあります。

それは、ネットワーキング(異業種交流会)です。仕事が早く終わったと喜んで遊んで過ごすのではなく、ネットワーキングで積極的に人と会いましょう。いろいろな人と会って見聞を広め、視野を広げれば、人より早いスピードで成長できます。人脈づくりの意味でも、ネットワーキングは非常におすすめです。

意識していない人も多いのですが、人脈は先々のキャリアでなくてはならないもの、大きな財産となります

私の場合、インターンの時代からずっと親しくしてもらっている先輩がいます。人脈を切らさないように意識していると、雪だるま式に増えていくものです。

一方で、転職のたびに人間関係をリセットしてしまう人がいますが、それはあまりにも非効率です。心機一転頑張ろうという気持ちもあるかもしれませんが、人脈は何があってもリセットするようなものではありません。これからずっと続く人生において、積み上げていくものであることを頭に入れておきましょう。

人脈を広げていく中で、メンターと呼べる人と出会えるかも大変重要です。社内の先輩でも良いですが、できるだけ経験値が高い方がおすすめです。ぜひメンターを探すためにも多くの人と会って話をすることを意識してみてください。

これからは「不確実性に強く執着心がある人」が活躍できる!

これからの時代に活躍できる人は? と問われれば、不確実性に強くて執着心のある人と答えます。

不確実性に強い人は、どのような状況でもしっかりと仕事に集中できる人です。実際には、状況に適応して集中できない人の方は多いと感じています。

仕事をおこなっていると、不安定な状況を打開しなけらばならないシチュエーションが多くあります。そのような、どちらに転ぶかわからない不安定な状況でも、常に集中し思考を巡らせることができる人はと強いと思います。

また、課題に直面した際に壁を打ち壊せる力と気持ちを有している、執着心を持っていることも重要です。壁にぶち当たらない人生なんてないですよね。だからこそ、しつこく壁を打破し続けられる人は他人よりも成長することができます。

執着心や不確実性への対応力は、学生時代から自分を追い込める環境に身を置くことで鍛えることができます。インターンやアルバイト、スポーツなどの経験から、「背水の陣」といえるような状況を疑似体験しておくことはおすすめです。自ら積極的に行動して、ぜひ貴重な経験を積んでみてください。

取材・執筆:小内三奈

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