就活も仕事も必ず夜明けはやってくる|夢に向かう自分の力を信じて突き進もう

アメディア 代表取締役 望月 優さん

アメディア 代表取締役 望月 優さん

Mochizuki Yu・静岡県出身。高校は盲学校に入学し、大学ではドイツ語を専攻。高校の非常勤講師として4年間勤めた後、国立職業リハビリテーションセンターにてコンピューターについて学ぶ。1989年にアメディアを設立し、以降現職

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将来像は変わっても良い。「今感じていること」にフォーカスしよう

学生時代に描いていたキャリアからは想像もできなかった今を歩んでいます。

高校は盲学校に入学。当時の将来の夢は通訳者になることでした。通訳者になることで言語の壁をなくし、人と人とをつなぐお手伝いができると思ったからです。そして、夢に向けての第一歩として大学では外国語を学びました。

しかし就活をはじめると、通訳者の仕事は想像以上に高いレベルの語学力がもとめられることを知りました。そこには到底およばなかったので、他に興味のあった英語教師の道に方向転換。高校の非常勤講師として勤めることになりました。

講師の仕事をはじめてしばらく経ち、職員会議に参加したときのこと。今まで使っていた資料はガリ版刷り(ヤスリの上に紙を乗せ、その上から筆でかいて印刷する手法)だったのですが、その日から現代のプリンター印刷に変わっていたのです。その変化に驚くと同時に「この技術は点字プリンターにも活用できるのではないか」とひらめきました。コンピューターの技術を上手く活用して、目が見えない人のハンディキャップを解決していきたい。その想いに突き動かされ、4年間勤めていた講師を退職。学校に通い直しコンピューターについて学びました。

就活生の方に伝えたいのは、まだまだ未来は長いので、最初の目標や夢が途中で変わっても大丈夫だということ。むしろ変わることでより自分に合ったキャリアに近づいたり、素晴らしい未来へとつながることもあります。そのときどきに感じていることを大切にしながら、柔軟にキャリアを選択していってくださいね。

夢や目標を設定して最大限のパワーを発揮しよう

アメディア 代表取締役 望月 優さん

夢や目標ができると、そこに向かっていくために自ずと集中力が発揮され、ぐんぐん成長していけることを実感しました

大学時代までは熱心に勉強に励んでいたのですが、それ以降は何かを本気で学んだことがなかった。でも「コンピューターの可能性を活かし、目が見えない人の力になりたい」という明確な夢をもってキャリアを転換したことで、本気で学ぶようになっている自分に気付きました。

就活生のみなさんのなかには、大学の受験勉強などで「本気で勉強した経験」がある方も多いのではないでしょうか。そのときはやはり「大学に合格する」といった明確な夢や目標があったからこそ、高い集中力を発揮して走り抜けられたと思います。そのような感覚で向き合うことができれば、きっと後悔なく就活を終え、納得のいく仕事に出会えるはずです。

自分で目標設定をすることに難しさを感じるかもしれませんが、多くの場合は「良い出会いをすること」から生まれると思います。私もそうですが、講師のときにプリンター印刷に出会い、コンピューターの可能性を知ったことがきっかけになりました。良い出会いをするためには、まずは積極的にいろいろな人や情報に触れることが大切です。そのなかでピンとくるものがあれば、その感覚をもとに自分なりの夢や目標を定め、前進していってくださいね。

望月さんからのメッセージ

自分を信じて前に進めば、想像を超える未来に辿り着く

就活ではピンチも訪れましたが、自分の夢や想いを信じて、前だけを見ていましたね

というのも、コンピューターについての学習を経て再度就活をはじめたのですが、なかなか就職先が決まらなかったのです。それでも「コンピューターの力があれば目の不自由な人の可能性はもっと広げられるはず」という確信があったので、自身のキャリアを諦めず、起業という選択肢を選びました。1989年にアメディアを設立し「情報とテクノロジーで障害者の自立支援」を理念に、あらゆる商品や情報、コミュニケーションを通して人々や技術との「つながり」を生み出しています。

会社を立ち上げて30年以上経ち、今までに何度もやりがいを感じる瞬間がありました。なかでも印象に残っているのは、後天的に失明してしまった方が、当社の提供している音声読み上げソフトを利用し、「大好きな本をもう読めないかと思っていたけれど、この機械のおかげでまた読むことができて感動しています」という感謝の声をいただいたことです。かつての喜びを再び味わってもらえたことをとてもうれしく思いました。

仕事をするうえで大切にしているのは「お互いにとって良いこととは何か」を深く考えることです。無意識に過ごしていると、どうしてもどちらかの「良いこと」に偏ってしまいがち。だからこそ普段からお互いにとって「ちょうど良いポイント」を探りながら、仕事やビジネス、人間関係に向き合うことがとても大切です。

望月さんのキャリアにおけるターニングポイント

若手は「学べる会社」がおすすめ。就活に決まりきったルールはない

就活の指針としておすすめなのは「学べる会社」を選ぶことです。特に20代というのはどんどん吸収して成長する期間。自分の学びたいことを学べる会社を選んだほうが良いと思います。

たとえば大手企業では教育制度が充実しているところ、中小企業では実践的に成長していけるところが多いように思います。他にも地方の町工場などには、そこでしか学べない技術やスキルもあるでしょう。会社の規模や業界によって学べることが変わるので、自分にとってどのような環境が合っているのかを考えてみてくださいね

また、大々的に人材を募集している会社だけでなく、そうではない会社に直接連絡をしてみるのも一つのやり方です。私も一般的な就活のルートだとなかなか受け入れてもらえなかったので、ある会社に「なんとか雇ってくれませんか」と、ホームページの問い合わせフォームから直談判をしたことがあります。すると意外にも採用担当の方は好意的に対応してくださって、社内で話を通してくれたのです。結果的には採用にまでは至らなかったのですが、そのようなルートで上手くいくこともあります。

実際に当社でも、過去に人材募集をしていなかった頃、直接メッセージをいただいたことがきっかけとなって入社にまでつながった事例もあります。一般的な就活のやり方にとらわれず、広い視野で取り組んでみると良いのではないでしょうか。

就活における「広い視野」の一例

「前向きな姿勢」でどんなピンチも乗り越えられる

社会人になったら、ある程度長く勤めることを意識しておきましょう。もちろんあまりにもハードワークだったり、自分の良心に反するような仕事であったりする場合は辞めても良いと思います。

ただ「ちょっと人間関係がうまくいかないな」「もしかしたら仕事が合わないかもしれない」といった、いますぐに辞めたいほどではないにしろ、なんだかもやもやするといったことであれば、一度立ち止まって「今の環境を良くするにはどうすれば良いだろう?」と仕事を続けるためのアイデアや工夫の仕方を考えてみてください。意外とちょっとしたことで解決する場合もあるので、まずは前向きにとらえてみることが大切です

それと、これからの社会で活躍できるだろうと思うのは、まずは「なんでもやってみよう」という心構えがある人です。最初は初めてのことばかりですし、自分のなかで苦手意識や拒否反応が起こりやすいかもしれません。でも、最初は苦手だと思うことでも、きちんと教えてもらい、経験を積めば得意になることもあります。自分の可能性を閉ざさないためにも、まずはチャレンジ精神を大切にしてみてくださいね。

最後に皆さんに伝えたいのは、どんなに苦しい状況でも必ず夜明けはくるということ。どれだけ辛くても少しの期間踏ん張ることができたら、次第に道は開けていくものです。

私も子どもの頃から目が見えず就活にも苦戦しましたが、自分を信じて起業というキャリアを選び、今では多くのお客様に喜んでもらえる仕事をしています。また、お客様のなかには後天的に目が見えなくなり、かつては絶望を感じていた方もいらっしゃいますが、果てしないリハビリの道も乗り越え、できることがどんどん増え、また活き活きとしたエネルギーを取り戻しています。どうしようもないときはゆっくり本でも読み、今の自分に必要なヒントや勇気をもらってください。

どんな人にも必ず夜明けが来る。そう信じて、就活やキャリアを歩んでいってくださいね。

望月さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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