「コーチ」の存在で人生にスパイスを|自己理解を深め自分が輝けるキャリアを描こう

コーチ・エィ 取締役 副社長執行役員 栗本 渉さん

コーチ・エィ 取締役 副社長執行役員 栗本 渉さん

Wataru Kurimto・早稲田大学法学部卒業。ITコンサルティング会社にて、最新技術を用いた難易度の高いエンジニアリング・プロジェクトを経験後、CEO補佐や総務、人材開発などの経営面に携わる。2004年、コーチ・エィに参画。大企業のCEOや経営幹部、海外拠点のトップなど200名以上のリーダーにエグゼクティブ・コーチングをおこなう。2021年に取締役および副社長執行役員に就任し、以降現職

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周囲に合わせる必要はない。「自分」に集中して芯のあるキャリアを描こう

振り返ってみると、就活生から新人の頃は、一貫して「周りよりも自分のこと」に集中していたように思います。

大学卒業後は、ベンチャーのITコンサルティング会社に就職しました。周りには有名な大企業に就職する人も多かったのですが、その様子を見ていて「自分は企業のネームバリューといった外面的な要素を優先したくない」「それよりもベンチャー企業で1から何かをつくりあげたい」と思ったのです

ベンチャー企業を中心に選考を受け、ある社長と話したときにその情熱に惹かれ、迷わず入社を決意。ITエンジニアとしてキャリアをスタートしました。

入社後はとにかく一生懸命、目の前の仕事に取り組んでいましたね。周りの先輩や上司に評価されることよりも「いかに良いものをつくりあげるか」ということに集中していました。

何よりも「仕事ができるようになること」を優先すると、実力が身に付いたり周りから尊敬されたりと、あとから得られるものがたくさんあります。ぜひ皆さんもまずは仕事に熱中し、自分のすべてを注ぎ込み、着実に実力を身に付けていってくださいね。

突然のチャンスを逃さない。「変化」は仕事の活力になる

コーチ・エィ 取締役 副社長執行役員 栗本 渉さん

同社に入社後はある出来事をきっかけに、まったく想像もしていなかった流れで大きくキャリアチェンジをすることになりました。

ITエンジニアとしてある程度経験を積んだあと、CEOの補佐や総務、人事開発など経営面にも携わるようになりました。どの仕事も好きだったのですが、途中から「自分のキャリアはこうやって進んでいくんだろうな」と想像できるようになり、このままわかりきった道を歩むのはつまらないかもしれないと思うようになりました

どちらかというとあまり予測できないことや、新しいことにチャレンジするほうがワクワクする人間なので、想像が付くようなキャリアは面白くないと思ったのです。

今後のキャリアで迷っている時、コーチ・エィに勤めている知人に「コーチングというまったく新しい事業を開拓しているんだけど、一緒にやらない?」と声をかけてもらいました。

最初はコーチングという存在も知らず、あまり惹かれることはありませんでしたが、「どれだけ大きな組織もコーチング1つで大きく変革するんだぞ」「そういう新しい産業を自分たちで創り出そうとしているんだ」と、目を輝かせながら話している姿に興味が湧き、地元から東京に出向いてコーチ・エィのメンバーに会いに行きました。

それ以来コーチングやコーチ・エィについて調べるようになり、日本でコーチング業界を切り拓いている会社なのだと知りました。そして「まだ誰もやっていない領域を開拓するって面白そうだな」と思い、選考を受けることにしたのです。

そうして迎えた社長面接。これが私を「変化」へと動かしました。当時、コーチ・エィに惹かれつつも、前職の経営トップを支える仕事にも誇りを抱いていた私はそれを熱く語ったところ、こう問われたのです。

「なるほど、君は今の社長に言いたいことを言えないんだね。それはとても不自由な関係じゃない?」。「君は自分の意志でそういう関係を選んでいるの?これからも続けたいの?」と。

その瞬間に全身に電気が走ったような感覚がして、面接の帰り道に「自分は何を選んできたのか」「自分の人生は誰のものなのか」という強烈な内省と気づきを得ました。それがきっかけとなり、2004年、コーチ・エィに入社することを決めたのです。

人生やキャリアを変えるきっかけは突然やってきます。興味を持ったらそのままにせず、行動に移してチャンスを自分でつかみとってください。

栗本さんからのメッセージ

周りの人の意見はキャリアのカギ。自分を知ることに役立てよう

当時はコーチング業界がほとんど知られていなかったこともあり、個人としても下積み時代がとても長かったですね。

営業をしても「何それ?」とまったく相手にされず、テレアポでは1000件以上に電話をかけたと思います。どれだけ頑張っても成果につながらないなかで、できることをがむしゃらにやっていきました。周りの先輩も忙しくて新人に教えている時間もなかったため、自分で考えながら少しずつ成長していきました。

そこから15年以上にわたり、大企業のCEOをはじめ経営幹部や、海外拠点のトップなど200名以上のリーダーにコーチングをおこなってきました。長年仕事に携わるなかで気付いたことの1つは、「周りの人のほうが自分のことを知っていることもある」ということです

今までの学生生活やアルバイト経験のなかで、人から何かを頼まれたことがあると思います。そのときに「なんでこんなことしなきゃいけないんだろう」と思ったこともあるかもしれません。でも実はそれは「周りから見てあなたに頼みたいこと」「あなたならできそうだと思うこと」なので、自分の才能や特性を知るヒントになり得るのです。

私自身も前職に勤めていた頃、ある人にコンサルティングをしてもらったことがあり、「栗本さんはもうちょっと違うところで力を発揮したほうが面白いんじゃないですか」と言われ、特に経営にかかわる仕事を勧められたんです。そのときはピンときませんでしたが、実際に転職を考えるようになってからとても参考になりました。キャリアの大きな転換期にも、周りの人の意見は大いに役立つと思います。

さらに、自分の才能や特性を見つけて伸ばすことができたら、会社のなかだけでなく社会においても「自分が本領発揮できるキャリア」を見つけやすくなります。そのポジションに身を置くことで、最大限に社会貢献でき、周りからも喜ばれるキャリアを歩んでいけると思いますよ。

栗本さんのキャリア変遷

すべての打開策は自分のなかにある。「違和感」を放置しないことが重要

仕事において大切にしてほしいのは、むやみに相手を変えようとしないことです。

どんな人間関係でもそうですが、「自分のほうが正しいから相手が変わるべき」という考え方をもっているとトラブルや衝突が起きやすいです。相手に対して何か思うことがあっても、一度立ち止まって「相手はこういうふうに考えているのかもしれない」と視点を変えてみることが大切です。それだけでお互いの反応やコミュニケーションが変わり、スムーズに進んでいくのではないでしょうか。

さらに、相手を変えようとする前に自分から変わることが実はとても重要です。「自分の工夫によって目の前のコミュニケーションが変わった!」という成功体験が生まれると、自分に対して自信や信頼を抱けるようになっていきます。これは相手に変わってもらうことばかりを期待していては育まれないものなので、自己成長のためにも重要な心掛けだと言えます。

一方で、ときには「相手に頼ること」も必要です。誰かに頼りたいときに頼れる人はいるでしょうか。すべてを1人で抱え込んでしまうと、「あれもこれもやらなければ」「私のせいで迷惑を掛けてしまったのかも……」などと落ち込みやすくなってしまいます。ぜひ自分を変えるところは変える。頼るところは頼ると棲みわけるようにしましょう。

このように伝えると、「どういうときに自分を変え、どういうときに頼れば良いのか」と混乱するかもしれません。ここで役立つのがコーチングの考え方です。

どちらにしたほうが良いか迷ったとき、本当は自分自身で気付いているものです。「今は相手のせいではなく自分を見つめたほうが良い」「本当は頼ったほうが良いけど我慢しているな」などと心や身体の反応に意識を向けると、答えが見えてくるはずです。何かざわざわする感じや違和感を覚えたら、それを無視せずゆっくり感じて考え、素直に実行してみてください。

自分と相手のバランス感覚

不確実な社会で指標となるのは「人」。会社のトップで会社の未来を判断しよう

就活の会社選びで大切なのは「社長の人柄や考え方」だと思います。

今どれだけ脚光を浴びている会社であっても、5年後、10年後にどうなっているのかは誰にもわかりません。流行りの業界を選んでみても、会社ごとにやっていることは違いますし、会社概要だけでは抽象的でとらえにくいのではないかと思います。

そんななかで、社長への共感やリスペクトがあれば、将来的にどんなふうに事業や会社が変わっていっても、「この人なら大丈夫」「これからも付いていきたい」と前向きでいられるのではないでしょうか。

私自身も、コーチ・エィに入社する前に社長に対して質問をしました。ある事業に対して「これは何年くらいやっていくんですか?」と聞くと、「3年だね。うまくいかなくなったら別のことをやっていくよ」と率直に話していたのです。そのように変化をいとわない姿にも惹かれて入社を決めました

どのような人が良いと思うのかは人それぞれですが、会社の意思決定を担う社長のことはしっかり見たうえで、会社を決めるようにしてくださいね。

自分の個性を理解するために、頼れる「コーチ」をみつけよう

これからの社会で活躍できるのは「自分の個性を理解している人」です。今の社会の流れは個人の力を重視する時代なので、一般的にどうかということ以上に「私はこれが好きでこれが嫌いである」「私はこれができるけどこれはできない」という認識をしっかり持つことがもとめられています。

また、就活中にコーチを付けている人は少ないと思いますが、私としてはお金を払ってでもコーチを付け、いつでも相談できるようにしたほうが良いと思います。就活は人生のなかでも重要な局面であり、学生である自分の考えだけではおよばないことも多いと思うので、積極的にプロの力を借りましょう。

特にもったいないと思うのは、自分のポテンシャルに気付けないまま就活を進めることです

周りから見ると「強み」だとすぐにわかることでも、それに本人が気付いていないために、力を発揮できずにキャリアを歩んでいく人も多いです。最初は自分で自分のことがわからないのは当たり前なので、ファーストステップとして自分を客観的に見てくれる、信頼できる人を自分から見つけましょう。

自分自身で「孤独」を選んで塞ぎ込んでしまう前に、誰かに頼って軽やかに就活やキャリアに向き合っていってください。

栗本さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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