社会で最も重要なのは成果主義|自分の感性を信じて与えられたことを一生懸命やろう
識学 代表取締役社長 安藤 広大さん
Kodai Ando・早稲田大学卒業後、NTTドコモを経て、ジェイコムにて取締役営業副本部長などを歴任。2013年に「識学」という考え方に触れ、感銘を受けて独立。講師としてあらゆる企業のコンサルティングを担う。さらに世の中に広めるべく、識学を設立し、現職
周囲との差を感じた新卒時代。「目の前の仕事に集中すること」が一番の近道だった
特に社会人になったばかりの頃は、仕事ができずとても焦っていて、がむしゃらに頑張っていましたね。
大学で4年間ラグビーをやっていて、スポーツ推薦でNTTドコモに入社し、代理店営業を担当しました。人気企業だったこともあり、同期には優秀な人ばかり集まっていて、研修期間のプレゼンから実力の差を感じていました。大学時代は部活に専念していて、アルバイトやインターン、勉強もほとんどしていなかったので、周りと同じスピードで知識を吸収することができなかったんです。
実務がはじまってからも、自分はあまりできるほうじゃないなと思い、とても焦りました。なんとかみんなに付いていこうと、とにかく与えられたことを必死にやっていたら、いつの間にか同期のなかでトップを争うくらいの成績になっていたんです。とにかく「今の仕事に集中すること」を徹底したので、結果が付いてきたのではないかと思います。
一方で、同期は賢いからこそ、会社の批判やダメ出しをすることが多く、伸び悩んでいる印象がありました。どれだけ会社や環境に対して思うことがあっても、若手のうちから環境を改善していくことは難しいです。不平不満を嘆くのではなく、まずはできることをやるという意識で仕事に取り組んでみてください。
また、若手の失敗というのは、良くも悪くも会社の業績に影響を与えることはほとんどありません。失敗を恐れずにどんどん挑戦したら良いのではないかと思います。
意を決して大手企業から転職。経験やスキルがないなら時間をかけることでカバー
3年目の終わりに全国の同期が集まる研修があり、久し振りに東京勤務の仲の良い同期に会いました。彼は仕事ができて評価もされていましたが「もっと成長できる環境に行きたい。このままじゃダメだと思う」と、会社を辞めることを決意していたのでした。ほかの友人はみんな今の環境に疑問を抱くことなく仕事をしていて、そういう話を聞いたことがなかったのでとても刺激を受けましたね。
自身も現状を見つめ直すようになり、仕事は楽しく周りからも評価されているものの、もし自分がいなくなってもこの会社は何も変わらない。社内で重要な意思決定ができるようになるのは、早くとも35歳くらい。そこまで10年以上も待っていられないかもしれないと思い、意を決して転職活動をはじめました。
もっと会社の経営に携われる仕事をしたいと思っていたところ、携帯電話業界の派遣会社であるジェイコムと接点があり、社長や社員と話をしました。急速に成長している会社であり、今までの経験をもとに、早い段階で経営周りのことも任せてもらえそうだと思い入社を決めました。
最初に感じたのは、今までのような大手企業ならではの看板や信頼が効かないということ。当たり前のことですが、通信キャリアから人材派遣会社に転職し、他社からの見られ方の違いに衝撃を受けたのです。
そんななかでもやり切れたのは、自ら大手企業の環境を手放したという決断を無下にしたくなかったから。少なからず迷いや葛藤があるなかでも前に進んだので「やるべきことをやるしかない」と自分を奮い立たせ、誰よりも長い時間一生懸命仕事をしました。すると、次第に結果も付いてくるようになり、徐々に努力が報われるように……。
特に経験やスキルが浅いうちは、時間を費やすことが大切だと思います。皆さんもできる範囲で心掛けてみてくださいね。
「これだ! 」と思う考え方やメソッドはすぐに実践してみよう
その後営業責任者として経営に携わるようになりましたが、マネジメントの難しさに苦戦しました。部下を上手く育てられていないという課題を感じていた頃に、「識学」という考え方に出会ったのです。
これは生産性の高い組織へと導くためのメソッドで、社員の成長や目標達成にもとても役立ちます。識学を知ったとき、今までのマネジメントが間違っていたと気付くと同時に、多くの経営者や管理職の人も、同じように悩んでいるのではないか、正しいメソッドを知らないのではないかと思いました。
そこで独立をして、まずは個人で識学を広めていくことに。前職で培った知名度や信頼、ネットワークがあったので「営業顧問をやってほしい」という依頼をいくつかいただきました。
そのうちの1社と契約。識学のメソッドをもとに、ある事業部の営業サポートを担うことになりました。すると3カ月から半年程度で利益が伸び、事業部の立て直しをも実現することができたのです。
さらに1〜2社で試してみても同様に結果が出たので、メソッドに対して揺るぎない確信が生まれましたね。より多くの企業に広めていくために、商品化していくという覚悟も決めることができました。
2015年3月に法人化し、さまざまな企業様にサービス提供をし続け、累計2,000社以上に導入していただきました。
今後も識学というメソッド、そして企業を拡大させていければと思います。さらには、国語、数学、理科、識学といった感じで、学校の必須科目としても遜色ないくらいの位置付けにできればとも考えています。
自分の感性や思考で「これだ」と思ったものを信じ抜き、独り占めせずに社会にも還元していくことができたら、それが社会における自分の役割にもなっていくのではないでしょうか。
何よりも成果主義を徹底すること。それが会社のため自分のためになる
就活や社会において何よりも重視してほしいのは、成果主義で生きることです。これは識学が提唱していることの1つでもあります。
「会社の成長よりも、個人のモチベーションや働きやすさが大切だ」という考え方もあるかと思いますが、実際は売上を第一に考えないと会社は衰退してしまうので、結果的に社員も損をしてしまいます。ぜひ会社を成長させること、そのために個人が成長することを大切にしてほしいです。
モチベーションに関しては、結果を出した先に後から付いてくるものだと考えています。本来の順番は、会社がもとめる成果に対して、社員は努力をして成果を出し、そこで社員のモチベーションが湧いてくるといった流れです。
また「会社では自分の役割に徹する」という覚悟も必要だと思いますね。ときには仕事中に周りの人との会話を楽しみたくなったり、自分の気分や感情を満たしたくなることもあるでしょう。でもそういうことはプライベートのなかで完結させ、仕事には持ち込まないという意識をもっておくと、成果を出しやすくなりますよ。
このような会社と社員の関係性を踏まえると、就活ではきちんと社員の成果を評価してくれる、社員の成長にコミットしてくれる企業を選ぶべきです。できるだけ数値化されているなど、分かりやすく評価してくれるところがおすすめですね。
企業の理念やビジョンに関しては、学生の時点で自分に合ったものを見つけるのは難しいかと思います。ファーストキャリアの企業で一生働くわけではないと思うので、「この理念は合わないな」と感じる企業を避けるくらいのつもりで大丈夫でしょう。
社会では変化への対応力が問われる。就活で人生のすべてが決まるわけではない
これから活躍できるのは、変化に強い人です。社会や環境は常に変化していくので、同じ会社にいたとしても、もとめられること、やるべきことは変わっていきます。
たとえば最近、急に会社の状況が変わり、新入社員に遠い地域に異動をお願いしたという場面がありました。もちろん本人の意志によりますが、その人は拒否することなく承諾し、配属先でいきなり活躍したのです。自分がこうしたい、あれをしたいといった思いもあるでしょう。ただ、それよりも周りの要望を優先して変化に柔軟に対応できる人は、信頼を得やすく成果を出しやすいのだと改めて実感しました。
最後に伝えたいのは、就活生から若手までの数年間で自分の人生が決まるわけではないということ。これから先も人生は長く続いていくので、就活が上手くいかなかったとしても、その後の努力次第でプラスにもっていくことができます。極論、どこの企業に就職したとしても、キャリアの良し悪しは決まらないとも言えます。
私も就活では何社か受けて、いずれも選考の前半でお見送りになりましたが、結果的に縁のあった企業で評価をされましたし、その後のキャリアも比較的上手くいきました。ぜひその点は安心しながら、のびのびと就活に臨んでもらえたらと思っています!
取材・執筆:志摩若奈