「プロフェッショナル」の本質を追求せよ|考え抜いた先に自分にしか歩めない道がある

Groovement 代表取締役 浴野 真志さん

Groovement 代表取締役 浴野 真志さん

Masashi Ekino・神戸大学経済学部卒。デロイトトーマツコンサルティング、フィールドマネージメントにて、主にグルメサイト/エンタメ/化粧品通販などB2C領域におけるマーケティング戦略、新規事業の検討、各戦略の実行支援に従事。2021年にGroovementを創業し、現職

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成長を求め続けた20代

幼い頃から、海外で日本のグローバルメーカーの影響力の強さを肌で感じながら育ちました。当時日本のメーカーは全盛期で、世界中でその品質や機能の素晴らしさが絶賛されており、新卒での就職はメーカーを選びました。グローバルな世界でハイレベルな活躍をしたいと思ったからです。

意欲に燃えて就職したのは、典型的な日本のメーカー。しかし、入社してすぐに自分の思い描く環境ではないと知ります。終身雇用が前提ということもあって仕事に対する緊張感があまり感じられず、短期間での成長には向いていないように感じたのです。

本社が地方にあったのも理由の一つでした。多くの人とかかわりたいと感じていた当時の自分にとって、社外の人との接点が少なくなる環境で仕事をしていくのはミスマッチでしたね。刺激と成長のなかで20代を過ごしたいと思っていたので、なんだか物足りなく感じてしまいました

その会社がグローバルメーカーであることは間違いないですし、素晴らしい品質のものづくりを続けていることも事実です。しかし、当時の自分にとっては手応えを感じることができませんでした。ゆっくりと1つのことだけを積み上げていくのではなく、20代のうちに成長を実感し、視座を上げていきたい──。そう思い、第二新卒としての転職を決めました。

成長できる環境を求めて

自分の考える「20代の成長」とは、どんなビジネスにも汎用性のあるスキル、マインド、コミュニケーションを身に付けることでした。そこで考えたのが、コンサルティングファームへの転職です。コンサルであれば、その後どんなキャリアに進むにしても潰しの効く能力を磨けると思いました。

第二新卒だったので入社式にも参加できたのですが、周りは髪の色も国籍も言語もさまざまな仲間達ばかり。ダイバーシティに富んだ環境にワクワクしました。

実際に入社してみると、先輩は皆プロフェッショナルでした。時間労働の概念がなく裁量労働で結果を出していたり、まさに裁量的に時間を使って自己研鑽に励んで質の高いアウトプットを出すことに全力を注いでいるのも印象的でしたね。また一時的なパフォーマンスで満足せず、必ずどんな案件も最後までやりきっていたのも学びになりました。

時間を有効に使い、質の高い結果を出し、最後まで全力で取り組み、完走する。そのために勉強や情報収集、スキルアップを欠かさないのがプロフェッショナルです。ここで学んだ本質が、今の自分の基盤になっています。

浴野さんからのメッセージ

原動力は「今の自分だからできること」にあった

コンサルティングファームでの仕事は学ぶことが多く成長も実感できる環境でしたが、コンサルタントもたくさん在籍しており、人数もどんどん増えてきました。そのようななかで、「自分だからできること」は何かを次第に考えるようになっていきました。自分の強みや特性を活かした戦い方ができなければ、今後は活躍できないと思ったのです

事業会社での豊富な経験も求められがちな業務や基盤システムの構築は、経験を重ねたベテランに軍配が上がる分野だとあきらめました。一方ロジカルシンキングや、クライアントに徹底して寄り添う小回りのきく対応は、若いからこそできる部分でもあり、自分の性格的にも得意分野です。さらにtoC向けのデジタルなど新しい領域における戦略・マーケティングなら、特性を活かして力を発揮できると判断しました。

浴野さんのキャリア変遷

若さや経験の浅さは、ときには強みになる場合があります。力を発揮する分野を見極め、取り組み方を工夫すれば、ベテランよりも優位に立てることもあるのです。また自分の性格や特徴を認識して、それが活かせる領域を探っていけば、自ずと活躍の場面が増やせるでしょう。いつであっても「自分だからできること」を意識する。それがキャリアを切り拓いていくカギです。

ピンチかチャンスか。その答えは自分が決める

Groovement 代表取締役 浴野 真志さん

私のキャリアの基盤はコンサルティングファームでの経験にあったのですが、今新卒の就職先としても、コンサルは人気ですよね。基礎的かつ汎用的なビジネススキルが学べて、マインドも鍛えられる。さらに、さまざまな人とかかわり、コミュニケーション能力も磨かれる。これらのメリットが相まって、自分自身もビジネスパーソンとして潰しが効く人材になれたと思います。

一方でクライアントファーストの姿勢を叩き込まれるので、寝ても覚めてもクライアントの要求に応じることが求められます。没頭できる案件があるのはありがたいことであり、またとない成長のチャンスでもありますが、ちょっと疲れてしまうときもあるのです。

当時の自分も例にもれず、コンサルでの日々に少し疲労を感じていて、環境を変えたいと思っていました。周囲を見回すとフリーランスで仕事を始めている人がちらほらいて、自分もフリーランスをしながら起業の準備をしようと思い立ちます

そこで気がついたのが、フリーランスでコンサルを始めようとしたときの足掛かりになるようなサービスがあまりないということ。フリーのコンサルと企業・組織をつなぐマッチングサービスやプラットフォームは存在しても、十分ではないと感じました。そして誕生したのが、現在の「Strategy consultant Bank」です。

ここにビジネスチャンスがあるかもしれない──そんなことを考えていた矢先に新型コロナウィルス感染症によるパンデミックが始まったのです。世間的には向かい風となることが多かったようにも思えますが、当時の自分にとってはむしろ起業の追い風になると考えました。

さまざまなコミュニケーションがウェブ上で可能になり、一般的にも浸透したので、大きなオフィスを構えなくても起業できると思いました。リモート環境で人と会うことができれば、面談・商談などの営業的なコストも抑えられます。そこで、フリーランスではなく会社設立の道を選び、ユーザーとして課題を感じた“フリーのコンサルと企業をつなぐサービス”を事業化することにしました

まさに、ピンチはチャンス。周囲の環境がピンチと言えるものだったとしても、捉え方や工夫次第でチャンスに変えられます。状況に応じて柔軟に、広い視野を持って考えることが大切です。考え抜いた先に、一発逆転や飛躍的発展が期待できるかもしれません。

ピンチのなかにチャンスを見つける

個の時代に求められるのは「考え抜く力」

これからの時代は「個の時代」だと言われます。人生にもキャリアにもモデルはありません。個性を発揮すること、自分なりのキャリアを築くことが大切です。ただそれには、自分自身で考え抜くことが重要になります。

さまざまな課題にぶつかったとき、過去の経験や自分の知見を活かして、うまく解決できる人とそうでない人がいますよね。この両者の違いは「考え抜いているか」にあると思っています。うまく解決できる人材になるには、とにかく考え抜くこと。考え抜くからこそこれまでの経験を応用して、問題を解くことができるのです。

考え抜く力を鍛えることは、いつでもできます。読書はもちろん、人に話して議論を整理したり深めたり、文章や図に書き出してアウトプットしてみたり。問題にぶつかったときに、最後まで手を緩めずに考えてみてほしいですね。その経験が必ずその先でも活かされます。自分の人生と向き合い、精一杯考え抜き、あなたらしい「個」のキャリアを実現していってください。

浴野さんが贈るキャリア指針

取材・執筆:鈴木満優子

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