「仕事は自分のためになるからやってきた」|自分が勝てる場所を見つけてキャリアを切り開け

LRM(エルアールエム) 代表取締役CEO 幸松 哲也さん

Tetsuya Yukimatsu・兵庫県生まれ。奈良県の高校を卒業後、徳島大学工学部知能情報工学科へ進学。新卒でTISに入社し、大規模システム開発プロジェクトに携わり、システム開発の提案から開発、運用保守まで一貫して担当。その後、外資系IT企業とシステム会社を経験。2006年にLRM(エルアールエム)を設立し、現職

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今の仕事の価値観を形作っているのは、社会人になる前に出会ってきたさまざまな大人たち

幼少期からコンピューターに興味を持ち、それは後にキャリアの選択にも影響しました。

小学生の頃に、アーティストが機械による自動演奏をしているのをテレビで観て、かっこ良いなと思ったんです。自宅にパソコンがあったので、そこから少しずつ使うようになり、高校生になってもその興味は薄れず、大学は工学部の情報学科に進学しました。

大学生の頃は、実は少し不真面目な学生でした(笑) バーテンダーのアルバイトばかりしていたのですが、最終的にはお店を任せられるまでになり、お酒の仕入れや値付けまでおこなっていました。

そこでは本当にいろいろなお客さんとの出会いがありましたね。仕事を頑張っている人や、自由に生きている人、自営業をしている人……。大学では出会えないような人も多く、自身の価値観や考え方が大きく変わりました。どのような人ともかかわれるコミュニケーション能力も身に付きましたね。

特に印象に残っているのは、レストランバーのオーナーです。今でもお付き合いがありますが、その方の生き方に触れて「仕事は自分のためにやるもの」という感覚が身に付いたんです。周りの学生は「まだ働きたくない」「学生のままでいたい」という人もいましたが、自分のために活き活きと働く彼の姿を見て、私も「早く働きたい! 」「仕事をするってかっこいいな」と思うようになりました。

「好き」だけではなかなか適職は見つからない! 「好き」にどのようにかかわりたいかを考えることが重要

大学2年生の頃から、将来は大学院に進むのではなく就職しようと考えていました。というのも、コンピューターの技術を学ぶよりも「使うこと」が好きだったため、すぐに就職したいと思ったのです。

服が好きだったのでアパレルの仕事も気になっていましたが、「好き」を深堀りしていくうちに、服を売るのではなく着ることが好きなのだと気付いたんですよね。何か好きなことがある方は、その対象に対して「どのようにかかわるのが好きなのか」まで、一歩踏み込んで考えることがおすすめです

他の学生に比べて、早い段階から進めていた就活では、就活に役立つ雑誌を取り寄せたり、自己分析をしたりと積極的に取り組んでいました。受け身の姿勢ではキャリアの選択肢が狭まってしまうと思うので、自ら情報を取りに行く姿勢で臨んでいました

そして、新卒では大手SlerのTISに就職。コンピューターが好きだったことに加えて、これから伸びる業界だったこと、独立系の企業で柔軟に開発をしたかったことも決め手になりました。

大手企業だったので、業界のスタンダードな仕事の進め方や考え方を学ぶことができました。これは経営者になった今でも役立っていますし、大手企業のクライアントとかかわるときもとても参考になっています。

「自分のために仕事をする」意識が自己成長を加速させた

大学生の頃にオーナーから学んだ「仕事は自分のためにするもの」という価値観は、社会人になってからも活かされました。仕事は会社のためではなく自分の成長のためだと捉えることで、すべてが自分の時間になるのです。

会社で用意されたマニュアル通り、上司に言われた通りに学ぶのではなく、興味のあることを自分の意思で勉強していました。たとえば、仕事に関する雑誌をいくつか定期購読して、通勤中などに読んだりしていましたね。

「好きなことを自分のために学ぶ」という意識を持っていると、自走することができて成長しやすいのです。そして、「やらされている」のではなく自分のために頑張っていると、結果にもつながりますし、先輩や上司からも自然と仕事を任されるようになります。また、自分が変化・成長することは最終的にはお客様に還元されると信じています。

このように周囲との関係性も良好で、とても仕事を楽しんでいたのですが、大手企業の他にベンチャー企業も経験してみたいと徐々に思うようになりました。そんなとき、外資系のIT企業からスカウトをもらい、テクニカルインストラクターに転職することに。前職ではパソコンに向き合う時間が長かったのですが、人に教える、人と向き合うことがメインになり、「やっぱりコミュニケーションを取るのが好きだな」と気付きました。

幸松さんの考える「何のために仕事をするのか」の違い

大切なことは「自分が勝てる場所」を選んで闘うこと

その後、キャリアのターニングポイントとなる大きな決断をすることになります。

ベンチャー企業での経験を通して、もっと人とかかわる仕事にシフトしたいと思い、コンサルタント職を探すようになりました。しかし、業界について調べるほどに、経験豊富なコンサルタントが数え切れないほどいることを知って気後れしたのです。当時は経営経験もなかったですし、会計や経理も得意ではなかったので、一般的な経営コンサルティングの仕事で成果を出せるイメージができませんでした。

そこで、自身の市場価値や成長性を意識しながら、「自分が活躍できそうな仕事は何なのだろう」と考えるようになりました。すでに成熟している業界だと、活躍している人が多く、競争に負けやすくなる。それとは対照的にこれから伸びる業界は何だろう。そう考えたとき、セキュリティコンサルタントの仕事を見つけて「これだ! 」と思いました

当時は個人情報保護法もありませんでしたが、これから話題になることは目に見えていて、システムを中心に業界が盛り上がっていくイメージもあったんです。システム会社のセキュリティコンサルタントの部署に転職し、どんどん仕事に夢中になっていきました。

幸松さんからのメッセージ

セキュリティコンサルタントの部署は部長と私の2人だけでしたが、途中で部長が独立することに。私はシステム開発の部署に異動するのか、独立するのか、どちらかの選択をすることになったのです。

それまでは独立を考えていませんでしたが、これを機に独立してみようと思いました。上手くいかなかったとしても、とにかく一生懸命頑張っていれば、評価してくれる会社もあるはず。なんとなく会社に居続けるよりも、起業して努力するほうが成長できるだろうと考えました。そして、2006年にLRMを設立。情報セキュリティの総合コンサルティング会社として、大手企業からベンチャー企業まで、あらゆる業種のサポートをおこなっています。

今振り返ると、そのときに「挑戦」を選んで良かったと思います。現代は昔よりも挑戦しやすいと思いますし、できるかどうかはわからなくても「まずはやってみる」という選択をしてみてくださいね

幸松さんのキャリア変遷

自分軸からキャリア選択を。社会では「しなやかな心」を大切に

就活では「自分が何をしたいのか」、少なくとも「何をしたくないのか」を明確にしたほうが良いと思います。私の場合は会計や経理、細かい作業は苦手。人と話すことは好きだけれど、飛び込み営業は避けたい、などと「やりたいこと」と「やりたくないこと」を明確にしていました。

できれば「どんな人生を歩みたいのか」「どんな大人になりたいのか」まで考えられると良いですね。できるだけ同じ会社で働き続けたい方は働きやすさが大切ですし、自己成長をもとめる方は成長環境が必要になります。まずは会社や仕事を選ぶための判断軸を決めましょう

あとは、社員のキャリアに対して柔軟な会社がおすすめです。結局は働いてみないとわからないことも多いと思うので、社内で気軽にジョブチェンジや新しい挑戦ができる会社だと、安心して入社できるのではないでしょうか。

幸松さんからのメッセージ

就活生のなかには、面接時に触れ合う社員の人柄を重視している人も多いと思いますが、それを最優先にするのは避けておいたほうが良いかと思います。というのも、面接担当の方と一緒に仕事をするケースは少ないですし、その人が退社してしまうこともあります。

どんな人と働くのかも大切ですが、就活の時点ではそれ以上に「自分は何をしたいのか」「自分の強みが活きる業界はどこなのか」についてしっかりと考える時間を作るようにしましょう。

仕事で活躍できるのは、折れない心を持っている人です。これは強靭な心を持つというよりも「失敗してもこれから改善すれば大丈夫」と、ある程度気楽でいるということ。世の中には「仕事で失敗したらもうダメだ」などと、深刻に考える人も多いと思うんです。

でも、仕事は人生のほんの一部です。たとえ失敗しても伸び代だと捉え、次に活かせられたら大丈夫。ときには頑張れない日があっても、「トータルで考えたら結構頑張ってるよね」で十分です。野球でたとえるなら、3回の段階で負けていても良いのです。9回で勝てていればOKです。

このような考え方で、ぜひ前向きに仕事に取り組んでくださいね!

幸松さんが贈るキャリアの指針

取材・執筆:志摩若奈

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