不用意な過信が「乗り越えられない壁」を作る|ビジネスマンとして高い成果を出し続けられた秘訣とは

WAKUWAKU 取締役COO 須崎 和延さん

Takanobu Suzaki・1979年生まれ。2002年にリゾートトラスト入社。営業担当として活躍した後、2005年にネクスト(現:LIFULL)に転職。さらにセプテーニ・ホールディングスのデジタルマーケティング事業子会社を経て2010年、じげん入社。同社生活ディビジョン事業統括部長、執行役員、じげんグループ子会社社長、取締役執行役員を務めた後に退社。2021年7月からWAKUWAKU(ワクワク)の経営陣に参画し、現職

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身近な存在だった「経営者」という仕事。だからこそ、「経営者」には関心がなかった

現在、中古住宅の仲介とリノベーションをワンストップで提供する「リノベ不動産」事業を展開するWAKUWAKUのCOO(最高執行責任者)として事業拡大に取り組んでいます。前職でも上場企業の取締役執行役員として経営に携わってきましたが、もともと経営者を目指していたわけではありません。

経営に対する興味もありませんでしたし、むしろ以前は経営者にはなりたくないと思っていました。というのも父が会社を経営しており、家庭を顧みず仕事に取り組んでいたからです。授業参観や運動会に来てもらったことは一度もありませんでした。そういった背景から、経営者とはそういう仕事なのだと感じ、自分は違う道に進みたいと考えていました。

一方で、社会人として仕事をすることには高いモチベーションがありました。関心があったのは営業の仕事。とにかく営業力を身に付けたかった。何をするにしても営業力があれば、あらゆる場面で生きてくると思ったからです。

そのため、ファーストキャリアは、とにかく自分の営業力を鍛えられる仕事に就くということを重視しました

そうして選んだのが会員権事業やホテルレストラン事業を展開する「リゾートトラスト」です。

住宅にも関心があったため、ハウスメーカーにも応募して内定をもらっていました。それでも、最終的にリゾートトラストを選択した決め手は、徹底的に営業力を鍛えられると感じられたこと。それに土・日が休日だったのも理由の一つでした。

当時はまだ、「就職=終身雇用」というのが一般的な時代でした。土・日に休みを取れない会社で一生働くことになれば、家庭を持っても子どもの行事にも参加できず、自分と同じように寂しい思いをさせてしまうと思っていました。

目的意識を高く持ち営業成績もトップクラスを維持 

圧倒的な営業力を早く身に付けたいと考えて就職したリゾートトラストは、期待通りに営業力を鍛える場としては非常に良い環境でした。

会員制リゾートの会員権を富裕層に販売する会員権の価格は300万円から3,000万円。決して安くはない商品を、顧客に紹介したその日に即決で購入いただく「THE 営業」とも言える仕事でした。

難しい仕事ではありましたが、好成績を出したこともあり新卒を対象とした社長賞をいただきました。振り返ると、とにかく早く成長するためにはどうしたら良いのか? を考え、可能な限り営業成績の良い先輩に同行させてもらっていました。

その中で高品質な営業トークを学び、それを自分流にカスタマイズしてPDCA(Plan・Do・Check・Action)を回す動きが他の同期とは異なる点だったと思います。そのような努力もあってか、当時の大阪支社には約120人の営業社員がおり、1カ月間で1件も売れない社員も6~7割いる一方で、私は在籍36カ月で1件も売れなかった月は2回だけで、うち1回は入社した最初の月でした。

入社初月の売り上げゼロという結果は真摯に受け止めました。そこで「新人だから」とか「はじめのうちは仕方がない」とは考えず、自分に言い訳をしなかったからこそ、翌月からコンスタントに成績を出すベースを作れたのだと思います。

初めてお会いする方には人見知りをすることもあったので、必ずしも自分が営業向きな性格や気質を持ち合わせていたとは思いません。ただ、とにかく人の役に立ちたいという想いは強かったので、そうした性格が営業にも役立ったのだと思います。

あとは、最初から3年間この会社で徹底的に営業力を鍛えたら次のチャレンジをしようと決めていたので、仕事への向き合い方が違っていたのかもしれません

異なる高みへ常に挑戦! 未経験のビジネス分野で営業力の腕試し

次の転職先となったネクストは住宅・不動産ポータルサイトを運営する会社です。インターネット社会の広がりを背景に急成長していたIT系企業という点と、大阪営業所を開設するタイミングでの入社でしたので、立ち上げと西日本の市場開拓が役割となる点に興味が湧きました。

また、リゾートトラストでは1件で数百万円もする会員権を販売する、短期・高額販売の営業で実績を上げましたが、インターネット広告は「100件掲載して15,000円」といった世界で、このような異なる商材、手法にチャレンジしてみたいとも考えました。

新しい分野に自分が適応できるか分かりませんでしたが、結果的には初月より即契約を獲得することができました。また、入社翌月にはトップセールスを記録し、ここでも自分の営業力が通用するのだと手応えを感じました。

そこで実感したのは、取り扱う商材が何であれ、営業の基本は変わらないということ。自分の成績ありきの営業ではなく、相手を第一に考えた営業姿勢が信用につながるのはどんな業界も同じだと思いました。

営業として必要な心構え

  • 基本は他者のハッピーを願う心

  • 目的意識をはっきり持って仕事に励む

  • 成績について自分に言い訳をしない

新卒で就職したリゾート関連企業、転職先の住宅・不動産関連企業と、広い意味での不動産業界で働いてみて、この分野での営業力には一定の自信が付きました。そこで、次はこれまでとは違ったビジネス分野でチャレンジをしたいと考えました。

次の転職先に選んだのが、デジタルマーケティング事業などを展開しているセプテーニ・ホールディングスの子会社、セプテーニ・クロスゲートです。各種インターネット媒体に広告を出稿する会社を開拓したり、媒体の広告枠を用意してプロモーション企画やコラボ企画の立案、参加企業を見つけたりすることが仕事です。

転職後、会社の事業拡大に尽力! 営業から事業家・経営者に 

1年半ほどで再び転職を決意したのは、自分がしたい仕事について改めて考えてみると、広告を取り次いだり企画したりする代理店的な仕事ではなく、やはり自社商品を持った会社で、愛着を持てる商品を企画・営業して販売することだと気づいたからです

それができる会社を探して出会ったのが、当時はまだ社員数も20人に満たなかった「じげん」でした。経営者が魅力的な人物で、この経営者となら自分も成長しながら、おもしろい仕事ができると確信できたことが入社を決めた理由です。 

当時は小さな会社でしたが、一般社員で入社して2年目にはプロジェクトリーダーを任されるようになりました。会社が拡大し事業部制になったのをきっかけに事業統括部長を任命されました。

その後、2016年には執行役員となり、以降、複数のグループ子会社で社長を務め、2020年には取締役執行役員に就任しました。在籍している間、会社は2013年に東証マザーズへ上場、2018年には東証一部に市場を変更。私が退任した、2021年には社員数も700人以上に増えていました。

私が入社してから11年で会社は急成長しましたが、自分もこの成長には大きく貢献した自負があります

振り返れば、じげんとの出会いが私のキャリアで最大のターニングポイントでした。それまではサラリーマン経験しかありませんでしたが、じげんで事業家、経営者になっていくことを意識するようになりましたし、物事の考え方も大きく変わりました

ビジネスの捉え方も、それまでの狭いものから、広範な視点で捉える姿勢が養われました。

物事を仕組み化し、構造から理解する重要さも学び、今までにも増して必死に働くようになりました。以前は、どこかに「自分や自分の周りが良ければ」と納得してしまう感覚がありましたが、より視座を高く持って大局的な見方をするようになりました。

高みを目指す意識も強くなりました。企業規模では日本や世界を代表するIT企業には敵いませんせんでしたが、常にそうしたトップ企業にどうやって勝っていくかを念頭に置いて仕事をするのが当たり前になりました。

本音で語り合う交流がキャリアを拓く 

WAKUWAKUでCOOを務めることになったのは、以前から知り合いだったCEOの鎌田と働きたいと思ったからです。前職時代に「リフォ-ム産業フェア」という業界イベントに参加した際に、出展していたWAKUWAKUのブースにいた鎌田CEOと名刺交換したのが知り合うきっかけでした。

その後、小さな取引はありましたが、仕事の関係というよりは、定期的に食事をする友人という関係でした。会えば日本経済や業界のことビジネスのこと、気になる成長企業などについて意見交換しました。

そんな交流が続いた中で、私が培ってきた幅広い分野での経営の知見を生かし、経営体制の強化と事業拡大に協力したい、志の通ずる鎌田と仕事をしたいと考え、自らオファーをしてCOOとしWAKUWAKUに参画することにしました。

世界中の人々がワクワクできる社会を創る」という目標に向けて一丸となって取り組む。迷ったらワクワクの道を選ぶというWAKUWAKUの企業文化に自分も共感していました。そのうえで社員1人ひとりがプロとしての仕事をし、社員も顧客も、よりワクワクできる会社を実現していくことが自分の仕事だと考えています。

会社全体にその考えが浸透し、視座が高く視野の広い社員がいきいきと活躍し、ミッションにコミットする組織を作りたいと思っています

また、部下を率いるポジションに就いて、改めて噛みしめているファーストキャリア時代の上司の言葉があります。それが「部下を持つとは、部下たちの人生も左右する役割を担うことだ」というもの。

だからこそ仕事にも部下にも本気で向き合っていきたいと思っています。その結果として、3年後、10年後に、部下だったメンバーから「あの時、あのように言ってもらって良かった」「あんなふうに動いてくれていたことを今になって改めて感謝している」と言われれば、これ以上幸せなことはありません。

自分はまだ実力が足りない。自身の能力を過信しなければ「壁」にはぶつからない

仕事でもプライベートでも自分は「」というものを意識しないで生きてきました。深刻になりすぎず、「そんなこともあるさ」と考えているからです

社会に出て様々な失敗や、困難に直面することはたくさんありました。ただ、それでも大きな壁にぶつかったとは思いませんでした。

こんな時もある」と受け止め自分で気持ちを切り替えてきました。

自分の力を過信すると「できるはずなのに、できなかった」と考えて壁にぶつかったと受け止めてしまいます。しかし、過信せずに自分はまだその程度なのだ、と自覚できれば一歩ずつ次へ向けて謙虚になって努力をすることができます

何かができなくても自分の現状を受け入れて、自分ができる部分を伸ばし、周りの評価を変えていけばいいというのが私の考えです。

壁にぶつからない発想法

  • 自分を過信して期待しすぎない

  • 自分の身の丈を受け入れる

  • 「こんなこともある」と受け流す

「自分ブランド」を築き上げよう! 成長し続けられる環境を選ぶことが大切

会社選びについてアドバイスをするならば、まずは「自分に合った業界」を見極めることが重要です。その業界で自分の能力を向上できるか、自分が成長できる産業か。まずは良く考えてみてください。

採用担当者も会社選びのヒントになります。良い部分だけでなく課題についてもフィードバックをしてくれるなど、本気で学生に向き合う担当者がいる会社は良い会社の可能性が高いはずです。

その企業が、成長産業であるのが望ましいですが、レガシー産業でも改革志向の経営者がいれば成長の可能性は十分にあります。また会社のブランドに頼るのではなく自分がブランドになれる会社を選ぶという発想もあります。

〇〇会社の~~さん」ではなく「××に優れている~~さん」と言われるくらいの、「自分ブランド」を築くのが理想的です。それが未来を創り、道を切り拓いてくれます。

避けるべきなのは、自分のパフォーマンスやポテンシャルを発揮するために、遠回りをしなければならないと思える会社です

自分のやる気可能性が、どういう環境で引き出されるかを客観的に判断する。だからといって環境に期待しすぎることなく、与えられた環境には自然体で向き合いながら、必要に応じて周囲を巻き込み、環境を変える努力をする。

私が一緒に仕事をしたいと思う人材は、とにかく努力ができる人。そんな人が好きですし、その人の努力には、とことん付き合っていきます。

人には得意不得意がありますし、職場環境や職種によってすぐに力を発揮できないこともあるでしょう。地頭や学歴が良ければ仕事ができるというものでもありません。ただし努力をする人、それを継続できる人には必ず味方が現れるし道は開けます

逆に努力をしない人は壁にぶつかったとき、それを乗り越えることが難しくなります。だからこそ、努力を重ねてインプットもアウトプットも最大化し、PDCAをしっかり回して成長し続けられる人材が、これからはもとめられると思います

取材・執筆:高岸洋行

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