未来志向で成長を目指せ|キャリア選択では「夢の数字化」が鍵になる
リアルワールド 取締役 千葉 博文さん
Hirofumi Chiba・2013年に同社へ新卒入社し、入社2カ月目にポイントメディアの事業責任者を任される。メディアプロデューサー、プロダクトマネージャー、マーケティング、セールス等、ひととおりのポジションを経験したのち、2018年3月に本社執行役員・子会社代表に就任。2020年12月より現職
ネット業界の中でも、地方創生に繋がるクラウドソーシングに着目
「ボランティアに来てくれたり、寄付金が集まるのは嬉しいけど、この町がキレイになる頃には私は死んでいるだろうし、誰もいなくなってるだろうねぇ」。
東日本大震災の後、地元・宮城の復興ボランティアの際に耳にしたこの言葉が、キャリアを決めるターニングポイントになりました。
その土地で稼げてその土地で消費ができる、つまりその土地に経済活動が生まれている状態にならなければ、本当の復興とは言えないのではないか。
地元のおばあさんの言葉にハッとさせられるものがあり、「地元の経済を活性化させたい」という志が芽生えるなかで、就職活動をスタートさせました。
もともとITに興味があり、学生時代からプログラミングの勉強をしていましたため、ITで雇用を生み出したい、雇用を生み出すためには仕事を作る人も必要だと考えていました。
当時のインターネット業界は、ゲームや広告系の企業が大半を占めていたのですが、ある就活イベントに参加した際にクラウドソーシングの存在を知り、「これを使えば誰でも仕事に就ける可能性があるし、地方との相性もいい」と自分の思いとリンクするものを感じたのです。
当時、特別なスキルがない人でもインターネット上で仕事ができることを目指していたリアルワールドの『マイクロソーシング型クラウドソーシング』を知り、当社一本に絞って入社を決めました。
くすぶっていた新人時代。活躍のチャンスをもらって変わることができた
内定後には、学生インターンも経験。半年間ほどエンジニアをしていましたが、入社後はポイント事業部でメディアプロデュースを担うことに。大学で経営工学を勉強していたので、統計などのスキルを買っていただいたようです。
しかし当時は上場準備中の時期だったこともあり、業務は広告審査のチェックが中心で、なかなかやりたいことに携われない状況。理想に燃えて入社した分、ギャップが大きく、すぐに「辞めたい」と口にするようになりました。
社長や上司に説得されて留まりましたが、激励の意味もあってか、その後すぐに事業部内の部門責任者に抜擢されたのです。
いきなり経営会議に出るような役割で大変ではありましたが、早い時期から予算の考え方や損益計算書(PL)の見方などを学べたことは、今思えば非常に有意義でした。
目に見える変化を出せるようになってきたのは、入社2年目の終わり頃でしょうか。いろいろな意味で“勘違い”が解けた瞬間でした。一番の変化は「社内」ではなく「社外」に目を向け始めたこと。
「社内の人たちをどうマネジメントするか」がプロデューサーの仕事だと思っていたのですが、売上を作りたいならば広告主などお金を出してくれる人のほうに向き合う必要がある、と気づいたのです。
そうして社外に積極的にアプローチする行動をし始めてからは、徐々に数字を出せるようになっていきました。
結果にフォーカスし「自分を評価してくれる相手」に出会っていこう
入社3年目になる頃には事業部全体の責任者を任され、ひたすら「結果」を求める日々を過ごすようになりました。
結果と向き合うなかで気づいたのは、「評価は他人がするもので、自分でするものではない」ということです。自分のことを本当の意味で評価してくれるのは常に他者であり、かつ自分より上の人たちです。
過去を振り返っても、出会える人が変わり、「見える景色が変わった、自分のいるレイヤーが変わった」と感じるのは、必ず自分が結果を出したときでした。
同じレイヤーの人たちといるときは井戸端会議をするばかりで、自分のいる場所はなかなか変わっていきません。結果を出すことにフォーカスしていれば自然とレイヤーが変わり、自分より上の人たちに会えるようになっていく、ということが分かりました。
学生のうちに「自分より上の人」に会いたければ、インターンでも学生起業でもなんでもいいので、とにかく結果を出すことにフォーカスしてみるといいと思います。「会社に入ってからやろう」ではなく、思い立ったらすぐにやることが大切です。
自分より上の人、もっと言えば「自分の夢以上に活躍している人」に会うことは、進路を決める際にも有効だと思います。年収1000万円を目指しているのであれば、1億円を稼いでいる人に話を聞いてみるのがベスト。
年収1000万円を稼いでいる人は、そうなる方法をひとつしか知らない可能性がありますが、1億円を稼いでいる人であれば、1000万円へのたどり着き方を複数個、教えてくれる可能性があります。
手持ちの選択肢はひとつでも多いほうが、自分と相性のいい方法を検討できるので参考になりやすいと思います。
自分の仕事を評価する人は「誰」なのかを意識すると、仕事の意義が見えてくる
「自分の仕事を評価する人」を意識する姿勢は、社会に出てからも役立つはずです。自分の仕事を評価してくれる相手がわかっていると、「自分が今やっている仕事が何につながるのか」を解像度高く理解できます。
自分の仕事を評価する人にも、さらに「その人を評価している人」がいます。その人たちはどんなミッションを背負っているのかを考えられれば、目の前の仕事のその先のゴールが明確になるのです。
他人の評価を意識しすぎると立ち止まってしまうこともあるかもしれません。しかし、第三者の評価が自分を見つめ直すきっかけになることも確かです。
ちなみに「評価する人」の存在を感じたのは、大学で初めてできた東京出身の友人がきっかけでした。上京組で「自分よりも優秀で魅力的な人がいっぱいいるのだろうな」と身構えていた私に、「千葉ちゃんは一緒にいて楽しい」などと明るく言ってくれたのです。
1年生の秋には、学部の新入生歓迎委員会の委員長に選ばれるくらいには大学に馴染むことができ、「人を束ねるのに必要なのは、頭の良し悪しじゃないのかも」と感じたことを覚えています。
内定はもらうものだが、承諾するのは自分自身。その選択を正解にしたいと思った
取締役になる前、一度だけ会社を辞めようとしたことがありました。当社はこの2年間、事業を整理するなど大きな動きがあったのですが、お世話になってきた代表が変わることになり、一旦、気持ちが切れてしまったのです。
当時は、入社してから何でもやってきたので、自分の強みは何かを自覚できずにいました。しかし転職のフィールドに出てみたところ、スキルを認めてくれる会社が思いのほか多くあり「自分の20代は間違っていなかった」と思うことができました。そして、残ろうと思い始めたのです。
併せて経営者である知人にも相談したところ、「上場できる会社は滅多にないし、20代で役員をやれている人はそんなにいない。あなたがそれに価値を感じるかどうかじゃない?」とアドバイスをくれたのです。
このアドバイスをきっかけに「世の中を変えたくて当社に入ったのに、まだ何もやり遂げていない」と思うように。内定は企業からもらうもの。でも承諾する、つまり選択するのは自分です。「自分が選んだ道を正解にしたい」と思い、残ることを決意しました。
そして、現職の代表に「自分が事業を全部見るから取締役をやらせてくれ!」と覚悟を伝え、改めて当社で頑張ってみることにしました。今は「時価総額1,000億円をやり切ること」を目標に、いろいろな事業を進めています。
2022年4月には、社名を「デジタルプラス」に変更します。さらに、「人を不幸にしないための、デジタルと」を新しいミッションに。これからもデジタルを通してリアルの世界をより良いものにするために、不幸を根底から解決して「幸せ」につなげます。
自分の思う“幸せ像”を数字に落とし込めば、就職先は自ずと見えてくる
学生さんから就活相談を受けていると、「やりたいことは特にないけれど、幸せにはなりたい」という言葉をよく耳にします。
誰しもが「ビジネスマンとして優秀になりたい」「世の中を変えたい」といった目標や使命感を持つ必要はないと思いますし、「幸せになりたい」という目標自体に何ら問題はないと思います。
ただ幸せの定義は人によって千差万別なので、「自分にとっての幸せがなにか」を理解しておかないと、目標や進路は定まってこないよ、ということは伝えたいです。
たとえば、「好きなときに海外に行けるような生活が“幸せ”なのか?」「タワーマンションに住めたら“幸せ”なのか?」等々、自分の思う“幸せ像”をできるだけ具体化してみる。
その上で「じゃあそのためには、いくら稼ぐ必要があるのか?」と“夢の数字化”をしていく。夢を数字に落とし込み、逆算していけば、自分の夢に最もふさわしいファースト・キャリアを選択しやすくなるはずです。
自分にとっての“幸せ像”が浮かばない人の場合は、「どういう状態になれたら不幸じゃないか(ちょっと幸せを感じられそうか)」を考えてみるといいと思います。
すると、自分が不幸じゃない生活をするためには、自由になるお金が月5万円以上は必要だな、などと具体化していけると思います。
リスクがなければリターンもない。高いハードルの先に成長が待っている
自分の幸・不幸を測るためには「経験」も必要。いろいろな経験をしておくことは、将来像を定めていく上でも重要になってくると思います。 私は中学時代、地元にいたくないと思うような嫌な出来事がありました。
良い経験ではありませんでしたが、それがあったからこそ東京に出て来られましたし、「『不幸ではない』と言い切れるひとりを増やす」ということは、今後キャリアの上で目指したいテーマのひとつにもなっています。
「幸せだと言い切れない人に、選択肢を提供していきたい」という思いは強く持っていますね。
経験が少ない人は「まずは、とにかく経験してみる姿勢」を心がけるといいと思います。新人の頃は先輩たちが超えるべきハードルを設定してくれますが、入社3年目くらい以降は、自分でハードルを設定しなければならなくなります。
そのときに経験値が少ないままだと、どのハードルも高く見えてしまって、自分が越えられそうなハードルの中でしか仕事をしなくなってしまうことも。そうなると、次の成長ができなくなってしまいます。
新しいことをやる前に不安を感じるのは当然ですが、「やってみたら意外と自分に馴染んだ」「いざやってみるとハードルは高くなかった」という経験は、皆さんにもきっとあるはず。
他人から見ると大したリスクじゃないのに……ということも往々にしてありますし、怖いと感じたときは「自分が思っているリスクは、本当に“リスク”なのか?」「やったことがないから不安なだけではないのか?」と一度は自問自答をしてみるといいと思います。
私自身、そもそも「リスクがなければリターン(成長)もない」と考えています。越えられなさそうなハードルを越えたときに、初めて成長がある。「自分が得たい成長に達するにはどのような方法があり、そこにはどのようなリスクがあるのか」を冷静に捉えるためにも、いろいろな経験をしておくことは有効だと思います。
現状維持では後退する。「未来志向」で成長を目指そう
当社は2021年の通期最終利益を黒字で着地でき、現在は改めて必要な人を増やしていこう、というフェーズに入っています。上場企業ではありますが、再びスタートアップのような雰囲気でやっていますね。
代表に近いところで上場経営の中身を見ることができるので、学べることは多いと思いますし、スキマだらけの社内の状況を面白がってくださる方と一緒に働きたいと考えています。
当社の行動指針には「未来志向」「できないことより、やれる方法を考える」「超マッハスピード」「120%自分ごと」「Integrity(誠実、高潔)」という5つを掲げていますが、これはそのまま、これからの時代に活躍できる人材像だと思います。
5つのうち特に皆さんに勧めたいのは、「未来志向」であること。自分が目指している“星”はどこなのかが見えていればベストですが、とりあえず半年先くらいまでの当面の目標でもいいと思います。
目の前の目標を達成して周囲に認められるようになった先で、最終的に行きたい星が見つかってくることは珍しくありません。
ただし、何も目標を設定せずに仕事をすることはお勧めしません。「なりたい自分」と「現状の自分」との差分がわからないと、取り組むべき課題が分からず、成長ができないからです。
人は目標や目的があってこそ、進化や成長の意欲が湧いてくる。
身近なところでたとえるなら、気になる異性がいて「その人にふさわしい人になるには、自分のここを磨こう」なんて努力をしますよね。 これも目標と差分の例です。
自分は現状維持で安定していればいい、という人もいるかもしれません。しかし自分の経験上、「現状維持を目指せば後退する」と思います。
「仕事のサイクルを生み出せる人」はどこでも重宝される
「上司の仕事を奪え」ということも、成長したい皆さんへのアドバイスのひとつです。上司がやる仕事を先回りしてやっていくと、上司は高い確率で焦ります。
手が空いた上司はまた新しい仕事を創ったり獲ってきて、その仕事を“型化”してメンバーたちに割り振ってくれるので、個々の能力も自然と成長しますし、会社全体の成長にもつながっていきます。
上司の仕事を奪うためには、自分の仕事をできるだけシンプルに型化していき、効率化を図る必要があります。自分が型化したものを後輩に渡せれば、社内の業務効率化も果たせます。
型化の作業は基本的に上司の仕事だとは思いますが、いつも上司からである必要はなく、仕事のサイクルは下からでも、真ん中からでも、どんどん作っていけばいいと思いますね。
そのように仕事のサイクルを生み出せる人は、どこへいっても重宝されると思います。「仕事(雇用)は優秀な大人が作り出すもの」と考えている人は少なくないですが、アイデア次第では、誰でもが仕事を作り出せる可能性を持っている。
私も地方創生のテーマでよく考えることですが、インターネットはそれを実現できる可能性を秘めたツールなので、大いに活用して、「自分の手で仕事を作りたい」と思う人が世の中にひとりでも増えていけば嬉しいです。
「会社が創りたい世界観」にワクワクできるかを確かめよう
最後に、ベンチャー企業を志望する人に伝えたいことがあります。就職活動で「人との相性」を重視する人は少なくないですが、ベンチャーは会社の新陳代謝が激しいので、人の出入りが頻繁にあり、出会いと別れの連続です。
力強く事業を進めている会社ほど「求心力」が強いので、スピード速く回転し続けるコマのように、色々な人が入っては出ていき……というループが続いています。
人との出会いや別れに一喜一憂する社会人生活を送るよりも、会社のビジョンに共感でき、120%自分事として取り組むことができ、かつ「自分で組織を創りたい」とさえ思えるようなところに入りたいと、学生時代から考えていました。
もし共感いただける人がいれば、「会社がやろうとしていることや会社が創りたい世界観(ビジョン)に、少しでもワクワクできるか。心が躍るかどうか」という点は必ず確かめてから、ファーストキャリアを選んでいくことをお勧めします。
取材・執筆:外山ゆひら