長所を伸ばせば才能が開花する|若者の感性を生かすビジネスを切り拓け!
銀河ソフトウェア 取締役社長 内海 祐太さん
Uchiumi Yuta・明治学院大学文学部卒業。広告代理店や物流システムなど、さまざまな業種の6社を経て、30歳で銀河ソフトウェアに入社。人材の長所を生かしきる社風に感銘を受ける。2017年より同社取締役社長に就任。若者らしい柔軟で新鮮な感性で新たなビジネスを切り開いてほしいと考える。2011年ハワイ国際ウクレレコンテストMVP受賞。世界屈指のウクレレ奏者でもある
さまざまな業界を渡り歩き、社会を知る
就職活動は重要ですが、人生の全てではありません。長い人生の中で自分にマッチする仕事や環境に巡り会うことが大切です。そのために時間がかかる人もいるし、費やした時間が無駄になることはないとも思います。
私は現在取締役社長をしていますが、ウクレレ奏者でもあります。大会で世界チャンピオンにもなったことがあるんです。自分の半生を振り返っても、自分が何者なのかよくわからないですね。
大学時代には音楽事務所に所属して、楽曲制作をしていたこともありました。ミュージシャンといえば聞こえがいいのですが、それだけを一生の仕事にしようとは思いませんでした。卒業後は広告代理店に勤めたこともあれば、物流のシステム会社に入ったり、PCメーカーで働いたり。銀河ソフトウェアにたどりつくまでに、6つの会社で経験を積みました。
特に意図があったわけでも、立派な志があったわけでもありません。なんとなく生き甲斐を探していたというのが真相です。「言いたいことを言ってもいいよ」と言われて上司の上司に直接提言したら、なんだか居づらい雰囲気になってしまったこともありました(笑)。どの会社にいても、ここは自分の居場所ではないと感じていたんです。
その後、NTT系列の企業でシステム関連の仕事をして、ご縁があって銀河ソフトウェアに入社することになりました。それから20年近く同じ会社でキャリアを積み、経営に携わるまでになるのですから、人生はわからないものですね。
欲望と直感に正直な選択を
いくつかの会社を経て転職した銀河ソフトウェアは、自分にぴったりの会社でした。でも、入社前に自分に合っているかは判断しづらいですよね。そんな時はまず、自分が仕事にもとめているもの・譲れないものをはっきりさせてみましょう。
人間関係やお金、やりがいはどれだけ重要なのか。逆に譲れるものはあるか。自分を動かすモチベーションはどこにあるのか。自分を徹底的に分析しましょう。
モチベーションというと難しく感じますが、簡単に言えば欲望のこと。自分を突き動かすものをシンプルに探ってみることをおすすめします。自分を分析するには、アウトプットが最適です。文字に書き出すのも良いですが、誰かに話してみるのも有効だと思います。
自分の譲れないポイントやモチベーションが会社とマッチするのか、整理してみた上で、さらに必要なのは直感ではないかと思っています。
端的にいえば、面接官との相性で、会社との相性を判断するということです。面接官になった人は、ある意味で会社を代表している人です。会社がもとめる対外的な顔を見せています。この雰囲気に自分が合うと感じたなら、入社後にもそれほど大きな齟齬は生まれないと思いますよ。
ご縁という言葉もありますが、面接官に好感を感じられたなら、直感にかけてみるのも良いと思います。
誰にでも長所はある、個人をとことん尊重
私が銀河ソフトウェアに長年居られたのも、社長になるまで情熱を注げたのも、会社のカルチャーにピッタリと合ったからです。居心地が良く、自分の価値観と一致した会社は初めてでした。
当社はとにかく人を大切にし、尊重する会社。一つでも良いところがあれば、それをとことん伸ばそうと後押ししてくれます。普通の職場であれば、できないことを叱責されたり、平均以下のことを指摘されたりしますよね。ここでは減点法ではなく、加点法で評価する姿勢に感銘を受けました。
だから評価も前向きかつ、平等。年齢や在籍年数に関わらず、良い意見であれば積極的に取り入れる姿勢があります。当社はゲームショーに出展しているのですが、新卒の意見を取り入れて展示内容を決めたこともありました。中身のある人が順当にリーダーになっている印象です。
キャリアパスの面談に12時間割いてもらったこともあります(笑)。ちょっと極端な例ですが、納得するまで話し、認めてもらい、うれしかったですね。私も社員を尊重したいので、誰でも社長に直接意見できるようにしています。忌憚のない意見が製品やサービスを良くすると信じています。
どんな人にも得手、不得手はあります。苦手なことを頑張って克服するのも立派なことですが、ビジネスにおいては得意なことを伸ばし、突き抜ける方が良いと感じています。自分の良さを客観的に把握し、さらに発展させる。ここに時間とリソースを割いてみてはどうでしょうか。
人の命以上に大切なものはない
誰でも壁にぶつかることはあります。私も経営陣が新しいメンバーになるときには、さまざまなことに気を使い、追い詰められたことがありました。その頃は会社全体の雰囲気が悪くなっていたと思いますし、仕事が終わると溺れるように酒を飲んだこともあります。
滅入っていた自分を支えてくれたのは妻でした。「仕事なんて辞めていいよ。ハワイでウクレレ講師でもやろうよ」と声をかけてくれたのがありがたかったですね。極論ですが、人の命より大切なものはありません。それが情熱をかけた仕事であったとしても。その観点を忘れてはいけないと思います。どこか他人事になれるような気の抜き方、引いた視点でみられる余裕を忘れずにいてほしいです。
そもそも精神的に追い詰められるほどの状況は異常です。ITやシステムの業界では納期のトラブルなどが多いですが、本当にまずい時には「自分が知ったこっちゃない! 」という気持ちを心のどこかに持ちましょう。
もちろん努力や責任感を持つことは、社会人として当然ですが、健康を害したり、心身を痛めたりするようなことがあってはいけません。そんな状況になっていることの方がおかしい、という客観性を忘れずにいてほしいです。
仲間を信じて新しい才能を開花させる
リーマンショックの時も大変でしたが、会社の危機を乗り越えて続けてこられたのは、素晴らしい社員がいたから。働きたいと思える環境だから、夜遅くまで働いていても平気だし、楽しいんですよ!
そもそも創業者の熊井(銀河ソフトウェアの代表取締役)が人の才能を開花させることに長けていて、それがそのまま会社のカラーになっていきました。私は優秀な社長ではありませんが、当社に優秀な人材はたくさんいます。私より高給取りの社員も珍しくありませんよ。そうやって優秀な社員が力を発揮できるように環境を整えています。
一緒に働いて楽しい、もっとやりたい、頼れると思える仲間がいれば、頑張りも効きます。周囲に尊敬できる仲間をぜひ作ってください。
困難な場面では、直接正面からぶつかることも重要です。私はレスリングの経験があり、不利な時ほど正面からぶつかることが必要だと信じてきました。うまく折り合えなかった人材とどうしても理解し合いたくて、サシで話す時間を持ちました。じっくり3日間ほど時間をかけたと思います。すると意外なほどにお互いを理解でき、心置きなく意見を言い合える関係性が築けました。
一対一で向かい合う時、聞く能力や話す能力もあったほうが良いですね。相手の言い分をしっかりと理解する、それに応じて自分の話をすることは、どんな場面でも必要とされるスキルです。相手に伝わるように意見を言うこと、言葉の奥にある相手の立場や思いを理解するための経験を積んで、意識して鍛えてほしいです。
若い感性を存分に生かす
世界中さまざまな分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、メタバースなどの新しい観念が生み出されている今、若いということはアドバンテージです。今を生きる感性をフルに使って、新しい価値観を形にしてほしいです。
ちなみに当社も本業以外に、音楽教室や食品販売、飲食店の経営なども展開しているんですよ。きちんと利益を出せるのであれば、どんなことでもやってみろ、と背中を押しています。
自分なりの感性や、若い世代の考え方を曲げることなく、どんどん社会を変えていきましょう。恐れることはありません。楽しく、素直に、得意なことを伸ばしていけば良いんです。
取材・執筆:鈴木満優子