自分のコンフォートゾーンを飛び出せ|時代を超えるスキルを鍛えられる環境に身を置こう

AnyMind Japan CHRO(最高人事責任者) 水谷健彦さん

Takehiko Mizutani・1997年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。2001年、経営コンサルタント事業をおこなうリンクアンドモチベーション入社。2013年ベンチャー/成長企業の組織コンサルティングをメイン事業とするJAMを設立。2017年PKSHA Technology社外取締役。2021年2月AnyMind JapanのCHRO(最高人事責任者)、6月からはAnyMind Group全体のHRを統括するマネージングディレクターに就任

「就職は人生の墓場」だと信じていた新人時代

大学時代はバンド活動にのめり込み音楽三昧の毎日。そのころは「就職は人生の墓場」だと信じていました。社会人になった先輩たちと会えば会社の愚痴ばかりで目は死んでいる。そんな様子からは人生の墓場を感じざるを得ませんでした。

就職先はせめて好きな音楽関連業界をと考え楽器販売店に入ったものの、当時の私にはそこも墓場にしか感じられませんでした。社会人2年目になり会社経営の父を手伝うため転職しましたが、ほどなく会社は倒産。

職探し中にコンビニで手にした転職雑誌『ビーイング』に「今後は人材ビジネスが爆発的に成長する」との記事があり興味を引かれました。というのも父の会社が行き詰まった理由は、事業自体の問題だけでなく人の問題が大きかったからです。

言われたことしかやらないモチベーションの低い集団の中で不信感の連鎖が止まらない。これではうまく行くはずがありません。人材とそれを機能させる組織マネジメントがいかに重要かを痛感させられる経験でした。

ハードワークも仕事の醍醐味に

水谷さん インタビュー写真

そんな経緯もあって人材ビジネスを手掛けるリクルート人材センターに入社したのですが、ここでの3年半で「人生の墓場」という意識が払拭されました。最初はハードワークを辛く感じていましたが、周りの仲間が楽しそうに時間を気にせず働く姿を目の当たりにするうち、自分も変化していきました。

当時は楽天がまだベンチャーだった時代でしたが、同社のような勢いのある企業の求人を数多く担当し、仕事が刺激的で面白かったことも大きかったですね。

内容は人材紹介の営業。企業から求人依頼をもらい、企業の特徴や仕事の内容、求める人材像を聞き出します。これを求人票に落とし込んで社内のキャリアカウンセラーに引き継ぎ、人材紹介がスタートする流れです。

良い人材を迅速に集めるには求人票の文章内容が簡潔で分かりやすく、なおかつ求人企業の魅力が伝わることが重要で、求人票を少しでも早くカウンセラーに共有することも大切です。そうやって応募件数が高まり良い人材を紹介できるようになった結果、顧客企業に喜ばれる。

その成功体験が次のモチベーションになり「より質の高い求人票をより早く」と、こだわり抜いて仕事に熱中するようになると、時間も忘れて没頭し仕事のハードさも気にならなくなり、むしろ仕事の醍醐味を味わえるようになりました。

水谷さんの仕事への価値観の変化

「人生の墓場」と考えていた私が、仕事の醍醐味を知るまでに変化したのは、環境の要素が大きかったと思います。振り返れば学生時代は、周囲の愚痴や仕事人生はつらいものだという言葉に影響を受けていました。しかし同僚が生き生きと働く職場に転職し、環境が変わることで自分の仕事観も大きく変わりました。

ただしモヤモヤした思いも抱き始めたのもこのころ。ベンチャーの支援、成長に寄与できるやりがいは感じていたのですが、採用された人材の半年以内の離職率が大手企業では3~4%なのに対しベンチャー企業はその10倍、3人に1人が6カ月以内に辞めてしまう事態に直面。ベンチャーの成長を後押しするなら、採用だけでなく人材育成や組織マネジメントの構築が重要だと考えるようになっていきました。

そのころ仕事でコンタクトしたのが、創業後まだ数カ月の組織コンサルティング会社、リンクアンドモチベーションでした。「企業経営で最も大切なことが後回しにされている」という新聞広告のコピーに目を引かれて中身を読むと、多くの企業で社員のモチベーションが後回しになっているという趣旨でした。

自分の考えに近く、面白い企業だと考えてすぐに営業電話を入れてアポを取りました。その後、担当者と打ち合わせを重ねるうちに、中途半端な気持ちで関わっていても自分の成長につながらないと感じ、28歳で創業1年目の同社に転職。

ベンチャー企業を支援するために領域を拡大

その後、12年間ここで働くことになりました。顧客企業の組織をモチベーションの観点から活性化したり、人材育成に関わったりが仕事の主な内容で、大手からベンチャーまで多くの企業を担当しさまざまな経験を積むことができました。

この間に会社自体も成長し入社当時の社員数20名が、12年後の退任時には1200名。顧客に支持され、会社名が浸透し、社員も増えるという成長サイクルを経験し、急成長に伴う喜びも辛さも知ることができました。

ベンチャー企業と共に歩む決意で起業

ベンチャー企業を対象に組織コンサルティングをおこなうJAMを起業したのはちょうど40歳のときです。一生学生でいたいと願い、起業など考えもしなかった自分が会社を興すことになるとは思ってもいませんでした。

しかし35歳くらいから起業を意識するようになりました。自分が所属するリンクアンドモチベーションや自分のクライアント企業の経営者たちが経営を楽しんでいるように感じたからです。加えて、自分なりのやり方でベンチャー企業育成に貢献したいという思いもありました。

それで5年ほどかけて環境を整えたうえでリンクアンドモチベーションを辞めました。会社を抜けるのに欠かせない準備は、後継者を育てて退職後に迷惑をかけないことだと考えていましたが、後進が育ったことを見極め気持ちも整理できたのを機に独立しました。

ベンチャー企業を顧客対象に選んだのは、これからの日本を面白くするのは大手企業が輝き続けることよりも、新たに生まれてくるベンチャー企業の活躍だと感じたからです。楽天やサイバーエージェントなどはベンチャーから成長して影響力を増し、日本に刺激を与え元気にしてきた企業ですが、後に続く企業がもっと出てきてほしいですし、成長意欲が高く進化し続けようという姿勢のベンチャーは支援していても楽しいからです。

AnyMindはアジアを代表する企業に成長する可能性に魅力を感じたことと、以前から企業の内部に籍を置いて組織マネジメント構築の根本からかかわる仕事もしたいと考えていたこともあって、今年2月からJAMの社長と兼務する形でAnyMind の一員となり、AnyMind Japan のCHRO(最高人事責任者)を引き受けました。

さらに6月からはグローバルのCHROとしてタイ、シンガポール、インドネシア等の海外拠点を含むグループ全体の採用、育成、評価等の人事面を統括しています。

水谷さんの仕事観の変遷とキャリアアップ

自らコンフォートゾーンを飛び出せ

キャリアを形成していくうえで意識してきた事柄があったとすれば、キャリアや人生のターニングポイントではコンフォートゾーンから外れる選択を重視してきたことです。

経験済みの仕事を、顔見知りの人々とおこなうのは安心だし成果イメージもつかみやすい快適なフィールドです。しかし自分から快適さを捨てて外へ出ていく選択肢を20代から意識していました。

リクルートからリンクアンドモチベーションへ転職する際にも、職場の同僚たちからは「スーパーな人材が集まるあの会社で務まるのか、ついていけるのか」と心配されました。またリクルートの仕事内容も評価・待遇も満足のいくものでしたから、好環境を捨てて転職するのにはためらいもありました。それでも数年後に自分が成長しているのはどちらの道かを考えて決断しました。

コンフォートゾーンから出ることで成長する

AnyMindの仕事も自分からコンフォートゾーンを出て、海外という新たなフィールドを経験することにつながっています。国内のベンチャー企業の人材育成や組織マネジメントならどうすればいいのか十分にわかっていますし、そこはAnyMindに還元していける自分の価値です。一方でグローバルの仕事は自分にとってのコンフォートゾーンの外側です。

たとえばインドネシア法人の人事を見る場合、インドネシア人の就労観や採用の常識は何か。さらにタイでは、フィリピンではと個々に学び吸収していく必要があります。そうして新しい経験を重ねることが自分の成長を促すのだと思います。

自分では常に成長を意識した選択をしてきたつもりです。ですから現在の常識や知識に基づく長期の未来像は、これから自分が成長したときに到達できる未来より貧弱だと思うので、あまり先のことは考えません。

人生やキャリアについて、考えてもせいぜい3年後くらいまで。いまの常識や知識が通用するのもそれくらいが限界ですから。1年経過するたびに常に3年後のイメージを少しずつアップデートする作業の繰り返しで、結果的に自分のレベルアップが実感できれば良いわけです。

就活前に自分を見つめ直すための5つの「P」

就活生が自分にとって良い企業と出会う方法をアドバイスするなら、就職先に何を求めるかを明確にすることです。企業選びを左右する要素として、5つの「P」があると考えています。

待遇も給料も良い大手企業・有名企業で働きたいと考えPrivilege(特権)を求める。とにかくこの職種こそが自分の仕事だというProduct (事業内容)願望を持つパターンもあります。あるいは、仕事を通じて自分を高めたいというProfession追求型。それに何の仕事かではなくこの人たちと共に働きたいというPeople志向や、企業哲学や理念に惹かれて希望するPhilosophy共感型もあります。

この5つのPを全部バランス良く欲しいと願うのなら働く理由が明確でない証拠です。一つに絞る必要はありませんが、どれかが80%あるいは60%を占めているようであれば働く理由をつかめている状態でしょう。

自己分析して5つのPが均等に20%ずつだったら良い就活はできません。また、就職先に迷ったらこの5Pをじっくり検討し、自分が本当は就職に何を望んでいるのかを見つめ直してみてください。

「パラダイスな企業は存在しない」。決定を正しくする能力を身につけよう

就活について断っておきたいのは、パラダイスのような企業は基本的に存在しないということ。たとえば有名で安定した企業に就職したけれど刺激が少なく保守的な社風がもの足りないという感情を抱く人もいるでしょう。

それは当たり前で、大きな会社は冒険がしにくいできないし20代で刺激的な仕事はあまり回って来ません。でも安定と知名度がほしかったのならそこで頑張ろうと考える方が賢明です。また自らが成長できる環境を重視して就職し、責任ある仕事を任されやりがいはあるものの、仕事と時間に追われる毎日を嘆く人もいるかもしれません。

だからこそ就活前に自分が仕事に求めるものを明確にしておくことが重要で、そうすれば与えられた環境の中で頑張れる理由にもなるはずです。

また人生においては、たとえ情報を100%収集できたとしても正しい意思決定ができるわけではありません。また学校選びも恋人選びも全部の情報を得てから意思決定することなどは、そもそも不可能です。就職活動も同じこと。ある程度の情報と経験を基に意思決定したら、その決定を結果的に正しいものにしていく姿勢やスキルを磨くことの方がむしろ重要なのです。

就職すれば必ず壁に当たります。何のハードルもなく3年経過したという話は聞いたことがありません。そのハードルを乗り越えていくには、なぜその会社を選んだのかをしっかりと自覚しておくべきです。

壁にぶつかることを恐れるべきではありません。自分がチャレンジしている証拠ですし、乗り越えることで自分を次の段階へ高めるチャンスでもあるからです。壁にぶつかったときはむしろ「よし来たぞ」と受け止めて前へ進む。ショックを引きずっていても進化はありません。

時代を超える2つのスキルを鍛えられる環境に身を置こう

インタビュー写真2

これから求められる人材に関しては、予想するのは難しいというのが正直なところです。これから先の未来も仕事のあり方も見通せない以上、専門的な知識やテクニカルなスキルは陳腐化してしまう可能性があります。

そのため、時代を超えて通用するスキルを身に付けておくことが必要ではないでしょうか。時代を超えるスキルは2つ。ひとつはコンセプチュアルスキル(戦略やビジョンを練ったり問題解決を図る能力)。つまり、そのベースとなるロジカルシンキング(論理的思考)の能力です。

もうひとつはコミュニケーションスキルで、リーダーシップ(統率力)、ネゴシエーション(交渉力)、コーチング(指導力)などの対人能力のことです。この2つは60年前の電話機製造プロジェクトでも必要だったスキルでしょうし、最近のスマホアプリ・ゲームを作るプロジェクトにも必要な時代を超えたスキルです。

ですから、そうしたスキルを鍛える環境に身を置くか否かが人生を左右しかねません。たとえば飲食店でアルバイトをするにしても、レジ担当よりも店長代理の方が問題解決に当たる機会もリーダーシップを発揮する場面も多いはずです。つまり人の上に立つポジションの方が自分を鍛えることができる。ですから早めにそうしたポジションに就ける仕事、企業を選ぶことも、これからのキャリア形成には大切になってくると思います。

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