人に尽くせば自分のキャリアに返って来る|企業選びも人生の選択も正解は一つじゃない

萬年さん サムネイル

VELTRA(ベルトラ) 取締役COO 萬年良子さん

Ryoko Mannen・製薬会社、外資系生保を経て1989年American Express International(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド)入社。信用管理部やCS部門、シドニー・コールセンターなどの責任者を経て2012年にアメリカン・エクスプレス・ジャパンの副社長兼日本ジェネラルマネージャーに就任。2016年に旅行予約サイトを運営するVELTRA(ベルトラ)に入社し、2020年に現職

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周囲を育て、その成長の喜びに目覚めたキャリアの転換期

自分自身のキャリアアップを追い求めてここまできたわけではありません。むしろ昇進や栄転の打診は、始めは全て断ってたくらいです。そんななか、部下や後輩の成長を手助けする喜び、人を育てる喜びに目覚められたことが、今のキャリアを築くターニングポイントになりました。

大学卒業後に就職した製薬会社から2年ほどでエクイタブル生命保険(現アクサ生命保険)に移りました。製薬会社時代の上司に誘われたことと、外資系企業の日本支社開設に興味があったのが理由です。

次にアメリカン・エキスプレスに移ったのは、勤務先が自宅から近く通勤も楽だったから。当時は仕事より家庭を大切にしようと決心したところでした。ですからこの会社で27年間も働くことになるとは思ってもいませんでした。

信用管理部に配属され仕事は一生懸命に取り組みましたが、入社から9年ほどして女性の私にマネージャーをやれと、上司に打診された時には困惑しました。外資系とはいえ信用管理部は完全な男社会でしたし、今度こそ家庭第一の生活に入ろうと考えていたタイミングでもあり、何回も打診を断りました。それでも結局、説得されてマネージャー就任を受けました。

マネージャーになって2年後、とても優秀な新人たちが入社し、「この子たちをリーダーにしたい」と考えるようになりました。その時気付いたのは、自分の力でどうこうするというよりも、この人たちのやる気スイッチを入れチームパフォーマンスを上げる方が重要だということ。それで人を育て、やる気を引き出す仕事にのめり込んでいきました。

「誰かのため」を貫いて得たキャリアップ

萬年さんインタビュー写真

その後、シドニーにあるコールセンターへ行ってほしいと言われた際も、本当にもう仕事を辞めて家庭に専念したいと思っていたので6、7回は断りました。それでも上司に粘られ、2006年にオーストラリアに渡りました。

ここでの仕事は初めのうち辛いことがたくさんありました。一所懸命にやっても自分がキャリアアップして実績を携えて日本へ帰るためだろうと悪口も言われ、誤解もされていたようです。孤独な戦いが1年以上続きました。それでも現場が少しでも働きやすくなるよう、皆の給料が上がるようにと考えて仕事に集中しました。

部下の悩みについて聞き、シフトの都合で会えない相手にはメールでアドバイスを送り、励ましました。そして、できるのに能力を発揮できていない部下は時に本気で叱り、皆でパフォーマンスを上げていくため全力を注ぎました。

そのうち周りの見方も変化しました。本物の気持ちは伝わるし、自分のためでなく周りのために尽くす姿勢に偽りがないことをわかってもらえました。それで結果的には世界中にあるコールセンターのパフォーマンスを評価する社内表彰で、東京を差し置いてシドニーが最優秀賞を獲得。職場の雰囲気も最初とは一変しました。

 日本人は周りの空気に抗って自分の考えを貫くのが苦手です。シドニーでは私も流されそうになることもありました。しかし自分が良いと信じたことは曲げないことも大切です。本物の思いなら最後には周りの理解を得られるという成功体験を、シドニーで得ることができました。

シドニーでの仕事ぶりが評価されたこともあって、今度は日本の副社長を命じられました。しかしシドニーで頑張った理由はキャリアアップや自分の評価を上げるためではなかったし、副社長についても最初は断りました。最終的には2012年に副社長になりましたが、振り返ればキャリアアップはすべて自分が望んだというよりも、人に頼まれ説得されて引き受けた形です。

萬年さんのキャリアアップの秘訣

VELTRAへの入社も自分から手を挙げたわけではありませんでした。27年間務めたアメリカン・エキスプレスを辞めて少し休んでからホスピスでアルバイトでもしようと考えていた頃に、知り合いに頼まれマネジメントのアドバイスをしに行った会社の会長さんから頼まれたのがきかっけでした。迷いましたが家族が「助けてあげられることがあるならやってみればいい」と背中を押してくれたので決断できました。

VELTRAは「関わる全ての人達と共に持続的に成長する」ことを企業理念の一つに掲げていますし、行動指針には「共に活かし合う精神でグループ力を高める」ことや「人間的なふれあいを大切にし、全ての人を尊重する」ことを挙げており、自分のフィロソフィーに一致していたことも好感を持ちました。

自分の思いは常に、人を助けたい、困っている人に手を貸したい、若い人の成功を喜びたいというものでした。振り返ってみると、それが自分の成長の原動力でした。人のためにと頑張ったことが、結局、自分の成長となって返ってきました。ですから、そうした場を与えてくれた会社や上司にも、成長のエネルギーとなる喜びを与えてくれた部下や後輩たちにも感謝しかありません。

求められる人材像はG・P・S

これからの時代に求められる人材像について、大切な要素はG・P・Sだと考えています。つまりGlobal(グローバル)なマインドセットを持ち、Positive(ポジティブ)に考え、Simple(シンプル)に行動することです。

グローバルであるには英語が堪能でなくても海外の経験がなくても構いません。インターネットで世界とつながっている現在、グローバルに学ぶことはできますし勉強の材料として書籍もあります。これからの時代は、環境についても持続可能性についても地球人としてグローバルに考えること、志向がグローバルであることが重要です。

ポジティブ思考は、もともとがポジティブでない人も行動変容によって変われます。変わるためのトレーニングメソッドもあります。今日失敗しても、また明日頑張ろう。そう考えられる人に、なろうと思えばなれるはずです。

シンプルに行動すること。これはやる前からできない理由を考えてしまう日本人は苦手です。やってから考える国の人たちの行動はシンプルで、まずはやってみる。日本人はやる前に、たとえば35項目の課題を見つけて心配します。しかし事を始める前には2項目目すらどうなるかわからないわけで、まして35項目全部を心配したって始まりません。

求められる人物像GPS

ファーストキャリアとしての就職先を選ぶ際には、当然のことながら自分のやりたいことや将来の夢につながるかどうかが判断基準になると思います。ただし希望した部署に配属されないことや、仕事の中身が想像と少し違うことはありがちで、そこでどう対応するかが重要になってきます。

想像と違ったからといってすぐに投げ出さないこと。仕事を始めたばかりで見えていないこと、時間がたって納得できることもあるのが当たり前なのですから。そこに至る前に諦めるのはもったいないでしょう。どんな企業にも何か学べることを見つけられるはずです。

目の前の仕事に一所懸命に取り組み学ぶことで道が開けることもあります。もちろん辞めてしまう選択肢も否定しませんが、自分のライフスタイルや身体の調子、そういったもろもろの状況が許せば、生活と仕事の全体バランスを見極めたうえで、3年間は修行だと思って仕事を頑張ってみるのも方法だと思います。

また、企業選びにあたって企業理念やフィロソフィー(哲学)は参考になるでしょう。良い理念を掲げる企業には優れた人が集まってきますし、理念がきちんと具現化されているか否かは、少し調べるか先輩社員に聞けば分かります。

それから、意外に信じられるのは会社に触れた時の動物的直感です。直感的に「いいな」と感じられた企業とは相性が悪くないはず。会社に流れている空気感、社員が醸し出す雰囲気は案外重要なものです。

また、女性の立場でアドバイスするならば、女性が働きやすい環境に行ったほうがいいと思います。たとえば、女性が部長や役員を務めている企業の方が働きやすい傾向はあります。なぜなら、働く女性にとって活躍できるか否か、職場環境が重みを持っているのも事実だからです。

日本の働く女性は世界最強です。どの国にも優秀な女性は多く、長く外資系で働いた私の実感として女性の優秀さに疑いはありません。日本の女性はそれに加えて、人をケアする心遣いもできるし周りに対する思いやりの点でも優れています。 

かつてオーストラリア人の上司に「リョウコ、日本の女性はすごいね」と感心されたことがあります。よく働くしレポートを書かせれば上質で、能力そのものも粒ぞろい。グーグルで人事部門の幹部を務めたピョートル・フェリクス・グジバチ氏の著作『ニューエリート グーグル流新しい価値を生み出し世界を変える人たち』にも、日本女子最強論に近い指摘があり「やっぱり、ほらね」と納得しました。

選択肢はいろいろ、正解を決めつけないで

男女を問わず若い人たちには「マジメすぎなくて良いんだよ」と言いたいですね。就職を失敗しても、仕事で失敗しても、深刻になりすぎる必要はない。世の中が急速に多様化するなかで、自分の思い通りの生き方ができるとは限りません。だから「こうだ」と決めつけすぎずグレーゾーンも認めれば良い。何事にもいろいろな選択肢があることは覚えておいてください。

自分の力が及ばないところで重大な変化が起こることもあります。新型コロナウィルスの世界パンデミックは、世界中で社会のあり方を変えてしまいました。所属する会社が買収されたり家族を取り巻く状況が急に変わることもあり得ます。だからこそ、突き詰めて考えすぎず、常に他にも選択肢があることを気持ちの余裕として持っているべきです。

特に、ファーストキャリアでつまづいたとしても、あまり気にしなくて良い。65歳や70歳まで働くとして残り何年ありますか。20代で失敗したって何とでもなります。目の前の仕事に一所懸命に取り組んで勉強を怠らなければ、きっとなりたい自分になれます。「こうでなければならない人生」はないのです。

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取材・執筆:高岸洋行

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