広い視野×専門性でキャリアを切り拓け|アンテナを高く張って社会を見渡そう
あんどぷらす 代表取締役 望月 誠さん
Makoto Mochizuki・大学卒業後、在学中に入り浸っていたオートバイ用品店に就職。趣味でホームページ制作を始める。その後2000年頃から個人事業主として子供服のオーダー販売を開始。自ら制作し運用していたECサイトが評判となり、Web制作の道へ。2012年にあんどぷらすとして、法人化。幅広いIT・Web業界の中でも、ECサイトに特化し、専門性を高めることでキャリアを展開してきた
興味の赴くままにキャリアをスタート
大学時代は経営情報学科というところで、多少PCの勉強をしていました。今振り返ると、それが今のキャリアに結びつくきっかけの一つにはなっていますが、成り行きの方が大きいですね(笑)。興味の赴くままに進んできました。
大学卒業後はインターネットの黎明期。1995年にWindows95が発売されると、一般への普及も格段に進んでいったことを覚えています。さらに1996年のYahoo!Japanのスタートは大きなインパクトがあり、自分でも好奇心からホームページ(HP)を作り始めました。
2000年になりフリーランスとしてネット販売を始めることとなりハンドメイドのデザイン性の高い子供服を販売すると、大変好評を得ました。当時はまだ新しかったドロップシッピングでビジネスを展開し、かなり人気が出たんですよ。
この経験の中で、現在のアマゾンや楽天のようなインターネット上のショッピングモールを構想したこともありましたが、商才が足らず実現には至りませんでした(笑)。
何かを始めるときには興味関心のアンテナを高くはって、恐れずに進めば良いと思います。
私も趣味の一環としてホームページを作り始めた頃には、これがビジネスになって、自分のその後のキャリアになるとは思ってもいませんでした。人生はどこでどんなターニングポイントがあるかわかりません。世の中を見渡して、自分が面白そうだと思うことに手を出してみるのは無駄ではありませんよ。
技術を磨いて一点突破を狙え
子ども服のECサイトが好評で、その後EC構築を仕事として手がけるようになりました。もちろん自分はゴリゴリの理系というわけでもなく、多少の基礎知識はあったものの興味関心だけでやってきたので、ITエンジニアを名乗れるほどの技術はありません。そのうち、世間の人々もHPを作るようになり、Webサイトを構築することのハードルは下がっていきました。
それでもWebを仕事としていくために、自分なりに技術を磨いてきました。新しい技術が次々生まれ移り変わっていく中で、全てのジャンルで完璧を保つことは不可能です。だから自分なりに、特定分野に詳しくなって、深い理解を持って最新技術を追いかけていこうと決めました。私が専門家になろうと狙いを定めたのが、もともとのキャリアのスタートとなったECです。
より良いECシステムを築くために、みんなで改良をおこなう取り組みの中で、ツール自体への理解も深まりましたし、より利便性の高い魅力的なECを創造するスキルも高まりました。
ECサイトを作るビジネスは、顧客の望む形へとカスタマイズする手腕が重要です。ソフトやシステムに関して上っ面の理解では、顧客の要望を叶えられません。また、業界や商品ごとの特徴やニーズを抑えることも重要です。たかがECと思うかもしれませんが、ここに特化して精度と質を上げていく価値は十分にあるんです。
キャリアにおいて何かのスキルを磨いたり、専門性を高めたりするときには、一点突破を狙うというのも一つの手です。全てを器用にこなすだけでは淘汰されやすい。これだけは自分の領域だという強みを磨けば、長く活躍する方向性も見えるし、実際にキャリアを高めていくこともできます。
フリーランスから法人化へ! モチベーションを生かしたい
Webの構築、特にECサイトに強い個人事業主として10年以上仕事を続けてきましたが、少しずつ課題を感じるようになりました。
たくさん相談や引き合いをいただいて、お断りする案件も増えました。個人だからなのかはわかりませんが、発注の価格を下げられるような交渉も受けるようになりました。そして何より単純に、人手がないことで、新しいことにチャレンジしていく時間や余裕がないと感じるようになったんです。
そこで思い切って法人化し、仲間を募って一緒に仕事を増やし、深めていく道を選びました。静岡県内であれば、ECサイト構築では負けない自信がありましたし、法人になってもやっていけるだけの仕事量はあるだろうと思いました。
営業をかけることも、広告代理店の下請けになることもなく、長年続けられた11年の経験が背中を押してくれたと感じます。
次のステップに進むポイント
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もっとたくさんの仕事をしたい
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もっと高単価の仕事を得たい
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もっと新しい仕事、成長できる環境にしたい
ちなみに営業はしていなくても、発信はしていました。自分がどんなことをどんなふうに形にできるのか、興味のある人にキャッチしてもらえるように頑張っていたんです。ここに関しては法人化するにあたって強化したいと思い、広報担当者を専任で雇用しました。
「もっと新しいことをたくさんやりたい! 」と思って法人化した以上、つまらない案件はお引き受けしていません。お金になっても、面白くなさそうなものはお断りする姿勢を貫いています。つまらないという言い方は失礼ですが、自分や会社の仲間がモチベーションを持って取り組める仕事を全力でお引き受けしている、という感じです。
モチベーションを持って取り組むために、最低限仕事を選ぶ矜持を持っていてほしいです。そのためには、自分に対する自信が必要です。自分にはできることがある、やりたいことがある、だからこの仕事をするという順番で考えられるような環境・心持ち・実力を目指してほしいですね。
個性と好奇心を生かして組織運営
法人化してから、肝に銘じているのは「人の性格は変えられない、変えようとするのもおこがましい」ということ。
社員は一人ひとり個性を持った個人であり、大人であり、社会人です。これを自分のカラーに染めようとしてはいけないと思います。だからこそ採用時には人柄を何よりも重視します。自分の会社で調和して働いていけるか、そこをしっかりと見定めていますね。
さらに現在の人員体制では、細かくゼロから指導することはとてもできないので、自分で動ける人を仲間として迎えています。自分から自分のやるべきことを探せる、というのは社会人として必須のメンタリティだと思います。
自分の職能範囲でスキルを高めることプラス、守備範囲を広げるために興味関心のアンテナを張ってほしいですね。難しいことではなく、周りに興味を持つということです。
隣の人はどんな仕事をしているのか、隣のチームはどうか、自分の仕事の先はどんなフローなのか。ほんの少し意識を広げることで、見える世界は変わってくるし、行動もより意味のあるものになっていくと思います。
現在3つのオフィスがあり、メインの事務所にはイベントスペース、撮影・配信スペースも設けています。皆がやりたいことを自由に広げていけるような場を整えることが、経営者としての自分の役割です。
初めて社会に出る皆さんには、普段の生活や就職活動を通して、社会そのものをよく見てほしいと思います。
たとえば知っている会社があるとか、やりたい仕事があるとか、理想のイメージがあるのなら、その業界の競合他社やそこにかかわる他の職業についても目を配ってみてください。自分の視野の外に目をやった時、新たな気づきがあり、より具体的で立体的なイメージが生まれると思います。
アルバイトは良い経験になりますね。小さな仕事の裏にかかわるさまざまな立場の人がいて、どうやってかかわり合っているのか、お金はどう動くのか、見えてくるものは大きいと思います。インターンも少し長期のものに参加すると、目指す世界の周りが見えてくるはずです。学校の外にある社会が、どんな構造になっているのか、興味を持ってほしいですね。
やりたいことがない場合には、嫌いではなく最低限の興味が持てることの中から、キャリアへとつながるものを見出してみてはどうでしょう。今熱中できることではなくても、5年後に楽しく働けているかを想像するのも良いかもしれません。目先の収入が良くても、興味の薄い仕事を適当にやっていると結局長期的には信頼を失い、損をする羽目になります。
想像力を創造力へ
就職活動中も、働き始めてからも、自分がやろうとしていること・やっていることが一体なんなのかは、立ち止まって考えてみる必要があると思います。自分がした仕事でどんな影響が及ぶのか、周囲の人やお客様、家族、社会に対しての波及効果に思いを巡らすんです。良いこともあれば、悪い影響もあるかもしれません。
新型コロナウイルス感染拡大が進む中での給付金詐欺が問題になりましたが、自分のやっていることがなんなのか、構造や仕組み、本質を考えれば、手を出すはずがありません。言われたことをただやるのではなく、何事も周りを含めて全体像を想像してみるのが重要です。
想像と好奇心を持つことで、創造へたどり着けます。周りに関心を持ち、全体のことを考えることが、他者へのリスペクトの本質だとも思っています。その姿勢さえ持っていれば、きっと自分らしいキャリアを築いていけるんじゃないかな。
取材・執筆:鈴木満優子