本気で行動すればキャリアの扉はこじ開けられる! 特別な夢や起業の意思もなかった学生が経営者になった理由

Cheer(チア) 代表取締役 平塚 ひかるさん

Hikaru Hiratsuka・1992年生まれ。立教大学在学中の2013年にアイ・パッションにインターンとして参画。すぐにトップセールスの実績を上げる。大学を卒業して正式入社した3カ月後には、22歳で最年少執行役員に就任。マーケティングや開発、広報、人事などに幅広くかかわり取締役になるも、担当していた事業を買い取り2020年7月にCheer(チア)として起業、現職

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「本気で日本を変えたい」という想いがキャリアの軸となった

もともと私は、できるだけ働きたくない、と考えていました。学生だった頃の働く人のイメージは「新橋の飲み屋で会社の愚痴を言っているサラリーマン」でしかなく、社会人になることや仕事には希望も夢も感じていませんでした。

高校は地元の進学校でしたが、校風に似合わないヤンチャな自由人として目立っていましたし、大学の1年前期に取れた単位は4つだけという状態でした。

そんな学生でしたから、いつかは働かなくてはならいと分かっていたものの、仕事に何のイメージも湧かず、唯一分かったのは地元でアルバイトした経験があるファミリーレストランの仕事くらいでした。

そんな私が現在では、ベンチャー企業や成長企業に特化した就活サイト「CheerCareer」(チアキャリア)を運営するCheer(チア)という会社の代表取締役を務めています

2年前に独立・起業したのですが、それは日本のキャリア教育や若者を取り巻く就活環境を本気で変えたいと考えたからです。

日本にはキャリア教育が存在しません。ほとんどの若者がかつての私と同じように、世の中に存在するさまざまな仕事や職種に関する知識もなく、職業観も持ち合わせず、誰にも教わらないまま社会人になっていくのが実情です。

そのため、いざ就活となっても何もわからず「営業って大変そう」「プランナーはかっこいい」「マーケティングってキラキラしてる」といったレベルで、単なるイメージをもとに企業を選んでしまう「イメージ就活」になってしまいがちです

せっかく就職しても想像とのギャップがあって3年以内に35%が辞めてしまう状況が生まれるのも、「イメージ就活」をおこなっているのが理由でしょう。

辞めること自体が悪いわけではありません。しかし、キャリアアップを目指す転職なら良いのですが、辛いから、続けるのが無理だからといった理由で辞めてしまうのはもったいない。そんな風になってしまうのは、働くことについて考えた経験がないからです。

しっかりとしたキャリア教育が存在しない日本を「本気で変えたい」と考えたことが、私のキャリアの軸になります

「大学3年になってから」では遅い! 世の中の仕事や職業について考えよう

Cheerの仕事を通じて日本のキャリア教育を本気で変えていくつもりです。ただし、まだまだ道半ばです。そこで今、現在の若い人たちにアドバイスできるとすれば、それは、とにかくなるべく早く仕事や職業について触れたり考えたりしよう、ということです。

大学3年になって就活を始めよう」ではなく、世の中にどのような仕事、職種、会社があり、働くにあたってどのような知識や能力が必要とされるのか、少しでも早くから意識し情報を集めるようにしてほしいということです。

小学生の人気職業ランキングが1位会社員、2位Youtuber、3位サッカー選手となるのは、その職業を知っているからに他なりません。しかし、実際には同じ会社員でも、経営者とマーケティングとエンジニアとでは業務内容が全然違い、一つには括れません。日本のキャリア教育の不在がこんなところにも表れているわけです。

世の大人たち、日本の20代から50代の働く大人たちに呼びかけたいのは「もっと若者に伝えていこうぜ」です。若者たちに仕事・職業についてのいろいろな選択肢があることを教えてあげるのは大人側の役割です。

人生を賭けてインターンに挑戦。大学2年でキャリアの扉をこじ開けた

遊んでばかりの学生時代。仕事に目覚めたきっかけは、大学2年の時にたまたま目にしたアイ・パッションという人材系ベンチャー企業の求人広告でした。軽い気持ちで採用説明会に行ってみると、代表者の話が心に突き刺さりました。ヒトの成長や夢を実現し働く、ワクワクがある世の中を創る、という企業理念を聞き、鳥肌が立つほどゾクゾクした覚えがあります。

それで2学年上の学生たちに交じって採用選考を受けて内定をもらいました。すぐに働きたいのに卒業まで2年もあったため、内定者インターンを志願しました。ところが会社からは「1学年上のインターンも始まってないし受け入れ体制の問題もあるから1年間は遊んでこい」と言われました。

当時はまだ知られていない小さな会社だったアイ・パッションに、私は人生を賭け、周りの大反対を押し切って骨を埋める覚悟で仕事をしたい、と申し出ているのに、何を言っているのだと怒りすら感じました。

また、働かせてもらえないのは戦力として認められていないからだと思うと腹立たしくもあり、何としてもインターンを始めてやると、自分もムキになりました。

その足で会社近くの不動産屋に飛び込み「ボロ屋でも何でもいいから半径300m以内の物件を探してくれ」と頼み込み無理やり賃貸契約し、改めて「インターンをやらせてくれないと野垂れ死ぬ」と半ば脅して大学2年からフルコミッションでのインターンとして働く了解を受けて、週6日、週7日のスケジュールで仕事をしていました。

人生において自分次第でこじ開けられる扉はあります。就活の扉もそうです。たとえば「採用を受け付けていません」と閉じられた扉でも、飛び込んでしまえばこじ開けられる可能性はあるはずです。

負けず嫌いの性格でトップセールスに

大学には茨城の実家から通っていました。それなのにインターンを始めるにあたって、会社から半径300mの住まいにこだわったのは、死ぬ気で働くつもりだったからです。

始発も終電も関係なく、すぐに帰って寝て、また起きてすぐに会社に行って、仕事にフルコミットするためには会社の近くに住むのが一番だと考えたからです。それ以降もビジネス人生で会社から遠い場所に住んだことはありません。

やるとなったら何でも全力というのが私の性格です。負けず嫌いという面もあります。仕事に目覚めてからはフルに働き、一切遊ばなくなり仕事と勉強を両立させ大学を卒業しました。会社での営業成績でもトップになりました。たぶん働きすぎのせいだったと思いますが、耳から血を出して突然倒れたこともあります。それくらい仕事にフルコミットしてしまう性格です。

負けず嫌いに関しては、幼稚園の運動会の障害物競走でちょっとしたアクシデントが理由で1位になれなかったことが納得できず、「運動会をやり直せ」と泣き喚いたことを覚えています。小・中・高の学業成績も負けず嫌いを原動力にトップクラスを維持しました。

会社での営業成績もトップでした。営業には「(自分が売っている)サービスへの自信」「営業力への自信」「自分自身への自信」「会社への自信」の4つの自信が欠かせません。私にはその4つがあったから営業で成功できたのだと思います。

営業で大切にしていた4つの自信

  • サービスへの自信

  • 営業力への自信

  • 自分自身への自信

  • 会社への自信

入社3カ月で執行役員に就任

大学を卒業して正式入社すると同時に営業の責任者となり、正社員になった3カ月後には執行役員に任命されました。入社3カ月で先輩や上司だったほぼ全員が部下になってしまったわけですが、この人事を決断した会社もすごいと思います。

就職の形で言えば、新卒でベンチャー企業に就職したということですが、私自身はサラリーマンとして働いたつもりは微塵もありませんでした。まだ学生でインターンだった頃から代表に向かって「この会社が好きな気持ちは代表よりも強い」「会社のことを代表よりも考えてアクションしている」と言い放っていたほどです。そんな私を会社が信じてくれたのかもしれません。

もちろん、失敗も経験しました。上司や代表に無断で事業のビジネスモデルを変えて勝手にプレスリリースしてしまい、取引先の大手企業を巻き込む大問題になったことがあります。もちろん自分としては会社のために良かれと思ってしたことですが、少しネジが外れた部分が自分のなかにはあるのかもしれません。

その取引先の大手企業の経営陣のなかに「平塚は面白い」と受け止めてくれた人物がいて、その方があちこちに頭を下げて収束に当たってくれたおかげで大事には至りませんでした。

アイ・パッションがベンチャー企業だったこともあって何でもするのが当然な雰囲気で、私の仕事も営業からマーケティングや開発、広報、人事へとどんどん広がりました。役割として与えられたわけではなく、自分にとってその時に必要だったから仕事が広がっていったというのが実態です。

もっとサービスをこうしなくては」と考えると、広報戦略も変えなくては、採用戦略も立てなくてはという当たりから派生して、マーケティングも重要だ、同時に開発のディレクションも必要だ、と次々と範囲が広がっていったわけです。

日本のキャリア教育を変えるために起業

アイ・パッションの一員として担当し、全力で育ててきたパッションナビ事業を自分で買い取って独立することに決めたのは入社7年後の2020年でした。Cheerを設立し、買い取った事業もCheerCareerに名称変更しました

ずっとアイ・パッションに骨を埋めるつもりで起業などは1ミリも考えずに働いてきましたが、事業を買い取って独立した理由は、本気で日本のキャリア教育を変える覚悟を固めたからです。

ヒトの人生をより豊かにしてワクワクさせたい、そのためには人生の時間の多くを費やす仕事を皆が充実させてほしいという理念のもとに全力で働いてきましたが、皆の仕事を充実させるには結局、キャリア教育を充実させる以外にないとの結論に達しました

これまでの日本に存在しなかった取り組みをするわけですから骨が折れますし、ゲームチェンジャーとして先人が築いた市場をある意味で壊しに行かざるを得ないケースもあり、摩擦もある。時代のトレンドや学生の志向にも逆行するビジネスを泥臭く勧めていく覚悟です。

ただ自分が好きでやりたかったことですから、「スピード感」や「攻めている感」も全然違いますし、楽しくて仕方ないです。

これまでの経験から得た、自分が持ち合わせている仕事に関する知見は全てキャリア教育の浸透と普及のために捧げています。ですから企業経営者や新入社員、学生に対して組織や採用活動、仕事で活躍する方法などに関する無料講義をおこない、時間をかけて、人力で、泥臭く、伝えるべきことを伝える。いまはそうした仕事に精力を傾けています。

独立・起業して思うこと

  • 日本のキャリア教育を変えたい

  • 攻めてる感も仕事の楽しさに

  • 経験や知見の全てを注ぐ覚悟

仕事もキャリアも選択肢は無数にある

若者や就活生にアドバイスしたいのは、「イメージ就活」に陥らないため、仕事には多くの選択肢があることを知ってほしいということ。日本では「イメージ就活」が当たり前なので、私もファーストキャリアを選択する際には周囲の大反対を受けました。

両親も大学の友人も教授も反対でしたが、その理由は「他に大手の内定をもらったのに、なぜ知られていないベンチャーを選ぶのか」「一番小さい、一番無名な会社になぜ」「情熱だけではメシは食えないよ」「ベンチャーは安定してないよ」といったものです。会社の中身を知った上での反対ではなく、あくまでもイメージ上の反対なわけです。

大手企業とベンチャー企業のどちらが良いかといった視点ではなく、さまざまな選択肢があるということを理解してほしいです

ベンチャーの中にはPRするお金はないけれど、熱い思いを持った企業ワクワクできる理念を掲げる企業もあることや、知られていないだけで素晴らしく魅力的な企業があることは、Cheerのビジネスを通じてしっかり伝えたいと思います。もちろん東京だけでなく地方にも素晴らしい企業、素晴らしいキャリアのチャンスがあることも合わせてです。

幅広い選択肢があるなかで、どのように企業や仕事の情報を集めるべきか。日本では、多くの企業が採用活動をおこなっているタイミングにさまざまな情報が出回るため、自身も積極的に動き出すことで、より効率的に情報を集められることでしょう。

ただし、必ずしも自分の卒業年次が対象になってから、情報取集を始めなくてはならないというわけではありません。2022年の時点で、いち早く25卒の学生や26卒の学生が動いても、とがめられない時代になってきていると思います。

大学1年生だから、4年生だからと差別される時代でもありません。情報収集は早いに越したことはないと思います。 

キャリア選択についての助言

  • キャリアの選択肢は幅広く数多い

  • ベンチャーvs大手企業といった構図ではない

  • 大学1年生の就活もあり

企業を選ぶ際は自分の直感にも耳を傾けて! 

企業選びに当たっては自分の直感も信じてほしいです

人間の直感の86%は当たると言われています。若者と言えどもこれまで生きてきた中で、数えきれない選択と決断を積み重ねてきているはずです。その蓄積は馬鹿になりません。

意識的か無意識かに関わらず、「なんかいい感じ」「なんかヤバイな」といった直感は案外頼りになるものです。

Cheerには33項目ものクレドがあって、これが意思決定の軸になっています。「挨拶は自分から」「ありがとうとごめんなさいを大事にする」に始まり、最後の2つが「ユーザーの喜びを自分の喜びとする」と「企業の成功を自分の誇りとする」です。

会社として何かの決断に迷ったり困った際には、このクレドに立ち戻って考えるようにしていますが、個人としても自分にとっての判断軸をあらかじめ考え抜いて用意しておくというのも一つの方法かもしれません。 

取材・執筆:高岸洋行

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