直感と好奇心を広げて理想のキャリアを掴もう|社会を良くする主体的意識が大切

ファブリカコミュニケーションズ 代表取締役社長 谷口 政人さん

Taniguchi Masahito・1992年に愛知県春日井市にて個人事業として自動車板金塗装業を創業。1994年に法人化。中古車販売、板金塗装オークションサービスの「ファブリカ」などを手掛けたのち、現在は中古車販売業務支援やSMS配信等法人向けの情報通信サービスを中核に事業を展開。2021年4月に東証JASDAQ(スタンダード)・名証第二部に上場

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変化の瞬間を見逃さないことが成功を掴むための秘訣!

創業から30年余りを振り返ってみると、常にチャンスに敏感でいること、ゲームチェンジの波に乗ろうとする姿勢によって、今のキャリアが築かれたように思います。

さまざまな小さなビジネスをしていた私が、現在に至るまでのキャリアを歩み出した最初の転機は、22歳の時。比較的少額の設備投資でスタートできる、自動車の板金塗装業から始まり、その後車検代行や整備、中古車販売などにも事業を拡大していきました。

次の大きな転機になったのが、Microsoft Windows 95 (マイクロソフト ウィンドウズ 95)の発売です。これはすごいものが誕生したと驚いたことは未だに覚えています。

それまでのビジネスでは、電話とファックスで連絡をしていて、車の画像を送る際には衛星通信を使っていました。それが、コストも時間も比べ物にならないくらい小さくなる。これは、ビジネスのゲームチェンジが起こると確信しました。

そこから車事業×ITというサービスを提供することを考え、「車選びドットコム」の開発・販売に踏み出していきました。

当時、当社にはITのスキルも人材もなかったので、当初は企画や要件定義だけをおこない、開発は外部に依頼していました。しかし、このサービスをさらに発展させるためには開発力が必要不可欠だと感じ、後に協力企業を買収して自社開発を可能とする環境・技術力を取り込んでいます。

インターネットとはどんなもので何ができるのか、その頃は大手企業でさえ懐疑的だった時代ですが、そのポテンシャルを信じて飛び込んだことで今につながるキャリアが築かれました。

もちろん私もインターネットを深く理解できていたわけではありませんが、「すごいことが起こる」という直感に従って走ってきたわけです。

大きなゲームチェンジはそれほど頻繁には起こり得ませんが、チャンスを手にしたら全力投球する。それによって得られるものは決して小さくないはずです。これからの時代にも、いつかゲームチェンジの瞬間はやってくると思っています。

頼っていくべきは自分の直感と好奇心

長く事業を続ける中では、もちろんピンチも何度がありました。若い頃には、後先を考えず全てを投入していたのが裏目に出て、会社が潰れそうなことも1度や2度ではなかったですよ。今考えれば事業計画の甘さがありありとわかりますが、当時はリスクをコントロールしきれていませんでしたね。

そんなピンチの時には、ありとあらゆる手段を講じて生き残りました。できることはなんでもやりました。新たな事業を始めるのは大変なことですが、これまでやってきたことを止めるいらないものを削るのはもっと大変です。

成長より撤退の方が、難しい判断を迫られる局面と言えるでしょう。でも、遅くなればなるほど負けが大きくなるのは自明のこと。できる限り早く、適切に判断するために頼りにしていたのが“野生の勘”です。違和感と言っても良いかもしれません。何かおかしい、という気づきが、会社を救ってくれました。

こうした直感は、経験の中で培われたものです。一気に減らすのか、どこまでやるのか、それで収束するのか。冷静な分析の前に、経験から導かれる直感も大切にすべきだと思っています。

直感は決して馬鹿にできなくて、個人的にはファーストキャリアも直感で選んで良いんじゃないかと思うくらいです(笑)

なぜならどんな業界・企業であっても、分野こそ違えど、それぞれのやり方で世の中に貢献している点は変わらないからです。だから肩肘を張らず、まずはご縁があったところに進んでみてはいかがでしょうか。ただ、名前やイメージだけに憧れて見栄は張らない方が良いと思います。

どんなフィールドであれ、世の中に出ていくのであれば、好奇心だけは失わないでほしいですね。

知的な関心、そして行動力がその人の人生を大きく変えていきます。そんなこと簡単だと思われるかもしれませんが、歳をとると新しいことへの関心や、一歩踏み出す行動力がどんどん衰えてしまうんです。同世代を見ていると、老化を感じ我がふりを直すのですが、好奇心が強い人ほど若々しい気がします。

私は新しいことをして、自分のワクワクを枯渇させないようにしています。友人に誘われて、ウェイクサーフィンやトライアスロンを始めたり、息子と一緒にスノーボードをしたり。リアルな出会いが興味関心の幅を広げてくれるように思います。突然新しいことにチャレンジできないという人は、友人や仕事の人、SNSでもいいので、新たな人間関係を築くことから始めてみるのも良いでしょう。

学生時代の友達に会うのもおすすめです。学校を卒業し、異なる場所で違った活躍をしている友人に久々に会えば、今までにない新たな視点を得ることもあります。人と会い、話す。それが好奇心を育み、キャリアも広げてくれます。

意図的に自分に負荷をかけて成長せよ

私は創業者で転職経験がないので、あくまで経営者の立場から思うことにはなりますが、転職は積極的には勧めません。これまでに見てきた数多くの転職が、あまり意義のあるものには思えなかったからです。

特に、会社が成長しているのに自分自身が成長できていない・追いついていない時には、転職したとしても良いキャリア形成にはならない気がします。今いる会社で得られるものをまるで得ていないのに、転職したところで、状況が好転するとは思えませんよね。

会社が成長しているのに、どうしても自分が成長できないと感じるなら、意図的に自分への負荷を高める必要があります。ある程度のプレッシャーを乗り越えた先に、成長の実感があると思います。少ししんどいミッションや、頑張り時をやり切れば、単なる作業ではなく、経験として身につくものがあるはずです。経験が成長の礎となります

とりあえず転職を選ぶのではなく、なぜ転職したいのか今いる会社の環境はどうなのか成長が望める場所かを振り返ってから動いても、遅くはないと伝えたいです。

自分が寄りかかる社会をより良くする主体的な意識を持とう

今後人口は減っていくとしても、日本のマーケットは依然として比較的大きなものであり続けるでしょう。どの業界も全て根絶やしになることはないと多少楽観しています。そんな中で活躍できる人材は、自分から発信し稼げる人だと思います

昔は組織がなければ世の中への発信が難しい時代でした。信用を得て、ビジネスを作るのも組織。何をやるにも企業を中心とした組織が必要とされました。しかし、インターネットが普及した今、個人で発信し、ビジネスを作っていくことも容易です。

だからこそ、個人ではなく組織に属して働くとしても、個人の能動的な取り組みは必須です。組織を率いる立場としては、個人でなんでもできる世の中で、組織であることのメリットを最大化しなければと思っています。

当社が目指すのは、全ての人にデジタルの恩恵が行き渡ること。組織の力を生かしたBtoBの領域で、幅広くDXを進めていきたいと考えています。BtoBはBの先にたくさんの個人のお客様がいます。言うなれば、顧客の先に社会があるということです。自分たちの商品やサービスによって、少しでも社会を良くしていきたいと思いますね。

自分の人生を生きるということは、人に依存せず、社会に依存することだと思っています。だから社会を良くすることは、自分の人生を良くすることにもつながります。自分が寄りかかれるような社会を、自分の手で少しずつ変えていく。その営みを続けていける場所でキャリアを築くことが、働くモチベーションにもなるのではないでしょうか。

取材・執筆:鈴木満優子

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