就職氷河期の内定ゼロからの逆転|人との出会いで開けた代表取締役への道
ノットグローバルホールディングス 代表取締役 松澤 崇光さん
Takamitsu Matsuzawa・1979年生まれ。大学卒業後、OA機器販売会社に就職。その後、2004年にノットへ入社。新規事業開発を託され、自動車輸送代行を中心とするフォワーディング事業を軌道に乗せる。2007年にはこの事業を独立させノットグローバルを設立。2015年にはノットグローバルホールディングスを設立し、現職
就職氷河期に直面したファーストキャリア。ハードな仕事もやりがいを持つことで楽しめた
私のキャリアのスタートは順風満帆とはほど遠いものでした。
私が地元群馬の大学を卒業した2000年代の初めは就職氷河期だったこともあって、まるで内定をもらえず、就職先が決まらないまま卒業を迎えてしまいました。
しばらくはフリーター生活を覚悟しようかと半ば諦めかけました。それでも運良く就職雑誌で見つけた東京のOA機器販売会社に採用され、無事就職することができました。
就職氷河期の影響で苦労しましたが、ようやく私のキャリアがスタートしました。
もともと営業職が希望だったため、企業向けにコピー機などを販売する仕事は性に合っていました。しかし、仕事は自分が想像していたよりもとにかくハード。朝7時半から夜の10時、11時まで普通に仕事をし、時には夜中の2時、3時まで働いていましたね。
それでも続けられたのは、いろいろな人に会える仕事が好きだったからです。
会社の営業方針で、アポを取るのは決裁権のある相手に限られており、営業に行ったその日のうちに契約を取ってくる決まりでした。そのため、会うのはだいたい中小企業の社長さんや部長さん。そんな人たちと会って話ができるのが楽しかった理由です。
どんなにハードな仕事でも、自分の中でやりがいを見つけることで、楽しく働けるようになると思います。
自分を評価してくれる経営者・会社との出会いは大切にしよう
キャリアのターニングポイントの一つが谷川代表との出会いでした。
OA機器販売会社の営業先の一つがイベント企画や企業プロモーションなどを手掛けていたノットで、コピー機を売り込みに行って谷川佳朗代表と知り合うことになりました。谷川代表とは息が合い、定期的に食事をさせていただけるようになり公私とも相談に乗ってもらう間柄になりました。
その頃、私は結婚を計画しており、結婚後は早く子供を作って幸せな家庭を築きたいと思うようになっていました。そう考えると月曜から土曜まで仕事漬けの生活とは両立できそうにないと考え、仕事を変えることを決心。自分で仕事を始めようかと思い立ちました。
そこで谷川代表に、「独立を前提として私に投資してください」と相談すると「何がやりたいのか」と質問を返され、自分が何をやりたいのかが分かっていないことに気づきました。「だったら一旦ウチで働け」と言われてノットの一員になりました。
前職のOA機器販売会社は年功序列も学歴も一切関係なしの完全な成果主義の世界でしたが、営業成績が良かった私は25歳にして十数名の部下を持つマネージャーを務めていました。谷川代表も私の営業力を買ってくれました。
託されたのは、会社の主力事業とは別の柱となる新規事業の開拓。同じ仕事の繰り返しが楽しめない飽きっぽい性格で、良く言えば新たなチャレンジが大好きな自分の性に合う新規事業の開拓という仕事を与えてもらい前職時代以上に生き生きと働けました。
結局、私のキャリアと人生は転職を機に良い方へ大きく変化していきましたが、ノットの谷川代表との出会いがすべての始まりです。前職時代に200人以上の企業経営者と会っていますが、間違いなく私にとって最も重要な出会いでありターニングポイントとなったのが谷川代表との出会いでした。谷川代表からは冗談めかして「僕のおかげだね」とよく言われます。
松澤さんの転職を支えた3要素
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信頼して相談できる経営者との出会い
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25歳で十数名の部下を従えた営業力
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新たな事業への挑戦意欲
自分の「面白い」を追求したら、キャリアが付いてきた
ノットの新規事業としてフォワーディングビジネスが軌道に乗ったので、事業を独立させ2007年にノットグローバルを設立しましたが、初めは社員3人のみ。私も無役で営業に駆け回りましたが、現在は社員95人、売上高61億円まで成長できました。
2015年に事業拡大を目指すためノットグローバルホールディングスを設立し、ノットグローバルの事業を移管することになり、その時点で私が代表取締役に就任しました。代表取締役を目指していたわけではなく、自分が面白いと思える仕事を追求してきた結果です。
面白いと思えるからこそ仕事を頑張れる。頑張れるからこそ結果も出る。結果が出るからこそ会社内での評価も上がり、さらに面白い仕事、大きな仕事を任される。その好循環に乗れたからこそ代表取締役まで辿り着けましたが、出発点は自分にとっての「面白い」を大切にして仕事をする姿勢でした。
いずれは株式を上場したいとは思いますが、タイミングを含めてまだ検討段階です。もう少し短期的な目標として来年は国際航空輸送のライセンスであるIATA代理店の資格を取得して航空会社と貨物輸送を直接取引できる体制を整えます。もちろん、それが自分にとって面白いチャレンジだと思うからです。
小さなこと目先のことが会社選びのきっかけだっていい
就活において会社選びを難しくしている理由の一つは、企業側が就活生に誤ったイメージを発信しがちなことです。嘘とは言いませんが、現実とは異なるイメージを発信している企業は少なくありません。
とくに大企業の場合、仕事の幅もそれだけ広く、就活生が期待を抱いた希望の部署や職種で働けないことも多いのが現実でしょう。大企業に入ったものの、やりたかった仕事ができなくて辞めて当社へやってくる転職組もいます。
会社選びの第一歩は、自分が本当にやりたいことを知ること。それが一番大切です。やりたいことが見つからない人もいるでしょう。だったら「お金が欲しい」や「休みが多い仕事がいい」、あるいは「遊びたいから渋谷で働きたい」、「カッコイイ人、カワイイ人が多い職場がいい」でも構いません。
小さなことや目先のことだって、会社選びのきっかけになります。私自身、最初の職場を選んだ際には将来設計はなく、あまり深い考えもなしに就職したことは説明した通りです。大切なのはその先。出発点がどこかよりも、どこへ到達できるかが重要なのだと思います。
また、会社選びの際、就職の窓口として会社の顔となる人事担当者、採用担当者を観察することでいろいろな情報を得られるはずです。
採用担当者はその会社の顔として就活生と接する存在です。つまり、採用担当者がどういう人物かを見極めることが企業を選ぶ重要なヒントとなるでしょう。
では、採用担当者を見極めるにはどうするべきか。それは、遠慮せず採用担当者に質問をすることです。
たとえば「会社の好きな点は? 」「好きな上司はどんな人? 」「あなたの目標は? 」など。企業に関する採用担当者の主観を問う質問に対してどう答えるか。正直に答えてくれるのか、嘘をついて誤魔化すのかは、その採用担当者だけでなく、企業を判断する材料になります。
世の中のトラブルの99.9%はミスコミュニケーションからと覚えておこう
私が採用したいと考える人材は、物事を正直に伝えられる人材です。分からない事柄があれば格好をつけずに「分かりません。教えてください」と言えること、失敗したら「間違えてごめんなさい」と率直に言えることです。
なぜなら、世の中のトラブルの99.9%はミスコミュニケーションが原因だからです。「言ったはず」、「分かってくれているとばかり思っていた」が失敗の始まりで、とにかく何でもしっかり伝え合うことが大変重要です。
優先順位を判断して決定する力も重視しています。経験の少ない若い人に共通の弱点で、致し方ない面もありますが、逆にそれができる若い人材はアドバンテージになり得ます。「どうしたらいいでしょうか」と周りに頼るだけではなく、「こうした方が良いと考えてこう行動しましたが、それで良かったですか」くらいに言える人材であってほしいですね。
また成長したかったら社会人になる前か後かに関わらず、とにかく人と会うことを勧めます。先輩、後輩、同僚、同級生、誰でもいいから人と会って話をする。会って話さないと分からないこと、理解し合えないことはたくさんあります。
とくに社会人になったらそうあるべき。私は新入社員に「毎日いろいろな人と食事に行け」とはっぱをかけています。
ただし一つだけ注意点があります。それは、社内の者同士ならばともかく外部の人と会った場合には会社の愚痴は言うなという点です。聞く側は愚痴の内容より、愚痴を言うあなたのふるまいを見ます。それであなたが得をすることは一つもありません。
松澤さんが考える、もとめられる人材像
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分からないことを率直に伝えられる人材
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優先順位を判断し決断できる人材
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多くの人と会って自分を成長させられる人材
仕事とプライベートは一体という考え方もある
社会人になってからの心構えとしては、仕事とプライベートを必要以上に区別しなくて良いということ。私自身は仕事とプライベートはイコールだとさえ思っています。好きな仕事をしていれば、仕事もプライベートも等しく大切にしたいし楽しいわけで、必要以上に分けなくたって構わないでしょう。
仕事で成長すればお金が付いてくるし、お金がすべてではないにしてもプライベートでも幸せに近づけます。
あとは仕事で失敗しても落ち込まない。仕事で失敗したって死んだり地獄へ落ちたりするわけではない。落ち込んでいるのではなく、失敗してしまったことは過ぎたこととして、いまできる行動を取る。それも全力で素早く。たとえば失敗によって迷惑をかけた相手がいたならすぐに謝りに行きます。
私は気が進まないこと、やりたくないことから済ませる、会いたくない人から先に会いに行く。そう決めています。物事を後回しにして良い結果につながることは絶対にないからです。
就職をして、学生から社会人になるということは、学費や生活費などお金を払う立場から、給料という形でお金をもらう立場に変えることです。働いていない時間にも給料が発生するということです。社会人生活は大変なことも多いですが、お金をもらうからこそやるべきこともあります。
初めての社会人生活が、最初から上手くいくことはないでしょう。辛いこともあるはずです。けれども頑張っていけば格好良い大人になれるしお金も付いてくる。人生の中で多くの時間を割く仕事の面白さ、楽しさをぜひ見つけ出して欲しいと思います。
それで迷うこと、悩むことがあったら相談に乗ります。私も若い人と会えば学ぶことや吸収できることがたくさんあるので、そんなチャンスは大歓迎します。
取材・執筆:高岸洋行