おもしろくて熱中できる場所で成長を|行動が成功を連れてくる

ユーティル 代表取締役 岩田 真さん

Iwata Shin・京都大学経済学部卒業。2012年、ジャフコに入社。入社から3
年間投資部に配属され、ベンチャー投資事業に従事。2015年、ユーティルを設
立し、現職。2018年「WEB幹事」をローンチ。ホームページに関する相談窓
口として、月400件を超える相談サービスに成長させた

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誰がどうやって儲けているのか。お金の流れを知ることで世の中の仕組みを知りたかった

京都大学を卒業して、外資系の金融機関に就職したいと思っていました。世の中で一番流通しているのはお金なので、この流れを知ることが世の中を知ることにつながると思ったんです。

しかし、就活の結果は惨敗。「京大だし、受かるだろう」という甘さが、見透かされてしまいましたね(笑)。

その後ご縁があって就職したのが、ベンチャーキャピタル。未上場の会社に投資して成長をサポートしていくので、さまざまな企業と関わることができて面白そうだなと感じました

当時はスマホアプリを開発するスタートアップが全盛、ソーシャルゲームも勢いがありましたね。こうした企業に目を付ける同僚が多かったのですが、自分は性格が“あまのじゃく”なので、あえてIT技術が手をつけていない業種をターゲットにしました。

ベンチャーキャピタルは社内がライバルという面もあるので、自分なりの仮説で動かなければいけなかったこともあります。今でこそ盛んにDXという言葉が取り上げられますが、まだそんな概念がなかった時代。デジタル化されていない企業は、デジタルの恩恵を受けることで伸びる余地があると思っていました。

こうやって自分なりにさまざまな企業と関わりながら、お金の流れを理解できるようになると、誰がどうやって事業を展開しているかがわかるようになりました

名前は知っているけれど、何をどうやってお金にしているのか分からない会社、ありますよね。その仕組みも見えてきたというか。そこから、この先の未来の予想をする面白さも知れました。世の中の流れをざっくりとでも理解できたことは、大きな収穫でした。

暗い顔の大手町、笑っている顔の渋谷

勤めていたベンチャーキャピタルは大手町にあり、大手金融に勤めている会社員と思しき人々とも、よくすれ違っていました。しかし、みんな一様に表情が暗いように感じました。きっと高給を得て社会的ステータスも高いはずなのに、私の印象ですが、疲れた顔をしている人が多い印象でした。

一方で営業に出かけた渋谷のおんぼろのビルから出てきたベンチャー企業の社長は、総じて明るい顔をしている。事務所のワイワイとした雰囲気も楽しそうでした。

そんな人たちの姿を見続けるうちに、自分も起業してみたいなと思いました。面白いこと、ワクワクすること、熱中できることの方が、成果をあげられると思ったんです

社会に出るみなさんも、ワクワクを大切にしてほしいなと思います。自分は何に熱中できるのか、心が強くひかれるのか、自己分析をしてから世の中を見れば、就職先のミスマッチは減るのではないでしょうか。

世の中のトレンドや10年後の企業の市場価値は、自分ではコントールできません。だからこそ誰かの評価や指標にすがらず、自分の道は自分が決めたんだと納得できれば、本気になれるのではないでしょうか

素直に愚直な努力を。最悪を想定することでピンチにも耐えられる

起業を思い立ち、ホームページ制作を受託する会社を立ち上げたものの、ITの知識は皆無。これまでのキャリアを活かせる部分もなく、本当にゼロからのスタートでした。

幸い知り合いのエンジニアを会社に誘えたのですが、ホームページを制作するといってもいろいろな技術が必要で、彼が一人で全てを網羅しているわけもなく…。

そんなことさえ知らなかった自分を恨みながら、毎日死ぬほど勉強しました。そして働きました。どうやったら週に100時間働けるか、できる限りの時間をどうやって事業に費やすのか、真面目に挑戦していましたね。会社として、生き延びることだけを考えていました。

素直に愚直に、とにかく努力できたのは、会社員時代の苦い経験が糧になっています

入社後、テレアポをさせられたのですが、斜に構えてロクにやらなかったことがありました。「なんのためにやるんですか」と思って、行動しなかったんです。

変なプライドや中途半端な負けず嫌いもあったかもしれません。でも、やってみないと本質はわからないし、成功にも至らない行動することで初めてわかることがあり、繰り返すことで見えることがある。いやいやながらもテレアポをやり始めて、愚直に動くことの意味を知りました。

そこから心を入れ替えて、少しずつ成果も出始めました。

実は、今の仕事も「愚直な努力」が重要になっています。デジタルマーケティングなんていうと、キラキラしたイメージを抱く人も多いでしょうが、実際の業務は非常に地味です。でも誠実に、真っ直ぐに、苦労を厭わず行動し続ければ、いつか必ず報われます。小さな成功体験を積み重ねた今、真面目に行動する価値を痛感しています。

会社を立ち上げて3年ほどたつと、営業しなくても売上が立つようになり、業績も安定しました。

そのまま受託事業を続けていても良かったのですが、仕事として人に頼まれたホームページを作っているだけでは、物足りなさを感じている自分がいました。一方でお客様の声を聞いていると、ホームページを作る以前に、システムベンダーが選べないといった制作前段階の悩みが多いことに気がつきました。

そこで思い切って受託をやめて、そうした悩みをコンサルティングする新規事業に全力投入することにしました。リサーチしてみると、似たようなサービスをしている競合は少ない。規模的にも追いつけそうだと考え、方向転換したのです。しかし、しばらくの間売上は上がらず、厳しい状況が続きました。

ピンチであることは間違い無いけれど、どうにかなるなと考えていました。とりあえず会社が潰れるまでは、この事業をやり切ろうと思っていたし、潰れたら就職しようと考えていましたね。

数少ない社員も優秀な人ばかり。最悪会社が潰れても転職先は見つかるし、もし見つからなければ転職が決まるまでは自分でサポートしようと想定しました。

そこまで考えてしまえば、腹は決まります。どんな困難があっても、最悪の想定をして、その後の身の振り方を決めていれば、不安や焦りは減らすことができます。それ以上は悪くならないところまで考えてしまえば、意外と気分は晴れるものです。それでも悩んでしまうなら、寝るしかないですね(笑)。

これからの働き方。オフィスがない時代とは

コロナ禍を経て、オフィスという機能は無くなるでしょう

資料や会議室があり、作業するスペースがあるという、事務所の機能は廃れてしまうのでは無いでしょうか。そうすると、従来のオフィス機能はクラウドに代替されます。今よりもっとクラウドが普及し、経営の中枢がクラウド上に置かれるようになるのです。そこにビジネスチャンスや発想の転換が生まれてきそうです。

もちろん、“みんなが集まる・交流するための場所”として、なんらかの物理的スペースは引き続き必要とされるかもしれません。

ちなみに現在当社もリモートワークを推進していて、オフィスは割とガラガラですね。社員数は増えているのですが、コロナ禍やリモートワークの普及と重なって、オフィスの移転や拡大をしないままでいます。だから、現在のオフィスに社員が全員出勤したら、入れない状況です(笑)。

最初からこうした環境で働き始めるみなさんは、きっと新しい働き方や発想を手にすることができると思います。物理的な「会社」に拘らない、新しいアイデアを形にしてほしいです。

働くうえで常に新しい課題があり続ける環境をもとめよう

ホームページ制作の受託からスタートして、事業を拡大、顧客も増えました。そうやって会社のできることが増えるたびに、課題が生まれ、それを乗り越えることがやりがいにつながっています。フェーズが変わるたびに生まれる課題こそが、自分の原動力になっていると感じます

現在目指しているのは、株式上場。価値観もビジネスも多様化している昨今ですが、あえて上場という王道を目指していきたいです。

事業を大きくする上で、より大きな資金を調達するためにも、上場は必須の道筋だと考えています。決して簡単な課題ではありませんが、楽しみながら乗り越えて、近い将来上場を達成したいんです。これまでもそうだったように、一生懸命やるしかないし、一生懸命な人は誰かがサポートしてくれると信じています。

新しい課題があることは働くうえで自分を成長させてくれるだけでなく、やりがいにつながると思います。ぜひそのような視点を持つことも大切にしてほしいですね。

取材・執筆:鈴木満優子

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