「個の力」を磨くことが時代を生き抜く鍵となる|自分だけの企業選びの軸を構築せよ

三嶋さん アイキャッチ

moovy 代表取締役 三嶋 浩哉さん

Hiroya Mishima・1984年、京都出身。新卒でキャリアデザインセンターへ入社し、転職エージェントのコンサルタントとして、大小300社の中途採用支援および約8,000人のキャリアカウンセリングを経験。その後、経営企画マネージャーや転職エージェント事業の営業統括部長、新規事業責任者を歴任。人材採用におけるミスマッチと機会損失のない社会を実現すべく、2020年4月よりmoovy(ムービー)を創業。現在、採用動画プラットフォーム『moovy(ムービー)』を運営

ファーストキャリアは「個の力」を最速で付けられるかを重視してほしい

新型コロナウイルス感染症の流行によって人気業界が不人気となったり、ロシアによるウクライナ侵攻でこれまで好調だった企業の業績が一転して厳しくなる、といったことが起こっています。

今安定している会社でも、将来どうなるかは誰にもわかりません。グローバルな視点から見ても、この先ずっと安定している会社など存在しない時代だと思います

これからの時代の会社選びでぜひ重視してもらいたいのは、「個の力」をつけられる会社かどうかという視点です。

大事になるのは、すぐにバッターボックスに立ってバットを振らせてもらえるか。

できるだけ早い段階から裁量をもたせてもらえる会社に入って、自分自身で創意工夫して仕事を成し遂げるという経験をしてほしいと思います。その経験の積み重ねが、「個の力」となってパワーアップしてきます。

学生が企業選びで持つべき視点

  • 「個の力」を伸ばしていける会社か

  • できるだけ早く裁量をもたせてもらえる環境か

「個の力」が備わっていれば、この先新たなプロジェクトをやりたいときにも力を貸してくれる人が現れる可能性が高くなるでしょう。起業したいときに、一緒にやらせてほしいという人が何人も現れるかもしれません。

すべてのはじまりは、「個の力」だと思っています。

もちろん、ビジネスではチームワークも大切な要素です。でも、そもそも「個の力」が強くなければチームをまとめることはできません

裁量を持たせてもらえるまでに何年もかかるような会社では、残念ながら「個の力」は一向につかないままです。仕事の任され方、その質をよく見極めてほしいと思います。

早い段階から「個の力」を得られるように、年功序列で安定的な大企業よりもできればスタートアップや成長企業など、新しいものを生み出そうとする文化がある会社に進んでもらいたいと思っています。

120社まわった就職活動により、企業選びの軸が明確になった

大学入学当初は、将来こうなりたいというビジョンも描けず、何となく授業に出ているような学生でした。経営学部に進んだのも、興味があるというよりは最も汎用的な学問かなと思ったのが理由です。

ところが、大学3年生から就職活動を始めて会社をまわるうちに、企業経営やマーケティング、組織論などに興味がわいてきました。それまでの自分とは見違えるほどに、熱心に授業を受ける学生へと変貌していきました。

会社説明会に参加してみて思ったのは、「企業を知るのはこんなにおもしろいことなのか」ということ。スタートした当初は、業界関係なく、世間で広く知られている会社や就職ランキングの上位の会社から片っ端に受けていったのですが、いろいろな業界、会社を見て周るのがおもしろくて、最後には120社くらいの選考を受けてみました。

次第に大手だけでなく、スタートアップやベンチャー企業のお話も聞くようになったのですが、それだけたくさんの会社を周っていく中で、はっきりと見えてくるものがありました。

大手企業の場合、話の内容が真面目で抽象的なことが多く、いま一つ共感できる部分が少ない。巨大な船に私が一船員として乗っかるイメージで、自分の裁量で仕事を進められるような雰囲気は正直まったく感じられませんでした

逆に、ベンチャー企業の話は、社長自身の実体験であることが多く、会社の事業と社長ご自身がリンクしているので説得力があるうえに、生き生きと話されている社長の姿も印象的でした

また、早めに権限が与えられ、自分の裁量で仕事を進めていけそうな文化を感じたのもたしかです。

もう一つベンチャー企業のお話を聞く中で気づいたことがあって、それは、リクルートという社名がよく出てきたことです。

リクルート出身の方が起業してつくったという会社に出会うことが多く、これほどにも多くの経営者を生み出すリクルートとはどんな会社なんだろう、ととにかく驚きました。後に、大学4年の卒論テーマとして「リクルートはなぜ人材輩出起業になり得たのか?」を取り上げたくらいです。

就職活動をはじめるまでは、まったく将来ビジョンを描けていなかった私です。でも、120もの会社をまわる過程で、「いつかは起業したい」という明確な将来ビジョンを描くようになりました

将来ビジョンがはっきりした段階で、将来的な起業を前提に、企業の血液として重要な要素を握る「人材」にかかわる業界に絞って企業選びを進めるようになりました。

最終的にこだわった条件は、「人材業界」「リクルートのような企業文化があること」「規模が小さめで比較的新しい会社」「エリアは東京」の4つです。

最終的には、4つすべての条件を満たしたキャリアデザインセンターへの入社を決めました。

キャリアは偶発的に生まれてくるものでもある

入社後は、シンプルですが、与えられた仕事に全力で取り組みました。妥協したり諦めることは一切考えなかったと思います。

営業として結果を出したことで、最年少マネージャーに抜擢され、組織を動かす側の立場になったときも、これまでの営業戦略・業務フローや組織体制を見直したりと、常に創意工夫しながらやってきました。

最も苦労したのは、営業一筋だった私が思いがけず経営企画を任されることになったときです

なかなか期待に応えられず、自分の力不足を痛感する日々を過ごしました。

その後、再び営業の責任者という立場に戻るのですが、次に任された仕事が、新規事業開発です。実は、この新規事業開発への移動がきっかけで、私にとっての起業が現実味を帯びてくることとなるのです。

ここで紹介したいのが、スタンフォード大学の教授が提唱する「プランド・ハップンスタンス」という理論です。

これは、キャリアというものは偶然の要素によって左右されるものが多く、偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながる、という考え方です。

私自身のキャリアを振り返ってもまさにその通りで、与えられた場で前向きに仕事に取り組み、好奇心を持って人と接してきたことで、思いもよらなかった経営企画、新規事業開発という仕事と巡り合うことができたと思っています。

起業に踏み切ったのも、新規事業開発のために多くの起業家、経営者にアポイントをとって会いに行き、新規事業案を考えるという仕事を与えていただいた偶然がきっかけとなりました

起業したのも、新規事業として検討していた10個の案のうちの1つを実現するためで、当初は社内ベンチャーとして進めるつもりでいました。

でも最後は社長に背中を押してもらい、思い切って起業するという選択をしました。それが現在の採用動画プラットフォームmoovy(ムービー)です。

経営者となった今改めて感じるのは、その場その場で、与えられた仕事に愚直に取り組むことの大切さです。成果を出せば、きっと大きな仕事を任されたりチャンスがやってきます

この仕事が嫌だ、あの仕事をやってみたい、とすぐに次の会社に移るのは簡単です。でもまずは、とにかく目の前の仕事に100%取り組んでみよう、と皆さんには伝えたいです。

三嶋さんからのアドバイス

業界や職種選びのスタートは、Will-Can-Mustのフレームワークを使った自己分析から

自分にはどんな業界や職種が向いているのかわからない、というのはごくごく当たり前のことです。だからこそ、「やりたいこと・できること・すべきこと」を整理することから就職活動をはじめてほしいと思います。

「Will-Can-Must」の自己分析のフレームワークをご存じでしょうか

Will(やりたいこと)、Can(できること)、Must(すべきこと)の3つの輪が重なり合う中心点が、仕事の満足感が生まれる、と考えられています。

Will-Can-Mustのフレームワーク

そもそも、Will(やりたいこと)がないから困っているという人は、まずCan(できること)から整理してみましょう。できることを振り返っているうちに、Will(やりたいこと)が見えてくることもあります。

Can(できること)の例としては、たとえば多様性のあるチームをまとめていくバランス力がある、決めたことを最後までやり抜く力があるなどですね。

Will(やりたいこと)は、自分がこの先どういう人間になっていきたいのか。Will(やりたいこと)とCan(できること)の差分が、Must(すべきこと)につながり、業界や企業選びをする際の軸となってくるものです。

ゆくゆくは経営者になりたい」と将来を描いた私にとっては、人材業界、リクルートの社風がある会社、規模が小さめで比較的新しい会社、エリアは東京という4つの軸がMust(すべきこと)としてはっきりと浮かび上がってきたことで、そのすべての軸を満たした会社に決めたという流れになります。

選択の軸を明確化していくためには、「モチベーショングラフ」による自己分析も効果的だと思います

中学生くらいから現在までのモチベーションを振り返り、どんなときにモチベーションが上がり、下がるのか、それはなぜかを考えていきます。

目標を達成したときに喜びを感じるのか、人から感謝されたときにうれしいと感じるのかなど、心が動く瞬間は人それぞれ違います。過去の自分を振り返ることで、自分で認識できていなかった価値観や傾向がはっきりとしてくることもありますから、ぜひやってみてください

企業の見極めは点数化してみるのもおすすめ。でも最後は直感で

Will-Can-Must」から業界や職種などを絞り込んでいったのであれば、最後は自分の直感を信じて1社を決めれば良いと思います。

でも、絞り込むまでは企業を点数化して比較してみるのもおすすめです。

軸となるMust(すべきこと)に対して細かく点数をつけてみることで、たとえば面接などでもより深く質問できるようになります

企業は良い部分だけアピールしていることが多いものです。

たとえば新人時代から大規模プロジェクトにかかわれると謳っていたとして、裁量はどの程度持たせてもらえるのか、創意工夫がどの程度できるのかなど、本当に自分のWill(やりたいこと)につながっていく会社なのか、どんどん突っ込んだ質問をして確認してみるべきです

最近では、企業の多くがSNSで積極的に情報を発信しています。なかなか見えにくい企業文化や社内の雰囲気などを垣間見ることができるので、Twitter、YouTube、noteなどで企業名を検索してみましょう。

実際に働く社員のつぶやきやインタビュー記事を通して、具体的な就業イメージをもつことができます。

三嶋さんからのアドバイス

「戦略的学習能力」と「未来志向」が今後活躍する人材の条件

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一昔前までは、指示されたことを丁寧にやれるということも強みの一つとなったし、それが求められている時代でもありました。

これから先は、多くの仕事がAIに置き換わっていくであろう時代。そんな時代に活躍できる人材とは、指示されたことを飛び抜けていこうとする人、今より早く、今より良くできることは何かを意識していける人であると考えます

何かおもしろいことを生み出せないか。これまでとは違う価値を見い出せないか。常に前へ、上へと進んでいこうとする「未来志向」型の力が必要となるはずです。

そして、「未来志向」でいるためには、好奇心をもって、日々新しいニュースや考え方に触れ、自分自身をアップデートし続けなくてはいけません。

私はこの力を「戦略的学習能力」と呼んでいるのですが、前に、上にと進もうとするには、土台となる学習能力が備わっていなくては難しいと思っています。

30代、40代と歳を重ねていっても、学ぶことを放棄する大人にはならないでほしい。

というのも、年齢が上がるにつれて、たとえば家庭をもって子どもが産まれたりすると、必然的に自由な時間が取りづらくなる時期がやってきます。いったん、学ぶ時間が極端に落ち込んでしまう時期が出てきます。

ただ、子どもが大きくなれば再び自由な時間が増えるのですが、そのまま思考停止状態が続いて学習をストップしたまま過ごす人が多いのも事実です

若いうちから、ぜひ「戦略的学習能力」という土台をつくっておきましょう。そして、学びの時間がいったん落ち込むタイミングがあっても、それを乗り越えて「未来志向」で考え続けられる人こそが、これからの時代に活躍し続ける人材だと思っています。

三嶋さんが考える、これからの時代に求められる人材

  • 学び続ける「戦略的学習能力」がある人

  • 前に、上にと進もうとする「未来志向」な人

学生の特権を生かし、多くの人と出会って話をしてほしい

学生時代は、ぜひいろいろな大人と話をしてほしいと思います。

世界的な有名なエグゼクティブファームが、経営者1,000人を対象に「会社の業績と比例している自分のマインドはなんだと思うか」というアンケートをとったところ、「curiosity=知的好奇心」との答えが一番多かったそうです。

知的好奇心をもっているビジネスパーソンは、間違いなく伸び続けるということです。

若い時期から、ぜひ知的好奇心をもって、いろんな世界に顔を出してみること、いろんな人に会いにいくことをおすすめしたいと思います。

大学生がOB・OGとつながれるサービスとしては、『Matcher(マッチャ―)』や『Meety(ミーティー)』、『Yenta(イェンタ)』などのツールがあります。就活性という看板をもっていればいろいろな人たちと触れ合うことができます

具体的な候補となっている企業の現役社員や元社員とつながることで、会社の雰囲気や文化を感じることもできるので、ぜひ活用してほしいと思います。

これらのマッチングサービスは、社会人になってからもビジネスパーソン同士の出会いの場を与えてくれます。異業種の方とも積極的に交流することで、新たな発見やイノベーションにつながる何かが生まれることもあるはずです

三嶋さんからのアドバイス

取材・執筆 小内三奈