他者の意見に耳を傾けて、視野を広げよう|「変化対応力」を磨いて、自分で人生を選んでいこう
IDOM(イドム) HRチーム チームリーダー 木岡 竜一さん
Ryuichi Kioka・2004年、中古車販売チェーン大手「ガリバー」を運営するガリバーインターナショナル(現IDOM)へ新卒入社。入社2年目からは店長として、全国の営業現場で活躍。2008年以降は本社部門にて複数の新規事業の立ち上げを経験。2015年に海外法人の立ち上げ。2018年より現職
「ルールチェンジを起こせる未完成な会社」を探して入社
自分は就職活動をするぞ! と決めたことが、まずキャリアにおける最初のターニングポイントだったように思います。
というのも、私の大学では当時、紹介や縁故採用で就職する学生がとても多かったからです。そのような環境の中でも、私は「敷かれたルールに乗りたくない」という反骨心を持ったタイプだったので、「みんな本当にそれで将来を決めていいの?」と感じており、「就活をする」という道を選びました。
今のようにWeb上の情報も充実していない時代でしたが、同じ思いを共有しあえる友人たちと触発しあいながら、いろいろな企業のことを調べていきました。
完成しきったものへのアンチテーゼが強かったので、「新しく何かを創り上げることができる、ルールチェンジを起こせる会社はどこだ」「未完成の会社がいい」という指針で志望先を絞っていくなかで、特に印象に残ったのが当社でした。
説明会で創業者が身を乗り出して「流通革命を起こすんだ! 」「中古車業界を、もっとお客様のためになる業界にしたい」と熱弁しており、その感じにひと目惚れしてしまったのです。
当時の当社は、創業10年目ながら売上高は1000億円に迫ろうかというメガベンチャーでした。ハイパーグロースカンパニー(設立10年以内に売上高10億ドルを達成した成長企業に対して贈られる称号)に迫るくらいの組織を想像したら、きっと面白い、いろんなことができそう、勢いのある会社だと思いました。
また、「理想に掲げているものと現状の立ち位置に、あまりにギャップがある」と感じたのが当社で、だからこそ、おもしろい会社だな、と魅力的に映りました。
入社後は店舗に入り、まず顧客と接する最前線で商売の原理原則を学びました。入社2年目からは、店長職を担うように。この時期にリーダーとしての経験を積めたことが、キャリアにおける2つ目のターニングポイントになったかと思います。
店長の影響力というのは想像以上に大きく、自分がどの立場で発言するかで、ガラッとチームが変わるのです。メンバーと同じ目線で寄り添うことが必ずしも正解ではなく、チームを強く引っ張るリーダーも、誰かが担わなければならない役目だと実感しました。
会社自体が急成長を続けていた時期でもあったので、頑張れば頑張るほど職域やキャリアがどんどん広がっていく、そんな面白さも感じていた新人時代でした。
新規事業にチャレンジ! 失敗の経験から得た学びとは
2008年からは本社部門に異動し、直営店のスーパーバイザーや企画、事業推進、広報などさまざまな職種を経験。そのなかでも特に印象深かったのは、2012年から取り組んだ新規事業です。
イメージとしては、百貨店の外商部門のような事業になります。「看板を出して顧客が来るのを待つ」という店舗のスタンスとは違い、能動的に外に売りに出ていってみよう! という社長企画の新しい試みでした。「お店を持たない営業部隊」を作るため、部門長として50名の新卒社員を預かり、若手だけのチームを作りました。
「店舗経験のない新人のほうが、先入観がない分、能動的に動きやすいだろう」と考えての編成だったのですが、蓋を開けてみると、経験がない分、想像もしないようなミスやトラブルが連発。「まっさらで影響を受けやすい彼らの言動は、全部自分の鏡だ」と痛感しましたね。
とにかくいろいろなことが毎日起こるので、大概のことは冷静に、かつ謙虚に受け止められるようになり、マネジメントの幅が大きく広がった実感があります。また、人を雇う責任、事業を成長させていていく意識など、経営の観点もゼロから学ぶことができました。
最終的に2年でこの事業は終わるのですが、「事業を畳んだ」ということも、経験値としては非常に意味があったと感じています。「どんなに理想を掲げても、多少うまくいっている部分があっても、稼げていない事業には未来がない」と気づけたこの経験は、キャリアにおける3つ目のターニングポイントだったといえるかと思います。
とはいえ、2億円の赤字を出してしまったとわかったときは、さすがに動揺しました。「どうやって報告しようか」とも悩みましたが、社長は「これでこの先同じ失敗をする人がいなくなったから良かったじゃん」くらいに温かく受け止めてくれました。
当時は天変地異くらいの衝撃を感じていましたが、時間が経ってみると、どんな失敗も「たいしたことがない事実」に変わるのだな………ということも今改めて感じています。
皆さんも就職活動中や社会人になってからいろいろな失敗に直面すると思いますが、未来永劫、その失敗にひきずられることはありません。焦燥的にならず、一歩引いて受け止めてみる、という姿勢もぜひ意識してみてください。
中国拠点の立ち上げで「一からビジネスをする大変さ」を知る
その後もいくつかの新規プロジェクトに携わり、2015年には中国市場への進出プロジェクトを任されることに。お店ができた状態で赴任したのではなく、イチから市場調査をして、二次流通をどうするかなどの事業プランを考え、事務所を借りて本棚を置いて………というところからのスタートです。当時は「ニーハオ」(こんにちは)しか話せない状態でしたが、たった2人の社員で中国・武漢に乗り込みました。
拠点を立ち上げてからも、現地の営業許可を取得し、店舗をつくり上げ、仕入れやロジ関連を整え、法規制へ対応をして………とあらゆることをやりました。ポスター1枚からでも自分たちで準備していましたね。チャーハン屋さんの大学生に通訳をお願いしたこともありますし、「協力してくれる人なら誰の力でも借りる!」くらいの勢いで、現地社員第一号は、よく利用していた印刷屋さんの娘さんでした(笑)。
「ビジネスというのは本来、こういうこともしなければならないのだな」という部分がよく見えましたし、いかに国内の事業が会社の看板に守られ、様々な部門の協力を得ていたのかも身に沁みてわかりました。ビジネスに対する新たな視点を得られたという意味で、ここがキャリアにおける4つ目のターニングポイントといえるかと思います。
ドミナント戦略のもと武漢からスタートし、好調に乗せた後は合弁会社を探してきて、出資しあって出店を加速させていきました。流通経路に則って上海、無錫(むしゃく)といった都市にも出店でき、3年間で20店舗を達成。本社からの出向社員も5人ほどはアサインしましたが、それ以外はすべて現地採用で、社員200名くらいの体制にまで成長させることができました。
変化した体験を積み重ねれば、自ずと成功に近づく
これからの時代にバリューを上げていけると思うのは、「変化対応力」を持った人です。
多くの事業に携わるなかでまざまざと感じてきたことですが、市場が変化するスピードは年を追うごとに速くなっています。「今までと同じことやろう」とする人は、確実に時代に置いていかれてしまうと思いますし、逆に「顧客が飽きる前に違うことをやろう」と行動に移せる人や、世の中の変化に対して「素直に変わろう」とできる人は強いと思います。
変化対応力を磨くには、日頃の小さなことから「変えてみたらうまくいった」という成功体験を積み重ねることや、昨日までの当たり前に疑問を持つことが肝要です。
何かを変えようというとき、社員からは「不安だ」という相談をよく受けますが、そういうときは「変わらないことのメリットは何?」と問いかけますね。「今うまくいっているから」という答えが返ってきたら、「それ本当にうまくいっているの?」「変わることで、もっとうまくいくかもよ?」と返します。こうした「人の意見を素直に聞く姿勢」を持てることも、活躍する人材の特徴かもしれません。
私自身、相手の意見に耳を傾ける姿勢は常日頃から意識しています。一見ネガティブな報告が上がってきたときでも焦って判断をせず、いったん受け入れる。「その人なりの背景やバックグラウンドがあるはずだ」と考え、まずは相手の事情や言い分を尊重するようにしています。
そのうえで必要だと思えば、厳しいことも言います。後輩たちは自分よりも長く会社にいる可能性があるわけで、後になって「木岡さんが言いたいのは、こういうことだったのだな」と理解してもらえることならば、それは本質的な指導だと信じています。
後輩から見れば暑苦しいかもしれませんが、将来「あのとき木岡さんのところで仕事をしてよかった」と思ってもらえたらうれしいですね。このあたりの感覚は学生時代から変わることがない、私がキャリアにおいてもっともやりがいを感じるポイントなのだろうと思います。
仕事を自分事にできたのは「自分を評価してくれる仲間」がいたから
2018年には日本本社へ戻ることになり、現在のコーポレート領域を担うようになり、間接的に事業に寄与する立場となっています。
本音で言えば、もう少し中国の事業にかかわっていたいという気持ちもなかったわけではありません。ただ「やりがいや仕事は自分で見つけて創るもの」だと思っているので、今の立場なりのやりがいを見出せています。
最初に任されたのは人事部門だけだったのですが、人事として様々な部門を見ていくうちに、結果的に総務、広報と担当領域が広がってききました。
こんなふうに動いてしまうのは、雇われている意識があまりないからかもしれません。むしろ「自分の会社だ! 」くらいに思っており、何か起きると「他の人がやってくれるだろう」ではなく「自分がなんとかしなければ」と感じます。
会社に対する評価についても「良いことも悪いことも自分の責任」くらいに思っているので、今は会社が認められる瞬間に、一番の充実感があります。入社当時からそうだったわけではなく、自分を評価してくれる上司や仲間がいて恩返しの気持ちが育ってくるなかで、どんどん仕事が自分事になってきた……ということかと思います。
管理職を担い始めてからは、「自分が受けてきた恩以上のものを後輩たちに用意しなくては」という気持ちも強くなりました。「自分で仕事をつくる」という部分は新人や若手社員にはなかなか難しいことだと思いますし、「どんな仕事を供給してあげるか」は上司の務めだと思っています。
新しいアジェンダ(プランや計画)を用意しつつ、後輩たちが失敗しないよう伴走し、失敗したら改善案を出し……ということを続けるなかで、「会社の理念やビジョンを追求すること」に貢献していくことが、キャリアにおける今後の目標です。
「特にこの役割を担いたい」といった希望もなく、経営会議の7名のメンバーの1人として、それぞれが切磋琢磨し合いながら役割分担をしていけば、会社のために良い形を作れるだろうと考えています。
就活には失敗も成功もない。「自己理解を深める」つもりで臨もう
最後に、就職活動についてお話しさせてください。
採用側として普段よく感じているのは、自分を決めつけている学生さんが思いのほか多いな、ということ。「あなたが思っているより、あなたには良いところがあるし、魅力的だし、伸びると思うよ」と言いたくなる場面は結構ありますね。
「自分で理解できている自分自身」が、自分のすべてではありません。評価は他人がするものなのなので、他人が見出してくれた自分の可能性や強みにも、ぜひ耳を傾けてみてください。それをどれだけ素直に聞けるかで、成長の伸びしろも変わってくると思います。
就職活動=自己理解を広げるためのもの、くらいに理解していれば、どんな結果だろうとやった価値があると思えるのではないでしょうか。現時点の自分だけで自分を決めつけず、「会社に入った先に自分の本当の可能性が見えてくるはずだ」くらいに思っていてほしいですね。
そもそも、就職活動に成功も失敗もないと考えます。会社は所詮、自分の目指す人生を叶えるための「舞台」でしかなく、その場所で満足できるかどうかは、どういう気持ちで仕事をしていくかだけであって、自分次第でいくらでも改善は図っていけます。
また「ベンチャーか、大企業か」という選択肢で悩んでいる人の場合は、当社のような「ベンチャー気質の大企業」を検討してみるのは一案です。
大企業として雇用の安定感がある一方で、「手を挙げたなら、企画したなら、やってみればいい」という風土なので、両方のメリットを享受できると思います。一例ですが、入社3年目で、億単位の予算を持って責任者を担っているようなメンバーもいます。
事業会社として川上から川下まですべての部門が社内に揃っているので、横断的にいろいろな経験ができますし、「時代に合わなくなればルールもどんどん変えてしまおうよ」という雰囲気なので、変化を楽しめる人に向いた会社だと思います。
ただ当社に限らず、ベンチャー気質の会社には意欲ある社員が大勢入ってきます。中途半端な気持ちで入ると埋もれてしまう可能性はあるので、そこも含めて検討してみるといいと思います。
取材・執筆:外山ゆひら