どんな出来事もやり切れたのは、周りの人からの感謝と喜びがあったから|何事にも目的意識を忘れずに

ソード 代表取締役社長 須藤 裕二さん

Yuji Sudo・1973年生まれ。三重県出身。大学を卒業後、ソフトウェア会社に入社し、営業職として活動。その後、PCI(ピーシーアイ)ホールディングス(PCIHD)のグループ会社に転職、PCIHDとバイテックホールディングス(現:レスターホールディングス)との資本業務提携に伴い合弁会社化されたVSE(現:プリバテック)の代表取締役社長に就任。グループ再編により、プリバテックの取締役副社長に就任。PCIHDのグループ会社となった当社 取締役に就任し、2022年4月に代表取締役に就任

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「好き」という気持ちをもとにキャリアを選択

私が新卒で入る会社を見つけるときのことを思い起こすと、「好きなことを仕事にしたい」という気持ちを大事にして、就職活動をしていたと思います。

私は小学校4~5年生の頃、PCに出会いました。当時はまだPCが普及していなかったので、近所のPCショップの自由に使えるコーナーに通って、遊んでいました。

操作に慣れてくると、プログラミング言語の「BASIC」を使うようにもなり、プログラミングをする楽しさに気づきました。その頃から、将来はPCに関連する仕事に就きたいということを考えはじめました

そして、進学先の高校を決めるとき、親の反対を押し切って、普通高校ではなく商業高校の情報処理科を選びました。大学進学といった高校卒業後の進路というよりも、とにかくPCが好きもっとコンピュータや情報処理について学びたいという気持ちが強かったのです。

このように、ずっとPCが好きだという気持ちを大切にして進路を選択してきました。大学では経営学を専攻しましたが、授業では情報処理論を受講し、COBOL(コボル)を習得しました。そして卒業後、ソフトウェア会社に入社しました。ただ、本当はプログラマーになりたいと思っていたのですが、配属されたのは営業職で当初はとても残念な気持ちになったのを覚えています。

しかし実際に営業活動をしてみると、多くの人に巡り合える喜びに気づきました。もし、プログラマーとして入社していたら、モノづくりに没頭することはできたと思いますが、お客様と深くかかわる機会はなかったはずです。

さまざまな企業のお客様の課題や悩みをヒアリングし、自社の技術者と相談し、お客様に説明やフォローをする。そのような流れで、技術者と協力してお客様の課題を解決に導き、信頼を得ていくことにやりがいを感じました

お客様との信頼を構築することに邁進した若手時代

仕事において、特に充実感や達成感を感じるのは、お客様から感謝や評価の言葉をもらったときです

営業活動も一通りこなせるようになって慣れてきた頃、お客様からご依頼いただいたプロジェクトの要求に目を通すと、自社の技術者に無理をしてもらわなければならないような内容でした。通常であれば自社の技術者とよく相談し、場合によってはお断りするべき内容と思いつつ引き受けてしまったのです。

その結果、プロジェクトはうまく進まず、お客様からは反感を買うことになってしまい、自社の技術者には無理をさせてしまうという事態に陥りました。結局、そのプロジェクトは大失敗に終わってしまいました。

当然、そのお客様から新たなお仕事のご依頼をいただくことは難しい状況となってしまったのですが、お客様に改めてチャンスいただけるようにお願いすることにしました。二つ返事で了解は得られたわけではありませんが、諦めずに粘り強く自社の技術者と話し合い、お客様にも説明をおこない、なんとか新たなプロジェクトをお任いただけることになりました。

失った信頼を必ず取り返すために、皆で取り組んだ結果、プロジェクトを大成功に収めることができたのです。それに加えて、お客様が感謝や評価の言葉を伝えるためだけにご来社くださったのです。こんなにも嬉しいことはなく、感無量でした。

今までのキャリアを振り返ると、いつもお客様や技術者、スタッフをはじめとした周りの方々に支えられてきました。皆さんに対する恩返しをしながら、困っている人がいれば手を差し伸べ、多くの人たちとのつながりを大切にしていきたいです。

人のご縁に恵まれてPCIHDへ転職、経営者へ

新卒で入社したときはそのソフトウェア会社でずっと働くのだろうと思っていましたが、予期せぬ出来事に直面し、PCIHDのグループ会社に転職することになりました。想定していた通りに進まないこともあるということ、そんな中でも懸命に努力することで多くの方に助けていただけること、この経験を通して、困難に直面したときの対処する方法を学べたことは、本当に貴重な経験だと思っています

転職先では、PCIHDとバイテックホールディングス(現:レスターホールディングス)との資本業務提携および合弁会社の立ち上げに携わる機会があり、その合弁会社であるVSEの代表取締役社長に就任しました。

この時、はじめて企業の代表者になったのですが、重責を引き受けようと決意した一番の理由は「VSEの皆さんと一緒に働きたい」と思ったからです。彼らが、クオリティの高い技術力を持ちながら、配慮のあるコミュニケーション力もできる人たちだったからです。ここでも、私は出会いに恵まれていることを実感しました。

失敗やミス、ネガティブなことほど、素早い報告と対応をしよう

日々の仕事で大切にしていることは、スピード感です。失敗やミスなどは話しづらいものですが、ネガティブな出来事や状況ほど早く報告する、判断が誤っていた場合はすぐに修正するといったことを意識するようにしています

これらを大切にするようになったきっかけは、今までのキャリアにおける経験からです。

たとえば、若手時代にお客様にメールの誤送信をしてしまったときのこと。すぐにお客様に謝罪に行くと「もしあなたの報告が1日遅れていたら、取引停止になっていたよ。」という反応がありました。

仮に誤送信に気付いたあと、どうすれば良いのか判断を迷ったりそのまま一人で抱え込んだりしていたら、大きな問題になっていたことでしょう。

失敗やミスをすることは誰でもありますが、それに対して迅速に対応することが重要です

また同じ失敗を繰り返してお客様にご迷惑をお掛けすることのないように、再発防止の対策をおこなうことも大切です。ひとりで判断や対応しきれないときは、周りの人に相談して、対応していけば大丈夫です。

「企業」+「市場」のリサーチで、客観的な視点を持とう

好きなことを仕事にできる会社を見つけるためにも、就職活動では、気になる企業の個別の情報だけでなく、その会社の属する業界や同業他社などの市場にも目を向けることも大切です。変化が激しい世の中では、市場の動向をリサーチして、現状を把握することが大切です。

例えば、同じ業界でも、A社は増収増益、B社は減収減益、C社は増収減益という風に、会社ごとに業績は異なります。そこでぜひ、「なぜ3社で違いが生まれているのだろう」と考えてみてください。すると、「A社は新規事業が上手くいっているな」「B社は既存事業が右肩下がりだな」「C社は原価が高騰しているから利益だけ下がっているんだ」などと、客観的に企業を知ることができます。

別の視点では、私が新卒入社した業種のソフトウェア業界には、いくつかの資本系列の違いがあります。たとえば、独自でシステム開発をする「独立系」やメーカーを親会社に持つ「メーカー系」、ユーザー企業を親会社に持つ「ユーザー系」があり、意外と社員の働き方やキャリア形成にも大きく影響する要素であったりします。

このほかにもいろいろな視点があると思います。業界や同業他社、会社の特徴を踏まえて、企業分析を進めてみてください

さらに、昨今は「サステナビリティ経営」の意識がある会社かどうかも、一つの視点として持っておくと良いでしょう。サステナビリティ経営というのは、短期的な利益を出すことだけでなく、社会や経済、環境の観点において、持続可能な状態を実現する経営のことです。

世の中から必要とされる会社は今後も持続成長すると考えられますし、そうでない会社は淘汰される可能性があるといわれています。だからこそ、「必要とされ続けよう」というサステナビリティの意識を持っていることが重要だと考えています

須藤さんおすすめ! 企業選びのポイント

  • 個別の企業情報に加えて、市場もリサーチする

  • 企業の特徴を踏まえて、組織や社員への影響を考える

  • サステナビリティ経営への意識をチェックする

企業のことを知るために、実際に足を運んでみよう

自分に合った企業や業界を見つけるには、頭で考えるだけでなく、生の情報を得るために行動することも大切です。おすすめなのは、実際に自宅から気になる会社まで行ってみることです。

その会社に入社したら、何時に起きて、どのような経路で通勤することになるのか。会社周辺はどのような雰囲気なのか。会社に出勤中の社員に遭遇したら、どのような人が働いているのかを間近で見ることもできますよね。

また、自己分析企業分析の時間も惜しまないようにしましょう。自己分析は、自分でやる方法もありますが、身近な人に聞いてみると新たな発見があるものです。

実際に、私の就職活動時代にも面接でうまくいかない時期があったので、身近な人に相談してみたことがあります。すると、自分でも気づいていない自分の良いところを教えてくれて、とても励まされたんです。「自分は周りから見るとこういう人間なんだな」と認識すると、面接という他者から評価される場面での改善点もわかるようになります

「目的」と「手段」は別もの。今後もとめられるのは、目的意識のある人

当社に限らず、社会でもとめられる人物像は、目的意識を持って行動できる人でしょう。仕事において、どうしても目先の利益に目を向けてしまいがちですが、それ以上に「どうしてそれをやるのか」という目的が重要だと考えています。

私自身、今までの経験上、普段から目的を意識していないと、いつの間にか「手段」が「目的」になってしまうこともあると感じています

たとえば、若い営業マンが陥りがちですが、仕事でいろいろな人にアポイントメントを取ってスケジュールを埋めて忙しくしていたとしても、仕事の目的に合った人と会う機会を作れていなかったら、目的ではなく手段を優先してしまっていることになるでしょう。

ほかにも、仕事上で「上司に言われたからやる」という姿勢だけになっていると「何のためにやるか」という視点を持つことができなくなってしまうことがあります。指示を受ける側だとしても「なぜこれを頼まれたのだろう」「この仕事をやる意味は何だろう」と、一度自分の中で考えるようにしましょう

ちなみに、当社の行動指針は、目的意識を持って行動できる人になるための必要な要素がそろっています。

「Speed:迅速に行動します」「Open:自ら情報発信をします」「Respect:互いの意見を尊重します」「Deep:本質を考えます」の4つで、頭文字を取ると「SORD」になります。これらを実行すると、自然ともとめられる人物になっていけるのです。

今のご時世での就活は、行動の制限もあり大変なことも多いと思います。一方で、こうした変化の最中で就活することで、世の中の変化に対する対応力を養う良い機会にもなるでしょう。なかなか経験できないチャンスだと捉えて、自分自身と深く向き合いながら、悔いのないよう行動してくださいね。

また、就活中や若手の頃は、私自身もそうでしたが、焦りや不安が生まれやすい時期だと思います。同じ大学の友人はどこに就職するのか、身近な人はどの会社で活躍しているのかなど、いろいろと気になることもあるでしょう。

周りと比べて、自分は出遅れているのではないか、仕事ができないのではないかと、自分を卑下してしまうこともあるかもしれません。しかし、若手の人にとって、社会人としてのキャリアはまだまだ始まったばかり。この先何十年もあるので、焦らず、ご自身のペースで歩んでいただけたらと思います。

取材・執筆:志摩若奈

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