自分がいる価値のある環境で、泥臭く試行錯誤しながら成長しよう

ベガコーポレーション 執行役員 吉田 裕紀さん

Yoshida Yuki・1984年生まれ。大学卒業後、リクルートに入社。広告営業、人材領域のクライアント支援などを手掛け、2018年からベガコーポレーション執行役員 人事統括部長に就任。採用、人材開発、評価、配置などのチームを兼務しながら、2022年より営業統括部長に就任

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早いうちに失敗して、根拠のない自信から一歩先へ

学生時代は勢いで行動をして、たくさん失敗をしました。実は2浪して大学に入ったので、親に金銭的な負担をあまり掛けたくなくて、アルバイトに明け暮れる大学生活でした。飲食店アルバイトと家庭教師を掛け持って、授業にも行けないときがありました。バイトが忙しくて単位を落とすなんて本末転倒だと思い、もっと効率よく稼げる方法を探し始めました。

改めて考えると、家庭教師のアルバイトは、本部にマージンが取られているので、自分の手元に残る金額はかなり少ないことに気づきました。個人で生徒を集めれば、その分稼ぐことができると思い営業してみると、市場ニーズがあることが確認できました

そこで、知人と協力しながら家庭教師サービスを始めましたが、うまくいかなかったですね。自分より勉強の得意な同級生や後輩なら良質な授業を提供できるかなとお願いしてみたら、生徒側からお試し無料期間で打ち切られたりして、うまく契約に至らない。人に任せる難しさを感じ、人を育て、チームを引っ張る大変さも強く実感しました

その頃、経営者だった祖父に相談すると「一度も社会に出てない人間に、社会は分からない。社会に出て学びなさい」と一喝されて、ハッとしましたね。まずは会社員として世の中を知ろうと思い、リクルートに就職しました。

今思い返すと、学生だから勢いで個人でやろうと思えたと感じます。根拠のない自信があったからこそ行動できていましたが、早々に経験・能力不足が露呈してうまくいかなくなり、その自信は打ち砕かれました。でも今振り返ると、この一連の経験自体が貴重で大切なステップになったと思っています。根拠のない自信をさっさと捨てて、自分の実力に向き合えたし、不足している能力や次のステップを見据えることができたからです。

早めの失敗はプラスにしかならないと思います。どんどん失敗し、自分を見つめ、成長のきっかけをつかんでほしいですね。

同じ失敗をしたことで、戦略や正義で人は動かないことを知った

学生時代の経験から、人材育成組織運営のノウハウを身に付けたいと考え、リクルートなら実践的に学べると思って入社しました。

ホットペッパーの営業を経て、超大手クライアントの集客コンサルや戦略立案に携わるようになると、100人以上の人間が絡む案件も増えていきます。大勢の人を動かすには、組織が整っていなければなりません。しかし、また学生時代と同じ失敗を繰り返してしまったんです。当時リーダーだった自分が正論や理屈を振りかざしたため、「お前にはついていけない」と言われたこともありました。このときから、どうやったら組織を動かせるのかを考えるようになりました。

試行錯誤の日々の中で学んだのは、人は感情の生き物であり、理屈や正義だけでは動かないということ。当時、上司から言われた「あなたが戦略と言い出したら、大体うまくいかない」という助言は、いまだに頭に残っています。この上司は私にとってのメンターで、今でも相談する信頼の置ける大先輩です。

チームビルディングするなら、共感と発信が重要

失敗を繰り返しながらでしたが、上司のアドバイスと実践によって、少しずつ組織の作り方、動かし方を学んでいきました。そこで大切にしたのが、共感と発信。正しいことを伝えるのではなく、まずは相手の言い分を聞いて共感することが大切だと知りました。さらに発信の仕方にも気を配るようになりました。相手が理解できるように伝えることはもちろん、タイミングや言葉遣い、相手が聞きたいと思う発信を心掛けたんです。

それに、自分の能力やキャパシティも理解して、今ある力の中でパフォーマンスを発揮することも大切だと知りました。頼れる人に適切に頼って、自分を必要以上に大きく見せようとしないことを意識するようになりましたね。難しいと思っていた組織の運営のノウハウが、少しずつ身に付いたと感じられる経験でした。

真剣にやれば周りが応援してくれる

人材部門に異動し、新卒採用のプロジェクトを担当している時期に、自社商品の効果が芳しくなかったことがありました。

そんな中でも言い訳はできないので成果を出そうとするも、効果が出ず、クライアントからお𠮟りをいただく日々。本当に辛かったですが、何かしないと状況は変わらないと思い、自分の足を動かして、なりふり構わず行動しました。

すると、周囲の評価はどんどん変わっていったんです。自分の仕事でもないのに同僚や後輩が手伝ってくれ、クライアントも「あなたが悪いんじゃないのは分かった」と段々理解してくれて。結局、満点の結果を達成することはできませんでしたが、応援される形でプロジェクトを完遂できたことだけは良かったなと思います。

困難に直面したときは、その事実を直視して、自分ごととして捉えることが大切です。周りのせいにせず、なりふり構わず頑張れば、評価してくれる人や協力してくれる人が現れます。情報があふれる今の時代、なんでも周りのせいにしやすいんですよね。それらしいことを言って、環境や周囲のせいにすることは簡単ですが、それでは解決も成長もありません。まさに「諦めたらそこで試合終了」ですよね。

本気で力を振り絞ってやれば、応援を得ることができます。でも、人を出し抜いたり、言い訳ばかりしていたりでは、応援されません。もし結果が出せなかったとしても、応援を得られたのなら、同じくらいの大きな価値があると思います

自分を必要としてくれる会社・環境を逃さない

ベガコーポレーションとは、クライアントとして出会いました

最初は担当者とクライアントのごく一般的な関係でしたが、ある打ち合わせの際に社長が雑談の中で話した将来のビジョンに対して、業務とは関係なく企画書を作ったことがあったんです。クライアントの望むことを少しでも叶えたいと思ってやっただけでしたが、社長はすごく驚いてくれて。そこから距離が縮まり、入社も誘われるようになりました。

自分をもとめてくれるのは嬉しかったのですが、最初はまだリクルートでも成長の機会があると思って断っていたんです。でも最終的には「リクルートは吉田さんじゃなくてもやっていけるけど、ウチは吉田さんが良い」という言葉に撃ち抜かれ、入社を決めました。

リクルートはもちろん刺激的で成長できる環境です。ただ、当時の自分としては、もう少し規模の小さな会社の方が、自身の成長ややりがいに手触り感を持てるのではないかと考えたんです

もちろん、本当にベガコーポレーションで良いのか、他の会社も検討してみました。メガベンチャーやスタートアップ、大企業なども念頭に置いて、自分がどんな成長と貢献ができるか考えて……。そこで出てきた答えは、やはりベガコーポレーションでした。会社の規模感、知名度、勢いなど、自分が入社する意味を感じられると確信できました

あなただからやってほしいと言われる仕事があるということは、何より幸せなことではないでしょうか。特別な能力がなくても、誰にでも必要とされる場所があるはずです。就活でも、本当に自分を必要としてくれる会社・環境を逃がさないでほしいですね。

これからの時代はさらに変化のスピードが上がり、分かりやすい成功法則が見出しにくくなるでしょう。もう今の時点ですでに、正解が分からないことも多いですよね。昔のようにセオリー通りに進めればOKということがないので、上司だって指示を出しづらいというのが本音です。上司に言われた通りやってもうまくいかない、上司の戦略は間違っているのでは、と思うのも当然です。

みんな正解が分からないなら、足を動かし、実践し、成功を模索するしかありません。分かりやすい成功や誰もがたどり着く模範解答がない世界では、情報に惑わされず、自分の手と足で道を切り開くしかないのです。だからこそスマートなやり口では解決できず、泥臭く努力するしかない場面も多いと思いますね。

成長したいというモチベーションがあれば、泥臭い仕事にも向き合えるはず。試行錯誤の先に正解を見つけて、それが自分の成長につながるのを実感してほしいです

自己開示、信頼構築、見守りと勇気づけで人を育てる

今はベガコーポレーションをもっと大きく、知名度の高い会社にしたいと思いながら、日々精進しています。もちろんこの夢を一人で達成することはできません。同じ未来を見据える仲間が必要不可欠です。

仲間を増やすには、人を育て、それを率いるというステップが重要。まずは相手を人として尊重し、認められているという感覚を持ってもらえるように気を配り、自己開示をして、相互の信頼関係を築きます。成果だけでなく頑張りを見届け、必要があれば耳の痛いことも言う。この姿勢を貫けば、チームは自律的に育っていきます。

人は成長したい生き物。ずっと現状にとどまっていたいとか、より悪くなっていきたいと思う人はあまりいないでしょう。自分の成長意欲はもちろん、仲間の成長意欲を原動力に変えられるように、すべきことに邁進していきたいですね

取材・執筆:鈴木満優子

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