2代目社長だけで終わらない! 常に目標と向上心をもって会社と自身を成長させ続けよう
新生電機 代表取締役 平山 朝雄さん
Asao Hirayama・兵庫県尼崎市出身。専門学校卒業後、父親が経営する制御盤などの設計・製造を主力事業とする新生電機に入社。新たに工事部を新設するなどした後、現職
悩んだり迷ったときは動きながら考えて、その場の空気を感じよう
専門学校を卒業後、すぐに父親の経営する制御盤などの設計・製造を主力事業としている会社に入り、40歳になったタイミングで2代目社長に就任しました。
本来であれば、いったんどこかで社会人経験を積むべきです。世間一般からすると、苦労知らずの2代目社長ということになりますが、私自身、節目節目のタイミングで「これでいいのか」「このまま進んで大丈夫か」という危機感や不安を感じながらここまできました。
これまで大切にしてきた信条が2つあります。
1つは、「どうしたらいいんだろう」と迷ったときには、とりあえず動いてみることです。実際にその場に立って空気感のようなものを素直に感じとると、今どうすべきなのか、どう対処すべきかが見えてくることが多いことを学んだからです。
立ち止まって一人で考えるのではなく、動きながら考えようと常に意識しておく。そうすることで、自ずと何をすべきかが見えてくると私は信じています。
2つ目は、いったんやり始めたことは投げ出さず最後までやり切ることです。これまで何度か逃げたくなるようなことも経験しましたが、どんな仕事でもしっかりやり切ることだけは貫いてきました。
もともとは、父の会社の事業とはまったく関係のない、電気工事関係の仕事に興味がありました。その分野では有名な大阪の専門学校に通い、しっかりと勉強も積みました。卒業前には予定通り電気工事分野で就職先を探し、実際に内定もいただいてる状況でした。「自分の力だけでやっていきたい」という強い気持ちもありました。
ただ、ちょうどその頃父の会社が忙しく、会社に入ってほしいと頼まれました。別の会社に就職する気満々だったので相当悩みましたが、兄弟の中で男は私だけ。結局、内定はお断りして卒業後はすぐに父の会社に入社することとなりました。
最初の1年間は、周囲の期待に応えなくてはという気持ちもあって「何としてでも頑張ろう」と無我夢中で働きましたが、2年目には「社長の息子」として見られるプレッシャーだけを強く感じるようになりました。わずか2年目の段階で、もう辞めたい、ここから逃げ出したい、と思ったのです。
自分のキャリアを振り返って今改めて思うのは、人はやりたいことが明確になっていなかったり目標がないと頑張れないものだということ。社長の息子だから頑張るのではなく、自分自身が挑戦する目標が必要だと感じ、模索し始めました。
ちょうどそのとき、工事分野の仕事ができる仲間と会う機会があり、その仲間を巻き込んで会社の中に新たに工事部門を作るという目標を掲げました。すると本当に不思議なものです。その目標に向けて頑張っていこうと、再び前を向くことができるようになりました。
これもやはり、「動きながら考える」という信条があったからこそだと思っています。
平山さんの信条
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迷ったときには、立ち止まらず、動きながら考える
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いったんやり始めたことは投げ出さず最後までやり切る
これから社会人としてスタートする皆さんも、さまざまな壁にぶつかることがあると思います。立ち止まって考えることもときには大切ですが、ずっと立ち止まっていても道は開けません。
ぜひ、実際に動いてその場の空気を感じてほしいと思います。その空気感から何かしら解決の糸口が見つかると私は思っています。
社長業の使命は「若い世代が入りやすく、働きやすい環境をつくる」こと
父の後を継ぎ、社長の座に就いたのは今から7年前、40歳のときです。良くも悪くも会社のことは知り尽くしてきたので、自分の中で「社長になったらこう変革していきたい」というビジョンははっきりしていました。
私がトップになるからには、若い世代が入ってきやすく、働きやすい環境をつくりたい、と思っていました。
社員はみんな大切な仲間です。社長に就任して以降、若い世代ものびのびと働ける雰囲気を作りだすことに最大限力を尽くしてきました。おかげさまで、今は、常に楽しい雰囲気でありながらも、やるときはやるという空気が社内にあふれています。ここにきてようやく、社長として自信をもつことができるようになってきました。
また、社長という立場ですが、できるだけ現場に足を運ぼうと決めています。この考えには理由があって、26歳のときに私のキャリアで大きなターニングポイントとなった出来事がありました。
その年に、長年お世話になっていた顧客が移転してしまって、会社の売上が大きく落ち込んでしまう事態となりました。私は毎日、本来業務である製造の現場にも行かなくてはいけないのですが、一方で営業しなくてはいけないという切羽詰まった状況でした。
慣れないスーツを着て営業に回っても門前払いされるような毎日。それでも何とか新規の営業をとらなければと躍起になっていたら、偶然現場の仕事で知り合った方から新たな顧客を紹介していただいたのです。
目から鱗でした。私は、営業とはとにかく飛び込み営業のイメージで顧客をとってくるものだと信じ切っていたからです。目の前の仕事、日常の仕事をきちんとやっていたら、その仕事ぶりを評価してくれた方から新たな取引につながっていくなどと思ってもいませんでした。
営業一つとっても、いろいろなやり方があるのだ。この気づきを得たことは、私にとって最大のターニングポイントとなりました。
目標に向かってチャレンジ精神を忘れない
「頑張り続けるには目標が必要」という考えは、これまでもこの先も変わることはありません。社長になって現在7年目ですが、この先会社は信頼できる後継者に任せ、まったく違う分野で事業を始めることを目標に準備を進めています。
新たな分野ですが、アイデアのきっかけは、現場で仕事をしている中で「こういうものが必要なんじゃないのかな」「こういうものって需要があるんじゃないかな」とひらめいたことがはじまりです。ITを活用して、これまでとは別のフィールドで社会に貢献していきたいと考えています。
4〜5年先には、「起業」に踏み切りたい。これが直近の目標です。会社の今後のことを考えながらも、チャレンジ精神を忘れず新たな目標を実現するためにも日々頑張っているところです。
多くの会社を見て回り、「ひらめき」と出会おう
皆さん一人ひとりに、好きなこと、何となく興味があることは何かしらあると思っています。就職活動を始める前に、まずは自分の興味のある分野は何かを考えて、整理してみることをおすすめします。
何がしたいかはっきりとはわからなくても、いくつか整理できた時点で動いてみることです。勇気がいると思いますが、実際にいろいろな会社を見て回るというアクションをとってほしいと思います。
失敗しても大丈夫です! たくさんの会社をまわって、悩みながらも話を聞いてみることで「こういう会社もあるんだ」「この仕事は私に合っているかも」というひらめきがあるはずです。
大切なのは、このひらめきと出会うこと。一人で悩んでいるだけではひらめきは生まれません。勇気を出して実際に会社をまわってみることで、必ず見えてくるものがあります。ぜひチャレンジ精神をもってがんばってください。
行きたい会社が定まってきたら、最後は人と人のつながりを大事にしてくれるかどうかを見定めてほしいです。
仕事をするのは「人」。社員同士のつながりの場をしっかりと用意してくれる会社が良い会社だと私は考えています。そういう環境で働くことができれば、結果的にコミュニケーション力や向上心を高められ、着実にキャリアアップにつながっていくと思います。
人と人のつながりを大事にしている会社かどうか見極めるためには、面接をおこなった際に、実際に働いている人の様子を見せてもらうのが良いと思います。面接官もその会社の顔なので、その雰囲気を十分に感じ取ってください。
新卒で入社する会社はとくに「人を大事にしてくれる会社か」が大事になると思うので、何かしらつかんで判断してほしいと思っています。
会社選びで重視すべきポイント
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人と人のつながりを大事にしてくれる会社か?
会社を見極めるためのポイント
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社員同士のつながりの場をしっかりと用意してくれているか?
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実際に職場で働いている人の様子、雰囲気はどうか?
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面接官の雰囲気はどうか?
「より良くなりたい」という向上心こそが、社会人として最も大切な資質
社会人としてどの会社においてももとめられる資質は、ごく基本的なものだと私は考えています。
1つ目は、挨拶ができることです。基本の基本ですがものすごく重要です。
2つ目は、わからないことを素直に聞けること。自分自身でよく考えてみることは前提ですが、そのうえでわからないことがあればしっかりと聞くことができる人です。これができる人は強いです。
3つ目は、1つ目、2つ目を含めたコミュニケーション力の高い人です。今現在コミュニケーション力が苦手でもいいんです。今うまくなくても、向上心がある人なら必ず自分を変えていけるはずですし、実際、変われると思っています。
一番大事だと思うのは、「自分をより良くしていこう」という気持ちをもっていることです。
平山さんが考える社会人として重要な資質
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挨拶ができる
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わからないことを聞ける
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コミュニケーション力が高い(「自分をより良くしていこう」という気持ちがあればOK)
学生時代には、できるだけたくさんの人と交流しましょう。仲間とのかかわりの中でこそコミュニケーション力や人間力が高められます。サークルなどで仲間と一緒に活動する、イベントの幹事を引き受けてみるなど、積極的に仲間とかかわり合う体験をしてください。
最初から人と上手にコミュニケーションをとれる人の方が少ないはずです。はじめは失敗するかもしれないし、苦労すると思います。でも勇気を出して一歩踏み出すことが大切。その後は自然とできるようになっていくものだと思います。
壁を乗り越えれば一段階大きな人間になれると信じてほしい
就職活動が思うように進まずつらくなることがあるかもしれません。いざ社会に出て働き始めても、壁にぶつかることが必ず出てくるでしょう。
壁を超えるのはつらく、簡単なことではありませんが、壁にぶつかったらぜひ自分を見つめ直すチャンスだと思ってください。そしてもう一度チャレンジしてください。その壁を乗り越えると、確実に一段階強い人間になっています。
時間がかかっても、焦らず慌てず諦めず、の精神でこれまで私はやってきました。これから社会で活躍する皆さんも、チャレンジ精神でどんな壁も乗り越えていってほしい、そのように願っています。
取材・執筆:小内三奈