「総合職採用」を疑う視点を持とう|予想もつかないジョブローテーションこそがキャリアの幅を広げてくれる

IBJ(アイビージェイ)執行役員 経営管理部長 澤村 勇典さん

Yusuke Sawamura・2011年に新卒で三菱東京UFJ銀行に入行(現:三菱UFJ銀行)。支社拠点および営業本部にて営業職に従事したのち、2015年にIBJへ入社。営業職、企画職、地方創生、新規事業、M&Aなど幅広く経験。2019年よりグループ会社3社の取締役に就任。2020年より現職

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目標がないと「熱量」や「想い」を乗せることは難しい

私のキャリアにおける最大のターニングポイントは、当社IBJに転職をしたことです。

1社目では銀行に勤めていましたが、明確にやりたい仕事があったわけではありません。学生時代から「部活の仲間たちと一緒に有名私大に行き、勉強はそこそこに大企業に入れたらいいな」程度に将来を考えていましたし、就職活動でも周りがそうしているからと大企業を選択。銀行は「たくさんの経営者と話せる」「無形商材のほうが、自分の頑張りが目に見える」といった理由で選んだ就職先でした

無論、任せられた仕事に対する責任感はあるので入社後は真剣に仕事をしましたし、上司に言われたことはきちんとやっていたので評価ももらえていました。ただ、そこに「熱量」や「想い」が乗っかっていないイメージです。給料のために仕事をするスタンスだったので、アルバイトの延長のような感覚だったのかもしれません(実際に、当時の上司にそう言われました)。

キャリアアップについては「このまま部長や支店長を目指していくのだろうな」と想像していましたが、あのまま昇進していたら、部下に上手な仕事の仕方やサボり方、マインドセットくらいしか教えられなかったと思います(笑)。

花形部署に異動となった後も、悶々とした状態は続きました。お客さんとも良い関係を築けてはいましたが、あくまで資金の相談相手。銀行は2年毎に異動がありますが、それぞれの業務が特殊なので、ある部署で積み上げたものが次の部署で役立っている実感が得られないことも気になっていました。

意欲的な方ももちろんいましたが、中には「この2年間を無難に過ごそう」という発想に陥っている同僚もいて、異動先の人間関係、業種、担当先などの「ガチャ」を永遠に回していくのかな……なんて虚しさを感じるように。今思えば私自身に目標がなかったのが原因ですが、「このままでは学生時代から目指していたおもしろいオジさんにはなれない」と思うようになり、転職活動を開始。「(転職先の業界などは何も決めずに)転職しよう」ということだけを決めて、1社目を退社しました。

キャリア選択では「正解」を求めず、自分自身の「納得感」を重視しよう

転職活動で当社IBJに興味を持ったのは、銀行出身の社長が創業したベンチャー企業だったことが理由です。

ベンチャー企業に興味を持っていたのですが、「大企業出身の自分では通じないかも」「待遇面の落差が大きいと不安になるかも」等々の懸念を感じていました。その点、当社は大手銀行出身の社長がやっているベンチャーということで、「ちょうどいいハイブリッド感だな」と感じたのです。

婚活事業も素直におもしろそうだなと感じましたし、銀行員の目線から見ても「成長企業であり、財務も安定しているから、いろいろなチャレンジができそう」「事業領域が広く、いろいろな仕事が経験できるだろう」と判断。「わざわざ大手を辞めて当社に来るなら、仕事のおもしろさを実感させてあげるよ」と話してくれた社長の度量や経営陣の魅力にも惹かれて入社を決めました

キャリアにおける大きな決断をする際は、結局のところ「自分自身の納得感」が一番重要ではないかと思います。

100%確実な未来予想はできないので、100%正解のキャリア判断をすることも不可能ですよね。自分の考えに基づいて、自分で納得して決断をしなければ、何かあったときに必ず誰かのせいにして言い訳をしてしまうでしょう。

自分で決断をしていると、次に変化が訪れたときのジャッジも、必ず自分でできるようになります。決断には勢いや多少の勘違いも必要ですし、「会社選びを間違えても、別に命を取られるわけではないしな」くらいに理解しておくのもオススメです

「世間的な要素を取っ払ったうえで、自分がどう思うか」という視点からも考えてみるといいと思います。家探しで100%希望条件を満たす物件などがないのと同じで、会社が持つ特徴や要素は、どう捉えるか次第で見え方は変わってきます

部屋選びで「日あたりはイマイチだけど、自分はあまり気にならないな」という人もいると思いますが、「他の人は気になるかもだけど、自分としてはネガティブな要素はあまりない。それ以上に魅力的な要素が他にある」と思える会社なら、問題はないはずです。

やりたいことが明確になっていない人は、「自分の成長可能性をいろいろと見込めそうな企業はどこだろう?」というスタンスで選ぶのが最善かと思います

特定の職種しか担えない企業に入ってしまうと、万が一その仕事が向いていなかったときに、それ以外の自分の可能性をつぶしてしまうリスクがあるからです。

たとえば営業会社に入って営業職として活躍できなければ、そこから可能性を広げていくことはなかなか難しいです。自信をなくし、仕事に対する意欲も失ってしまうかもしれません。

しかしいろいろな職種を経験させてくれる会社であれば、「じゃあ次はマーケティングをやってみようか」などと別の部門を経験させてくれ、そこで活躍できれば経営層への道を拓いていくことも不可能ではありません。

「総合職」という表記も、あまり盲信しないほうがいいと思います。「総合職で募集しているから、いろいろな仕事がやれるはず」と思っていても、蓋を開けてみれば、特定の部署や職種しか経験できない、ということも実際には多くあります

いろいろな仕事を経験させてもらえる環境がいいと思うなら、「本当に積極的にジョブローテーションをしている企業なのか?」という点は、入社前に必ず確認しておくことが肝心です

澤村さんが勧めるキャリア決断において大切なポイント

  • 世間的な要素を取っ払った上で「自分がその会社についてどう思うか」を考えてみよう

  • 「企業選びを間違えても、別に命をとられるわけではない」という前提に立ち、勢いも大切にしよう

  • やりたいことが明確でないなら、できるだけ多くの経験ができ、自分の成長可能性を広げられる企業を選ぼう

想像もしないジョブやミッションを経験してみることは、人を大きく成長させる

IBJで私は、特にビジョンを持たず「とりあえず身を委ねてみよう」という意識で飛び込みましたが、入社後は想像もつかないジョブやミッションをガンガン渡される日々が始まりました。

婚活アドバイザー(BtoCの営業職)から始まり、地方自治体案件、ウエディング事業、保険事業、旅行事業、さらにはM&Aや新会社の設立、グループ会社の取締役として経営に参加させてもらう経験などもさせていただきました。そして現在は経営管理部長と執行役員として、全社横断的な課題解決を図ることを任されています。

入社後たった8年でこれだけ多くの経験をさせていただくなかでわかったのは、「不可抗力で新しい経験をしてみることが、何よりも人を成長させてくれる」という事実です

目の前の仕事に必死で取り組んでいると、視座や価値観がアップデートされ、「次はこういうことができたらいいな」という展望も自然に広がっていきます。

入社時は「婚活事業の拠点で支店長になる」くらいのキャリアパスを想像していましたが、今は「新事業で会社を立ち上げて大きくしたい」なんてことまで考えるようになりました。足元のことを一生懸命やっていれば予想もつかないキャリア展望が生まれてくるのだな、ということを実感しています

無論、苦手な仕事ややりたくない職種まで無理して引き受ける必要はないと思いますが、人事の方々は意外と社員たちの様子をよく見てくれています。

特に、ジョブローテーションに積極的で、成長を続けている企業の場合は「この部署にこういう人材が必要だから」という短期的で課題解決ありきのアサインに見えたとしても、「あなたはこれを一度経験してみるといい」という期待とともに、それによってあなたが必ず成長するという確信をもって新しい役割を勧めているわけですから、それに乗っかってみるのは良い決断かと思います。

若い人たちには、「自分がどんどん変わっていく感覚」を体験してほしいですし、それを通じて市場価値の高い人材に成長してほしいと思っています

半年前からは、私自身も人事側の人間になりました。

この役割を担い始めたことは、キャリアにおける2つ目のターニングポイントになった実感があります。今までは送り込まれる側でしたが、送り込む側になったことで、「人材育成のためにはジョブローテーションは有効」というポリシーが明確なものとなりました。

全社的にも「ジョブローテーションこそが人を成長させる」という風土が根付いているので、個人差はありますが、平均2年くらいのペースで異動をしています。いずれ異動すると分かっているので、上司も社員を囲い込むことをしません。

当社に入る若い人たちには、自分がそうしてもらったように、いろいろな経験を積める環境をガンガン与えることで、本質的な力を身につけさせてあげたいです。

そのためにも、できるだけ本人が発想できない視点で、必要な力が身につくような人事配置を意識しています。「こういうものを身につけてほしい」という想いと併せて「こういう経験をしたら、次はこういうことができるようになっているかもよ」という道筋を見せることも大切にしていますね

たとえばマーケティング志望の社員がいたときに、「先に営業として当社のユーザーに直接触れる経験をしたほうが、いずれマーケティングの部署に行ったときに必要な視点が得られるよ」といった感じですね。

得るものがなくなれば転職をすればいいと思いますが、若手社員には「この会社で自分の成長につながる養分を吸い上げられるうちは、すべてを吸い取る!」くらいの気持ちで臨んでほしいと思っています

社会で活躍するには「素直さ」と「情熱」を意識しよう

私が思う、社会で活躍する人材の共通項は「素直さ」と「情熱」があること。この2つが必要十分条件だと思います。

素直さについては、上述の観点で言えば、経験のない仕事でも騙されたと思ってやってみることができるかどうか、ということにつながります

例えば、バスケでもサッカーでも、最初のうちは「コーチに走れと言われたから」という理由でとりあえず素直に走ってみるだけで十分。しばらくは筋肉痛が起こるかもしれませんが、走っているうちに力が付いて、「今日はこれくらい走っておくか」といった具合に自分で走るべき場面かどうかを選べるようになっていきます。

「走れる」という体力やスキルがつくと、次にシュートやパスといった、自分に足りていない別の要素を自ずと鍛えたくなってきます。

また成長するためには、素直さと併せて「これを積み上げていけば、自分がありたい姿に近づけるはずだ」と信じて邁進できる情熱のようなものも必要だと思います。情熱や感情を外に出せる人は周りから可愛がられるので、良いチャンスも巡ってきやすいです。

その点で言えば、良くも悪くも武器としての学歴に固執しすぎないようにすることも重要かもしれません。学歴で社会的信用性を判断する人もいるので、もちろん勉強をしてきたことは対外的にはプラスになることが多いですが、会社のなかに限っては、学歴を武器にすることは一旦忘れて、真剣に仕事に取り組んでいる情熱をストレートに周りに見せていったほうが、得られるものが多い気がします

情熱を向ける対象は、必ずしも仕事でなくても構わないとも思います。家庭だろうと趣味だろうと、「自然にそのことを考えてしまう」という情熱の対象を持っている人は基本的にイキイキしているので、仕事にも前向きに取り組んでいるケースが多い印象です。 

私自身は、キャリアの充実感に情熱を傾けているタイプかなと思います。朝起きたときに「今日はこんなことをするぞ!」というポジティブな気持ちで目覚める毎日を過ごすのが理想です。

逆に「今日は起きたくない、仕事に行きたくない」という気持ちで目覚めたり、お昼休みや終業のチャイムを待ち侘びて仕事をしたりする生き方は、個人的には相当ツラいなと思っています。

自分の手で何かを変えたい人はベンチャー向き。ニッチな業界でもトップ企業に注目してみよう

大企業とベンチャーの両方を経験した立場から企業選びについてアドバイスするならば、両者の違いは「自分でルールづくりができるかどうか」という点だと理解しています

学生生活のなかでも「もっとこうしたらいいのに」と思う機会が多い人や、「変えたいことを変える権限がないとワクワクしない」という人は、間違いなくベンチャー企業向きです。

もちろんベンチャー企業だからといって、何もかもを簡単に変えられるわけではありません。まずは自分が変わって、周りの人を変えていくうちに、会社の戦略も変えられる……といった過程があります。それなりに骨が折れる過程ですが、自分の手で何かを変える経験ができると、自分自身も変わっていきますし、ひいてはそれが人生の満足度につながっていくはずです

また「業界全体を変えたい、業界全体に影響を与える仕事がしたい」という人は、どれだけニッチな業界でもいいので、業界トップの企業やリーディングカンパニーに注目してみるのがオススメです。

業界2位以下の企業が何か仕組みを変えようとしても、業界1位の会社が現状維持の状態だと、関係各所を巻き込んでやることはなかなか難しいです。その点、業界1位のところは周りに与える影響力が強いので、チャレンジできることが多く、基盤があるので変化に対するリスクも取りやすいです。

「何をやりたい」よりも「こういう人間でありたい」という目標を追いかけていきたい

IBJに入社して変わったことはたくさんありますが、会社の看板ではなく、自分自身としてコミュニケーションを取れるようになったことも、そのひとつです。

銀行時代に築いた人脈は、会社の看板がなくなれば会ってくれない人が大半でした。しかし今は私自身のビジネスマインドや、人としての面白さなどで付き合ってくださっている方が増えた感覚があります。

もともと目標設定が苦手なので、「これを達成する」といった目標は定めていませんが、「先々こういう人間になっていたい」という“あり方の目標”は意識していますね

具体的には「いろいろな知見や感覚を持って挑めるゼネラリスト」「世の中に常に課題を見つけ、変化させていける人」「周囲に興味を持たれ、良い影響を与えていける人」になっていきたいと考えています。関わる人たちに「一緒に仕事をするとなんだかイキイキできるな」と思われる人間でありたいですし、せめても、その人にとって悪くないものを与えられる人間でありたいです

当社は「ご縁のある皆様を幸せにする」というビジョンを掲げていますが、まさにこの感覚ですね。サービスのユーザーに対してもそうですし、経営として、人事として、仲間である社員たちをどう幸せにするか、ということがテーマです。この役割を担うことによって、私自身の人生の幸福度も高まっている実感があります。

併せて、全国の加盟店の皆様とどういう関係を作るかといったことも今以上に考えていきたいです。「IBJの加盟店で良かった」と思っていただけるよう、現状ある課題解決にも一つひとつ取り組んでいきたいです。

責任が大きくなっていくなかで、壁にぶつかって思い悩む日もありますが、ひどく凹むようなことはありません。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないのですが、大変な局面も1ヶ月後、1年後に振り返ってみれば「成長した自分からすれば、全然たいしたことなかった」と思えるようになり、その経験談が酒のツマミになる日が来る、ということが今までの経験からわかってきました

就職活動でも壁にぶつかることはあると思いますが、「いずれたいしたことなかったと思えるようになる」ということは、ぜひ心に留めておいてください。

苦しいとき、思い悩むときは、素直さをもって周りの人にアドバイスをもらうことが大切ですが、「こんな出来事やこんな人に、自分の人生を左右されたくない!」と気持ちを奮い立たせてみるのもオススメです。

取材・執筆:外山ゆひら

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